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第12話:ティー・ブレイク

 (サカノボ)ること一年と少し前。4月。新校舎の高等学1年の女子更衣室に女子生徒が二人。一人が体操着でもう一人は下着姿だ。

 下着姿といっても普通の人が聞いて浮かべるそれではない。自分の膝関節に届きそうな長い長い黒髪の女子生徒が胸に巻いているのは真っ白なサラシだ。

 そしてそんな彼女の長い髪を脇に避け、背中に付いたサラシの結び目をキュっと絞っているのは体操着を着たショートヘアーの女子生徒。

 彼女は自分の作った左右対称の小さな蝶々結びをメガネの奥から注意深く確認し、”うん”と頷いてから

「一丁上がりよユキたん」

 ポンポンとサラシの上からその背中を叩いた。

 ”ユキたん”と呼ばれた髪の長い彼女は園田美雪。後に桜花学園史上最強の生徒会長となるその人だ。

 ミユキは自分の胸の周りを確認しながら

「ありがとうアヤ。いつも面倒なことさせて済まないな」

 相変わらず具合は良いらしくコクコクと頷いている。

「ほんと水臭いんだから。そういう他人行儀な挨拶はアタシにいらないって」

 言いながらアヤと呼ばれたショートヘアの少女はスンスンと小鼻を鳴らしてミユキの髪の匂いをかいでいる。

 彼女はミユキの大親友で名前は加納綾。後の演劇部部長で当時は副部長だ。

 ミユキはチラっとだけ目を流して

「別に他人行儀になってるんじゃないさ。親しき仲にも礼儀ありって言うだろ」

 アヤがこうして背中に張り付いてるのはいつものことなので、ミユキは気にせずロッカーから自分の体操着を取り出した。

「流石は生活指導員ね。アタシはもう少しフランクでも良いと思うけどな〜」

 とアヤはミユキの髪に指をサラサラと通して遊び始める。これもいつものことだから気にしない。

「もう義務教育は終わりだからな。その辺りを自覚して、ここへ進学してくる後輩の見本にもならないと」

「まーユキたんたら本当に立派なこと言うようになって。お姉ちゃん嬉しいような悲しいような」

 こういうからかう様な口調でもアヤが言えば不思議と腹が立たないし、それを疑問に思ったことも一度もなかった。

 ミユキは屈んでブルマに足を通しながら

「高校は一つの節目だからな。なったからといって人が急に成長する訳じゃないが、周囲はあくまで高校生、先輩として見るからな。形からだけでも入っていかないと」

 言いながらスっとミユキが体を起こすと

「ま〜たそのクセだ」

 後ろからアヤがその首に細腕を絡めた。アヤには良くある甘え癖だ。

「そんなに背伸びしなくても良いじゃない。高校生だからとか長女だからとか。そういう肩書きに縛られなくてもさ」

「アヤ。先に上着を着てもいいか」

「あ、うんゴメン」

 彼女が離れるとミユキは体操着に袖を通した。そしてアヤがいつものように”ありのままで良いじゃない”と言ったことに遅れながらも何度か頷き、

「……そうだな。あまり無理も良くないが相応の責任感は持たないと。それが上級生や生徒会役員の」

「ユキたんってさ。昔から何でも一人で責任感じて、重たいもの背負い込んでるよね」

「え?」

 アヤの口調に元気がなくなったのでミユキはそう漏らした。

「大切な人を傷つけないように、辛いことはみんな自分一人だけ抱えて、誰にも相談しないで一人で乗り越えようとする。ミユキの悪いクセ」

 アヤがミユキの後ろ髪へそっと顔を埋める。

「そういうのが出来るのはスゴい人の特権だと思う。カッコイイことなのかも知れない。ズルイくらいにさ」

 いつもみたいに”ユキたん”じゃなくて彼女を”ミユキ”と呼ぶのはアヤが大事なことを話している時だ。だからミユキは黙って耳を傾ける。

「でもそういう気遣いがね。かえって親しい人を傷つけることもあるんだよ?」

 アヤは会話の続きを話してるようにも聞こえたし、普段のミユキが心がけている”完璧”な立ち振る舞いについて話しているようにも聞こえた。

「ミユキは何でも完璧にこなさないといけないのかな。弱みや欠点があったらいけないのかな」

 ミユキはそれをどう受け止めたのか、それ以上口を開かずにじっとしている親友に、優しい温もりを背中に与えてくれるアヤの頭にそっと手を回して

「……どうなのかな。私は生まれ付いて皆と違うところがあまりに多かったから」

 少し項垂(ウナダ)れた。自分の後ろ髪の(サス)る感触から、アヤが顔を左右に振って”いいえ”と答えたのが分かった。

「ミユキは綺麗だし、すっごい強いし頭も良いし優しいし、完璧だと思う」

 アヤは背中に預けていた身をゆっくりと離し、一歩離れてミユキの真向かいに位置する自分のロッカーを静かに開けた。

「だけど同時に繊細な心を持った年頃の女の子じゃない。みんなと一緒だよ。だからね」

 そして青いフチのメガネを外してから中にしまい、クルっと振り返って

「その事をちゃ〜んと理解してる男の子じゃないと、お姉ちゃんはユキたんをお嫁にあげませんから」

「へ?」

 唐突な発言に思わずミユキが振り返ると、ニッコリと笑ったアヤがズイと何かを突き出していた。眼薬だ。

 ともかくそれを受け取って見たものの、次のリアクションに困ってミユキが沈黙していると

「今度はアタシの番。お願いユキたん」

 とアヤは”休め”の姿勢をとって上を向いている。目薬をさせと言ってる様だ。

 手先の器用なアヤが自分で出来ないわけがない。

 ミユキはそれを知ってるし、アヤもそれを知られた上で御願いしてるのだ。

 そしてそのこともミユキは理解していたのでクスリと笑い

「仕方がないなアヤは。ホラ。そのまま動くなよ」

 と水色の目薬のフタを緩めた。


……。


「だけどさアヤ。それがもし守るべき後輩だったら私はどうすればいい?」

「どうしたんですミユキ先輩?」

 あの喫茶まで戻る道中、ミユキ先輩が良くわからないことを呟いたので聞き返せば

「な、何でもない」

 と頬を染めるお姉様。ものすごく何かありそうだったけど深く追求しないことにした。


 アンティーク調の木製扉を開けるとカランカランと鈴の音が鳴った。

 入ってすぐの玄関口ではサイドテールのメイドさんが両手をキチンと体の前に組んで立っている。

 彼女は俺達二人を認めるとニッコリとして

「お帰りなさいませご主人様、お嬢様」

 アニソン歌わせたくあるような萌えボイスでおじぎなさいました。落ち着け京太郎。クールダウンだ。テイク・イット・イージーだ。

 隣のミユキ先輩はこの定番挨拶にまだ納得がいかないようで”むー”と首を傾げている。けれどここへ戻ってくる道中に

”あの喫茶店はそうやって挨拶するのがお約束なんです。神社にだって独自の作法があるじゃないですか”

 って言い聞かせまくったお陰か、今度は変な返答はしなかった。良いぞユキたん。

 そんな様子を横目で確認してからメイドさんに目を向ける。彼女はお姉様へウィンク。それにミユキ先輩はむず痒そうに鼻をかきながら

「うん。ただいま」

 

 案内されたのは通りに面した壁近くの席だ。一面がガラス張りになっていて外の様子が良く見える。

 俺とミユキ先輩はメイドさんに椅子を引かれ、それぞれ向かい合うようにして座った。

「それではごゆっくりとおくつろぎ下さいませ」

 深々とおじぎして去っていくメイドさん。後ろで揺れているエプロンの結び目が何ともいえない。たまらない。

 いやもちろん今回の目的はオリジナリティ溢れすぎる料理を楽しむことでもなければフリフリのドレスを着た可愛い女の子ウォッチングをしに来た訳でもない。桃ちゃんをヒットマンの魔手から守るというか毒物を口にしないよう監視するというのが目的です。

 しかしそうかと言ってここで閉店まで永延(エイエン)とお水だけを飲み続けるのも迷惑極まりない話というか営業妨害の域なので

「せっかくなので何か飲みましょうか」

 とまずはメニューを広げてみる俺。相変わらずラインナップが素晴らしい。

 ちなみに”妹の手作りXXX”に”ツンデレ仕上げ”をチョイスすると異次元料理が出現するので良い子の皆はマネしないようにね。

 俺がメニューを眺めている一方で、向かいに座っているミユキ先輩はオシャレな店内を興味半分観察半分という具合に見回している。

 普段はクールだし今もクールを装ってるんだけど内心は好奇心旺盛のようだ。

 ミユキ先輩は”ふむ”と頷いてから

「風変わりな挨拶や衣装を除けば、普通の喫茶店と大差なさそうだな」

 仰いました。たぶんメニューに目を通したら意見が少し変わるかも。

「それに衣装自身も露出が多いわけではないし、客層もごく一般人という感じだ。スタッフの多くが未成年のようだが客と問題になるような接触はしていないし、風営法に触れる心配はないだろう」

 発想が生活指導員ですねお姉様。

 ミユキ先輩は手元のグラスの水をチビリと飲み、俺と同じようにメニュー開いて

「紅茶で良いか?」

 あえて周りに聞かせるようなやや大きめの声だった。

 で、特に異論も無かったので

「ええ。俺はそれでOKです」

 そう答えたものの”そんなシンプルなメニューあったかな”というのが本音だ。

 ソフトドリンクの欄を見ると”本日の紅茶”のとこには”Affezione reciproca(お二人様限定)”と書いてある。

 すっごい読めないよ。

 英語カッコハテナな単語二つを睨んでいると今度は小声でお姉様が

「店の出入り口は表玄関とキッチン奥にある裏口の2箇所だ」

 ささやく。それから目線をあげて俺の方を見て

「私は目の届きにくい裏口の方に注意を払っているから、京太郎は玄関口の方を見張っていてくれ」

 どうやら”ヒットマンが侵入してくるなら”という話をしているらしい。

 俺が頷くのを確認するとミユキ先輩は真っ白なテーブルクロスの上に乗った呼び鈴を持って揺らし、リンリンと涼やかな音色を立てた。

 すると素早く、それでもおしとやかにメイドさんがやってくる。

「お呼びでしょうかお嬢様」

 現れたのはさっきのサイドテールのメイドさん。ミユキ先輩が彼女に

「紅茶を二人分御願いします」

 告げるとメイドさんは俺とミユキ先輩を交互に見てから

「本日の紅茶で宜しいでしょうか?」

 笑顔で確認を取って来たので

「はい。それで御願いします」

 返事しておいた。読み方分らないけどね。

「かしこまりました」

 とおじぎして下がるメイドさん。やっぱり後ろで揺れてるエプロンの結び目がたまらない。ふふふ。

「お前もああいう格好が好きなのか?」

 指摘されて慌ててミユキ先輩の方を見ると首を傾げておられます。非難めいた目線じゃなくて純粋にハテナって感じだ。

 まぁ好きかどうかと言われると

「健全な男子諸君でありながら可愛らしい女の子が可愛らしい格好しているのを見て不快に思うことはないと思われまする」

 ニンニンと。っていやいやどんだけまどろっこしい言い方だよ京太郎君。

「笑わないか?」

「はい?」

 ミユキ先輩の唐突かつ謎な問いかけにポカンとなる。

 で、そんな俺の目をお姉様は腕組みしてじーっと見てらっしゃいます。心なしか頬が赤いけど……

「何がですか?」

 尋ねるとミユキ先輩は言おうか言おうまいかと迷ったように目線を下げたがそれもただ一瞬。

 すぐに目線を戻して

「実は一度だけだが。私もああいう格好をしたことがあるんだ」

 イエス復活並の奇跡が発見されましたよ皆さんメイド・イン・ユキたんですって。カトリック万歳仏教涙目……って

「マジですか!?!?」

「声が大きいバカ!」

 重ねて突き出されたミユキ先輩の両手がムグっと俺の口を塞いでいる。失礼をば致しました。いやでもこれは叫んでも仕方ないでしょ。

 どんな事情があったか知らないけどお姉様がメイド化するとかキャラ的に有りえないでしょ。ありえたら最強すぎるだろ。

 黒髪スーパーロングで色白スレンダーなユキたんがエプロンドレスですよあなた。そんな奇跡が本当に存在し……と

 気付けば二人とも声が大きかったせいで席についてるお客さんも立っているメイドさんもこっちをガン見。

 その視線の先には赤面かつ中腰になって両手を突き出してる着物美人とそれに口を塞がれているイケメンお兄さんがいるわけで。

 あ、反論とか受け付けないからね……ってそんな場合じゃなくて。

 俺はちょびっと涙目になってるミユキ先輩に目配せしてギャラリー注目の的になってることをアピール。

 するとお姉様は周りをチラっと見てからゆっくりと手を引いて

「コホン」

 咳払いを一つしておしとやかに席へ着かれました。


 「……しかしまさか体力測定でアヤに負けるとは思わなかったよ」

 メイド・イン・ユキたんのエピソードを語り終えたミユキ先輩の頬はピンク色。しかしこれだけ奇跡の発端に納得がいく説明も珍しいな。

「賭けの内容によらず、相手がアヤ先輩って時点で警戒すべきでしたね」

「お前も山之内と同じ事を言うんだな」

 ミユキ先輩は腕組み。

「それも随分とスースーする衣装でな。肩は出るわヘソが出るわで参ったぞ。スカートの丈も短かったし、あれはどう考えても使用人の格好じゃないな」

 そこで溜息を一度入れてから

「おまけに尻には尻尾、頭には猫耳を模した飾りで首には鈴の付いた首輪だ。まったく人を何だと思ってるんだ」

 レッツ・イマジン。京太郎の脳内に内蔵されし人工知能DAVINCHIよ起動せよ。

「トドメは語尾に”にゃ”をつけろなんて言い出す始末だ。信じられないだろ?」

 速攻で熱暴走。むり。アヤ教とか発足したら俺信者になりそう。

 ミユキ先輩が露出度高いドレスにネコミミ、シッポ、首輪でニャンニャンですか。麻雀なら九連宝ですね。

 さてそれではさっそく、いったいミユキ先輩とアヤ先輩の間でどんな賭けがあって

「あ〜何やろこの読み方分からんなぁ……アフェ、アフェジョーネ???」

 どういうシチュでそんな格好をするに至ったかを説明申し上げ……

「まぁええか。お待たせ致しました御主人様、お嬢さ……ま?」

 ようと思ったけど紅茶が来ちゃった。

 とっても愛らしい声に顔をあげれば今回のメイドさんもハイレベルですね。すっごいスレンダー。お客様がみんなこっち見てるもの。

 ただここのメイドさんちょっと趣向が違うようで黒のゴシックドレスは露出度がやや高め。

 上は鎖骨から肩まで健康的な小麦色の肌が出てるミニワンピースで一体になってるスカートも短め。おまけにパニエでも入ってるのかフンワリと広がっていて可愛いことこの上ない。

 そして後ろにはお約束なのか矢印型のシッポの飾り。なかなか心得てらっしゃいますな。

 頭にはこれもシッポと同様に小悪魔要素の高い小さなツノがついた黒のカチューシャで髪はスーパーロングのストレート。

 全体的なイメージは小悪魔、あるいはサキュバスという感じでとってもセクシーでございます。間違いなく看板娘だろうねこの子。 

 顔立ちも飛びきり美人だし例えるならミユキ先輩の凛々しさとミキさんの艶っぽさを合わせ、さらに健康的な可愛さをミックスしたというレベルの高さ。

 ていうか知人で例えるならズバリ桃ちゃんにクリソツというかソックリというか

「なんで……なんでエロノミヤとミユキ(ネェ)がおんの……」

 桃ちゃん本人でした参ったねーあっはっはっは。



 落ち着くんだ桃っち。ものすごい勢いで落ち着くんだ桃っち。そんなジワっと涙目にならないで。

 想定外のリアクションだし予想外に可愛いし。何よりお客様のあらぬ誤解を招きかねない。あとねユッキー。



 そこで石化してないで肩をワナワナさせてる可愛い従妹(イモウト)に何か言うと良いよ。このままだと大惨事に繋がると思うんだ。


「き、京太郎」

 ミユキ先輩のショック状態が解けてようやく口を開かれました。で、お姉様は涙目で俺の目を見ながら

「頼む。”口先の詐欺(ペテン)師”と呼ばれたお前の口で桃花を笑わせてくれ」

 何ですかその救いのないネーミングは奇術師(トリックスター)ですよミユキ先輩。

 しかも今この場この状況で笑わせろとか無理難題にも程があるぞ。これどんな芸人でも無理だろ。

「う……ひっく……」

 ノー!! 桃ちゃんノー!! 緊急事態発生だ桃ちゃんがこれだけ打たれ弱いと思わなかったよ!

 紅茶を置いたトレイをギュっと抱いたまま俯いてるし赤面してるし目は見えないけどたぶん涙目ていうか泣いてるし!

 ハァハァ萌え……。いやそんな場合じゃないぞ俺! 今泣かれたら何かいろいろまずい! 絶対! 

 俺はミユキ先輩に

「親父ギャグでも良いですか?」

「何でも良いから早く!」

 こうなったら破れかぶれだ!

 俺は桃っちの方を向いて

「”牛がたくさんいるよ。モーたくさん”」

「……」

「……」


 静寂。ただひたすらの静寂。外したぜ、全力で。


「くひー!!」

 いきなりお腹を抱えてうずくまるお姉様……ってあんたが笑ってどうするんだユキたん! じゃなくてそうか迂闊(ウカツ)だったミユキ先輩の笑いの沸点で常温レベルだった! 

 ダメだこれはヒドい誤解を招くかも知れないぞ! 品物を持ってきたメイドさんが赤面して泣いててお客の一人が腹筋崩壊してるんだ。

 これじゃ俺たちがメイドさんを冷やかして泣かせたとか思われても仕方がない! 

 あ〜桃ちゃんは俺のギャグで泣きやんでくれたけど冷めた視線が痛すぎる!

「牛がたくさんだけに牛牛(ギュウギュウ)詰めと来たか!?」

「なに自己開発してるんですかミユキ先輩!」

「は〜いそこ。いい加減少し静かにしてくれませんか」

 ってホラお客さんから注意されたよさっきから騒ぎすぎ!

 俺は声のした店の中央に向かって

「あ、あの。どうもすみません!」

 ペコっと頭を下げた。わーテンパってる俺。そしてその先にはまぁこれまたグラマーな美人さん。

 ショートヘアーに青いフチのメガネがとっても良く似合っていて例えるならまるで

「加納先輩?」

「後宮君?」

 でしたねハイ。ちょっと待ってこんな偶然って……

「先輩どうしたんですか?」

 アヤ先輩の向かいに座っていた子が立ち上がって見れば弓なりの眉と切れ長の目がとってもセクシーな

「ヨードーちゃん?」

「キョウなのか!?」

 

 落ち着け京太郎君。まずは状況整理から入るぞ。

 さてここに居るのは政治家でも言わないようなクオリティのギャグをかました京太郎君とその正面でピクピクしてる着物娘。

 そしてその二人が挟むテーブルの前では固まっている小悪魔桃ちゃんがいて涙目と。

 さらにはそんな三人を店の中央側のテーブルから見ているのはどういうわけか制服のアヤ先輩にヨードーちゃん。

 補足を言えば頬をつねるとクリアーに痛い。つまりは夢オチではないと。

 さてさらに整理すれば今日の目的は桃ちゃん護衛ということであり、俺とミユキ先輩は桃ちゃんのバイト先であるここ喫茶ルーチェに入ったわけだ。

 ここでお姉様としては信じられないミスがあるわけで。

 桃ちゃんに所在を悟られたくないにしてはあまりに無策かつ目立つ格好で店に入ったお姉様ならびに京太郎君。いったい何をやってるのだと。

 そして事態をさらにややこしくしかねないのが桃ちゃんに運ばれてきたテーブル上のステキなアイテム。それを親切に教えてくれたのは

「キョウ。その紅茶って……」

 頬をピンクにしてる可愛いヨードーちゃんでした。ヨードーちゃんは俺とミユキ先輩を交互に見てらっしゃいます。

 結論から申し上げましょう。気軽に頼んだ”本日の紅茶”の名前”Affezione reciproca”は


 イタリア語で”相思相愛”を意味します。


 そしてその名の通り紅茶は情熱的な赤で甘酸っぱい香り。

 何より二人分と言いながらグラスは一つ。そしてストローは二股に分かれたものが一つです。つまりですね……。

「そっか〜」

 親友の不穏な声にピタっと動きが止まったミユキ先輩。その端正な顔をあげればやっぱり予想通りのメガネ美人がニコニコとしてるわけで

「やっぱりユキたんと後宮君って……」

 分かってます。寸止めですね。あえてそこで止めてるんですね。

 ユキたんも紅茶に気付いたね。グラス一つに気付いたね。ストロー一本に気付いたね。二股ストローに気付いたね。顔が紅茶に負けじと赤いね。あと涙目だね。

「お姉ちゃん応援してるから!」

 ビっと親指を立てたアヤ先輩に急にミユキ先輩がガタっと立ち上がって

「ア、アヤこれには深い理由(ワケ)が!」

「あるんやろな〜すごい深そうなんが?」

 その聞き覚えありすぎるヤラしい声に二人で目をやればニ〜と笑ってる関西娘イン小悪魔。いつの間にリカバリーしたんだコイツ。

 桃ちゃんはそのままおじぎするフリをして俺の耳に口を寄せ

「ミユキ従姉(ネェ)は奥手やからしっかりな。エロノミヤ」

 と予想外発言を呟いたかと思いきや頭をあげ、それこそ今まで見たことがない飛びきり笑顔で

「以上でお揃いでしょうか御主人様、お嬢様」

 これまた今まで聞いたことがない萌え声で確認をとる桃介。俺たちがそのギャップに思わずポカンとしてると

「それではこれで失礼致します」

 もう一度頭を下げ、去り際に一度意味深なウィンクをしてからキッチンの方へ戻って行った。

 うんまぁ、気のせいだと思うんだけどさ。さっきのおじぎで顔を上げるとき一瞬目が合ったんだけどね、気のせいか少し寂しそうな表情だったような……ってやっぱり気のせいだろな。うん。

 まぁそれも気になるけどさ。

 周りの視線。アヤ先輩アンドヨードーちゃんとの遭遇。テーブルの紅茶とテンパってるミユキ先輩。

 どうしようかな今。この状況。

どうもお久しぶりです無一文です^^

そしてま〜た途中で切ってしまいましたね。


今回はユキの回想があったり

桃ちゃんの新しい側面があったりしました。

書き方自身は漠然と、そして陰に書いてるので

いろいろと解釈して頂ければと思います^^


え〜っと次話ですが、

またまたこっちの都合で遅くなりそうです;

すみません;


ちなみにあと2,3話くらいで

プロローグに入ります(爆)


それではまた^^

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