第14話:緋色の目
鈴の音は誰に向けたものだろうか。こんなにも澄んでいて、こんなにも切ない音色なのに。
行きかう人は誰も足を止めない。
耳を澄ませているのは二人だけ。夕暮れの下、通りで向かい合うで紅と白の二人だけ----
ミユキの予感は当たる。特にそれは悪ければ悪いほど当たる。だから今回のそれは予感ではなく確信と言って良かった。
たどり着くとまず目に飛び込んできたのは血痕。路面に散った真新しい血痕。そして派手に殴り合っている男が3人。
彼らは生気を無くした様に虚ろな表情だったが、その動きは今しがた喧嘩を始めたような勢いがあった。
大振りの拳を繰り出しては互いの顔面にめり込ませ、繰り出してはめり込ませる。
本来生き物が持つ怯み、竦み。そういった条件反射による防御行動が一切見られない。
ダイレクトに打撃を放ち、ダイレクトに打撃を受ける。その様はまさに異様、グロテスクだった。
ミユキは彼らの不自然さに
「幻術……」
呟いて眉をひそめた。
「えらい色気が出たなぁ未有鬼」
その声に振り返ればやや離れた通りの中央、立つというよりは浮くというような佇まいの白い着物を着た女が一人。
彼女は自身の真っ白な長い髪に櫛を通しながら真紅の瞳をミユキに向け
「背も大きなったなぁ。着こなしも上手になったし、ええ女になったやん」
薄く微笑んだ。
ミユキは真正面からその赤い視線を受け止め
「お師匠様はお変わりないですね。もう2度と会うことはないと思ってましたが、何のようですか」
言ってから左足を一歩引いて半身に構えた。
それは明らかに戦いに対する備えを表す所作だったが、女は気にした様子もなく髪を解かしている。
「お師匠様か。久しぶりに会うたいうのに、なんや余所余所しいなぁミユキは。せやけどま」
櫛を袖に収めてから目線をミユキに戻し、右耳の鈴をそっと触って”リン”と鳴らした。
直後に”ドシャ”っと湿った音を立てながらミユキの背後で3人の男が崩れる。しかしそれを見るということはしない。
女はピクリとも反応しなかったミユキに目を細め
「こうして太刀使いが二人もおって揃って丸腰か。和服に袖通してこれやとお互い画竜点睛を欠いとるなぁ」
一歩前に出た。二人の距離は5m程だ。
「私の場合はそうですが。お師匠様はどうでしょうか」
ミユキは合わせて一歩下る。それに艶っぽい笑みを浮かべ
「刃を鞘に納めてそれをなお背に隠し……」
ジリっとさらに一歩前に出る。
「間合いを悟られぬうちに首を刎ねる」
ミユキは再び下る。
「能ある鷹は爪を隠す。うちが教えたかったのはそんな猛爪の太刀遣いやけどな」
女が右手を左袖に入れる。
「牙を剥いて爪を出して手をこまねき、己が武器を晒しながら屠る相手に”下がれ消えろ”と猛る。ミユキが学んだのは優しい虎の太刀遣いや」
袖から抜いたその手には朱色の鞘に収まった鍔のない小太刀が握られていた。
それを目にしたミユキの額に汗が浮き出る。
「抜く為に隠すか、抜かぬ為に見せるか。間合いが命の抜刀を使いながら得物はこれみよがしに持ち歩く」
スラっと鞘が払われて鈍く光る刃身が姿を現わす。
「”月下美人”は月夜に咲いてこそ憐れなんや。こんな風にお日さんの下で堂々と見せられても香るもんがない」
その刃からは何かが滴り落ちていた。
しかしミユキは目線をあくまで女から外さない。
「毒刃ですか。脅迫状の”毒殺”を見てまさかとは思いましたが。あなたは本当にトウカを……自分の娘を殺めるつもりですか」
”問う”というより命令に近い強い口調だった。”やめろ”というような。
女はそれにクスリと手を口元にあて
「それはミユキの返事次第やって手紙に書いてへんかったか? 鬼姫」
「そこの怪しいメイドさん! 桃ちゃんから離れるんだ!」
俺が大きな声を出したのでサイドテールのメイドさんも小悪魔桃ちゃんも俺の方を見て目をパチクリ。周りのお客さんもシーン。
わ〜恥ずかしいこんな沈黙&シチュエーションやだ!
でも今は自分のメンツなんか気にしてる場合じゃないぞ! 今はこの関西娘の身を一番に考えないと! しかもこんなときに限ってミユキ先輩がいない! もしかしてトイレとか!?
え〜っとまず順に整理すると本日の夕暮れ、喫茶ルーチェに上納金回収マフィアが現れてでかい態度で”ギブミーマネー”し始めたらウェルカム役のメイドさんが登場。
お金渡すフリをしながら華麗なボクシングで撃沈と。
そこで俺が
”まさかのヒーロー登場!”
とかナレーション入れようと思ってたらパタパタと走ってきた桃介をいきなり
”僕のピーチ姫”
とか仰いながら抱き寄せて危険なムードを構築。キスまで迫る始末ハァハァ。
いやいや肝心なのはそこじゃなくて俺はここで
”もしやこのメイドさんが毒殺のヒットマンか!?”
と疑って叫んだわけだ。まずは大勢の視線注視注目を集めて犯行阻止!
突然ですがここで文句言いながら立ったヤツ(俺)にもスポットを当てて見ようか。
まずそいつのテーブルにはメガネ美人が瞳をハート型に変えるというベタな顔芸披露しつつ倒れており、向かいのセーラ服来た可愛い女の子(男の子)に
「やっぱりネピア持ってきて正解じゃったな。僕っ子がツボとは先輩もそろそろ末期か」
とか微妙にヒドイこと言われながら鼻ティッシュを詰められていると。
ついでテーブルには例の相思相愛紅茶が無意味かつ堂々と輝いており二股ストローもしっかりイン。
さらに良く考えれば”桃介”とかホザいてみたけどこれって俺と桃ちゃんにしか分からない単語なわけで案の定、周りの人は”誰だよそれ”ポカーンという具合だ。
よし俺の存在の方が遥かに怪しい。
”勝ったぜ”
何も嬉しくない。
いやさっきから何をわざわざテンパる方向にゴチャゴチャと脳内を掻きまわしてるかと言えばこれから取る行動の方が遥かに恥ずかしいんです。
だから準備体操なんですアップなんです。
俺は勢いそのままツカツカと二人の方へ歩み寄って桃ちゃんの手首をガシ。
「あ」
一瞬目が合ったけど激しく動揺してます桃ちゃん。頬真っ赤だしちょっと目が涙ぐんでるし。わー可愛い。
許せ桃介。いろいろと。これもお前の為……だと思う!
心の中で頭を下げつつそのままグイとこっちに引っ張る。
「え、ちょちょっと!?」
結果エイミーちゃんから離れた桃ちゃんはそのままの流れで俺の腕の中に収まりました。
「きゃ!」
オレンジボイス発生。いわゆるギュっと抱き締める格好です。ううう最高に最悪。最悪に最高。
くそー普段はオッサンみたいな雰囲気してるクセに何でこんな柔らかいんだよお前! しかもスゲー良い匂いだし! う〜クラクラする……。
いやここで止めたらただの変態だ!いやもう既に変態だ。変態だー! いきなり謎発言したかと思いきやそのままメイド喫茶の看板娘抱き寄せてるもんね! 電波男確定。
流石に今の桃ちゃんの顔を見る程俺はスパルタカスじゃないけどやることは最後までやる! いっそ変態になりきったつもりでやろう! レッツヘンタイ!
心拍高鳴りつつもポカンとなってるサイドテールのメイドさんを見て
「勝手に手を出さないくれ! こ、この俺の」
この俺の……何て言えば良いんだ!? 桃ちゃんは俺の何て言えば……。ええいクソ分らん! 破れかぶれ!
「俺の妹に!」
おお緊急時の俺にしてはなかなかグレートなチョイスだ京太郎君!
てっきり嫁とか彼女とかセフレとかホザいて自爆するかと思ってたよ! たぶん君達もそうだろ?
ハッハーたまには京太郎君だってフラグクラッシュすること……
「……ばか」
”え?”
桃ちゃんの元気ない一言に目をやれば腕の中のこの子が俯いておられます。
いやまぁとんでもない事しでかしたのは分るけど桃介にしてはなんかこう引っかかる言い方だな。
うううやばい。ダメだ桃ちゃんが可愛い。
「さっさと離れてよバカ!!」
ドンっと突き飛ばされて思わず尻餅ペッタン。
無様にお尻ついてる京太郎君なんか放置して桃ちゃんはそのまま走ってお店の外に……って、あ〜もう何かえらい嫌われてるじゃないか俺!
いや確かにセクハラめいた行動したかも知れないっていうかしたけどお客さんの視線を集めつつ桃ちゃんの身を守り、さらに弁明も出来る一石三鳥な行動とセリフって今の俺にはあれしか……
「君、京太郎君だね?」
”はい?”
っとそのまま見上げるとサイドテールのエイミーちゃんがニヤニヤと笑って俺を見下ろしています。
わ〜この子も良く見たらスゲー可愛いというか美人さん。クッキリ二重だしマツゲ長いし鼻は高いしシンシアちゃんクラスですね。
スタイルも良いしエプロンドレスも似合ってるしなるほど、ルーチェで呼びこみ任されるだけありますな、うん。
「何で俺の名前知ってるんですか?」
まずはこれが基本だろ。メイドさん品評してる場合じゃない。
で、納得出来る理由がないならこの子割と怪しいよ? 面識ないのに俺の名前知ってる一人として脅迫状の送り主がいるわけだしね?
尋ねたけどエイミーちゃん、答えてくれずひたすら一人ニヤニヤしてます。怪しい、色んな意味で。
疑惑の眼差しを向けてるとエイミーちゃんは大きく頷いて
「じゃじゃ馬クローディア初恋の人ね〜?」
「あなたはそれでも母親か!!」
ミユキの怒号は周りの空気を震撼させる程だったが、相変わらず通りを行く人間の耳にはまるで届いていないようだった。
「あなたのしたことがミキをどれだけ傷つけて。今もどれだけ苦しんでいるか」
ミユキの握り締めた拳は震え、栗色の瞳からは形となった悲しみが溢れそうになる。
「もしあの時私が間に合わなければ京太郎や京、八雲がどうなっていたか。ミキがどんな罪を背負うことになっていたか」
対峙してから一度も逸らさなかった視線を下げ、ミユキは俯いた。
女はそのあまりに無防備な姿に溜息を吐いて刀を鞘に納める。
「ま〜さすがにあの子達を襲ったのはうちも予想外やったけどね。授けた大蛇があれだけ理性を奪うもんやとは思わんかったわ。なんせ」
一度区切ってから、視線を下げたままのミユキを見据える。
「狙いはあくまでミユキとミキの共倒れやったからな」
「違う」
間髪入れずの否定。それはただ反意を表しただけだろうか。
女は黙って様子を伺う。
「あなたがミキを差し向けたのは私を殺すためでもないし、ミキを殺めさせるためでもない」
それに応じるようにミユキは顔をあげた。その頬は微かに濡れている。
「ミキを救って欲しくて、私達の元に送ったんでしょう?」
その言葉には推測よりむしろ願いが込められているようだった。
女の瞳が一瞬だけ揺れたように見えたが、すぐにまた艶のある笑みを浮かべ
「息の根を止めるのが救いって言うんやったら。マルをあげてもええ答えやな」
微かだがミユキの瞳が赤みを帯た。
それに女は目を細め
「やっぱりあんたもきっちり”鬼殺し”されてへんかったな。目が少し緋色に変わっとるで?」
ミユキは首を左右にゆっくりと振り
「可哀想です」
そう漏らした。
意味を測った女は一度目を逸らし
「鬼子とは言えミキは自分のお腹を痛めた子やからな。情や哀れみがないか言うたら……」
「いいえ。お師匠様。あなたが可哀想です」
予想外の遮られ方をして女はもう一度ミユキの目を見た。
「これは私に与えられた力、そしてミキにも与えられた力。それを毒とするのではなく薬することも出来るのに。短所ではなく長所とすることも出来るのに」
ミユキが左袖に手を入れたのを見て女は半歩左足を下げる。
「あなたは娘の一部であるそれをただひたすらに欠陥、呪い、としか捉えられなかった。そこに娘の可能性を何一つとして見出すことが出来なかった。信じることが出来なかった」
ミユキは目を閉じて再び首を左右に振った。
「私はあなたが一番可哀想です。ですが……」
その目が開かれると瞳は栗色ではなく鮮血よりもなお紅い緋色へと変わっていた。
「どうしてもミキやトウカを手に掛けるなら私はあなたを許さない」
袖から抜いた右手には朱色の鞘、童子切安綱がしっかりと握られていた。
「うちに牙を剥くその覚悟と度胸は買うたるわミユキ」
女は右手の人差し指を立て
「けどその前に一つ教えたる」
艶っぽい笑みを浮かべた。
「クローディアって?」
お客さんの前でこれ以上騒ぐ訳にもいかないのでキッチン奥へ案内してもらった俺。
そんな京太郎君が最初に訪ねたのがそれだ。
エイミーちゃんはニッコリとして
「なに独りごとだよ。忘れて」
ニっと笑ってからウィンク。あっさりだ。
でもそう言われると余計に引っかかるんだけど。
「それで本題に入るけど。僕がここでこんなスースーする格好してるのはこういう理由さ」
そう言ってドレスのポケットから取り出した手紙を人差し指と中指の間に挟んでヒラヒラとさせるメイドさん。
「この手紙はシンシアから送られて来たんだだけど、あまり良い知らせじゃなかったんだ」
なんだシンシアちゃんの知り合いかこのエイミーちゃん。それならヒットマンの可能性は疑わなくて良さ……いやいや待て。それが本当かどうかも怪しいぞ。油断禁物だ。
エイミーちゃんは手紙を広げて
「Dear Amy, long time no see…… 」
「日本語でOK」
「失敬。”親愛で愛しい私の天使エイミーたん。お久しぶりです”」
一行目から誤訳度マックスですね。
「”米国であなたがこの手紙を受け取っているなら私、シンシアはシンシアでなくなっているでしょう。そしてあの子達の命が危な……”」
「そんなことはありえない。シンシアがそんな……」
ミユキは信じられない事実を告げられて愕然とした。
愛刀を落とさなかったのが不思議なほど肩の力が弛緩する。
完全に闘気の消失したミユキの姿に女は溜息を吐いた。
「自分の目で確認せんと、連れや身内やいうだけで鵜呑みにするからそうなるんや。相変わらず甘い子や」
女は小太刀を袖に閉まってから腕組みし
「あの魔理沙って子は”マンションから即席の狙撃銃で狙われてた”とか聞いたんちゃうか?」
頭が真っ白になる。そのことはヒットマンを処理したシンシア自身。それから放課後の役員会議室で彼女から聞いたミユキと京太郎しか知らないはずだったから。
だからミユキは
「どうしてそれを……」
尋ねるのではなく無意識にその言葉が口をついた。
「やっぱりそうか。ほなあの子の負けやね。正解は”刀使いに遭って幻術にかけられた”やからな」
クスリと笑ってから女は背を向け、顔を少しだけ傾けてミユキに赤い瞳を流し
「本題に戻るけど、手紙では利恵さん、どんな殺され方になってたやろな?」
”絞殺”。ミユキはその言葉を呟きかけてハっとなった。
脳裏に真っ先に浮かんだのは真っ黒な手袋とその指の付け根に絡む髪よりも細く刃よりも鋭い線。シンシアの武器。
背筋を駆け上がるのは悪寒のように冷たい予感。つまり確信……。
「来年の話をすれば鬼は笑うらしいけど、”もう済んだ”話をしたらどうなんやろな?」
その一言にミユキの瞳孔がショックで大きく開いた。
次の瞬間に喉元に迫った小太刀の刃、今のミユキにかわせる道理はなかった。
「”……だからどうかお願いします。愛を込めて。シンシア・フリーベリ”」
そう締めくくってエイミーちゃんはパタパタと手紙を畳み、
「それからこの手紙にはこんなものが添えられていたんだ」
手紙と同じくエプロンのポケットから何かを取り出し、目の前でそれを左右に揺らした。
”チリリーン”
涼やかな音色。携帯ストラップになりそうな鈴だ。いや留め金の形からしてイヤリングだろうか。
けどこれは……。
「どうだい京太郎君。何か覚えは?」
俺は”ん〜”と腕を組んだ。もし手紙の内容が本当ならこの鈴には何か大きな手掛かりがあるはずだ。
しかし”シンシアちゃんがシンシアちゃんでなくなる”ってどういうことだろうか?
特に深読みせず文面通りに解釈するなら精神的におかしくなってたり、おかしくなりそうな人が書いたとしか思えない。申し訳ないけど。
”チリリーン”
エイミーちゃんがもう一度鈴を鳴らした。いや、何か聞き覚えがあるなこの音色。
え〜っと何だっけこの音。最近とは言わないけど2、3ヶ月くらい前に聞いたような……。
それも2回くらい聞いたような……。
”チリリーン”
そうだ確か貞光さんだ! 以前にミキさんの行方が分からなくなったとか連絡が来て警察署に寄った帰り。
その晩に初めて神主の貞光さんに出会ったその時に……。いやでも、もっと前に、もっと以前に確か……。
”チリリーン”
あったはず……だ。でもあの時は”悪い夢”だと思って、それで実際に気付けば朝になっていて俺はベッドに……。
ん〜あと一歩。あと一歩だけど思い出せない。いや、思い出そうとすると頭が痛くなって眩暈がして。胃がモヤモヤとして……。
”チリリーン”
いやダメだ思い出さないと。マジで桃ちゃんやミユキ先輩の命に関わることなんだから!
目を閉じて息を深く吸う。脳に酸素を送って思考をクリアにしてより深く記憶を検索する。
無意識的に封じていた一つの記憶、それと繋がる鈴の音がまるで釣り針のように内側からそれに食い込んで少しずつ引っ張りあげる。
頭の中でおぼろげながらも輪郭を帯びてきたそれ。あまり楽しいものじゃなさそうだけど今はワガママを言ってられない。
心を落ち着けてさぁ、真実を見てみようか京太郎君?
”チリリーン”
数度の鈴の音。それが記憶を包んでいた霧を払い、光を当てた。
あの時の光景が映像となってフラッシュバックする。
「間違いない。俺とミィちゃんが入れ替わった時の晩、武装高校と賭け試合をした日だ。野球場からの帰り道に現れた女性が持ってたな」
ゆっくりと目を開けてエイミーちゃんの方を見た。
それにウンウンと何度か頷いてから鈴をポケットにしまい
「OK。それはどんな人だい?」
「どんな人どころか名前まで聞いたよ。”どうせ忘れるやろしな”ってね」
そしてそこまで思い出したのなら取るべき行動はたった一つだ。
俺は急いでズボンのポケットから財布を取り出して
「これ紅茶の代金。お釣りはまた縁があったら返してね」
「え? いやいきなりそれ」
とか言ってるエイミーちゃんに5000円札握らせて後は脱兎のごとく駈け出す。
キッチンからさっきの怪しいお兄さんこと京太郎君がダッシュで飛び出してきたのでお客さんの視線は再び集中!
でもそんな事はどうでも良い。あれがもしヒットマンでしたっていうオチだったら洒落になんないんだって!
扉は玄関口で伸びてる怖いお兄さん達が開けたままだったので勢いそのまま飛び出た。
日は既に暮れていて空はダークブルー。通りの街灯が全て灯っている。
飛び出たのは良いけどどっち行けば良いんだ!? 桃ちゃんどっち行った!?
落ち着けクールダウンだ。あんな小悪魔な格好で出て行った訳だから絶対目立っ……
「……さっきのメイドさんマジっぱなかったよな! あれってルーチェの新コス」
っていうドンピシャ発言を見れば後ろを何度も振り返りつつ駅の方角から歩いて来てるテンション高いお兄さん達。
名も知らぬ情報提供者サンクス! 駅に向かって全力疾走!
さ〜時間ないぞやばいやばいやばいマジでやばい! 早く桃介とミユキ先輩に伝えないと! だってあの晩、本気モードのミィちゃんが一発KOだったもん!
少しずつフラグ&伏線回収を始め出した無一文です^^
ノーマルルートの分も入ってますね(爆)
え〜っとまずマリサを狙ってたヒットマンについて。
ホームセンターで部品集めてライフルを作り、
マンションから狙っていたと。
そして待ち伏せていたシンシアちゃんが撃退したって7話で書いてましたね。
ちょっとここで意地悪な法則をバラします。
現実としてキチンと起こってる事は京太郎君(読者)視点、
あるいは3人称(神)視点でカッチリ書いてます。
ところが上の内容はそのどっちでもなくシンシアちゃんが話したことを
京太郎君が聞いた内容として書いてないでしょうか?
伝聞ですね。文の末尾も
「……捕まえたのは昼間”らしい”」とか「妙に偏った買い物を続ける男がいた”そうだ”」
という具合に。らしい、そうだ、になってます。
だから事実という保障はないわけです(おい)
確実なのは読者様(京太郎君)か神様(3人称)の視点で得られた情報だけです。
早い話が聞いた内容にはウソや実際には起こっていないことが含まれているかもしれません。
というか含まれてます(え)
もちろんミユキ先輩も例外じゃないですよ?
え〜っとそれではこの辺りで。
それから本日から連休終わりまで家を空けるのでネットが確認出来ません;
メッセージやコメ返信遅くなりますが御了承下さいませ。
それではまた^^
次回に一話を挟んでいよいよプロローグです(長
あ、クローディアっていうのはあのクローディアでOKです。
そしてそれが誰なのかは次ルートで^^
ヒント(?):
なんせ自分のこと”僕”とかいうエイミーがじゃじゃ馬って呼ぶくらいですから
さしずめクローディアの一人称は”俺”になるんでしょうか??^^