表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/53

第6話:バンズは焼きたて!パン工房ミルフィーユ誕生!

 王都・中央広場。


 そこに立つのは、チラシ片手に気合十分な青年。


「よーし、配るか!」


 異世界からやってきた転移者・草薙 隼人くさなぎはやと。その背中には、妖精フェリィがデザインしたキラキラのチラシがぎっしり。


 《魔女っ子バーガー1号店、もうすぐオープン!》

 《新設・パン工房ミルフィーユの協力で、バンズは毎朝焼きたて!》

 《焼きたてパン&魔法のアイデアで、あなたの心もお腹も満たします!》


「よーっし、いくぞーっ!」


 チラシを抱えた元冒険者メイド・ミーナが、軽やかに駆け出す。


「ちょ、ミーナさん、ちょっと待って!?配るの早すぎ!」


「ねえ、この『パン工房ミルフィーユ』ってなに?」


「それ私も聞いてない!」


 そのとき、ルミナが満面の笑みで飛び込んできた。

「お待たせー! 営業許可、ばっちり取れたよーっ!」


 ルミナが満面の笑みで駆け寄ると、場に安堵の空気が広がった。


「やったー!」とミーナが歓声を上げ、隼人もほっと胸をなでおろす。


 クラウスはすっと前に出て、深々と頭を下げた。

「これで正式に営業が可能です。皆様に最高のバーガーをお届けしましょう」


「うれしい~っ! やっとスタートラインに立てた感じだねっ♪」

 妖精フェリィがくるくると空を舞い、歓喜の声を上げる。


 そのとき、クラウスがちらりと空を見上げてつぶやいた。


「……お嬢様も、そろそろお越しになる頃かと」


 そんな中、空に異変が起きる。


「……あれ、なんか空、光ってない?」

 ミーナの言葉とともに、夜空にまばゆい魔法陣が出現!


 金と虹色に輝く魔法紋が広がり、風とともに鈴の音が鳴り響く。 その光の中心から、ふわりと声が降ってきた。


「おまたせーっ☆」


 空から現れたのは、パンケーキのグライダーに乗った、ふわもこエプロン姿の元気少女!

 ポンっと降り立つと、周囲がざわついた。


「パンと夢を詰め込んで、今日も焼きたて!パンナ・ミルフィーユ、ただいま参上っ♪」


「これはこれは、パンナ様。わざわざお足を運ばせて頂き、感謝致します」

 クラウスが優雅に一礼する。


「やっほーーー!クラウス!ほんと、めっちゃ久しぶり~!」

「さあ!今日は約束どおり、パン工房作りにきたよーっ!」

 

 パンナが魔女っ子バーガー1号店の隣地でにっこり。

「ここでいいかな? 錬成開始!パン工房・ミルフィーユっ!」


 地面に広がる魔法陣、巻き上がる光と甘い香り!


 現れたのは、煙突からシナモンの香りがただよう可愛らしい工房小屋。

 周囲の人々がざわめき、子どもたちは歓声を上げて駆け寄る。


「この工房ね、材料入れると自動でカリふわのバンズが焼き上がるんだよー! チーズ入りもできちゃうよ♪」


「えっ、すごっ! 自動バンズ錬成マシン……!」


 胸を張るパンナが続ける。


「しかもこれ、ルミナちゃんのためだけに調整した専用設計なんだから!」


「じゃあさ、パンケーキも焼けるようにしてーっ!」

 ルミナが期待に目を輝かせる。


「もちろんっ☆ 魔法のフライパン、出動っ!」


 パンナがピンクのフライパンを空へ投げると、光の魔法陣が展開!


「錬成!クルクルポンっ!」


 フライパンがくるくる回って工房に着地すると、パンケーキモードが起動!


「じゃじゃーん!ふわとろパンケーキ、作れるようになったよ!」


「さっすがパンちゃん!わたしの好み、完璧っ!」

 ルミナが決めポーズ。


「さらに中には魔法スチームオーブン付き!


『サクふわタイム』の魔法刻印で、いつでも絶妙な焼き加減が保てるの!」


「……パンちゃん、完璧すぎる……パンちゃんって、有名人なの?」

 隼人が呆気にとられてぽつりと呟く。


 ミーナがくすっと笑いながら答える。

「うん、有名。パンナちゃんは、この世界を救った英雄のひとり。トールハンマーの使い手なの」


「ト、トールハンマー!?なんか情報量が多すぎる……」


 そのやり取りに、ルミナは唇を尖らせる。


「……パンちゃんばっかり注目されてる……!

 くやしい、でもこの匂い、絶対おいしい!」


 くやしげにパンの焼ける匂いを嗅ぎつつ、ぱちんと指を鳴らす。


「そうだ! 朝限定『パンケーキモーニングセット』、販売決定よ!」


「メニュー増やすの!?」


「当然でしょ!ほら、パンケーキあるし!」

 ルミナは胸を張ってもぐもぐ。


「……んぐんぐ。うん、いくらでもいける……!」


 そしてその頃――


 広場の端で、ひとりの騎士がチラシを手に取っていた。

 甲冑に身を包み、馬を引く青年が、魔女っ子バーガーのロゴを見つめて小さく呟く。


「……姫様に渡しておこう。きっと、こういうの、お好きだからな」

 その声は、誰に向けるでもない独り言。


 ――今日もまた、ひとつ夢に近づいた。


 ハンバーガーの香りと、仲間たちの笑顔に包まれて。


 少しずつ、だけど確かに、魔女っ子たちの物語が動き出す。


 《つづく》



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ