表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/36

ルートミユキ1の12:史上最強の生徒会長

 早朝の桜花学園。朝礼を終えた1年生のアヤとミユキは屋上で朝の日差しを浴びている。

「それで………」

 アヤは手すりに預けていた身体をゆっくりと起こして

「悩みって何かな?」 

 隣で静かに佇んでいるミユキに尋ねた。

 1時限目の授業まで15分とないこの中途半端な時間を二人はいつも大事にしていた。

 ミユキはいつものように手すりから身を乗り出すようにしてグランドを眺めながら

「以前、アヤは私に”人は強く生まれては来ない。だから強くあろうとしなくてはならない”。そう言ったのを覚えてるか?」

 親友の問いかけにアヤがミユキの方を向く。するとミユキもまたアヤを見返した。

 しばらくの間を置いてからアヤは頷いて

「言ったかな?」

「う!」

 危うく手すりの向こうに落ちそうになったミユキを後から抱きかかえながら

「ごめんごめん。アハハハハ」

 朝日よりも明るい笑い声。

「アタシってその時その時で読んでる本に影響されちゃうからさ。たぶんそれも何か読みかじったことを言った可能性が」

 と弁解を始めている。無事に地に足をつけたミユキは微かに乱れたスカートの裾を整え、溜息。

「やれやれ。アヤといると調子狂うのか整うのか分らないな」

 これから自分は”大切なこと”について打ち明けようとしているというのに、なんだが気が抜けてしまった。

 拍子抜けというのだろうが、でも良い言い方をすれば肩の力が抜けたと言えなくもない。

「狙ってたのなら”さすがアヤ”と言うべきだなんだろうか?」

 そう小首を傾げるミユキに

「なにかユキたんの期待に応えられたのかなアタシ?」

 彼女はいつものようにニコニコとしているばかりだ。

「それでさっきの言葉だけど……」

 アヤは人差し指を口元に当て、空を見ながら思い出すような仕草を見せる。

「うん。ユキたんがそう言うんだからアタシきっと言ったと思うよ。それで、それがどうしたの?」

 わざとらしいポーズだからこそ、演劇部部長のアヤがやると本気でそうしてるのだろうと思ってしまう。

 問われてミユキは仕切りなおしとばかりに”コホン”と咳払いし

「実は生徒会長になった時の所信表明からずっと」

「まーった」

 ズイとアヤに手を差し出されてキョトンとする。彼女は間髪入れずに

「はいユキたん回れー右」

 指をクルっと回した。

”回れ右?”

 聞き返そうとしたがアヤの手に櫛が握られているのを見て

「やっぱり調子狂うな」

 納得いかないような表情を見せながらも背中を向けた。そのまま自然な流れでアヤはミユキの髪へ丁寧に櫛を通していく。

「うん。それじゃぁ話して? 続き」

 言われて”ああ”とだけミユキは返事をした。口では言わないがこの時間が大好きだった。

 櫛が髪を通るたびに胸の高鳴りも収まり、自分がどれだけ力んでいたかを自覚する。

 どうやらそれがアヤにはお見通しだったようだ。

「ユキたんの髪はまだアタシしか触ってないのかな? なんて」

 ”つくづく敵わないな”と首を横に振る。

「半年前、私が生徒会長になってその所信表明をしたときのことなんだ」

「うんうん。ユキたんの晴れ舞台はお姉ちゃんすごーく覚えてるよ」

 後で”クンクン”と髪の匂いを嗅いでる親友にクスリと笑う。やっぱり敵わない。すっかり緊張の糸は解けてしまった。

「本当に格好良かったよね。アタシもう萌え萌えだったもん」

 ただこの親友は少しおかしなところがある。

「あの瞬間アタシは”絶対この子にネコミミとエプロンドレスを着させて語尾にニャをつけさせる!”って誓ったわ」

 訂正、ただこの親友はかなりおかしなところがある。

「そしてアタシはそれを来年中に実現し……」

「やっぱり私は帰ることにした」

「あー待って! ちゃんと聞きますから!」

 歩き始めたミユキのセーラーをギュっと握っているアヤ。ミユキは背を向けたままクスリと笑って

「あれなんだが実は……」

 そこまで言いかけて言葉を失くしてしまう。あれだけアヤが自分をリラックスさせてくれたのにもう元通りだ。

 気付けばキュっと下唇まで噛んでいる。でも言わないと。ここまで来たら。

「あの時からの、生徒会長になってからの私は」

 そのまま一度だけ深く呼吸する。そして振り返り

演技(ウソ)だったんだ。全部」

 説明もなく先に結論だけ言った。

「うん。それで」

 アヤらしい即答が返って来た。そしてそれには反応らしい反応も無く表情に変化もない。まだ先を言えということだろうか。

 ミユキは親友の態度を計りかねたが続けることにした。

「”人は強くは生まれては来ない”。私はその言葉を聞いて生徒会長も生活指導員もやっていけると思ったんだ」

 アヤは黙って頷く。

「私はこれまでに強い人を大勢見てきた。母さんや父さん、ここの先生」

 ミユキは続ける。

「でもそういう人たちだって最初から強かったわけじゃない。でも強くあろうとして努力してきたから強くなった。あの言葉はそういう意味だと思った」

 ミユキの言葉にまたアヤは頷き

「うん。そうだよ」

 強く肯定した。その様子を見てミユキは本音を続ける。

「だから私は、皆の前では私なりに想像した理想の”生徒会長、園田美雪”を演じてみたんだ。頼りがいがあって、理知的で、それでいて風格もあるような感じの。そうなりたかったから」

「うんうん。格好良いよすっごく」

 その声にミユキは首を横に振った。

「違うんだ。でもそれはやっぱり私じゃなかった」

 ”否定”だ。アヤの言葉と自分自身の。

「今は理想とは遠い。でもそうあろう、明るく強く、活発な園田美雪でいよう。きっとそうなれる。そう信じて演じれば演じるほどに」

 ミユキは少しの間を置いてから

「”演じてきた強い自分”と”本来の自分”との差が鮮明になってきたんだ」

 アヤは黙って頷いたが、それは肯定でも否定でもなく先を促がしているだけのようだった。

「その鮮明になった隔たりをみるたびに”私はそんなんじゃない”という想いがつのり、違和感だけが残った。やっぱり私はそうなれない。そんなんじゃないって。だから」

 溜息を吐き

「私はこれ以上もう演技(ウソ)が続けられない」

 アヤは失望するかもしれない。いつもいつも相談に乗ってようやく明るく強くなった親友が”それはウソだった”と打ち明けたのだから。

「このままでは自分が自分でなくなってしまうような気さえするんだ」

 そして今更こんなことを言う自分にもまた失望するかもしれない。

 気付けば俯いていた首。それを左右に振る。

「それじゃぁ」

 アヤの声。

「ちょっと意地悪するねユキたん?」

 そう言ってから彼女はそっとミユキの腰に手を回して抱き締めた。

 アヤの温かさ、柔らかさが伝わってくる。そして甘い匂い。

 黙って身を預けているミユキに、アヤは耳元へ口を寄せてそっと呟いた。


「どうしてミユキは自分を拒絶するの?」


 その言葉にミユキはショックを受けた。でもその理由は分らなかった。


”自分を……拒絶?”


 片方の手がミユキの髪をそっと撫でる。

「ユキたんは生まれながらにして強くないのと同じで、ユキたんは生まれながらにして生徒会長でないのと同じで……」

 そしてアヤは静かに告げた。


「ユキたんは生まれながらにして”園田美雪”でもないじゃない?」


 理由は分らない。でもなぜか自分の中にあったツカエに触れた気がした。

「私が、私じゃない?」

 アヤはミユキの声からやや不安の色が褪せたのを確認すると

「うん。そうだよ」

 優しく耳元で呟いてから手を解いて一歩離れる。そしてその表情は相変わらずニコニコとしていた。

「え~っとあの言葉を言い換えればね」

 アヤはまた口元に人差し指を当て

「”ユキたんは園田美雪として生まれては来ない。それゆえ園田美雪であろうとしなくてはならない”でいいのかな?」

 空を見上げながら自分の言ったことを確認するよう頷いていた。

「私が、私であろうとしなくてはならない?」

 ミユキはアヤの言った言葉を確認するように聞きなおす。

「うん。そうだよ。だって生まれた瞬間いきなり”今のユキたん”ってわけないでしょ?」

 何が言いたいのかむしろ分らなくなって腕組みする。それに彼女は

「なんだかややこしいけどさ、分りやすく言うと簡単な”2文字”に置き換えられるんだよ」

 そう言って指を二本立てた。

 ミユキは先を促がすのではなく純粋に分らなくて小首を傾げる。

 それにアヤは

「”成長”よ」

 そう答えた。

「成長……」

 ミユキの呟きに頷いてから

「うん。ユキたんは生まれたときからユキたんなんじゃなくて、赤ちゃんとして生まれて来て成長して今のユキたんになったんでしょ?」

 当たり前のことだ。でもアヤはこうやっていつも自分の疑問に分りやすく答えてくれた。だからこの当たり前の例えが嬉しかった。

「だからそれと同じで、今のユキたんだって園田美雪という人間になろうと成長してる最中よね」

 同意を求められ、頷く。それにアヤは笑顔を返す。

「成長ってさ」

 彼女はさらに続ける。

「子供は”大人”の”マネ”をして成長して、少しずつ”大人”へとなっていくものでしょ?」

 アヤは手を後で組みながらミユキに問いかける。

「だからユキたんは理想の演技(マネ)をして成長して、少しずつ理想になったら良いじゃない?」

「……」

 理想を演じて理想へと成長する。自分があの言葉に抱いていた希望だった。でも

「私はそれを信じて演じて来たんだ。成長できるって。でもそこにあったのは違和感と隔たりだけで、本来の自分とは……」

 今度はアヤが首を横に振って否定した。

「さっきユキたんは理想とのギャップを感じて苦しんでるって言ったけど、きっとそうじゃないと思うな」

 その言葉は推測の形をとりながらも断定的だった。

「ギャップに苦しむのはいつだってそれを埋めている時でしょ? 例えるなら崖ね」

「崖?」

「うん。いくら崖が急斜面でも下から眺めているだけじゃ苦しくもなんともない。その急斜面が苦しく感じられるのは」

 アヤはミユキの目を見ながら頷いて

「上ってるときだけよ。つまりね」

 ミユキもまたアヤの目を真正面から見る。

「ユキたんが理想とのギャップに苦しんでるのはさ。その差を埋めて成長してる最中(サナカ)だってことの証拠じゃないかな?」

 崖のギャップが苦しく感じられるのはそこを上って近付いている証。つまり自分が苦しんでいるのは理想へと近付いている証。

 親友はそういうことを言っているらしい。

「それにね」

 さらに続ける。

「”本来の自分”との差が鮮明になったって言ったけど。恥ずかしがりのユキたんが”本来の自分”で、クールで堂々としたユキたんが”本来の自分ではない”って言い切れるのはどうして? 逆かも知れないのに?」

 新しい答えの次に新しい問いかけ。本当の自分はどっちなのか。

「アタシは両方ともユキたんだと思うよ」

 アヤは二つとも自分だと答えた。

「だからその苦しさは、今まで気付かなかった新しい自分を発見したことへの戸惑いじゃないかな? あるいは……ん~」

 どう表現したら良いかなと腕を組んで親友が唸る。

「……心の成長痛……とか?」

 成長痛、それはかつて成長期に起きる身体の急激な変化に伴って起きる痛みされていた症状。アヤはそれに”心”という言葉を添えている。

 自分は恥ずかしがり、内気なものと決め付けていないかと逆に問われた。今の苦しみは隔たりを克服して成長している証だと言われた。

 さらには理想だと思い込んでいたことさえ、それが本来の自分かも知れないと言われた。それじゃぁ

「私はいったいどんなヤツなんだろう」

 不安ではなく純粋な疑問からその言葉が口から漏れた。

「もちろん園田美雪よ。園田美雪は園田美雪以外なにものでもない」

 アヤが即答する。

「でもその園田美雪は内気か? 活発か? って決め付けるのは少しおかしいかな。園田美雪はそんな一言で片付けられるほど簡単なものじゃないもの」

 もしアヤの言葉が本当で。自分の目指そうとしているものが演技(ウソ)ではなく、むしろもともと自分の中にあったものだったら?

 なれないから苦しんでいるのではなくそれにただ戸惑っているだけなら? 近付いているからこそ苦しんでいるのなら?

「それから、そうやって悩んでるのももちろん園田美雪100%よ?」

 今こうして悩んでいる瞬間でさえ100%自分自身だと親友は言った。なんだ。それじゃぁ……。

 ミユキがアヤの目をもう一度見ると、アヤは大きく頷いて

「ユキたんは少しも演技(ウソ)なんかついてないよ?」

 その言葉で自分の中の何かが吹っ切れた。自分は何をしていようと自分以外何者でもない。もっと言えば自分以外のもの、園田美雪にはなり得ない。

「逆に言えば、むしろ私は私以外にはなれないのか」

「何だかネガティブな言い方ねユキたん」

 それでもミユキの表情は明るかったから、そこでアヤは心の底から笑顔になることが出来た。

「でも本当にすごいよねユキたん」

 予想外の一言にミユキはキョトンとなる。

「アタシもね。似たようなことで悩んでたんだ実は」

 これも意想外の一言だった。”アヤが悩んでいた”

 アヤは頭をポリポリと掻きながら

「アタシもよくね。本当の自分て何なんだろうって悩んでたの」

 それからニコニコとしながら

「マジメに授業受けてる自分? 可愛い子にモエモエやってる自分? 演劇に鼻息荒くしてる自分? コタツでネコに話しかけてる自分? ルーチェ行けなくてウジウジしてる自分?」

 ミユキは溜息を吐いて

「全部アヤだろそれ」

 答えると

「そ。全部アタシだよ。ミユキがさっき丁寧に教えてくれたもの」

「え」

 ミユキはまたキョトンとなる。その様子にクスリと笑って

「アタシがさ。演劇始めたのも本当の自分を探すためだったんだ」

「本当の自分を探すため?」

 アヤは頷いてから

「自分のうちにあるものを出し切って。その中で最高にカッコ良くてモエモエするものを選んでアタシにしようと思ってたの。でもそうじゃなかったんだ」

 今度はミユキが頷いて

「全部、アヤだったんだろ?」

 ミユキが小首を傾げるとアヤは笑って答えた。

「アタシはそれを何年も悩んでたのに、ミユキはたったの半年で問題を整理して答えまで教えてくれるんだもん。ほんとすごいよ」

「いや。答えたのはアヤの方じゃないか。私はただ悩みを打ち明けただけだ」

 アヤは首を横に小さく振ってやんわりと否定した。

「だけどね、今アタシが言ったことにすっごい足りない部分というかさ、ある意味ダメなとこがあったの」

「何だそれは?」

 それにアヤはまた首を左右に振る。

「秘密よ。これはユキたんが自分で見つけないと」

「いやそこまで言っておいて」

「へへ。意地悪するって言ったでしょ?」

 そうしてニコニコとしているアヤにミユキは二度三度頷いてから

「ルーチェのクリスマス特別チケットを一枚預かってるんだがさて誰に回したものだろうか」

「洗いざらいお話します」 

 なるほどアヤはアヤ以外何者でもないと。ミユキが確信を一人深めていると

「それはね。成長して自分を理想に近づけるのはすごく良いことだと思う。可愛く言うと”大好きな自分になる”っていうところかしら? でもね」

 恐らくアヤが言いたいのは次のことだろう。

「その過程で生まれたり、見つけたりする”ダメな自分”、”格好悪い自分”、”情けない自分”も拒絶せずに認めてあげてねって」

 気弱な自分も理想の自分も、全て含めて自分、園田美雪。

 アヤがいった”自分を拒絶しないで”というのは”新しい自分に戸惑わないで”という意味だけでなく”ダメな自分も認めてあげて”そういう意味もあるようだ。

「人前に立つことが苦手なのもユキたんなら、ああやって皆の憧れの的になってるカッコイイのもユキたん、園田美雪の一部だから。ね?」

 アヤが伺うように首を傾げた。ミユキが頷いてそれに答えると

「まー”理想”は高くっていうけど!」

 アヤは”ん~”と背伸びして

「新しいユキたんはハイスペックというかチートというかある種中2病的な部分もあるからそうね~」

 青空を見上げた。それにミユキは腕組みして

「さりげに私をばかにしてたりしないか?」

「命名します!!」

 突然大きな声を出されてミユキは思わずビクっとなった。

 間髪入れずにアヤはミユキにビシっと指差して

「”史上最強の生徒会長”園田美雪!!」

 ミユキは目をパチクリとさせて

「史上最強の生徒会長?」

 オウム返しにすればアヤは”うん”と頷いて

「そういうのになっちゃえば?」

 アヤが珍しくメガネを外して微笑んだ。その笑顔が愛らしくてつられて笑ってしまう。

「史上最強なんてあっさり言わないで欲しいな」

 私は私から逃げることは出来ない。だから何をしていても私以外にはなりえない。

 つまり自分を見失ってしまったと悩んでいるその瞬間でさえ私なのだ。

 そして私が演じてきた理想さえも、実は私だった。そして今それに、親友から名前が与えられた。

「史上最強の生徒会長、か」

 そして私はまだ痛みを伴いながらも成長している。

 けど私はこのままで良い。ダメな自分も格好悪い自分も全部認めた上で、私は理想の私にもなる。

 そういうことが出来ると知ったならもう迷わない。

「あ、そういえば」

 アヤが何か思い出したようでポンと手を打った。

「ユキたんとうとう部活入るって聞いたけど。なにやるの?」

 問われるとミユキはしばらく悩むように腕を組んでから

「廃部寸前の柔道部かな?」

「あちゃー。またえらいとこ選んだわね。あそこうちでも相当変な先生いるって話よ」

「紅枝先生よりもか?」

「同レベルかも」

「それは楽しみだなフフフ」

「お、調子戻ってきたじゃない会長!」

「ああ。お陰様で。よし、そろそろ教室戻ろうか」


 -後書きにオマケ-

 


新・桜咲くここは桜花学園


第0話:それゆけ桃太郎


キョウ「今日はそれゆけ桃太郎のお話をしようと思うが異論はないな?」

ヒロシ「異論はあるし”何で桃太郎なんだよ”だし””それゆけ”はいらねーだろ”だな」

キョウ「文句多いなお前でかいのは体格だけにしておけとあれほど言っただろシロクマ」

ヒロシ「いやお前何が嬉しくて男二人が放課後の校舎で昔話なんぞしないとダメなんだよ。そこで俺がノリノリで賛成したらお前ヒクだろ?」

キョウ「それはお前の思い込みだ試しもせずに決め付けるな。レッツトライ」

ヒロシ「よしそれじゃ……うおマジでー!? やろうぜやろうぜ昔話最高だよ流石キョウっぱねーな!」

キョウ「バカだろお前?」

ヒロシ「ころすぞお前」

キョウ「ところでヒロシよ。最近は親子間の絆が希薄になってる家族が多いと思わないか?」

ヒロシ「急にマジな話題だな。まぁN○Kのドキュメンタリーとかでたまにそういうの見るよな。自室に篭って出てこない息子とか」

キョウ「仕事帰りのお父さんを誰も迎えてくれないとかな」

ヒロシ「強制するもんでもないけど親父にとったら寂しいかもな。そういうの」

キョウ「うむ。しかし自室に篭って出てこない息子に関してはママンとかが”ヒロシちゃんゴハンよ”とタイムリーに戸を開けてしまうと後々気まずいことになる可能性もあるからそっとしてあげたいな」

ヒロシ「うん。まぁ、思春期の子なら特にな」

キョウ「そこで桃太郎なわけだ」

ヒロシ「繋がんねーよ!! なんでそこで鬼退治の話になるんだよ”そこで”の使い方間違ってるだろ!」

キョウ「いちいちうるさいな黙って聞いとけ」


キョウ「昔々あるところに。お爺さんとお爺さんが住んでいました」

ヒロシ「おいいきなりおかしいだろ何でお爺さんがダブルになってんだよ」

キョウ「なんだお前ツインババーの方が良いのか?」

ヒロシ「どっちも嫌だよ! 普通にお爺さんとお婆さんにしとけよ!」

キョウ「まぁ待てここからが面白いところなんだから」

ヒロシ「まだ面白い展開なっちゃダメだろ! クライマックス早過ぎだろ!」

キョウ「お爺さんは山へ芝刈りに。お爺さんは川へ洗濯にいきました」

ヒロシ「どっちがどっちのお爺さんだよ」

キョウ「いちいちうるさいなお前分ったよ。ジジイαは山へ芝刈りに。ジジイ2は川へ洗濯に行きました」

ヒロシ「ネーミングも適当なら統一性もねーな。なんでαと2なんだよ」

キョウ「ジジイ2が川で洗濯をしていると、川上の方からドンブラコドンブラコと」

ヒロシ「大きな桃が」

キョウ「ジジイ1が流れてきました」

ヒロシ「なんてもの流してんだよバチ当たり! 後味悪いわ! つかまたジジイ登場かよ!」

キョウ「これでお揃いな訳だ。ジジイ1とジジイ2。計画通り」

ヒロシ「何を狙った(ハカリゴト)だよ! ていうかむしろ必要なのお婆さんの方だろ!」

キョウ「二人はさっそく拾った桃を持って帰ることにしました」

ヒロシ「ちょっと待て! 桃いつゲットしたんだよ!」

キョウ「いちいちうるさいなヒグマめ。拾ったって言ってるんだからどっかで拾ったんだろ。たぶん」

ヒロシ「話投げヤリ過ぎだろ! ていうか何で語り手のお前が”たぶん”て微妙に自信ないんだよ!」

キョウ「そして生まれました」

ヒロシ「ハショリ過ぎだろ! あらすじよりひどいだろ!  桃が割れて桃太郎出るとこまで描写しろよ!」

キョウ「

 ジジイβ「おぎゃー」

    」

ヒロシ「生まれたのジジイかよ! 無計画に年寄り増やし過ぎだろ!」

キョウ「そこにはまさに高齢化社会の縮図が……」

ヒロシ「あってたまるか! そんなものが桃に込められててたまるか!」

キョウ「なんだやっぱりババア4とかの方が良かったか?」

ヒロシ「よくねーよ! 今更お婆さん出てきても取り扱い困るだろ! しかも4とか言われたら1,2,3出て来そうで話の雲行き怪しいわ!」

キョウ「イヌ、サル、キジ。なんだピッタリ数が合うじゃないか」

ヒロシ「鬼退治4人の年寄りで行くのかよ! 鬼が島辿り着くまで何回休憩いるんだよ!」

キョウ「温泉旅行」

ヒロシ「いかねーよ!」

キョウ「冗談だ。桃から生まれた桃太郎は一杯食べれば一杯分、二杯食べれば二杯分大きくなりました」

ヒロシ「すくすく育つわけだ」

キョウ「横に」

ヒロシ「メタボかよ! 縦に成長しろよ!」

キョウ「やがて成長した桃太郎はたびたび村を襲う鬼を退治すべく鬼が島に向かう決心をしました」

ヒロシ「一応村に住んでたんだ。他に登場キャラいないから分らなかった」

キョウ「まだ年寄り足りてないか?」

ヒロシ「過剰供給だよ! つか他の選択肢なしかよ!」

キョウ「そしてとうとう出発の日になりました」

ヒロシ「早いな」

キョウ「桃太郎は背中に”日本一”の旗をさし、腰にキビ団子の袋をつけ、そして鬼を退治するための……」

ヒロシ「武器だよな」

キョウ「糖尿のクスリを用意しました」

ヒロシ「刀どうした!? つーかやっぱりジジイか桃太郎は!」

キョウ「言い忘れたがジジイ1は薬剤師でした」

ヒロシ「とってつけんな! その設定無駄過ぎるだろ!」

キョウ「さらに言うとジジイαはレントゲン技師でした」

ヒロシ「さらに無駄な設定だろ! この時代何を撮影するんだよ!」

キョウ「旅の道中。鬼が島に向かって走っている桃太郎、その前に元気良く飛び出してきた犬が”桃太郎さん桃太郎さん。お腰につけたキビ団子”

ヒロシ「”ひとつ私にくださいな”だよな」

キョウ「ブレーキが間に合わずハネ飛ばしてしまいました」

ヒロシ「車乗ってんじゃねーよ!! 歩いていけよ!!」

キョウ「いや信号守らんイヌが悪いだろ」

ヒロシ「いったいいつの時代だよ! レントゲン技師のジジイ2とか!」

キョウ「ジジイαだ」

ヒロシ「どうでもええわ!」

キョウ「そうしてついに鬼が島に辿り着いた桃太郎!」

ヒロシ「サルとキジどうした!?」

キョウ「ハネた」

ヒロシ「だから歩けよ!! 今一押しで悪党だろ主人公!」

キョウ「とにかく鬼が島へ辿り着いた桃太郎は10式戦車から降りて」

ヒロシ「装甲車両に乗ってたのかよ!! しかも2010年配備予定のやつじゃねーか!!」

キョウ「

 桃太郎「なんだ”本日休園”か。早く帰ってネトゲしよ」

 」

ヒロシ「この主人公ダメ過ぎだろ!」

キョウ「つまりここに家族間が希薄になると言うテーマ……」

ヒロシ「以前の問題がありすぎだ!」


-FIN-



明けましておめでとうございます無一文です^^

え~っと今回何も笑える展開なかったので

後書きで久しぶりに桜花学園のバカノリを用意致しました。

続編はレッツゴー浦島さんを予定してます(え)


さて笑いのない今回のお話ですが、

私が作品を通じて伝えたかったテーマを出来るだけ込めてみました。

一言で言うと

「自分って何なんだろう」

という哲学っぽい問題に対する私なりの答えです^^


今ルートは全体を通じてヒロインが4通りの変化をしてきました。


1:出だしは従来の無敵ユキたん。

2:中盤はいろいろと追い詰められる弱弱しいユキたん(演技でしたが)

3:過去編は心を閉ざしていた孤独なユキたん

4:終盤はネタばらしをする詐欺師ユキたん(ひどい)


いったいどれが本物なのか、答えはどれも本物の園田美雪だと思います。

例え演技であってもそれは自分の内から出たものにかわりありません^^


さて後残すところは事件の解決とエピローグになりますが

エピローグではきっと5通り目のユキたんをお目にかけることになると思います。

一般にそれは”素顔”と呼ばれるものです(え)

それではこの辺りで^^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ