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ルートミユキ1の3:親友

 大阪聖女学院、放課後。中学一年生の園田美雪は今日も一人、教室の片隅で窓の外を眺めていた。

 視線の先には茜色に染まったグランドが広がっているのだが、そこで行われているサッカーやソフトボールを見ている訳ではない。ただ眺めているフリをして

”一緒に帰りましょ”

 とか

”帰りどこかに寄ってかない?”

 とワイワイガヤガヤとしているクラスメイト達を拒絶しているのだ。

 誘いが来たことはほとんど無い。だから誰かに声をかけられたら煩わしいとか、どうやって断ろうかとか、そういう心配じゃなかった。

 ただとにかく心の中で太い線を引いているのだ。内と外、私とそれ以外を明確に区別する線をだ。


 最初の頃はこうしてそっぽむいている自分に

”わざとそうやって気を引こうとしてるのかな”

 とか

”ここで私がこの子に声かけたら皆に優しさをアピールできるかも”

 という具合にクラスメイトが呼びかけて来ることもあった。

 でもそういう誘いに対して素っ気無さに加えて悪意まで込めて返事をしているうちに、パッタリと止んだのだ。


 自分を除く最後の一人が教室を出て、後ろ手に扉を”ピシャっ”と強く閉めた。最近はこうしてクラスメイトも自分へ”拒絶”の意思を返してくれるようになった。

 やがて話し声も足音も消え、静寂が訪れる。時計が秒針を刻む音だけが聞こえる。

 一人になれたことを知るとミユキはようやく”ハァ”と息を吐いた。自分では安堵の溜息のつもりだった。

「……つまらないな。学校(ココ)

 窓ガラスに映った自分へ呟く。

 つまらないなら行かなければ良いのに。どうしてこんな所に毎日顔を出してるんだろう。

 義務教育? 最低限の世間体? 親からの言いつけ? きっと違う。たぶんその理由は……


”ガラ”っと扉の開く音。


 この懲りない……


「あ~。今日もやっぱりいた」

 

 メガネを掛けた能天気な……


”パタパタ”とかけて来る足音。


 ”友達”ではない誰かと会うためのような気もする。


「今日も美少女が窓際で黄昏てる~っと。絵になるね」

 自分の机の前に来て一方的に話してかけてくるメガネの女の子。名前はまだ知らない。

「あ~あ、全く何やってるのよ男の子達は。こんな子ほったらかしにして。ねぇ?」

 子犬みたいな懐っこさで覗き込んできた。何が”ねぇ?”なのだろう。

「女子校」

「え?」

 聞き返してきた。

「女子校だここは。だから男なんているわけないだろ。バカなのか?」

 悪意を込めて流し目する。すると彼女は人差し指を頭に当てて”ん~”と唸り

「こう毎日語尾にバカバカって付けられたらアタシって本当にバカじゃないのかなって悩みそうになるんだけど」

 事実バカだと思う。いったい何が楽しくて毎日欠かさず”こんなヤツ”に会いに来てるんだ。

「今日は何の用だ?」

 腕組みして睨みつける。相変わらず私の態度は最悪だ。けど彼女はそんな視線や高圧的な言い方にも動じず

「何の用って、一緒に帰ろうよ。一人だと寂しいじゃん?」

 メガネの奥で目をニコリとさせた。余計なお世話だ。

「アタシがね~」

 と照れくさそうに頬を掻いている。ウソだ。昨日だって廊下で何人の誘いを断ってここに来てたんだ。

「ねぇ美少女」

「その呼び方止めてくれないか、いい加減」

 目を細める。入学式からずっとこの呼び方だ。

「それじゃぁさ、名前教えて?」

 両手を後ろに組んでさらに覗き込んでくる。いつものことだけど妙に距離が近くなる。

「園田だって言ったじゃないか」

 少し下る。

「それは前に聞いたわ。アタシが知りたいのは下のほうね」

 またズイと顔を近づけてくる。思わず目を逸らす。

「な、何だって良いだろ」

”クンクンクン”

 って

「何で匂いを嗅いでるんだお前は!」

「だってすごい良い匂いするんだもん」

 さらに顔を近づけてきたので”ゴチン”と額がぶつかる。

「った……。ごめんなさい」

 メガネをかけてるから眼が悪いのは分る。だからいちいちそんなことで腹を立てたりはしない。ただ

「何で離れないんだ? お前はいつも」

 そう。いつもこうやって額をつけたままなのだ。

「スキンシップよ」

 口では言わないが嫌ではない。なんとなく。

「ここからキスシーンへの分岐はありえるの?」

 何を言ってるんだこいつは。

「ふふ~。いつもぶつけてゴメンね。アタシ眼が悪くって。特に左目」

 またニコリとする。つまり謝ってない。

 しかし眼が悪いにも程があるだろうに。何度目どころか毎日だからなこのヘッドバッド。

 ていうか

「早く頭を離……」

「見えないんだ、アタシ」

”え?”

 逸らしていた目を戻す。すれば彼女は額を離してゆっくりと体を起こし、自分の小顔を指差しながら

「右目は輪郭くらい分るんだけど、左はほとんど見えないの。アタシ未熟児だったから」

 ケロっとしたまま信じられないことを打ち明けた。

「でもね、お陰でアタシ鼻はすごく良いんだから。一度覚えた匂いは忘れたことないし」

 胸を張る。その様子は強がってるように見せかけるどころか得意げだ。

 どう言葉を返せば良いのか分らない。同情するのはガラじゃないし、慰めるのも場違いだし。

 ”ごめんなさい”というのはもっと違う気がする。

 だから

「……ミユキ」

「え?」

 彼女が首を傾げた。

「ミユキだ。私の名前」

 理由は分らないけど名前を言ってみた。もう美少女と呼ばれるのも億劫だし……。

 それに彼女はガラス玉を初めて見た子供のように

「おおーミユキちゃん! 可愛い名前ね! アタシはアヤよ、加納綾!」

 はしゃいだ。すごく。何だろう。無性にくすぐったい。

「それから将来の夢はハリウッド女優! 英語は嫌いだけど!」

 そして”よろしく”の握手が勢い良く伸ばされて来た。また目測を誤ってそれが”ビシ”っとチョップになる。

「あぁ、ごめんね! 私目が悪いから」

 アヤは”ハワワ”と慌てて手を引っ込めた。何となくこれ以上目の話題はしたくない。

「その一人ツッコミには突っ込んでいいのか、加納?」

 自分なりに軽く流そうと機転を利かせたつもりだ。

「へ?」

 キョトンだ。こういうリアクションされると、やった後でガラにもないことしたと赤面してしまう。

「もう水臭いわね。アタシのことはアヤで良いわ」

 気にしていた左目でウィンクしてくれた。胸を撫で下ろす。”ホっ”と吐いた今のこれが安堵の溜息なんだろうか。

 よく分からないけど笑ってしまう。何だろう。アヤには”線”を引かなくても良い気がする。というか引くのがバカらしいのかも知れない。

「実は私も目が……」

 言ってみようか? いやもう言いかけてるし。でもやっぱり言おうとすると息が……詰まる。苦しくなる。

「目が悪いの? もしかしてコンタクト?」

 違う。俯いて首を左右に振る。

 幼い頃のトラウマがフラッシュバックする。嫌な汗が出そうになる。

「えっと……どうしたの?」

 心配そうに覗き込んでくるアヤ。鼓動がまた早く……。

「何かアタシまずいこと言ったかな。ごめんなさい」

 違う。そうじゃない。首をまた左右に振る。オズオズとしているアヤ。

「その……私は」

 言おう。いつかこれが原因で二人が崩れてしまうなら、早いうちが良いのかも知れない。

「目が、瞳が赤くなるんだ。怒ると」

 俯いたまま打ち明けた。アヤは何も言わなかった。静かだ。また秒針の刻む音が聞こえる。

 しばらくの沈黙の後。

「ミユキちゃん……」

 アヤは呟いた。次の一言はやっぱりまた


”鬼子”


なのだろうか。やっぱり私の”線”が深く濃くなるのだろうか。

「かっこいい……」

 ”え?”と顔をあげるとアヤはさらに目を輝かせていた。

「いいないいなぁ! アタシも欲しかったそんな素敵な瞳!」

 ”素敵な瞳?”

「うー! 神様って不公平だよね! 人に二物は与えずとか言いながらなによこれ!」

 ”二物?”

「髪は綺麗だし頭は良いし可愛いし! おまけにそんな宝石みたいな目までプレゼントするなんて!」

 顔から火が出そうになる。

「ほ、宝石? プレゼント?」

「そうよ! ずるいわよもう!」

 ”ずるい?”パニックになりそうだった。自分のコンプレックスを羨ましがる珍獣に出会ったのだから。

「あ! そうだそうだ!」

 突然また顔を寄せてきたのでビクっとなる。

「で、目は良いの悪いの?」

 そういえば話の流れはそうだったかな。

「……視力は両方とも15だ」

「1.5?」

 首を傾げるアヤ。

「いや、じゅうご……」

「フィフティーン?」

 さらに首を傾げるアヤ。

「あ、ああ」

「チートじゃないチート!」

 ”ち、チート?”

「あーん!!」

 どうしよう珍獣が泣きだした。本気で。静かな教室でワンワン泣いてるどうしよう。

 机に突っ伏している彼女に向かって

「そ、その悪かったなアヤ。すまない」

 何が悪いのか分からないけどとりあえず謝る。自分の妹をあやすようにその頭を撫でる。

「泣かないで欲しいんだ。な? 頼む」

 むしろ泣きたいのはこっちのような気もする。

「泣いてないよ?」

 伏せていた顔をあげるとその表情はケロっとしていた。泣きやんだのではなく涙のあとすらない。

「ふふふふ」

 というか笑ってる。恐らくすごい間抜けな顔してるだろう自分に向かって、アヤは笑顔のまま

「ミユキちゃんのばーか」

 耳を疑った。さっきまで泣いてたと思ったら実はウソ泣きで今は笑顔で唐突にこのセリフ……

「ばーかばーか」

 いろいろとついていけない。

「ぶわーかー!!」

 でもここまで言われると腹が立つ! 勢いよく席を立って 

「泣いたかと思えばいきなり人に対して」

「今怒ってないでしょミユキちゃん?」

 教科書を丸めて振りおろそうとしていた自分に、アヤはまた訳の分からないことを言った。

 私は腕組みして  

「いいや。カンカンに怒ってるぞアヤ」

 本人である私がそう言ったのに、アヤはそれ以上の自信があるかのように大きくブンブンと首を左右に振った。

「だって、今のミユキちゃんの目、赤くないもん!」

 ”ビシ”っと指摘するように指差してきた。やっぱりこいつは珍獣だ。間違いない。だって

「本気でそう思ってるのか? 私の目が怒ると赤くなるって?」

 少しは疑うだろ。それでも彼女は

「えー!?!? ミユキちゃんウソついたの!?」

 机に両手をついて身を乗り出してきたので

「い、いや。本当だ。本当に赤くなる」

 妙なインパクトを感じて少し後ずさってしまった。

「でしょ? もう驚かさないでよ」

 驚くところがズレ過ぎだ。普通はそんなこと言われたら”この子頭おかしいんじゃないの”って疑うだろ。

 なのに

「どうしてそう簡単に私の言うことが信じられるんだ?」

 腕組みしてみる。

 するとアヤはさも当然というように

「だって友達の言うことじゃない?」


 ”友達”


 私の心に刺さった言葉。でもその感触に痛みは無い。

「それに」

 とアヤはまた両手を後ろで組んで

「ミユキちゃんの方が先にさ、アタシの目が悪いって言うこと信じてくれたじゃない?」 

 ……。返す言葉が見つからない。何に突っ込めば良いんだ私。

 沈黙していると

「でしょ? ミユキちゃん」

 念を押された。

「……ミユキで構わない」

 自分から握手の手を伸ばした。たぶんこいうことしたのは初めてだ。ちょっと自分が信じられない。

「うん、分った」

 そっと握るアヤ。出した手をあまりに自然に握られたから少し悔しい、でも嬉しい妙な気持ち。

 アヤは今まで一番可愛らしい笑顔で

「こちらこそよろしくねユキたん」

「そこは普通ミユキだろ?」

 この頃からアヤのほうが一枚上手だった。


……。


「またえらく懐かしい話を持ってきたわねユキたん」 

「ああ。なんとなく思い出したんだ」

 夏とは言え早朝の桜花学園の屋上は風が強く、涼しい。朝礼を終えた二人は手すりの前で朝の日差しを浴びていた。

「昔はニヒル&ロンリーウルフだったユキたんが今では男女問わず超絶人気を誇る生徒会長なんだもんね~」

 強めの風にスカートを抑えながらアヤが呟く。

「お姉ちゃん嬉しいけど寂しくもあってちょっち複雑」

 そして手すりにクタっとなった。

「何を訳の分らないこと言ってるんだ」

 彼女の頭を隣のミユキがポンポンと撫でる。

「なったからって私が一度でもアヤに冷たくしたことがあったか?」

「ないですぅ」

 ミユキの問いかけに口を尖らせる。つまり”あった”んだろうな。”ん~”とミユキは考え込む。

「最近、後宮君とはどうなの?」

「え?」

 と顔を向けたミユキに、アヤは目だけを向けて

「あれだけ毎日遊びに行って、喫茶(ルーチェ)にも誘ったんだから何かしら手応えあったでしょ?」

 言いつつも”う~”と気だるそうだ。これはアヤなりの気遣いだと知っている。

 答えにくければその気だるさに突っ込めばいいし、答えられるなら素直に返答すれば良いのだ。

 ミユキはアヤの柔らかな髪を解かすように撫でながら

「いつになくネガティブだなアヤ。どうしたんだ?」

 と体調の方を問いかけた。つまり答えにくいのだろう。アヤはそれにクスリと笑ってから

「早い話が乙女週間よ」

「……」

「ごめんウソです」

「これは良い子の小説だからな?」

「それで………」

 アヤはゆっくりと身体を起こして

「アタシに打ち明けたいことって?」 

 ミユキの目を見た。


「いつも姉さんばっかりだからたまには私のクッキーも食べて欲しいな」

 いよいよ京太郎君のターンだと思ったら出だしからなかなかの修羅場ですね。ネタのためなら俺を生贄に差し出すこと七面鳥の如し、っていい加減にしろお前。

 昼休み、教室。いつものポジションでポニーテールの女神様こと美月ちゃんが赤面しつつも水玉模様の包みを京太郎君に差し出すの図、が展開されている。

 クラスメイト諸君は

”なんでいつもお前ばっかり良い目みてんだよ!”

 みたいなドス黒いオーラを発してるわけですがこれ本当に天に召される可能性孕んでるからね。

 俺はクールな笑顔で

「ときにマリサ嬢。ここ1週間俺がミユキ先輩や美月ちゃんのクッキーを独占しているというこの現状はいかに?」

 意訳すれば”助けてマリサ様!”

 まさに魂の叫び。隣のツインテールは100万ドルの笑顔で

「極めて順調ですわね」

 直訳で”しね”と仰る。覚えてるといいよこの貧乳妖怪。何も出来ないけど。

”キュキュキュキュキュ”

 というマジックをスピーディーに走らせる音に目をやれば窓際に座っているミキちゃんが既にスケッチブックを俺にむけてオープンしていた。


”その中の一つがミユキ従姉の手作りクッキー”


 ほほう。地雷の中に核地雷が一つ含まれていると。ふむふむ。


「ねぇ美月ちゃんそれ全部美月ちゃんの手作り?」

「んんん実は私のは一個だけで後は全部姉さんの手作り」


 ほほう。核地雷の中に地雷が一つ含まれていると。ふむふむ。


 話違うやん。


 俺は極めてクールな笑顔で再びマリサの方を向いて

「ときにマリサ嬢。今の美月嬢のコメントに対して何か一言」

「べつに」

 そのネタもう古いんだよ!

「いや冗談抜きで京太郎君の人生が終了する前に手助けすると良いよ」

 余裕の発言をしているが目に涙。マリサはそれに腕組みして

「あらー? それなら貴方の最愛のヨードーちゃんに助けてもらったら?」

 コバルトブルーの瞳を流し目。

 あの一件以来マリサも美月ちゃんも意図的に俺を三途の川へ追いやろうとしてないだろうか。

 例えば美月ちゃんは自作のクッキーの危険性は認識していないのだがお姉様作のクッキーの危険性は十分理解しているはずだ。

 なのに

「京君は姉さんのクッキーが好きなんでしょ? あ、やっぱり”あーん”て食べさせて欲しいの?」

 何だろうかこの仕打ち。笑顔はトビキリなんだけど。

 美月ちゃんは俺の返答を待たずにその一つを摘んで……。


”ガラッ”という教室の扉の開く音。

「あ、園田先輩こんにちわ。今日は加納先輩も一緒なんですね」

「ああ。元気そうだな八雲。ところで京太郎はいるか?」

「京太郎さんなら先ほど食後のデザート食べた後に”ふふふこの川の向こうにはユートピアが広がっていること間違いなし!”とか白目をムきはじめましたので保健室に搬送しておきました」

「ん~。そうか、体調管理も自己責任だぞ全く。ん? どうしたんだアヤ。私の顔に何かついてるか?」

「んんん。これはこれで良いのかしらねって」

「何の話だ?」

「ユキたんは良いの。ね? 美月ちゃん」

「……ええ、そうですね。このままで」

「何だ? 私にも教えてくれ美月」

「姉さんは良いのよ」


……。


 蘇生。目を開けると白い天井。つまりベッドの上。

”キーンコーンカーンコーン”

 いつもの音。どうやら今日も昼休みを保健室(ココ)で全消費したらしい。ああ頭痛が……

「やっとお目覚めか?」

 声のする方向に頭をズリっと動かせばミユキ先輩が椅子に腰掛けて本を読んでいた。

 パタンと閉じてから立ち上がり

「その年で貧血で倒れてどうするんだ京太郎」

 溜息のお姉様。

「もし不摂生に何か心当たりがあるなら、さっさと改めることだな」

 腕組みのお姉様。言えない。誰のせいかだなんで言えない。

「とにかくあまり心配かけるなよ。ほら、さっさと授業に戻るぞ」

 ”起きろ”と掛け布団をひっぺがすミユキ先輩。やれやれ。

 よっこらせと身を起こしつつも

「俺のこと心配してくれてたんですね先輩」

 ちょっとからかってみる。それにミユキ先輩は呆れたように

「当たり前だろ。後輩が倒れたら心配するのが当然じゃないか」

 通じないんだよなこの人……。


 部活終了後。食堂前の下り坂。

「今日はとっても楽しかったです~!」

 とミユキ先輩に甘えっ子全開に抱きついてるのは久しぶりに部活に参加したミィちゃんだ。

「ん~可愛いなミヤコ。今晩はお前がメインディッシュだからな」

 キュンキュンしながらミィちゃんの頭を撫でてるお姉様。気のせいか最近セリフが際どくなってきた。

 今はこんな風にいつものノリで過ごしてるけど、部活でミユキ先輩があの秘密をミィちゃんに打ち明けた時はかなり深刻な表情だった。

 内容はもうご存知の通りあの脅迫状についてだ。今まで皆が知ってたのは名前が書いてあるだけの方だったけど、今日知らせたのは最初に貰った一通の方。

 つまりミユキ先輩のお師匠様って人が”注意しろ”という名目で送って来たものの方だ。

 かなり重苦しい雰囲気でミユキ先輩は聞かせたのだが、それに対するミィちゃんの反応は俺の予想通り、そしてお姉様の予想外というところだろうか。

 どんな感じだったかなんて言うのも蛇足なくらいだ。そんなことは今目の前で繰り広げられているともすればGLになりかねない姉妹愛カッコハテナな展開が全てを物語っているだろう。

 さすがの京太郎君も溜息で

「ほんっとに仲良いですねお二方」

 と漏らすのが精一杯だった。

 無論、今の二人には聞こえてないんだろうけどさ。

 でもまだ、まだ気になる点があるんだよな……。

「なんだ京太郎? ヤキモチでも妬いてるのか?」

 長い髪を揺らしながら振り返るお姉様はいつもの笑顔。そしてミィちゃんをオンブしている。やれやれ。

「何言ってるんですか」

 ”ハァ”と本日数度目の溜息。

「自分の妹に嫉妬するほど俺はアブノーマルな」

「ばーか」

 ”へ?”と顔をあげればミユキ先輩が頬を膨らませてる。

 今までのミユキ先輩像からは想像もつかない子供っぽい仕草に思わず言葉を失う。

 いったいこのとき俺はどれだけ間抜けな顔をしてたんだろうか、ミユキ先輩はクスリと笑って

「なるほど。アヤに言われたあの時、私はこんな顔してたわけか」

 一人うんうんと納得してるお姉様。何の話だいったい。

 まだ呆気に取られてるとミィちゃんを背負ったままミユキ先輩がツカツカとやって来て

「お前、今怒ってないだろ!?」

 探偵が犯人を指摘するようにビシっと指差してきた。訳が分らない。

「兄さん怒ってないしょマストビー!」

 ミユキ先輩の肩口からミィちゃんも笑顔でビシっと指差す。もっと訳が分らない。

 二人は何を思ったか”ズッ”と息を吸い込んで

「 「ぶわーか!!」 」

「流石に俺怒りますよ!?」

 夕暮れの桜花学園。3人しかいないのに騒がしかった。

無一文です。こんにちわ^^

また更新が遅くなってしまいましたね。


先週はフグの美味しいところまで出張に行っておりました。

出張とは言っても学生の身分なので小旅行のようなものです。


さて今回は鼻血マスコットとして欠く事ができない(?)

アヤとの過去イベントを書いて見ました。


流れはともかく、ここでのキーワードは”線”でしょうか。

ルーチェでアヤが

”もう一線はこえたの?”

と言ってたこのセリフに関係してきます^^

詳しくは続きのエピソードということで。


そうそう。ラストに京太郎君が

”気になることがある”

と言ってたのは結構ベタな疑問です。


1:シンシアちゃんのその後。

2:お師匠様の手紙の名前表記(未通鬼、未有鬼)。

3:桃ちゃん達のお母さんが生きてたこと


です。これらは本ルートで一応納得のいく形で回収していきます。

ただ”クローディア”については他ルートになるかもしれません(え


それではこの辺で^^

引き続き史上最強の生徒会長をお楽しみ下さい(ぐふふ……と。

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