第22話:伝説の食材を求めて!魔女っ子たちの冒険、開幕です!
王都アルフェリアに、2つのダンジョンが現れた。
それはまるで空間そのものが“めくれた”ように、突如として姿を現した。
ひとつは、北東の〈焔の牙山〉の山腹。
噴火の残り火がくすぶる赤熱の大地に、裂け目のように口を開けた“食魔の洞”。
灼熱の空気と鉄の香り、そして獣のうなり声が地の底から響いてくる。
もうひとつは、南西の〈眠りの花園〉。
霧の森の奥に現れた、光のきらめく“甘味の幻宮”。
いちごミルクのような香りが漂い、浮かぶような階段が空へと伸びていた。
「レア食材も、貴重な鉱石も眠っているらしいぞ!」
「王都でも話題だ!早く踏破者が現れてほしい!」
「誰か……あの2つの店に頼むしかない!」
噂はたちまち王都中を駆け巡り、騎士団通りのカフェや、市場のパン屋、
王宮前広場の屋台まで、誰もがこう囁くようになった。
「いま、異世界で一番人気の二大店って言えば──」
「『魔女っ子バーガー1号店』と、『ラ・シュガー・パルフェ』だろ!!」
* * *
「ええと……依頼が2件同時に届いております、ルミナ様」
書類の山に囲まれたクラウス・バルデンブルクが、いつも通りの冷静な口調で報告する。
その向かい側で、ルミナはソファに寝転がりながらスナックをもぐもぐしていた。
「ダンジョン? 食材? いくしかなくない?」
「……口に何か入れてるときだけ反応が早いですね」
「それは“食の神託”ってやつだよ。たぶん」
「信憑性がゼロです」
今回の依頼主は2つ。
王国冒険者協会と、魔法映像の専門局——《マジカル・ウィッチ放送局》。
ギルドからは「食材調達と危険度調査」の要請。
放送局からは「リアル冒険食レポ番組の生中継をお願いしたい」との熱烈な打診が届いていた。
そしてその放送担当として現れたのが、彼女だった。
「ごきげんよう、グルメと魔法を愛する皆さまっ☆」
空中からふわりと舞い降りたのは、白いヒラヒラの魔女服をまとった少女。
レース付きのウィッチハットに、月型のピアス、
腰元にはきらきらと輝く魔法石のアクセサリー。完璧なまでに“映え”を意識した出で立ちだった。
「《マジカル・ウィッチ放送局》、投影魔導士のミレイ・フラムですっ! 本日よりあなたの冒険に映像の魔法をっ☆」
「……ちょ、なにその可愛い服」
ルミナが帽子のつばを引っ張りながらむすっと呟いた。
「なんかあたしのより……ひらひらしてるし……ラメ入ってるし……ズルくない……?」
「ちょっと、そこの魔女っ子さん!」
ミレイが指をさして言い放つ。
「魔女っ子かぶりしてるんですけど!? わたし、日曜朝の魔法アニメにも出てるし!
平日は昼ドラでヤンデレ役もやってるんだからねっ♪ 刺しちゃうんだから☆」
「どんな二足のわらじ!?」
ルミナが盛大にツッコむ。
「ていうかあたし、“魔女っ子バーガー”の創始者なんだけど!? そっちこそかぶってんじゃん!」
「うちはうちで“ウィッチビジョン放送枠”の顔なんですけどぉ!?」
クラウス「……この魔女バトル、火種がラメと枠争いという理解で正しいのでしょうか」
フェリィ「ミレイちゃん……キャラ濃っっ……」
* * *
やがて、ミレイの《投影魔法フォトニア》によって、王都の空に巨大な光のビジョンが広がる。
魔導獣ポッティのレンズ視点が、2つのダンジョンへの道を映し出す。
「間もなく、シュワシュワの勇者たちが“食魔の洞”に突入!」
「そしてこちらは、“甘味の幻宮”へと歩み出す、姫率いるクレープ隊!」
「どちらが先にレア食材を手に入れるのか!?注目ですっ!」
セレナ「……空に映るのって、ちょっと不思議で素敵ですわね♪」
ティオ「って、うわ!こっちも映ってる!」
ララ「……未来がきらきらしてる。今、見てる人が笑ってる」
こうして、王都アルフェリア中の注目を集めながら、
ふたつの人気店の冒険が、いま幕を開ける。
——炎と肉汁の冒険へ向かう、ハンバーガー組。
——霧と夢の甘味に誘われる、クレープ組。
魔女っ子バーガー店発、異世界グルメクエスト開幕!




