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月神の都、アキウトゥミクの物語 3
月神の神殿は神聖な場所とされ、人々の立ち入りは厳しく禁じられていたが、遠くからでも純白の美しい神殿を一目見たいと思う者は後を絶たなかった。
神殿の中枢では数々の不思議が起きると信じられていた。錆びない銀もその一つで、神官達が銀を月神に捧げ、祈ると錆びない銀に変わると信じられていた。
また月の光を浴びた動物が口を利く、重い石がひとりでに浮き上がる、などとも。
月神の神殿では多くの動物が飼われていたが、世話は神官や巫女の役目で人々の目に触れることは無かった。
毎日大量の餌が運び込まれるので、動物がいる事は周知の事実だったが、動物の姿は見えず、また声も外に伝わってくる事はなかったので人々は”アキウトゥミクでは動物ですら静寂を重んじる”と噂した。