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そろそろ四時になろうかという頃、どうやら会合が終わったらしく、ぞろぞろと廊下を歩く足音が聞こえた。
見送りくらいしとくべきだよなと思い、アオイは部屋を出た。玄関に向かってさほども歩かないうちに、狭い廊下をぞろぞろと歩く人の流れに行きあたった。流れをやり過ごし、後ろから附いて行った。お客さんらしき人達が先を歩き、その後ろにこの廟堂の人達、タパやリリナネや少年達が歩いていて、アオイはその後ろから、あまり目立たないように附いて歩いた。様子がおかしいことに気附いた。お廟の少年達が何だかフラフラしている。こいつらどうしたんだ? 訝しかった。
門の処で客人達を見送った。やけに騒々しく陽気な少年達と一緒に。客の一人がアオイに歩み寄り、頭を下げてこう挨拶した。
「アオイセナ様ですね。私は南の廟堂のニシ・ヌタお婆様の代理の者です。ニシ・ヌタお婆様は高齢の爲本日こちらに参れませんでしたが、是非アオイ様にお会いしたいとおっしゃってました。一度、南の廟堂へ遊びにおいでてください」
「はい。分かりました」
帰って行く客人達を、おじぎして見送った。
客の姿が消えると、彼の前にいたシュスがふり返り言った。「アオイ殿。このあと、いいかな?」
「はい」約束していた。忘れてはいない。
「部屋で待っていてくれ。用意が出来たら人を遣る」大魔導師はそう言い残すと、アヅハナウラやタパと一緒に廟堂へ戻っていった。
その後ろからアオイも戻りながら、しかしどうにも気になって仕方なかった。ユタが隣でユラユラしていた。
「どうしたんだ?」
「何がですか?」ユタは上機嫌な顔をあげた。しかし頭がゆっくりと円を描いていた。
「みんな変じゃないか?」
「そんなことないれすよ」
れすよ?
微かに酒臭い。客人が帰ってしまった今も酒の臭いがするのはおかしかった。
「酔っぱらってるのか?」
「まさか」
ユタは笑いながらかぶりをふった。それから弾むような足取りで、リュウ少年と一緒に駆けていった。途中から他の少年も巻き込んで鬼ごっこになった。ここでは珍しい光景だった。




