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月神の都、アキウトゥミクの物語 2
古代都市アキウトゥミクの富の源は錆びを知らない銀にあった。神官達は錆びない銀を王に上納し、手厚い保護を受けていた。
建物は白い石を使って建てられ、道路はやはり白い石で舗装された。人々の衣服は黒か灰色、茶色と決められ、派手な色彩は咎められた。神官と巫女のみが白を纏った。
人々は静寂をもって美徳とした。表情は乏しく、声を荒げて怒鳴ったり、声をたてて笑ったりする者はいなかった。都市の住民は神殿の維持の為に働く者が殆どだった。野外の作業をするものは殆どなく、必要な場合は日に焼けぬよう顔や手を覆って作業を行った。
月神への捧げ物を納めるため他の都市から多くの人々がアキウトゥミクへとやってきたが、人々は静寂が支配する都市に長く滞在する事を喜ばなかった。
人々はアキウトゥミクの事を”美しく不吉な都市”と呼んだ。また、死の気配が濃い都市、とも。