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第11話:やってきました

 通りの中央にある噴水、その周囲を囲むように配置された木製ベンチ。ちょうど木陰にもなっているそこで俺とミユキ先輩は涼んでいる。

 携帯を開いて確認すると時刻は5時前。温暖化、温暖化と世間で叫ばれてるほど異常気象だとは思わないけど、やっぱり夏なので暑いことに変わりは無い。まぁ、だからこそミユキ先輩がおごってくれたアイスは美味しいわけで。

 お姉様曰くは桃ちゃんが来るまでもう少し時間があるらしいので、ここでアイスクリームを食べながら待ち伏せするとのことだ。

「何と言っても桃花は甘いものに目が無いからな。アイスクリームショップは要注意の場所だ。飲食店に入る前からしっかり見張っていないと」

 ミユキ先輩は甘酸っぱい匂いのするピンク色のアイスにスプーンを刺しながら仰いました。続けて

「アルバイトという本来の目的を忘れ、たまたま目に入った甘味の誘惑に負けて買い食いしてしまう、そういうことは十分考えられるからな」

 うんうんと頷きながらスプーンを口元に運んでハムリ。ここは突っ込んでいいのだろうか。

 その幸せそうな横顔をジーっと見つめているとミユキ先輩はスプーンを(クワ)えたままチラっと俺の方を見て、それから頬をピンクにして

「……私みたいにな」

 目を逸らしつつもまたアイスにスプーンをサク。自覚はしてるのねユキたん、可愛いな。

 ちなみにお姉様が買ってきてくれたものは”トリプルアイス”という名前の通り3種類のアイスをカップにトッピングしたもので、ヨードーちゃん情報だとテイクアウトメニューが豊富なこの通りでも屈指の人気を誇るらしい。


 余談になるけどついこの間、(ウチ)のキッチンでツインテールとミィちゃんが仲良くグルメ関係の雑誌を眺めていたことがあった。

 自室の掃除を終えた京太郎君がそこへやって来て

「何をお読みになってるのかなお嬢様方?」

 と後ろから覗き込んでみたところ

「兄さん、これ美味しそうだと思いませんかメイビー?」

 とミィちゃんが指差した箇所には件のアイスが紹介されていたのだ。

 隣のマリサも

「カスタードが美味しそうよね〜。紫芋とかも上品な感じだし」

 雑誌に載せられたカラフルなアイスをマジマジ。普段からシンシアちゃんの超絶手料理食べてるのにね。

 まぁ写真の撮り方もあるんだろうけど確かにうまそうだった。

 ちなみにその時やって来たミキさんが俺の横から覗き込みつつ

「私ならマロン、バニラ、チョコクッキーにクラッシュキャンディをトッピングですねフフフ」

 さりげなくMIKIカスタムを(ホドコ)しながらウットリ。

 しかし整地ローラーを重り代わりにしたり、小指一本倒立腕立てしたりしてる部活の様子や、武装高校のモヒカンに絡まれた時の音速蹴りや対戦車砲並の正拳突きを見ればとても俺と同じヒト科だとは思えないんだけど、こんな風に椅子に座って雑誌のオシャレなスイーツをホワホワ眺めているところを見ると、ああやっぱり年頃の女の子なんだなぁと微笑んでしまう。きもいな俺。

 いやだからどうだって訳じゃないけど……ね?


 まぁ、それは置いておいて。今手元のアイスなんだけどね

「なんでチョイスが3種類ともストロベリーなんですかね?」

 隣でお上品に食べてるミユキ先輩に疑問もといクレーム。お姉様はそれに機嫌良さそうに

「このイチゴは奈良のアスカルビーだぞ。他に選択肢があるのか」

 当然だと言わんばかりです。いや、三色同一とか麻雀の役みたいだよ。

 ベンチの向かいにあるアイスクリームショップに目を写し、メニューボードを指差しながら

「例えばティラミスとかラムレーズンとかですね。さっぱり系ならヨーグルトで定番でいくならチョコやバニラでも……」

 抗議を兼ねて読み上げていたらいつの間にか俺のアイスにサックリとスプーンをさしているお姉様。見ればミユキ先輩のカップはもう(エンプティー)です。なるほど。いやいやでもこれは俺のっていうか、先輩が後輩のを召し上げるのはどうなのっていうか……。

 コメントが浮かばず無言でミユキ先輩の目を見る。

「……」

「……」

 見つめ合ってしばらく、俺は何も言わずカップを献上した。


 甘味を堪能(タンノウ)し終わって時刻は5時半。依然、桃ちゃんが来ない。

 お姉様は朱色の携帯を開いて

「おかしいな。確かに5時には来ると聞いていたんだが……」

 と口元に手を当てた。

「まさかアイスクリームじゃなくてクレープの方に気取られたとか、いやあそこで400円消費するほど桃花は関西離れしてないはずだ」

 駅近くにあったオシャレなクレープ屋さんの方面を見ながら一人頷くミユキ先輩。どんな理屈ですかそれ。

 ともかく俺はお姉様から空きカップを取って自分のカップに重ね

「捨ててきますね、これ」

 立ち上がる。

「ああ、すまないな」

 ミユキ先輩の声を背中に聞きつつゴミ箱検索を始めた。

 案外近くに合った”燃えるゴミ”のゴミ箱。そこへ二人分の空きカップを捨ててくるという(ワズ)か3分間。戻って来てみればミユキ先輩が身の程知らずにナンパされてらっしゃいました。

「バルス!」

 いやいやそんな簡単に世界滅ぼしちゃダメだ京太郎君。

 状況説明するとホストっぽいお兄さんが俺の座っていた場所に腰掛けて足を組んでおり、馴れ馴れしくお姉様に手振りを交えてトーク展開中。わーいむかつくな。

 まぁ身の程知らずとは言ったけど実はなかなか男前。でもスーツは必要以上に着崩してる感じだし開いた胸元のペンダントもなんかしつこい。雰囲気もチャラチャラとしていて”遊び人”という感じ。残念ながらお姉様の好みとは違うのだザマーミロ……って、何で俺は木陰から成り行きを見守っているんだ?

 疑問を提しつつもなおコッソリしていると、やがて何を言われたのかお兄さん、肩をガックリと落としてスゴスゴと去って行かれました。

「敵機撃墜!」

 だから自重しようよ俺。で、まぁそこへ何食わぬ顔で登場する京太郎君、っと。

「お待たせしました」

 今戻って来ました的な雰囲気を(カモ)し出しつつ現れてマイポジションに座ろうとする京太郎君。ららら他人の不幸は蜜の味。結構ヤな奴かもしれないな俺。

「あ、京太郎」

 ミユキ先輩が突然手を向けて静止。もしかして覗いてたのバレてたのかな、とか冷や汗してるとさっきのポジションとは反対側、つまりお姉様は自分の左サイドをトントンと叩いて

「今度はこっちに座ってくれないか」

 意図は読めなかったけどとにかく指示に従うことにした。どうやら気付かれてはいないようだ。

 こっそり安堵の溜息を吐きつつ腰を降ろす。

「いや、実はそこに座って言い寄って来る奴がいたんだ」

 ”はい見てましたとも”とは言えないので

「そうなんですか」

 とトボけた。どうやら撃沈兄さんがいたとこには座って欲しくない模様(モヨウ)。 

 しかしこういうことでも包み隠さず直球で話すのはミユキ先輩らしいな。”言い寄ってくる奴がいた”か。分りやすいね。いやむしろ回りくどいことは苦手だったっけ? 

 するとさっきのお兄さんもオブラートに包んだりせずストレートに断られたんだろうか。刀の(サビ)にするとか言われたんだろうか。それはないか、さすがに。

「それも3人にな」

「3人もですか!?」

 思わず身を乗り出してしまった。3分で3人斬りとかどんな吸引力だよそれ。

 ミユキ先輩はロングポニーになってる(カラス)の濡れ羽色の髪をサラサラと腕で流して

「全く変わった奴が多いなここは。私なんかを口説くくらいならもっとマシな女がいくらでもいるだろうに」

 呆れたように溜息を吐かれました。お茶飲んでる最中なら確実に吹いてるとこだよ。

「あのねミユキ先輩」

 俺は体ごとお姉様の方を向いて

「先輩って周りからどう見られてるか分ってますか?」

 多少食って掛かるような言い方したせいかあるいは意味を取り違えたのか、ミユキ先輩は”フン”と面白くなさそうに腕組みしながら

「自分の客観視くらい出来ているさ。どうせお前も今の時代に着物なんか時代遅れだとか、私のような男勝りが口説かれたのが可笑しいとか思っているんだろう?」

 いや〜良く分った。ミユキ先輩って何一つ分ってらっしゃらないよ。

「はぁ〜」

 わざとらしく溜息を吐く。案の定、流し目しながら何か言いかけて来たので

「この際ハッキリ言いますけどね」

 遮ってお姉様の目を見て

「ミユキ先輩って、とんでもなく綺麗だし可愛いらしいんですよ」

 キッパリ言い放っておいた。するとミユキ先輩の頬がカーっと染まって……やばい可愛いな。

「私をからかうのも大概にしろ!」

 お姉様は不機嫌そうに背もたれに背中を預けて腕を組み、頬を染めたまま目を閉じられました。だめだ自覚症状が無い。ここまで来ると冗談抜きで危ないかもしれない。

「からかってなんかないですよ」

 その応答にお姉様は腕組みしたまま片目をチラっと開けてきたので、それを見ながら

「スタイルは抜群だし肌は綺麗だし、顔立ちも完璧。髪だってその辺のモデルなんかより遥かに綺麗ですよ。いやスーパーモデルクラスなんじゃないですかね。今の和服だってミユキ先輩にドンピシャです。リアルな話、俺最初見た時心臓飛び跳ねましたから。綺麗過ぎて。よっぽどの奇人か変人でない限り男なら確実に一目ぼれですね、ええ。だから少しは周りを意識して警戒しといた方が良いですよ!」

 ノンストップでブチまけてから同じく背もたれに背中を預ける。やれやれと溜息。

 だいたいミユキ先輩はこういうことに無頓着すぎるというか警戒心が無さ過ぎるというか。

 いやそもそも今回の事件の原因がさ、ボンボンがお姉様に御執心しまくりっていうその意味をちゃんと分ってるんだろうか? 

 ミユキ先輩の自衛力もとい戦闘力が米海軍並だから今まで無事に済んでるけど、もしミユキ先輩が美月ちゃんみたいな普通のか弱い女子高生だったら命がいくつあっても足りたもんじゃないぞ全く。

 いやそれ以前に自覚がないどころか”私よりもマシな女いくらいでもいる”だって? ミキさんのパパじゃないけどどういう思考回路したらそういう結論になるんだっての。

 一人脳内抗議しててフと気付けばお姉様が耳まで真っ赤アンド目をパチクリ。おまけにチョコかじってショック受けたリスみたいな表情してます。

 いやいやユキたんどうしたのその萌え……じゃなくてこれは俺が原因過ぎるだろ。よく考えたらスゲー恥ずかしいこと言ってるんじゃないのか。本人の前で容姿べた褒めとか。それもよりによってミユキ先輩に。

 余計なことに気付いたせいで俺の頬まで火照って来た。ああ最悪。おお最高。ミユキ先輩が赤面して俯いておられます。

「お前……」

 何やら口ごもってます。

 顔を少しあげるお姉様、その頬が赤い。下向いたままの栗色の瞳が微かに潤んでいる。ああやっぱりミユキ先輩って綺麗以上に可愛いのかもしれない。

 目を奪われているとそっと口を開いて

「本当に私を、からかってないだろうな?」

 言われて思うんだけどさ、こういう状況でも心拍あがらずにお姉様をからかう位の器量や余裕があれば今頃、もしかしたら彼女出来てたりしたんじゃないかな〜って。彼女いない暦=年齢にはならなかったんじゃないかな〜って。

 だからつまり

「俺は本気です。ミユキ先輩」

「ぇ」

 今のセリフは別のニュアンスを含んでないかい京太郎君!?

 何となく告白めいた表現になってることに気付いて顔から火を噴きつつテンパってる俺。でもそんな俺にいつものような流し目はなく、ミユキ先輩は何を思ったのか自分の透き通るような両手を眺めてらっしゃいます。

「そうなのか……」

 呟かれました……ってやっぱりさっきのは事故告白になっちゃいましたか!?

 バクバクと胸が高鳴ってくる。いや落ち着け、勘違いしてたとはいえ一回屋上で告白してるじゃないか京太郎君! 既にビンタ玉砕されたという過去を持ちながら何を恐れるというのだ! それに今の手ごたえは悪くない! 気がする? もしかしたら、もしかするかもしれないぞ!?

 目を閉じて深呼吸。

「私は綺麗なのか」

 コケそうになった。それこそ何を今更って感じで。だけどこの間抜け発言は今の俺には助け舟。お陰で頭がクールダウンしました。

 まだ自分の両手を見つめながら一人頷いてるミユキ先輩、その可愛らしい姿に俺は呆れ笑いしながら

「ええ綺麗です。レベル高すぎて手出せないくらいですね。本気で」 

 言ってから目を逸らして鼻をポリポリと掻く。やっぱり恥ずかしいなこういうセリフ。

「初めてだ」

「え?」

 ミユキ先輩の一言にハテナとなってまた顔を向ける。

 するとミユキ先輩は小さく握った拳を胸に当てながらまた俯いて、ほんのりとその頬を染めております。動揺しているのか瞳も揺れていて表情もやや”心ここにあらず”という感じ。あ〜その仕草はあからさまに反則だろ。

 そんな京太郎君のハネあがってる鼓動など知らずミユキ先輩は

「そういうことを言われたのは、初めてだ……」

 確認するように繰り返した。

 それから少し上目遣いにこっちを見て、照れくさそうに微笑みながら

「ありがとう京太郎」

 少し切なげな声色は今まで聞いたこと無いくらい女の子らしかった。

 今リアルに俺は死んでも良いって思ったよ。


 そんな具合で二人がなんとなく良いムードになりかけているとやって来ました関西娘イン初夏。神に愛されし(クウキ)(ヨメナイ)(カンサイ)(ムスメ)ですね。

 バっとベンチから離れて木陰から見守る俺とミユキ先輩。でもこの構図ってかえって目立つんじゃないかな……。隣の木でチラリしてる着物美人を見て思う。

 ちなみに桃ちゃんの格好は普通にセーラー服。部活帰りにそのまま来たようだけどちょっと挙動不審。周りの目を気にするようにキョロキョロしながら通りをおっかなびっくりと歩いてます。

 ミユキ先輩はその様子に目を細めて

「フフフやはりクレープは避けてきたか」

 そんなとこ的中してどうする。

 観察していると桃ちゃんはアイスクリームショップの前で一旦足を止め、メニューボードにズラっと並んでいるアイスのラインナップを見ております。

 ミユキ先輩がその様子に

「やっぱりココか」

 と頷いてから

「アイスを買うときに店の様子は一通り確認したが不審な店員はいなかった。その後も今まで注意を払っていたが怪しい客や店員の入れ替わりもなかったからな。心配はないと思うが……」

 さすがですねお姉様。俺なんかベンチで一人テンパってるだけだったよ。

 ミユキ先輩はチラっと俺の方を見て

「しかし念のため、もし桃花がアイスを買おうとしたら止めに行ってくれ京太郎」

「お安い御用です」

 頷いておいた。

 でもいきなり”そのアイス食うな〜”とか言うわけに行かないし尾行だってバレてもまずいから……

「不審がられないうまい理由ないですかね? 俺ってここに来るようなキャラじゃないので」

 尋ねると”フム”とお姉様は頷いてから

「”昨晩にヤった白いトレビアンな薬が効きすぎて気付けばここにいた。今は反省してる”はどうだ?」

 あんまりだ。

「そんなこと信じてもらえるわけも無いし信じてもらっても困ります」

「それでも京太郎なら何とかしてくれる」

「何一つ嬉しくないですねその期待」

 生暖かな目線を送っているとお姉様は可愛くニッコリとして

「体育会系だろ」

 全然関係ない! とはいえ、ヒットマンと鉢合わせていざ戦闘とかになったら俺は身を盾にして犠牲になるくらいが関の山。

 いやいや良く考えればチキンな京太郎君がそんなこと出来るとも思えない、足手まといの一択か。

 要約するとこういうことぐらいしか貢献できそうなことがないと。わーい情けないぞ京太郎君。

  溜息を吐いてからミユキ先輩の方を向いて

「了解です。とにかく強引にでも店から引き剥がし……」

「いや、桃花がアイスクリームショップを通過した」

 桃ちゃんの空気読めなさは異常。


 噴水の影に、店の中に、はたまた木陰にと頻繁に身を隠しながら尾行する俺と着物美人。別に用心深くやってるわけじゃなくてそのくらい桃ちゃんの振り返る回数が多いのだ。

 その理由は10中8,9、バイト先を知り合いに悟られないようにするためだろうね。ミユキ先輩にすら隠すくらいだから。

 けれどスカートはいてても平気でアグラかくようなキャラがいったい何をそこまで気にするというのだ。

  あまりの警戒っぷりに首を傾げていると

「事前にこの通りのについては美花に頼んで調べてもらっているが、人に言いにくくなるような店舗は一軒もなかった。まさか表に出ていない仕事じゃないだろうな」

 表に出ていない、つまりは裏の仕事ということだ。ミユキ先輩が腕組みして

「桃花とはアルバイトについて干渉しないと約束したが、これだけ人目を気にするようなものなら考え直した方が良いかもしれない」

 呟いた。

 俺もここには何回か来たことあるけど確かに妙な店はなかった。

 照れくさくなると言えば下着ショップ、ハイソに言えばランジェリーショップくらいで、後は香水やアクセサリーとかオシャレなものを扱う店ばかりだ。 

 まぁ桃ちゃんならそういうの小恥ずかしく感じるかもしれないけど、それにしてもこの気にしようは普通じゃないな……。

「店に入ったぞ京太郎」

 ミユキ先輩の声に顔をあげる。いつの間にか俯いて考えていたようだ。

「あそこだ」

 とミユキ先輩が指差した先、そこに目をやった途端に俺の疑問は氷解した、悪い意味で。逆にミユキ先輩はホっと胸を撫で下ろして

「なんだやっぱり普通の喫茶店じゃないか。なかなか洒落てるし、あれなら隠すことも……どうした京太郎?」

 振り返ったミユキ先輩が俺の顔を見てキョトン。いやだってあのお店って……

「ヨードーちゃんのバイト先ですよ。喫茶ルーチェって」

「ああ山之内のか。それなら安心だ。あそこはアヤのお墨付きだからな」

 うんうんと頷いてるミユキ先輩。いやそこは全身全霊で警戒した方がいいポイントですよ。って、え、いや、ちょっと待ってマジで。


 桃介があそこでバイトしてるって……。


 メイド喫茶でバイトしてるって…………。まさか……。


「いや〜いくら何でもそれはないですよね〜流石に! あっはっはっは」

 あらぬ想像をかき消すために声を出して笑っておいた。

 いやだって絶対ありえないでしょ? あの桃ちゃんがまさかね? 

 フリフリのエプロンドレス着てアニメ声とか萌えボイスとかで

”お帰りなさいませご主人様”

 とか

”これお兄ちゃんのために作ったの”

 とかさ? 

 似合う似合わないとかの議論じゃなくてキャラ的にね。

 いや冗談抜きに仮にもしそうだとしても想像がつかない。俺の偏見なのかも知れないけどメイドさんって色白な人ばっかりで日焼け娘とかいないと思うんだ。あのお店は基本ゴスリロリ系だからなおさらね。

 それなら似合わないって言えば良いんだけどさ、桃ちゃんって性格とか振る舞いはオッサンだけど外見だけならかなり可愛かったりするんだ。そりゃミキさんの実の妹でミユキ先輩や美月ちゃんの血も引いてるから当然と言えば当然なんだけどね。

 だからこそ分らないのだ。桃ちゃんの場合は”あり”か”なし”かね。

 で、見てみたいかと言われれば、正直な話み……ってそうじゃない! マジで桃介ここでバイトしてるのか!?!?

「おーい京太郎。なかなか内装が綺麗だぞ」

 我に返って顔をあげるといつの間にか喫茶の前まで行ってるお姉様がナチュラルに扉をオープンして手招きしております。はいはいそんな慌てなくても良いじゃありませんかユッキーったらせっかちねウフフ。


 今すぐそこを離れようかユキたん。


「ん? おかえりなさいませお嬢様? いや私の家はここから数駅上ったとこの神社で……」

 とかメイドさんの定番挨拶に大ボケかまそうとしてる着物娘の腕を掴んで

「すいませんすぐ片付けます」

 可愛いサイドテールのメイドさんに頭を下げてから回収。腕を引っ張りながらツカツカと来た道を戻って行く俺に

「な、おい京太郎! どうしたんだ急に。体育会系かお前」

 全然関係ない! 道理で桃ちゃんが隠したがる訳だよまさかよりによってメイド喫茶だったなんてね!


 後半へ続く?

どうもお久しぶりです無一文です。

あと大変ながらくお待たせ致しました。

そしてまた核心部分行く前に終わってしまいましたね。はい。ごめんなさい;(爆)


そして今回は改行スタイルをまた大幅に変えてみました。

今細々と同時執筆を続けてる

「死神とピアノ線」

はこのスタイルです。縦読みの方向けだと思うんですが。

どうでしょうか??


ちなみに死神とピアノ線の進捗状況はまだ2.5話分です。

プロローグから余裕のグロ注意ですのが

内容は心温まったり笑いがあったりという感じを目指してます。

今TIPSとしてここに投稿してる部分ではアンセルが未登場ですが、

作者かなりお気に入りのキャラになってます。


それではまた^^

次話はいよいよ喫茶編になります。


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