神に戻された男④
[今、私は帰って来た!!」ソロモンじゃなくてマンションだけど。
実質約4年ぶりよりの帰宅だ。でも感覚的には1ヶ月ぶりの感覚だ。
ただ、どうも俺の知る世界とは微妙に歴史が違う。何が違うかと言えば日本に原爆を投下されていない。
日本はミッドウェー海戦敗戦後ハワイで降伏をしている。それにより日本本土をアメリカに占領されていないし、原爆を投下されたのはドイツだ。だからなのかこの世界には日本軍が存在してる。憲法9条の条文が違う、武力による侵略を認めないだけで、1962年10月のキューバ危機時は、実際ソ連のサハリン進行の時、軍事衝突が起きている。
この世界でもアメリカは日本の同盟国だ。しかし元の世界より日本に有るアメリカ軍の基地はかなり少ない。
まだまだ俺自身が気付いてない違いが有るかもしれない。でも親友達や会社の同僚は同じだったのは良かった。
核テロの件もいろいろ調べて分かった。主犯や何故起こしたのかまでは分からないが、実行犯と手口は明らかに成ってる。
隣の国から新潟港を経由して日本に持ち込み、レントゲン車で運搬し首都高速外苑出口の一段高く成っている場所で爆発したようだ。地上で爆発した為範囲は狭いが被害は甚大だ。
俺はそれを防ぐ為にまずは予言として掲示板に乗せる、それと同時に関係各所にメールを送る。
掲示板には競馬の予想とともに未来人で有る事を告げ、公的機関に送るメールには数日先の日経平均の終値を一緒に掲載するつもりだ。
掲示板にはジョン・タイラーの再来と盛り上がるように煽っておこう。
もちろん俺が書き込んでいることがバレない様に身分証の必要としないネットカフェで書き込むつもりだ、
もちろん安全策の為にいろいろ場所を変え足取りを掴まれない様にしなきゃならない。
もちろん天照様にも会いに行くために伊勢神宮にも行く、ただ今週は大きく動く株が有るのでそれが終わってから行くつもりだ。
未来が解ると不祥事や買収企業などが有るとき大きく稼げる。まるでRPGのレベル上げくらい簡単に稼げる。
時間の余裕が出来たら海外の株と先物も始めたいと思う。
お金も大事だけど、まず確認しなきゃいけないのは自分の身体だ。
この身体で何が出来て何が出来ないのか知らなければ対処できない。向こうの世界でもステータスは見れなかったからな。俺が使えた魔法は4属性で火水土風は使えたけど聖と闇は使えなかった。だから俺は回復魔法は使えないし闇魔法のチャーム等も使えない。
この世界にも魔素は有る。太陽から強く発せられるが地球からも感じるので多分この世界の認識では素粒子の中性レプトル俗に言うニュートリノがそれにあたるのではないかと思う。病院で暇だったのでちょっと仮説を立ててみたけど本当の事は分からない。
話を戻すが俺が一番知りたい事は身体強化が使えるかどうかだ。まずは近くの公園まで走って持久力の確認と公園で身体強化の確認を行おう。
走りだしたけど全然ダメだ、1キロも走って無いのに向こうのペースで走ったら横っ腹が痛いし息もゼイゼイする。師匠に言われた魔導士は体力だの言葉がよぎる。
この世界では直接戦う事は無いと思うが鍛えないと。途中風魔法を使って走れば楽かと思い使ったら危なくヘッドスライディングするとこだった。やっとの思いで公園に着いた。こんな思いをするなら近くの公園にしとけば良かった。
まずは10%位の強化で垂直に飛んでみたが、全然高く飛べてる感じがしない。ここで強化を増やして着地出来なくて再入院はバカバカしいので、走って見る事にした。
やっぱり基準が分からないので、30%位の強化で走ったら実感できる速さで走れたがいきなり足の筋肉に激痛が走った。
余りの痛さに周りの目を気にしながら次元収納からポーションを取り出し慌てて飲んだ。
痛みは治まったが体の疲労感は取れなかったから、少しベンチで休む事にした。
30分くらい休んでいると、近くで何かもめているような声が聞こえる。
「……ください」
「良いだろちょっと俺たちとカラオケでも行こうぜ」
「帰らなきゃ行けないので」
「良いじゃんちょっとだけだから、すぐ近くに車が有るからドライブでも良いぜ」
「困ります」
俺は別に大学生くらいの可愛い女性を助けて別に感謝されようとは思わないが、やっぱり見て見ぬ振りは出来ないな。相手は3人だけど風と水の複合魔法で両腕スタンガンがどれだけ効くのか試したいと思っていたので助ける事にした。
「困ってるじゃねーかよ、いい加減諦めろよ」
「はあ~うるせ……」
俺の顔を見て固まる4人。なんで助けに入ってるのに女性まで固まる。
俺が近づくと、うるせーと言った男の連れの2人は俺から下がる。
「やんのかよーこっちは3人だぞ」
「友達は逃げる準備してるけど、手出したら正当防衛でボコるよ」
冷めた目と声で話掛けると3人は逃げて行った。
「大丈夫だった、この時期は暗くなるのも早いから気を付けた方が良いよ」
「はい、助けて頂きありがとう御座います」
お礼を言われてるのになんか顔は引きつってる。
「気を付けて帰ってね」
「はい、ありがとうございました」
彼女はそう答えると3人が向かった方向の反対側に足早に去っていった。
別に助けたお礼が欲しいとか思って無いけど、なんで俺にビビるの、助けただけじゃん。やっぱこれで新たな出会いに発展するのはイケメンだけなのか、なんかちょっと傷ついたな。
むかしもこんな事有ったな、モールのトイレでカツアゲされてる男の子を助けたら、その子俺にお金を差し出してきた時は驚いたよ。その時も相手3人で俺は道場で習った小手投げの実験気分だったから見事に決まって便器に頭突っ込ませたけど、今回は何もしてないのに心だけ傷付いた。
「帰って退院祝いに寿司でもとろっと」
俺は今の身体では耐性も再生のスキルも使えないので、昼間は株の売買で売買が終わったらスポーツジムでも行って身体を鍛える事にした。
「ただし、異世界でのブートキャンプの様な事は絶対にしない。目指すは細マッチョだ~」
異世界での訓練はかなりハードで尚且つポーションドーピング有りの地獄だった。勇者の佐藤君とも逃げてどっかでスローライフ送ろうと話していたのに、あいつは城の侍女さんにきゃーきゃー言われて実行しないから、俺だけで逃げようとしたら師匠に捕まり死にたくなるほどしごかれた。
「そうだ、佐藤の墓参りもいかなきゃな。そうなると車が無いのは不便だし車でも買うかな。今なら夢もかなうしな」
そう俺は車を持っていない。学生時代はバイトでお金を貯めて中古の車を買ったが、社会人に成ってから通勤と利便性を考え品川駅徒歩10分のタワーマンションに引っ越した。
でも実際は駅から歩いて13分、42階建ての6階しかも北向き家賃管理費込みで19万5千円。
彼女も呼べるなと思って借りたのに未だに母さんと義姉さんと妹しか入った事が無い。
考えると悲しくなる、本当ならシルフィーと結婚して今頃は楽しい生活送っていたはずだったのに。なんか最近シルフィーの顔がはっきりと思い出せなくなってる。
「ああーあの世界に帰りたい」