恨み50%
視界が真っ白に染まる。
身体中に激痛がはしり、骨が折れる音がする。
足が地面から離れそのまま後ろにふっとばされ、壁に激突する。
この3つの要因で俺はまた意識をなくしそうなった。だが、何故か意識は途切れなかった。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
和らぐことなく襲う痛みを我慢する事ができず俺は惨めに泣き叫ぶ。
精神が崩壊しそうになった時、暖かい風が俺を包み痛みを吹き飛ばしてくれる。
「助かっ」
安堵の声を出そうとした瞬間、一本の矢がとてつもない速さで飛んできた。
逃げようとするが目の前まで来ていた矢から逃げれるはずもなく、矢は俺の左目を深々と突き刺す。
鮮血を飛び散らした左目を押さえ痛みに耐えていると、5本の矢が飛んできて胴体に突き刺さる。
また泣き叫びそうになるが、声がでない。
這って逃げようとするが、手足が動かない。
[…うよ、…れ様の矢は。バジ…毒が…ってある………]
いつの間にかすぐ近くまで来ていた誰かが矢を抜きながら喋ってきたが上手く聞き取れない。
息が苦しくなってきて呼吸をしようとするが、出来ない。
激痛や吐き気を感じながら半分が闇に染まっている視界が段々と狭まっていく。
視界が完全な闇になろうとした瞬間、先程と全く同じ風が俺を包んだ。だが、安堵する事はできなかった。
それが救済の風ではないことがわかっているから。
ギラリと光った剣が俺の左脇腹を斬る。
「ギャアアアア」
絶叫と大量の血がほぼ同時に出てきた。
霞んだ視界で剣を持った者の顔がニンマリ笑っているのを見た。
一瞬、凄まじい恐怖を覚えたが、右脇腹を切られすぐ痛みに塗り替えられる。
コツン
指先に何かあたった。
何があたったか見て見ると、袋に入っていたナイフだった。
手を伸ばして掴もうとすると激痛がはしった。
痛みに耐えて掴むと俺はナイフを両手で持ち奴の方に向けた。
奴はニヤニヤ笑ってやがる。
俺が手を伸ばしていたのを知りながらあえて見物していたんだろう。
「奴は油断している。チャンスは一発。この一発で必ず」
そう考え俺はナイフを前にだし
自分の喉を貫いた。
薄れていく視界で奴が驚いているのをみた。
段々と寒くなってきて、思考もままならない。
俺はそっと目を閉じた。
「やっと楽になれる」
暖かい風が俺を包んだ気がした。
「もう死んだのか?天国に来たのか」
そう思い目を開けるとそこは、先程と同じ場所だった。
人生で一番の勇気を振り絞り行った行動をあっさりと無効にされてしまった悔しさと、又あの地獄が続く恐怖で俺は発狂した。
「なんでだよ。俺が何したんだよ。もう楽にしてくれよ。」
俺の言葉を聞いて奴が不思議そうに喋ってきた。
「何したって、お前が調子に乗って国王様の命令を無視するからだろ」
命令なにを。俺は国王と呼ばれる人に命令されたことはない。
「それだったら人違いだ、俺は命令なんてされてない。」
そう言うと奴は少し笑いながら。
「おいおい記憶喪失でもしたのか。どちらにしろ犯人が逃げてきた洞窟内にお前しかいないだろ」
そう言われて周りを見渡すとさっき入ってきた奴等いがい誰もいない。
何をいっても聞く耳をもたないだろう。
そう諦め俺はまた叫んだ。
「じゃあ早く殺してくれよ。なんで殺さないんだよ。他の奴に命令すればいいだろ。」
それ聞いた奴は今度は大きく笑った
「アッハハハ。冗談は止めろよ。お前以外にできる奴はいねーよ。全てのスキル、魔法、武技を取得できる
祝福[ゼウス]を持つお前だけがな」
スキル?魔法?武技?祝福?なんだよそれ。薄々そうかと思っていたがやはりここは異世界だ。
そう思考が脱線しかけたとき腹に激痛がはしる。
「そろそろ飽きた。早く命令に従うって言えよ。」
腹に突き刺した剣をグリグリ動かしながら言ってくる。
とてつもなく嫌な予感がするが剣が動くたびに感じる激痛とそれがそれが延々と続く恐怖から俺はその命令を受け入れた。
「分かった従うだから」
剣が更に深く突き刺さる
「従う?なんか上から目線だな。立場分かってんの」
凄く惨めだが苦しみから逃げるためプライドを捨てた。
「お願いします。従わせてください」
悔しさと痛みで涙がでてきた。
「まあ、いいだろう。」
そういうと奴は剣を抜き、俺の胴体を6回斬った。
あまりの痛さに悶絶し俺はやっと意識をなくした。