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月神の都、アキウトゥミクの物語 1
白い豹が白い衣を纏った神官と生け贄の乙女を乗せて丘の上をひっそりと上っていく。古代都市アキウトゥミクでは年に一度月神を祀った祭壇に乙女の生け贄を捧げる儀式が行われた。
白い花を髪に飾った乙女が祭壇の前に進むと、神官は頭を垂れて後ろへ下がる。銀の飾りをつけた白豹は神官に宥められて銀色の目を閉じ、地面にその身を伏せた。
生け贄の乙女は祭壇に上り膝を折ると、太古の白い石でできた短剣を取り出した。その短剣の名はエディアナ。月が生まれた時に自らの一部を裂いて残したと伝えられる石を穿ち、刻んで作られたもの。
乙女は短剣を掴み喉にその刃を突き立てた。伝承によると、不思議な事にその祭壇で流される血は常に透き通り、祭壇の周囲の草も赤く染まる事は決してなかったという。