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顔も知らない人  作者: 葉山 一
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顔も知らないふたり

この世の中には様々な出会いがある。

出会いの種類。幼馴染、学校、職場、知らない人とひょんな事で仲良くなることもあるし、知人の紹介や最近ではSNSや出会いアプリなどがある。SNSで出会った人同士が結ばれたりする事もあるのだろうし、もちろん出会い系アプリも然り。

しかし、出会いは自由だが世間に受け入れられる出会いをしていないと困る。もし出会いアプリなどで知り合っていたら、あまり人に会いたくない。

もし、誰かから「どうやって出会ったの」なんて聞かれたら、きっと嘘をつくだろう。出会い系などで出会ったなんて恥ずかしくて言えないからだ。

だからきっと僕も、そう聞かれた時は嘘を付くのだと思う。


隼人がスマホをいじりながら、こっちを向いた。

「なぁ智治、落書きチャットやったことある?」

隼人は彼女がいるのに、良く出会い系アプリや、チャットをやっている。暇つぶし、と隼人は言うけど信用できない。何故なら、隠し事が多いやつで、嘘を付く事もよくある。彼女ができた事もずっと言わなかったし、隼人が隠れて二股をかけている事も知っている。隼人はバレてないと思ってるが、一度、彼女ではない女と歩いてるのを見たことがある。手を繋いでいたから間違いなく浮気だ。そんな隼人は出会い系アプリでいい人がいれば必ずあってやましい事をしようと考えてるに違いない。

「智治彼女いないだろ?落書きチャットで出会ったら?」

隼人は良く俺をバカにした発言をする。

「そんなので彼女できても嬉しくないよ、それに変な人しかいないじゃん多分。」

「意外とそうでもないぜ、サークルの先輩落書きチャットで出会った人と飲みに行っててさ、写真見せてもらったけど、すげぇ美人だったよ。だから俺もやってみようと思ってさ」

「マジかよ、でも怖いよ。だって実際に会って変な人だったらどうしたらいいか戸惑うよ。後ろから筋肉モリモリの男とか出て来て金取られたりしたらどうするんだよ。」

「智治は本当に考えすぎなんだよ、もしそうなった時のためにお金いっぱい稼いどけ。」

「そうだな、バイトいっぱいいれてもらおうって、アホか」


大学2年の春休みを迎えた。サークルに入ってない僕は書店のバイトの日以外は特にやる事もなく、家にいることが多い。隼人テニスサークルに入っているから、サークルやバイト、サークル仲間と飲み会なんかがあいつの日常だ。

時刻は午後6時を迎える頃、 書店に隼人が店を訪れた。隼人は話し声でかいので、いつも外に出るように促す。

「なんだよ」

「いやいや、ちょうどお前のバイト先通りかかったから寄ったの」

「わざわざありがとうな」

「それよりさ、智治、俺今から落書きチャットで出会った女と会うんだぜ」

「マジかよ、顔は見たの?」

「ああ、落書きで仲良くなった後、ラインiD交換してさ、ほら、見て見て、アイコンの画像しかないんだけど、結構可愛いだろ?」

「確かに、でも隼人は彼女いるだろ?」

「関係ねぇよ、バレなきゃいいの、向こうも彼氏いるみたいだしな」

「あんまりよくないよそういうの」

「彼女いないからって嫉妬するなよ、お前も意地張ってないで、さっさと落書きチャット始めろよな」

「俺はいいよ、それよりもうバイト戻らないと」

「おぉ、悪いね、また後日報告するよ、バイト頑張ってな」

そう言って隼人は去っていった。隼人の後ろ姿はこれから遊園地に行く子供のようだった。


窓の外が少し騒がしい。カーテンを開けてみると、外は大雨だった。窓に打ち付けられる雨粒が、まるで非リア充の俺をからかってるような気がした。

雨は好きだ、雨が降っていると何もしなくていい理由になる。心置き無く家に篭っていられる。ぼーっとしていると、バイト中に隼人が来た日のことを思い出した。隼人の後ろ姿に希望を寄せていたのは事実で、あの日以来少しだけ落書きチャットに興味を持っていた。暇つぶし、隼人が良く使う言葉を胸に借りて、落書きチャットをダウンロードした。


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