5 犯行現場
アドラー伯爵夫妻、ハインリヒ、エラ、ヤコブの証言の内容に矛盾する点はなかった。
また、庭師に確認すると彼は11時にハインリヒが温室にいたこと、そのとき温室に遺体はなかったことを認めた。
関係者への事情聴取が終わると、レストレード警部の部下が彼を呼びにきた。
「被害者が殺害されたと思われる場所が判明しました。」
「ご苦労。
それはどこだね。」
「2階の客室、スカーレットが泊まった部屋です。」
私とカメリアはレストレード警部に続いてスカーレットが使った客室へと入った。
部屋の中央に大きな天板付きのベッドがあり、その横にサイドテーブルが置かれている。
入口に対してベッドは横向きに置かれている形になる。
そのベッドの奥に窓があり、窓際に小さなテーブルセットがあった。
部屋には争った形跡はなく、テーブルセットの椅子もきちんと置かれていた。
けれどもベッドには掛け布団やシーツがなかった。
若い警官がレストレード警部に報告する。
「カーペットに血痕が残っていました。
また、ベッドのマットレスにもわずかに染み出た血液が残っております。
恐らく被害者は刃物で刺された後、ベッドに倒れ込んだのでしょう。
布団やシーツは血で汚れたために犯人が持ち去ったものと思われます。
遺体と凶器はこの部屋からは見つかっていません。」
「布団やシーツ、凶器を持ち去ったのは犯行を隠蔽するためだろうか。
しかしそれは被害者の首を飾ったことと矛盾する。」
部下は報告を続ける。
「ベッドサイドにおかれていた置き時計が壊されていました。
犯行時に壊れたものと考えられます。
時計は11時12分で止まっています。」
「では犯行が行われたのは昨夜11時12分ということか。
しかし、これだけの証拠が揃っているにしては犯行現場の発見に時間がかかったな。
何か理由があるのか。」
レストレード警部の問いに部下は「申し訳ございません。」ときびきびした動きで頭を下げてから説明をする。
「ベッドには汚れていない掛け布団とシーツがつけられていたのです。
使用人たちに確認したところ、客室には常にクローゼットの中に予備のシーツと布団を準備していたのだそうです。
犯人が汚れた布団とシーツを持ち去り、予備のものと交換したのだと思われます。」
やはり犯人はここでの犯行を隠蔽しようとしたのだ。
犯行現場をじっくりと観察したカメリアが言う。
「犯行時刻が11時12分なのが気になりますわ。
温室に作られた祭壇はスカーレットへの愛を示すものでしょう。
けれど、スカーレットに好意を寄せていたと思われる三人の男性全員に、犯行時刻のアリバイがありますわ。」




