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【完結!】ぼくらのオハコビ竜-あなたの翼になりましょう-  作者: しろこ
第13章『虹色の翼と赤き超新星(スーパールーキー)』
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「……ごめんなさい」



結局ハルトは、ただ頭を下げるしかなかった。他に思いつくこともできない。



「ぼくがフロルに無理をさせたんです。


ぼくがついていくとさえ言わなければ、フロルはもっと早くガオルに追いついて、


動きを食い止めることだってできたはずなのに……」



モニカさんはしばし黙っていた。


フラップは、やや#憐憫__れんびん__#の目でハルトを見つめていた。


まわりの子どもたちは、ただ固唾をのんでハルトを見守っている。



やがて、モニカさんは、ふう……、とため息をついて、こう言った。



「いずれにしたって、フロルちゃんでは歯が立たなかったと思うわ。


それに、あなたがあの子についていこうとしたのは、


たぶん……男の子だからなんだよね」



「えっ?」


ハルトは目を丸くした。



「ぼくだって」


フラップが言及する。



「好きな子が命の危険にさらされていたら、


危険をかえりみないで駆けつけますもの。


しょうがないと言えば、しょうがないです。


まあ、ぼくの場合は、オニ飛竜のせいで足止めを食っていたから、


それすらも叶いませんでしたけど。ああ、フロル……


まだ戦闘訓練生なのに、ガオルに立ちむかったなんて……」



口惜しそうに右手を握りしめるフラップが、見ていて気の毒だった。


オハコビ竜は、本当に人間みたいな竜だ。


泣くこともあるかと思えば、こんなしぐさをすることもあるとは。



「ちょっと待って。足止めぇ?」


ケントが反応した。



「なんであいつらが、わざわざフラップを足止めしなきゃなんないワケ?


わざわざあそこまでサーキットの騒ぎをデカくしてさ」



「これはあくまでわたしの推理なんだけどね」


モニカさんが答えた。


「もしガオルが、オニ飛竜と結託しているとすれば、


ガオルはきっと、フラップくんたちエキスパート隊員を恐れているんだよ。


強力な戦闘部隊でもあるから」



「なかでも、その……たぶんですけど……ぼくのことを」


フラップは、だいぶ言いにくそうな態度でそう言った。



「なんでまたぁー?」



「ぼくは、その……強いですから。


こんなぽわっとした顔ですけど、怒ると、なんていうか……


恥ずかしくなっちゃうほど、強くなりますから。


それにぼくが、スズカさんの本来の担当員だと知っているなら、


なおさら遠ざけるはずです。サーキット全体を襲って、


ぼくたちを奔走させたのは、おそらくそれを隠すため、かと……」



「ほー、お?」


ケントは納得したような、まだしていないような顔をした。



ハルトも分からなかった。


ガオルがだれからフラップの強さを聞き、


そしてオニ飛竜を使って遠ざけようとしたのかが。


フラップと十一頭の仲間たちが、いったい何者なのかが。



「それはそれとして、モニカさん?」タスクがふと聞いた。


「サポートタワーに入れるのは、


オハコビ隊員だけだってフレッドから聞きましたけど、


ハルトくんをタワーに連れて行こうとしたのは本当ですか?」



「まあね。ターミナルに重大な緊急事態が起きた時には、


あなたたちも無条件でタワーに入れることになってるの。


参加者の安全確保のためにね。わたしはとっさに、その制度にしたがおうとした。


なのに、まさかターミナルまで襲われることになるなんて。


そのうえ、ガオルがタワーの防護シールドを突破してくるとか……」



モニカさんの言葉を受けて、ハルトは今頃になってはっとした。



「そういえば、オニ飛竜たちは? あいつらはまだターミナルにいるの?」



ハルトが急きこむように聞くと、フラップが答えた。



「いいえ、彼らはもうここにはいません、一頭も。


警備部のお話によると、ガオルがタワーから飛び立ったのと同じタイミングに、


彼らがいっせいに撤収を開始したそうです。


ぼくたちがここに戻ってこれたのも、サーキットにいたオニ飛竜たちが、


ちょうど同時刻に逃げ帰ったからなんです。


今はどこもかしこも、ターミナルの復旧作業で大忙しですよ」



「じゃあスズカちゃんも、見つかっていないんだね……」



ハルトも悔しさで胸がいっぱいだった。


いや、最初からこうなることは分かっていたはずだ。


何もできないくせにガオルのもとへむかい、スズカを守ろうとした。



(ぼくは馬鹿だ。馬鹿で、いやになるほど、まぬけじゃないか)



「ぼくがそばにいれば……」



フラップが悔しそうに首をふりながら言った。



「スズカさんがさらわれずに済んだかもしれない。


ぼくならガオルと戦うことができた。


ガオル……絶対に許しません。


ぼくが担当するお客様は、ぼくの手で必ず助けてみせますよ。



ーーみなさん。此度のトラブルを想定できず、


このような危険なツアーになってしまったことを、どうかお許しください……」



「まあ、フラップが謝りたくなるのも分かるけどさ」


と、アカネが言った。



「危険がないとも限らないって、


最初にフラップたちが言ってたじゃない。


みんな覚悟のうえで、このツアーに参加したんだから」



「それは、そうでしょうけども……」



重苦しい空気がよどんでいる。参加者のだれ一人、笑いも怒りもしない。


それもこれも、スズカがいないせいだ。


あの恐ろしいガオルが、スズカをさらっていったせいだ。



ピピピッ。



モニカさんから着信音がした。


モニカさんは、胸のピンクのネクタイの四角い結び目を指で押した。



「はい、こちらモニカです」



どうやら彼女のネクタイには、通信機能が備わっているようだ。



『――こちら、フーゴです。現在、病院の正面に来ております。


フラップと子どもたちをつれて、下りてきてください。


重大な連絡事項がありますので』



「了解いたしました! ただちにそちらにむかいます。


――みんな、わたしについてきて。警備部のフーゴ総括がよんでるの」



「もしかして、例の『スズカ様救出作戦』に関わることかも……」



フラップの推察に、ハルトは胸が高鳴った。



「えっ、救出?


警備部のみんなが、スズカちゃんを助けに行くの? 場所は分かるの?」



ハルトが質問攻めをするので、モニカさんがそれをなだめた。



「落ちついて、ハルトくん。


対策本部が、あれからいろいろと情報を解析してくれたみたいなの。


ガオルの住処と思しき場所も特定できた。


それに、『黒影竜』が何者なのかも、ね」



この時を待っていた。ハルトは、ためらうことなくモニカさんに言った。



「じゃあ、ぼくも連れてって。


この通りピンピンしてるから、もう動き回れるし。


それに、フーゴさんにお願いしたいことがあるんだ」


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