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ハルトたちのスピーダーは、迫りくる山のような雷雲から逃げるように、
ターミナルへの空路をひた進んでいた。
ハルトは、他のみんなを置いてきたことをまだ気に病んでいた。
空路を三分の一ほど進んだ頃、
どうしてフラップの言葉を鵜のみにしたのか、モニカさんにたずねていた。
「――あのね、ハルトくん」
ハルトの質問を受けたモニカさんが、レバーを手に前をむいたまま答えた。
「いずれ他の子たちも知ることになるだろうから、話しておくね。
このツアーのガイド役であるフラップくんや、他の十一頭の竜さんはね、
じつはとっても強いの。そこらの野蛮な竜に負けたりしない。
みんなエキスパートランクだからね」
「エキスパート?」
「オハコビ隊員には、部門ごとの役割とはべつに、隊員ごとにランクがあるの。
フラップくんたちは、上から三番目のランク。それが、エキスパートランク。
一番上はマスターランクといって、
組織全体の中核をになう仕事につくんだけど……あ、これは今関係ないか」
「そのエキスパートランクがなんだっていうのさ?」
「彼らは戦闘のプロ。警備部で、かなり実用的な戦闘訓練を受けているの。
お運び部門の一部の仕事では、
ああいう危険な種族と遭遇することもめずらしくないから、
戦う訓練がどうしても必要になってくるわけ」
「フラップたち、戦うと何をするの?」
「何をするって、格闘技を使ったり……火の玉を吐いたり」
やっぱり、オハコビ竜もそういうことをするのか。
ハルトは、自分がオハコビ竜にたいしていかに甘すぎる夢を見ていたか、
ようやく思い知らされた。
「……それにしても、オハコビ竜にまったく興味がないはずのオニ飛竜たちが、
どうしてこの空域に現れたのかな?
きっとフラップくんだけじゃなくて、フレッドくんやフリッタちゃん、
他のみんなも襲いに来てるはず。彼らの行動が不可解すぎるよ。
しかも、わたしたちのスピーダーも止められるなんて。
彼らにそんな技術的なテロ行為はできないはず――」
「なんだっていいよ!」
ハルトは、モニカさんの言葉をさえぎった。
「あそこには、ケントたちや他の子たちが残ってるんだ。
ぼくだけ先に逃がしてもらうなんて、あまりにもフコーヘイだよ!」
「うーん……でもハルトくん。
わたしたちがあそこに残って、できることなんてある?」
うっ。ハルトは言葉が詰まった。
「あのね、ハルトくん。わたしはオハコビ隊のサポーターだけど、
あくまでもオハコビ竜たちの活動の補助役。
竜たちがくり広げる激しい戦闘にかかわることなんて、できないの」
モニカさんはそっとふり返り、ゆっくりと噛んでふくむように言った。
「ハルトくんじゃ、なおさら危険だよ。
あなたは、オハコビ竜がいないと、この世界を移動することも……
もっといえば、元の世界に帰ることさえもできないでしょ?
今は、わたしがついているからスピーダーでターミナルに戻れるけれど」
モニカさんは、ハルトを不安にさせまいと、にっこり笑ってこう言った。
「フラップくん、というかオハコビ竜のみんなはね、
わたしたち人間の命が宝物のように見えているの。
だから、わたしたちが一人でも戻ったら、フラップくんはきっとてんてこまいだよ。
一番に最適なのは、フラップくんたちの力を信じて、
他の子たちを連れて帰ってくるのを待つことだよ」
「……それが、オハコビ竜への気づかい?」
「さっしがいいなあ、ハルトくんは。
でも、まあねえ、これだけの騒ぎになれば、
ターミナルの警備部隊も動いてくれるはずだし。
きっと心配いらないよ」
ハルトは、それ以上追求することはしなかった。
オハコビ竜たちの秘密がまた一つ分かって、少し誇らしかった。




