第34話:消えたララ、魔女っ子怒りのデスロード発動!
その日は、甘味の幻宮から帰還して数日後の、穏やかな昼下がりだった。
ララはクレープ店の裏手、ベリーの箱を抱えていた。
「この果実、パンナさんが好きなやつ……っと、こっちはルミナさん用」
小さな手で慎重に仕分けをしながら、ふと空を見上げる。
そのときだった。
「……っ!」
ララの全身が硬直する。
何かが、視界に割り込んだ。
赤い印。
幾何学模様のような魔術陣が、空中に、
音もなく――広がっていた。
「転送術……!? 誰か……っ」
叫ぶ間もなかった。
光が彼女を包み込み、空間ごと裂ける。
「きゃ――」
「ララァァァァッ!!」
少し離れた場所でベリーの木箱を運んでいたティオが、荷物を放り出して駆け寄る。
だが時すでに遅く――
光の柱と共に、ララの姿は消えた。
「う、うそだろ……!?」
唖然としたティオの手が、虚空を掴むように震える。
「ララっ、ララァァッ!!どこにいったんだよおおっ!」
* * *
「……ララが……いなくなった!?」
クレープ店でベリー果実を運んでいたフローラが、叫んだ。
「その場に、転送魔法の痕跡が残ってた」
セレナが目を細める。「しかも……かなり古い型の、強制魔術よ」
「待って……それって、本人の意思を無視して無理やり飛ばすやつ……?」
パンナが怒りに震える。
ルミナは表情を曇らせながら、魔導書を開く。
「……魔力残滓を追えば、座標が割り出せる」
「じゃあ行こう。今すぐ!」
「魔女っ子怒りのデスロード、発動よ!」
「お、俺のロケラン持ってく?」と隼人が半笑いで言う。
「なんでそんな危険なもの持ってんのよあんた!」と杏奈が速攻でツッコミを入れた。
そこへ、唐突にマジカル・ウィッチ放送局の実況魔女っ子、ミレイ・フラムが乱入してきた。
「待ってー!!こういうときの実況役がいないと、もったいなくない!?」
「ミレイ!?どこから来たのあなた?」
白フリルの魔女服、キラキラのマイク。
その姿はまさに“実況魔法少女”だった。
「よぉーし!今回は特別救出編ってことで、昼ドラ風にお届けします!」
「いやいや、命がかかってるのに何言って――」
「しかも今回はね、恋の波動も検出されてるんだよ!これはもう……ヤンデレ展開、ありえるね!」
ルミナとパンナは顔を見合わせた。
「……この子連れてって大丈夫?」
「わたし……ちょっと不安……」
それでも、背に腹は代えられない。
* * *
転送座標の先――そこは、かつての文明の残骸と思しき地下神殿だった。
広がる空間は、苔むした柱と崩れかけたアーチ、そして不気味に輝く紅い水晶灯。
床には骸骨、壁には祈祷の文様、そして中央には……禍々しい儀式壇。
「ここ……明らかにマズいやつじゃん」
パンナがトールハンマーを構える。
進むたび、ひとり、またひとりと魔術師の亡霊が現れる。
ローブ姿の骸骨。
不気味な詠唱。
――ゴォォン。
儀式壇の奥で、鐘のような音が響くたび、空間が歪む。
「このままじゃ、ララが……!」
ルミナが魔力を集束させる。
「救出したら、こんな危険な神殿は――爆破しとくか!!」
「賛成ー!!」
すると突然声がした――
「させるものか」
冷たい声が、爆煙の向こうから響いた。
現れたのは、灰色のローブをまとった男。
仮面の下からのぞく双眸は、光を反射しない黒。
ルミナが詠唱!雷と光の融合魔法――《シュガーボム・ディザスター》!
だが――
「無駄だ」
魔法は霧のように消えた。
「あれ?魔法無効!?どうするのこれ!?」
「ふふふ……なら、私の出番ですねぇ……♪」
ミレイが、一歩前に出る。
マイクをクルクルと回しながら、口元に不穏な笑み。
「あなた……私の大切な人を、勝手に連れ去って……そんなの、ひどすぎるじゃない……!」
「キサマ、何を言って――」
「これが、愛の制裁よ……ヤンデレ☆アタァァァァァック!!」
ナイフを振り抜くその瞬間、ミレイの瞳に涙が滲む。
「どうして……どうしてそんなことしたの? 愛されないのが怖いからって、人を傷つけていい理由にはならないのよ……っ」
「愛の重みで沈めぇぇぇえ!!」
魔術師のローブを裂き、仮面を砕く。
「魔法が効かなくとも――物理で刺せばいいのよ!!」
「……やるじゃん、ヤンデレ」
パンナが感心しながらハンマーを構える。
敵が崩れ落ちると、空間が震え始めた。
「早く!ララのところへ!」
奥へと続く階段を、三人は駆け上がる!
次回――「記憶の檻と予知の少女」
ララ救出編、いよいよ核心へ!




