Fiiリモコン
桃色おさげに黄緑のカチューシャのせて、水色眼はクリクリ光る。
燻銀ブーツのゴツいの履いて、ベージュのブラウス?ミニスカ・ショーパンかわいい可愛い女の子、わたし!モモエちゃん!
3つめのミサイルの落ちた場所が良くなかったらしい。一面蟹模様になりつつある。
「カニだ!カニだ〜〜!!」
深いとこでも踝程度の超遠浅の海、岩盤質の海底を美味しそうな蟹が走り回っている。
足で甲羅を押さえ込み、挟まれないように気を付けて掴む。よっと持ち上げ眺める。
膨らんだ三角形の甲羅、8本の足と2本の鋏、間違いない!
「これは・・・カニ!」
青い子も起きたみたいだし、人数分3杯捕まえなきゃと、2杯めを捕まえたところで魔人サファイザの船群から閃光と爆発音が轟く。
「なにカニ?」
砲撃したようだった。着弾点を見ると何やら蠢いている。蟹以外にも何かいるらしい。目を凝らすと水しぶきの中に大きな影が見える。
「狂獣かな?・・・うわ!?」
突然海底が盛り上がり影諸共弾け飛ぶ。魚雷かな?
「容赦ないなぁ〜?・・・ぎゃあ!」
空が真っ暗になる程の強い光と、衝撃波と化した轟音が身体をなぶる。着弾点から地鳴りが響き小さなキノコ雲がならび昇る。
今のは戦艦クラスの大口径、並の狂獣なら耐えられないはず。
「これはやり過ぎでしょ、全滅ですわ。間違いない!これもし無傷で抜けてくる奴おったら、そいつ災厄級の化け物ですわ!」
水と岩と肉片の爆煙を掻き分け、まず1匹。
半透明の殻に焦げ茶色の縞模様、乗用車サイズの楕円形で平たい身体、先端が鞭の様になびく曲がるストローのような、細長い脚が両側面を埋め尽くしている。
体長の倍はあるケーブル状の黒い触角の根元には、黒い林檎サイズの目と人の脚ほどの大きさの牙が覗く。
「F・G・Gかな?こいつは、弾避けただけっぽいな?」
持っていた蟹は逃がしてあげた。
シュシュ・・・・
ミニスカートの刺繍を撫でると模様が剥がれ棒状に纏まり、白いリモコンを形取る。
裏面にトリガー状のBボタン、表は上部にAボタンそれを囲うように十字キー、その下にテンキーが並んでいる。
「ちょうどいい、貨物船からパクったこれ、早く試して見たかったんだ」
乾いた金属音と共にリモコンの先から、剃刀ほどの厚みしかない刀身が飛び出す。
刃渡り60cm、諸刃の直剣で切先は円錐状にすぼまり、刃先から剣の腹、反対の刃先まで見た目の変化が全くない鏡面仕上げになっている。
Fゲジが最大まで加速し此方に狙いを定める。
単分子膜生成装置から展開された、防御力無視の切先を、Fゲジと自分の目線の間に挟み込む。
瞬間、左右に3度フェイントをかましFゲジが飛び掛かる。
Fゲジが飛び上がりきる前に、1歩踏み込み背面跳びで頭上をとる。
そのまま、刀身を身体ごと一回転、牙を躱して首を刎ねる。
さらに、腕を振り抜きもう一回転、首の付け根から胴の中程まで撫で斬りにする。
制御を失い絡まって千切れた脚を、バラバラと撒き散らしながらFゲジの死骸が転がって行く。
刀身を日に透かし、目を細める。思わず微笑んじゃう。。。
「・・・戦略兵器のカテゴライズに違わぬ超火力。手応えが全く無くって斬ってる気がしなかったな」
海老のような鋸刃の頭、いも虫に似たぶよぶよの胴、全長20m胴回り2m、既に攻撃態勢の2匹目が胴をバネの如く縮め、モモエちゃんに狙いを定める。
「よし!次は、列車エビね!!」
左脚のアンカーを岩盤に打ち込み固定する。右脚を持ち上げ片脚立ちになる。最上段に構えさらに上体をそる。
元の5分の1ほどまでに縮まった胴のバネを解放し、1本の槍と化した海老が獲物を穿とうと爆進する。
倒れ込む勢いで剣を振る。踏み込んだ右脚は岩盤砕き、身体は海面を打ち飛沫をあげる。海底スレスレで頭を止め、振り抜いた両腕を左に束ねる。
「あぁ失敗した!!」
刀身が中程から折れている。慌ててキキンッ!と金属音を2回鳴らす。折れた刀身をそのまま戻し、もう1度展開し直すと元どおりになった。
「お!直った!?・・・脆い分リロードが早いのかな?」
大きく弧を描いて方向転換した海老が、胴を捻りながら圧縮しバネを蓄える。
今度は、切先を海老に向け、腕を伸ばし刀身を海面と平行にする。脚を肩幅に開く、アンカーは打ち込まない。
読み合いも、へったくれもなく海老が発車し、バネを利用した急加速と猛烈な回転で獲物を貫こうと穿進する。
ゆるりと摺り足気味に右脚を出す。打ち合う瞬間、切先をくゆらせ海老の回転に合わせて下を潜り抜ける。
海老の顔面ど真ん中から3m程の切れ込みが入る。遠心力に引っ張られて胴が裂けて行き、最後は真っ二つになり、片方は岩底にめり込み、もう片方は空へ放物線を描きながら飛んで行った。
2階建ての家程の大きさの蟹っぽい3匹目が船にのそのそ近付いていく。
少し後方に、軽トラックサイズのヤドカリ風な4匹目が、殻と水面の隙間から潜望鏡のような眼?を出して様子を伺っている。
そのヤドカリの上に女人型の5匹目が、脚を組み膝に肘を乗せ頬杖をついて眺めている。胸は並だ!
両脇に控える大胸筋半端ない人の上半身を蟹に乗せたような6匹目、7匹目は、鋏を拡げて人型を庇うように陣取る。
「あっ!人型いるじゃん!・・・話せば何とかなったんじゃないの?」
足元で海が不自然に波打つ。
「!?いやぁ・・・まあ、あれだけ弾撃ち込んどいて、ごめんなさいじゃすまんかな」
モモエちゃんの背後の海面が盛り上がる。
水のように透き通った肉体を持つ、クラゲタイプの8匹目が透明な銛を撃ち込んで来た。