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『フリッタ! それにフレッドかあ! もう、ふたりともからかわないでよ』
『おいおい、お前がそれ相応の注意をはらってちゃんと運べているか、
気にしてなきゃいけないこっちの身にもなってくれよ。
ねだりにねだってその二人を担当させてもらえたんだから、
その分気を引きしめなきゃダメだぞ』
『そうだよぅ! フラップちゃんはさ、ほめられて得意になったあげく、
うっかりコークスクリューをかまして、お客様をクラクラにさせちゃうんだから』
『それはフリッタのほうじゃないか。ぼく、そんなこと一度もしたことないよ』
フリッタとフレッドは、徐々に後ろに下がってきて、
フラップの左右で並走飛行をはじめた。
彼と話がしたくてうずうずしていたような感じだった。
『ねえねえ、さっきのシロハネクジラ! フラップも見た見た?』
『うん! 子どもたちとしっかり見たよ。きれいだったよね。
ところで、ふたりはどうしてぼくのところに?』
『ふふん、それはねえ――』
フリッタが説明しはじめるより早く、キャビンの中に聞きなれた声がひびいた。
『ハルトー! スズカちゃあん! 楽しんでるかー!?』
『あたしたち今すごい体験続きでハッピーなのー! もう、最高すぎー!』
ケントとアカネの声だ。
このふたりの声量はとにかくでかくて、鼓膜をやぶりにかかっているかのようだ。
スズカは怖くなって、両耳をぎゅっとふさいでしまった。
『――ほらほら、ぼくたちは経験者なんだから、
そんなに羽目をはずしたら恥ずかしいだろ』
『そうですよ。それに、ぼくたちが大きな声で話しかけたら、
ハルトくんはともかく、スズカさんが驚いてしまいますよ』
今度はタスクとトキオの声だ。
彼らもエッグポッドの極上な飛行感覚にひたっているにしては、
ずいぶんと落ちつきはらった様子だ。
まあつまりは――フレッドは言った。
『フリッタがケントくんとアカネさんを。
俺がタスクくんとトキオくんを抱いて飛びはじめたわけだけどさ』
『みんながハルトくんたちのところに行きたいってリクエストしたから、
アタシたちこうしてやってきたわけなの!』
そんなのありがた迷惑だ、とスズカは思った。
わたしはケントさんたち四人に近づいてほしくないのに。
せっかくの素敵な気分が台なしになっちゃう。
そんなしぶい顔をして耳をふさいでいるスズカを見たハルトは、
おつむの悪い男子なりに、考えに考えながらこう言った。
「あ、会いに来てくれたのはとっても嬉しいんだけどさ、
今はその……ぼくたちだけでゆったり飛んでいたいなっていうか――」
『おっと?』
『それってつまり……!』
『あれかな、あれなのかしら?』
『ヒュー、ヒュー!』
東京の四人組は、やんややんやとハルトをはやし立てた。
ハルトは、スズカみたいに耳をふさぎたい気持ちをぐっとこらえる羽目になった。
ああもう、ただスズカちゃんを気づかっているだけなのに。
べつに好きとか……そういうことじゃないんだ、おそらくは!
「あのさ、ぼくホントに怒るからね!」
顔から火が出るような思いで、ハルトは軽く怒鳴ってやった。
四人への効きめはなかったものの、
スズカはその一言だけでとても嬉しくなった。
『ほらほら、四人ともそのへんにしたほうがよさそうだぞ』
フレッドがいさめるようによびかけた。
『ねえねえ、フラップちゃんにフレッドくうん。
みんなでさ、ハクリュウ島まで競争しようよう。
そしたらすっごく盛り上がると思うんだ』
フリッタがそんなことを提案してきた。
『フリッタってば、聞こえてなかったの?
お客様のリクエストが入ったじゃない』
と、フラップがあきれ顔で言った。
『ああ、そっかそっか。ごめんちゃい。
じゃあさフレッド、ふたりで競争しようよ!』
『しょーがない。手加減してやらないからな。
では四人とも、俺とフリッタによる《オハコビ・レーシング・コースター》を、
とくとご堪能あれ。フラップも、なるべく早く来いよ!』
フリッタとフレッドは、一気に加速すると、
前方の雲のふくらみの間に突入していく。
最後に聞こえたケントたちの大歓声が、キャビンの中からプツン、と消えた。




