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はやっ②

 ☆


 わし、実家は関西の方でな、もう子供の頃に夜見乃市に来たもんだから、大阪に近い実家は盆や正月に遊びに行くところってイメージだった。

 この冬にちょっと実家に行く用事、まあ法事だな、があった。


 もう100にもなるばあ様が亡くなってな、そのばあ様が商売やっては大儲けして、競馬やらせりゃ大穴を当てまくる。まあ凄いばあさまだったわけだ。

 年齢が年齢だから、同い年の友達なんかは皆亡くなってんだが、交友関係が広くてな、茶道だか何だかやって、まあまだ年若いやつの面倒も見てたんで、ああ葬式はそりゃ豪勢だった。


 わしの母ちゃんの伯母だったんだが、実の親が商売で忙しくて面倒見きれんなかで、同じくらい忙しいが親代わりに家の母ちゃんのオムツを取り換えていたってばあ様でな。

 亡くなった時はそりゃ切ないって母ちゃんは泣いてだな。


 でも、まあ滞りなく葬儀も終わって、まあ、せっかくこっちに来たんだからすこし遊んで来いよって、母ちゃん連れて六甲山辺りに遊びに行ったわけ。


 六甲山もすっかり観光地化しててな、まあ随分前からこんな感じだったんだろうが、自然の展望を眺めたり、ミュージアムとかがあってだな。カラクリありゃ見事だね。

 まあ、母ちゃん連れて色々回ったわけよ。母ちゃんもいい加減年だが元気の良さだけが取り柄みてえな母ちゃんで、行く先々で嬉しそうにな、見て歩いて、飯は美味い美味いって食うわけよ。


 すっかり楽しんだ後だ。日も落ちてきて、そろそろ帰ろうかって時よ。

 道路を70キロくらいかな? いやもっと出てたかもしれねえな。走ってたわけよ。

 天気は良かったよ。ずっと遠くまで見える感じで、ああ、だから見間違いとかじゃねえよ。


 そのな、急に運転席側の窓に何か当たったみたいに、コンコン、コンコンってな、ノックするみたいな音が鳴るわけ。

 なんだと思って窓の外を見てみたら、仰天した。ババアだよ! ババアがわしの車と並んで走ってるじゃねえかよ。

 おうよ。足をバタバタバターってな、残像が残るくらいに早く動かして走ってるわけ。


 わしがぎゃーと叫ぶと、母ちゃんがなんだい? って訊くわけな。

 わしが窓の外! 窓の外! っていうと母ちゃんもそれを見て、ぎゃーっていうわけ。


 そしてぎゃーぎゃー騒ぐわしらを見て、そのババアがニヤリと笑って、そのまま走って車を追い抜いて、ぱーっとどっか行っちまった。


 いや、事故なんて起こさねえよ。これでもベテランのドライバーだぜ。ババアを見たときはそりゃ大そう驚いたが、運転中にびっくりすることなんて初めてじゃねえからな。


 今の見たか? って母ちゃんに聞いたら、あれ亡くなった伯母ちゃんだった。て母ちゃんは言うんだけど。

 悪戯好きだから、ああやって出たんじゃねえかって、冗談じゃねえよ。事故ったらどうすんだって話。

 そしたら母ちゃんは、あんた運転しっかりしてるから、大丈夫だと思ったんじゃねえかなってよ。

 でも違うと思ったね。

 わしはあれこそが怪異ターボババアだと思ったぜ。

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