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墜落実験

 蒼い空、碧い海、魔人サファイザの所有する陸砕船群は、江都(ごうと)の索敵圏内を抜け、深い所でも水深0.3m程度の浅瀬が永遠続く海を、海底ごと砕いて進む。


 お得意様の旅学生、モモエちゃんが落下対策の装備が欲しいと言うので、襟の裏に仕込めるタイプのパラシュートを売ってあげた。


 早速使って見たい!と言うので、船舶コレクションの1つ、陸砕戦艦に装備していた狂界間弾道ミサイルの弾頭を外し、代わりに丸い手すりをのっけて打ち上げてあげた。


 「イェ〜〜イ!フゥ〜〜!!」


 いつも通りテンション高めのモモエちゃんが爆音と共に飛んで行く。

 そう言えばまだ使い方教えてなかったなぁ・・・


 通信装置も渡していない。これは不味いと、ミサイルの安全装置を起動させ、自爆させて落っことす。


 あの子の装備は全てわたしが発掘して、わたしが調教仕直したもので、パルシエット家御用達の超高級ブランド、白馬ヶ原(はくまがはら)製、生体装(バイオテック)甲服(・アーマー)と、新人類バロが統治する衛星国家、セクター・バベルの老舗、天穿(バベル・ア・)塔△(トライアングル)製、走破靴の限定モデル、鹿の蹄(ディア・フーフ)(・スリー)を使いこなせていればこの程度、ダメージは無に等しい筈なのだ!


 無惨はじけたミサイルの残骸と共に大回転しながら、モモエちゃんが海へ突っ込む。


 ダメか?思わず片手で口を覆う。


 焦げたモモエちゃんが残骸の間をすり抜けながら、両手を突き上げフラフラ、テクテク、頬をプクプク膨らせ怒りながら戻ってくる。


 ミサイルの代金はこっちで持ってやるか・・・


 「よし!端末は持ったわね?」

 「持った!」

 「打ち上げるわよ!」

 「あい⤵︎」

 「弾道弾、発射(てっえ)えええ!!」


 パラシュートの使い方は教えた。通信機も持たせた。わたしの作ったノイズキャンセラーは、極上の仕事をこなし、最上の音質を確保する。


 「聞こえる〜?」

 「聞こえるよ〜!」

 「もうすぐ2000メートル〜」

 「は〜い」


 ミサイルは加速を続け、ものの数秒で米粒ほど大きさになる。


 「そろそろ降りて来なさいよ」

 「あ・・・いぎゅっ・・・!」


 ミサイルの加速に押し潰され、声が出ないらしい。双眼鏡で覗くと丁度、手すりの間から、ずり落ちるように落ちるところだった。


 「どお?」

 「か〜ぜ〜が、つよ〜〜い!!」

 「まあ、そうでしょうよ」

 「うひょ〜〜!」


 手と脚を広げ、うつ伏せの状態で落ちてくる。


 「うまいこと、降りてくるじゃない」

 「でぇ〜しょおおお〜〜!!」

 「その辺でパラシュート開いちゃいなさいよ」

 「はい、ん?ないぞ!(迫真)」

 「ん?」

 「まだ、受け取ってない!」

 「そんな筈ないでしょう?確かに渡したはずよ?」

 「ないぞ!!!」

 「・・・ポケットの中は?」

 「ない!」

 「逆は?」

 「お!?」

バナナ型のパラシュートを取り出す。

 「「あるじゃん!!!」」


 時すでに遅く着水、即着底、豪快に転がりながら轍を創って行く。


 鹿の蹄の放熱板が最大まで展開され、靴底から3節のシャフトに、ルーロー三角形とバイオハザードマークを混ぜたようなアンカーが飛び出し、水底を剥ぎ取る。

 生体装甲服の袖が剥がれ、筋肉と杉の幹を混ぜたような、3本目、4本目の腕となって底を押し返す。


 最初よりも上手く戻ってきたモモエちゃんが、手のひらを合わせて腰を曲げ、どうも申し訳ないです。と、ごめんなさいのポーズを取る。

 気にしんさんな。と、手を振り返す。

 すると、人差し指を立ててもう一回だけ。と、(のたま)う。


 3本目は買い取ってもらう。


 「よし、3度目の正直ってやつね!・・・あっ!」


 本日3度目の打ち上げの最中、唐突にそっぽを向いて手を振りだす。

 目線を追うと、江都(ごうと)で拾った青い子がいた。


 「あら、起きたのね・・・」


 ろくな装備も無しにあの耐久性と再生力、もしこれに加え火力もあるようなら、目を掛けてやってもいいかも知れない。ちょっと試してみよう。


 モモエちゃんが飛び降りるのを待って、1番近い狂獣の巣へミサイルの進路を向ける。


 「ん〜・・・わかった。完璧に理解した。。。」

 「へぇ、何を?」

 「この靴の扱い方!」


 猛スピードで斜めに海面へ突っ込むモモエちゃん、アンカーをフル回転させ、スライディング気味に最小限の水しぶきで、スムーズなランディング。もうこの子にパラシュートは必要ないらしい。


 遥か後方の水面へ、弾頭の代わりに手すりの付いたミサイルが飛び込む。着弾点を中心にしぶきとともに波が起こり広がって行く。


 進む程に大きくなる波に、無数の影が映り込む。


 やがて、影が波を突き破り、甲殻類や節足動物を想わせる狂獣の波が押し寄せて来た。

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