① 前世の記憶
夢を見た
ぼんやりと見覚えのある光景を上から眺めている
ベッドでうつ伏せになった男が小説を読んでいた
『聖女は諦めない』
上から見ているだけなのに内容がわかる
教会で祝福を受けたヒロインが聖女に選ばれなんやかんやあって世界を救う
在り来りな設定の話
出てくるキャラの挿絵が好きで何度も読み返していた
本を読み終わった男が仰向けになり本を胸に抱えて目を瞑る
そうやって自分の頭で本の世界を想像して入り込むのが好きだった
世界が少しずつ白んでいく
「アルフレッド様、おはようございます」
サラがカーテンを開けながら声をかけてくれる
「……おはよう」
「アデリア様がお待ちですよ」
「え、もうそんな時間!?」
慌ててベッドから起き上がるとサラが着替えを持ってきてくれる
急いで着替えてサラの方をむく
「変なとこない?」
「今日も完璧ですよ」
「ありがとう、サラ」
扉を開けながらサラにお礼を言うと頭を深々と下げられる
それを見ながら僕は部屋を飛び出した
息を整えてから扉を開ける
「おはようリア!」
「おはよう、アル 今日も寝坊?」
「違うよ……」
目を逸らして嘘をつく僕を見ながらリアはクスクスと楽しそうに笑っている
朝食を食べながら他愛もない話をする
楽しそうに笑うリアを見て先程まで見ていた夢の内容を思い出した
思い出して、スプーンを落とした
「アル?」
「あ、え、ごめん、ちょっと、まって、えっと……」
そばに控えていた侍女が落としたスプーンを拾い新しいものをテーブルに置いてくれる
それにお礼も言わずに僕は立ち上がった
「リア、ごめん、ちょっと大事なこと思い出した」
「大事なこと?」
「うん、だからもう部屋に戻るよ」
「え、アル?」
名前を呼んでくれるリアの方を振り返らず来た時と同じように走って部屋に戻る
大きな音を立てて扉を開けた僕にサラは驚いていた
「アルフレッド様?お忘れ物ですか?」
「いや、違う、急で悪いんだけど1人で考えたいから部屋を出て欲しい」
「かしこまりました」
サラが頭を下げて部屋を出る
僕は机に向かい紙とペンを用意した
あの夢は僕の記憶だ
前世で表紙の絵が好みで買った本を何度も何度も読み返していた
内容は聖女として選ばれた男爵家の娘であるヒロイン「ベルリア・アレクライン」が闇堕ちして世界を憎む僕を倒す物語
ベルはなかなか覚醒できない中魔法学園で日々勉強に勤しむ
そんななか仲良くなるのが僕の双子の姉「アデリア・フォン・ブライト」
リアは演習で入った森で本来なら現れるはずのない魔獣に殺されてしまう
そのショックでベルは覚醒するが僕は大好きなリアが死んだことを受け入れられず色々あって闇堕ち
闇の女神と契約し世界に、ベルに復讐しようとする
紙に書く手を止めて呆然と書いたものを見る
リアが死ぬ?
それだけは絶対に嫌だ
闇堕ちして殺されるよりもずっと辛くて悲しい
この国では男女の双子の片方は世界の闇を照らす鍵となる
と言われている
僕たちは150年ぶりに生まれた男女の双子で大事にされている、ことになっている
親は没落寸前で領地もない貧乏だったところに国から多額のお金を頂けるようになって毎日のようにふたりでサロンやパーティーに出かけていて僕たちの面倒なんか見てはいない
それでも優秀なリアが鍵になるはずだと優秀な家庭教師に護衛も侍女も3人ずつ付けて大切にしていた
そんな親に僕ははなから興味なんてなかったがリアは勉強ができない僕に勉強を教えてくれて本を読んでくれて一緒に遊んでくれる
毎日ご飯を一緒に食べて話を聞いてくれて話をしてくれる
大事な家族だ
リアの死がベルの覚醒のきっかけになるなんてあっていいはずがないのだ
魔法学園に入学する12歳まで残り5年しかない
リアとベルを友達にさせない?
いや、リアはベルと友達になれて幸せな日々を送っていたのかもしれない
少なくとも小説ではお互いに切磋琢磨しあって楽しそうな学園生活を送っていた
リアを死なせないのは大前提だが幸せな日々を奪うこともしたくない
頭を抱えて考えているとドアをノックする音がする
「アル?私だけど入ってもいい?」
「リア、? ちょ、ちょっと待って!!」
慌ててメモを鍵の着いた引き出しにしまい鍵をかけてから扉を開けてリアを迎え入れた
「どうしたの?」
「アル、朝ごはんあまり食べてなかったでしょう?心配になって 具合が悪いとかではないの?」
「心配かけてごめんね、具合が悪い訳では無いんだ」
「そう?ならいいんだけど…… サンドイッチ作ったの、一緒にどう?」
「リアのサンドイッチ!僕大好きだから嬉しい、座って!」
リアと一緒に戻ってきたサラが紅茶を入れてくれる
「悩んでることいつか教えてね アルはひとりじゃないのよ、話したくなったらいつでも聞くから」
「……リア、ありがとう」
リアを絶対に死なせない
固く誓ってリアのサンドイッチを頬張った
アルフレッド・フォン・ブライト 7歳
双子の弟 勉強は苦手だが姉のアデリアと勉強する時間と本を読んでもらう時間が好き
木登りと風魔法が得意
アデリア・フォン・ブライト 7歳
双子の姉 本を読むのが好き 水魔法が得意
サラ 15歳
アルフレッドの侍女 10歳の頃からアルフレッドに仕えている
紅茶を入れるのと洗濯物を干すのが得意
魔法は全て平均程度まで使える




