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ごく一般的な貞操観念逆転世界  作者: 陽向プラス
1/5

何かがおかしいけど倉木さんはかわいい

「——なみ、伊波ー?」

「はいっ、痛っ!?」


机に膝が当たり授業中の静かな教室にガタンという音が響くと、遅れて小さな笑い声が教室を満たす。顔を熱くしながら黒板を見ると、白玉と赤玉の出る確率を求めるとかいう高校1年生の数学でよくある問題が書かれている。


「授業を聞かずに寝てたんならこの問題の答えはわかるよなー?」


ニヤニヤしながら数学教師の町田先生が問いかけてくる。え、町田先生ってこんなキャラだったっけ?僕の知ってる町田先生は身長は高いけどちょっと気弱な若手女教師で、寝てる人もそのまま寝かせておくか「今から重要なことを言いますよ〜…」って言って近くの人が起こしてくれるのを待つみたいな感じだった気がするんだけど。


いやそんなことは置いとこう。今僕が早急に取り組まなきゃいけないのは黒板に書かれた問題だ。確率はそんなに苦手じゃないけど寝ぼけた頭は一向に答えを導き出してくれない。というかシンプルにこの問題の難易度が高そうな感じがする。冷や汗がじわっと出てきたところで左から「3/20」と書かれた紙片が飛んでくる。


「えーと、3/20、ですかね」

「…正解だ。まあ昼休みが終わってすぐで眠いのはわかるが授業は真面目に聞くこと。今寝てもあそこは成長しないぞー。いや大きくはなるかもな!ハッハッハ!」


いやめちゃくちゃ下ネタじゃん。ほんとに町田先生だよね?ドッキリ?


冷や水を浴びせたような空気の教室にサイテー、と呟く()()の声が聞こえる。そんな声は聞こえなかったのか、上手いことを言ったと満足げな顔の町田先生は授業を再開し、板書とそれをノートに書き写す音が教室を支配する。


町田先生が黒板の方を向いたのを確認してチラリと隣の席を見ると切れ長の眼差しと目が合う。隣の席の倉木紗凪(くらきさな)さんは黒髪ボブの大人しめ清楚クールビューティだ。まだ6月だからそんなに長い期間を同じクラスで過ごしたわけではないけれど、倉木さんが大きな声を出しているところは見たことがない。にしてもほんとかわいいなー倉木さん。てかさっきのお礼言わないと。


「あの、倉木さんありがと。全然わかんなかったから助かりましたマジで」


「…大丈夫ならよかったです」


うおお倉木さんと喋れたぞ。合わせてた目を少し逸らしながら言う感じもあんまり男慣れしていない感じがしてTHE清楚って感じでいい。

ほらめっちゃ目を合わせながら喋ってくる陽キャっているじゃん?あの感じも悪いとまでは言わないけど、人とずっと目が合わせられない俺からするとちょっと圧を感じちゃうんだよね。それと比べるとやっぱちょっと大人しめ系というか陰の香りがする方が親近感が湧く。とはいえ俺とは違ってその顔面から倉木さんのカースト上位は確定されているんですけどね。



その後は特に何事もなく授業が終わり、町田先生が教室を出たところで前の席の孝也が振り返って話しかけてくる。


「相変わらず町田先生の冗談まじでありえなかったよな。てか俊介が寝てたの珍しいな」


おっと申し遅れました。俺の名前が伊波俊介、前の席の奴が荒木孝也。孝也は高校に入ってからできた唯一の友達で席も近いから1番仲良くしている。ん?6月なのに唯一の友達なのかって?べべ別に話そうと思えばクラスの誰とでも話せるし。やってないだけだし。


「相変わらず?町田先生ってもっと大人しくなかったっけ?あと4限のこの時間はどうしてもそこそこ寝ちゃうよ」

「何言ってんの?町田先生はいっつも品のないことばっか言うって有名じゃん。もしかしなくても俊介寝過ぎでしょ」


あれーそうなのか?4限じゃない方の数学はそんなに寝てないつもりだったんだけどな。てか別に町田先生背は高いけどかわいい寄りの顔してるしそんな下ネタ言われてもイヤじゃなくないか。むしろ大人の女性に揶揄われるのがたまらないというか。さっきのはかなり直球だったからびっくりの方が大きかったけど。


「てかあの問題よくわかったな。教科書の応用問題のやつだったのに。いきなり黒板に問題書き出したから何かと思ったけど、多分俊介が寝てるの見たからだったんだな」

「うわそんな難しかったんだ。全然わかってなかったけど倉木さんが教えてくれたんだよね。ほんと助かったよ」


一人で読書をしていた倉木さんだったが名前を出されてピクリとする。集中して読んでそうだったのに悪いことしたかな。


「へー倉木数学できるんだ。やるじゃん今度わかんなかったら教えてよ」


ちょおま、孝也!天下の倉木様にどんな言い方してんの!?カースト上位美少女VS教室の隅でアニメの話してる俺たちじゃ言っていい冗談と悪い冗談があるぞ。などと戦々恐々としながら倉木さんの反応を伺うと、


「ぜ、全部が全部わかるわけじゃないだろうけど、全然私ができることなら、その、やらせて頂きます」


あれ?


「ぷっ、やらせて頂くって何?クラスメイトなんだからそんなかしこまんなくていいじゃん」


あれ?


なんか想像していたのとは全然違う展開なんですけど?ていうか孝也と倉木さんの立場逆じゃないかこれ。なんで陰キャ倉木さんとギャル孝也みたいな構図になってるんだこれ?いや倉木さんはギャルではないけど。


頭がハテナで埋め尽くされそうになったところで、5限の開始を告げるチャイムが鳴った。とりあえずは授業を受けよう。




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