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月神の都、アキウトゥミクの物語 5
悲しみに沈むアキウトゥミクに進軍してきた軍を率いていたのは、まだ若いが勇名の高いエルミアス将軍であった。古参の参謀が一人付き従い、時に無謀な行動に走りたがる将軍を補佐した。
将軍はアキウトゥミクを包囲し、アキウトゥミクの富が持ち逃げされるのを防いだ。しかる後に神殿に使者を送り、抵抗せずに月神の富を全て差し出せば兵士に略奪はさせないと伝えた。
神殿から使者が伝言を携えて帰ってきた。
”神殿の富は将軍に差しだそう。しかし、今日は年に一度の儀式の日。儀式が終わる刻限まで待っていただきたい”
将軍は返事を聞いて怒りを露わにした。
「私は既に最後の戦いに勝ったのではないか。勝利者たる私を出迎えもせず、刻限まで待てとはなんという言い草だ」
将軍は神殿まで直ちに自ら出向くと宣言した。参謀もこれを止めなかった。儀式を理由に月神の富を隠匿される事を恐れた為である。