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  作者: ありしょう
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   第五章 過去

      二十三


 翌朝。新人は出勤してすぐに、いちると記事の内容について打ち合わせをした。そして、文書構成の手直しと、写真や資料の貼付位置についても指摘を受けた。

「先輩、厳しいっすね。昨日は上出来って言ってくれてたのに……」

 最近、いちるとの関係が急接近したように思えたので、親切丁寧な指摘を受けられると勘違いしていたのだ。

「それは取材の話でしょ。そこから記事にするのは別の話よ。それにこのまま出しても編集長が首を縦に振らないわ。せっかくのチャンスなんだから編集長を驚かせるくらいの記事にしましょう」

 指摘は厳しかったが、こんな間近で打ち合わせをすると、いちるの香が妄想を先走りさせ、内容が頭に入ってこない。

「わかりました。頑張ります」

 それでも返事だけは繕えた。

「その意気よ。それと太陽の会については、もう少し詳しく載せたいわね。こういう人達の地道な努力があってこそなんだから」

「わかりました」

 再度鎌ヶ谷へ出向く事になったのは、都合がよかった。

 太陽の会に関する取材として、塩野谷姉妹を知るであろう人々から話が聞けるからだ。ちょうど姉妹を知っていそうな人たちを数人程、見当も付けていた。

 上手くいけば取材だけでなく、塩野谷姉妹を見分けるヒントも得られるかもしれない。意気揚々としてオフィスを出るとき、いちるが軽く手を振って見送ってくれたので、新人のやる気度はさらに上がった。

 もしかしたら先輩は気があるのだろうか? そんな妄想を車内で暴走させていると、いつの間にか目的地の新鎌ヶ谷駅で発車のベルが鳴っていた。

 慌てて電車を降りて改札を出ると、聞き込み先のメモをポケットから取り出した。

 最初に訪れたのは、駅前にある地元紙の出版社『鎌ヶ谷かわら出版』だった。以前この地元紙が太陽の会を取材していた事を、ホームページで確認していた。

 新人は高架下にある、鎌ヶ谷かわら出版と看板が出ているテナントに入った。三畳ほどのスペースに事務机が一台。そこで、もさもさ頭の中年男性が一人でパソコンと向き合っていた。

 机の上には雑誌やパンフレットの類が煩雑に置かれ、壁には新聞記事の切り抜きが無造作に貼られている。わずかなスペースにパイプ椅子が一脚、申し訳なさそうに置かれていた。

 その男性に用件を伝えると、その男性こそが鎌ヶ谷かわら出版唯一の社員で、編集長の竹中利治だった。

「ああ、塩野谷さんね。よく知っているよ。狭くて申し訳ない。そこに座って」

 一通りの挨拶を済ませると、新人は姉妹について切り出した。

「塩野谷さんと初めて会ったのは、もう三十年ほど前だね。このかわら出版を立ち上げて、一番最初に取材をさせてもらったのが太陽の会だったから。その後も何度か取材させてもらったよ」

 新人も太陽の会を取材した事を話した。しかし竹中は、姉妹のどちらかが亡くなったということは知らなかった。

「そうなの? 亡くなられたんだ。そうか……」

 新人は姉妹の人柄について訊いた。

「お二人はどんな方だったのでしょうか?」

「そうだね、二人とも大変な努力家だったよ。太陽の会はこれまで何度か経営的に苦しい時期があってね。だけどあの二人は、その度に力を合わせて乗り切ってきたんだ」

「出版物が童話中心ですから、大変でしょうね」

「そうなんだよ。もちろん遠藤会長の経営手腕があったからだと思うけど、あの姉妹にはどこか執念にも似た何かを感じたね。まあ、戦争を乗り超えた世代だから、現代人と違って胆が座っているのだろうけれど」

「なるほど。そういえば姉妹は本当によく似ていて、よく間違われると聞きましたが、竹中さんは二人を見分ける方法って、何かあったのですか?」

「二人の見分け方? 見た目では無理だよ。本人に聞けばいいだけだし。私は会う度に名前を聞いてたよ。松子さん? 菊子さん? ってね」

「そうですか……」 

 その後少し雑談が入ったが、二人に関してはこれ以上の収穫はなかった。礼を言うとテナントを後にした。

 次に訪れたのは、鎌ヶ谷市内に店舗を持つ弁当屋『手作り弁当・ありの実』だった。太陽の会を取材した帰りに、入れ違いで会った弁当屋をチェックしていたのだ。

 ありの実の店主夫人の鈴木佐和子は、配達の合間にも拘わらず、取材に協力してくれた。

「太陽の会様には、十年以上ご贔屓にして頂いております。今回は本当に残念です。もちろんお二人の事は存じております。配達ついでによく雑談もしましたから……あっ、これ主人には内緒ね」

 女性を形容する言葉としては不適切だが、肝っ玉母さんという言葉がぴったりな、そんな女性だった。

「二人とも童話に対する熱意はすごかったわ。それにね、私も太陽の会さんの童話や絵本は気に入っているのよ。息子が小さい頃に、よく買わせていただきましたから」

 新人は、太陽の会で見た絵本の類を思い出した。

「自分はよく知らなかったのですが、童話や絵本の類を数多く出版されていますよね」

「そうよ。あまりメジャーなジャンルとは言えないけれどね。それでも毎年、童話作品コンクールっていうのを主催していてね。少しでも多くの人に童話を知ってもらい、少しでも多くの童話作家に作家としての道が開けるようにって。そこまで童話に対する熱意のある方々だったわ」

 話好きなのだろうが、聞かなくてもどんどん話してくる。新人は適当に相槌を打ちながら、タイミングを見計らって切り出した。

「そう言えば、あのお婆ちゃん達って本当にそっくりだったようですね? よく間違われたとか聞きましたが、何かお婆ちゃんを見分ける方法とかありましたか?」

「二人を見分ける方法ですか? たしか松子様には右頬に黒子がありましたよ。でも見えにくいし、まじまじと顔を見るなんて失礼だからね。本人に聞くのが間違いないわよ」

「そうですか……。でも、そんなにそっくりだと、お互いに入れ替わって周りを困らせる、なんていう悪戯しなかったのかなあ?」

 新人は最近テレビで、双子の入れ替わりを親が気付くか? という番組を見たのを思い出した。ちょっと不自然さがあったが、独り言とも取れる言い方をすると、鈴木佐和子はきっぱりと断言した。

「それは絶対にないわよ。あの二人はとっても真面目なお婆ちゃん達なの。そんな悪戯をするわけないわ」

「そんなに真面目なお婆ちゃんなんですか?」

「そうよ。真面目で努力家。質素倹約を絵に書いたような姉妹だったのよ」

「なるほど……。どうもありがとうございました」

 黒子については、付け黒子だったと判明している。だから今のところ二人を見分ける方法は『自己申告』しかない。落胆した新人は次の場所へ向かった。


「あら、いらっしゃい。どうぞお掛けになって下さい」

 二度目となる太陽の会。オフィスには久留米美香以外誰もいないようだ。ラウンジコーナーで二人、コーヒーを飲みながら話すことになった。

「その後取材のほうはいかがですか?」

「おかげさまで、順調に進んでおります」

「まあ、楽しみ。千葉新聞さんの特集号、ぜひとも見させてもらいますね」

「有難うございます。ところで今日は塩野谷姉妹について、人柄というか、そういう事をお聞きしたくて来たのですが、お時間大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。なんでも聞いてください。わかる範囲でなら何でもお答えしますよ」

「有難うございます。さっそくですがお二人の人柄をお聞かせください」

「そうですね……名誉会長は、とても面倒見が良かったです。以前お話した新田先生の事ですが、先生は太陽の会が主催する童話作品コンクールで入賞した方でした。でも当時の先生は経済的に苦しく、それを知った名誉会長……当時は会長でしたが、先生を太陽の会の職員として採用したのです。もちろんそれなりの作品を作れる方だったからですが、そこまで面倒をみる人って、あまりいませんよね? 困ったときはお互い様という、そんな感じでした」

 真面目で努力家、そして面倒見がいい。そんな姉妹のどちらかが亡くなって、奇妙な遺言を残した。何故だろうか?

 新人は雑談を交えながら、本題である二人の見分け方をさり気なく訊いてみた。

「二人を見分ける方法ですか? それはご本人に名乗ってもらうしかないと思いますよ。おそらく他の職員に聞いても同じかと思います」

「そうですか……」

「ええ、見た目ではわかりませんから……あ、そういえば松戸にある〝憩いのひと時〟という喫茶店はご存知ですか?」

「いえ。その喫茶店が何か?」

 久留米の話によると『憩いのひと時』は戦前、浅草に店を構えていたそうだ。しかし、空襲で焼けてしまい、松戸市に移ってきた。同じように戦前は浅草に家があった塩野谷姉妹は、その頃からの常連客で、松戸に移ってからも最近までよく通っていたらしい。

 当然、喫茶店のマスターも代替わりしているだろうが、塩野谷姉妹は七十年以上の『超常連客』という事になる。話を聞く価値はありそうだ。

「浅草にいた頃からの知り合いですか。貴重な情報、有難うございます」

 簡単な地図を書いてもらい礼を言うと、新人は浮き足立って松戸へと向かった。


 JR松戸駅から徒歩五分程の所に、喫茶店『憩いのひと時』はあった。一階が喫茶店で二階が住居になっている。中に入ると、カウンターに二十代半ばと思われる、痩せて物静かそうな若者がいた。彼が今のマスターだ。

 塩野谷姉妹について尋ねると、姉妹は先月も店を訪れていたことがわかった。姉妹はコーヒーを飲みながら、彼の曽祖父である植木辰雄と昔話をするのが楽しみだったらしい。

 植木辰雄が、喫茶憩いのひと時の初代マスターというわけだ。

「植木辰雄さんとお話がしたいのですが、どちらに?」

 ちょっとまってて下さい。そう言って彼は二階へ上がったが、すぐに降りてきて、新人に二階へ上がるように言った。上で話を聞くと言っている様だ。 


「よく来ましたね。あの二人のことならよく知っているよ。最近来ないようだけど、元気にしていますか?」

 植木辰雄に会った新人は、この人から話を聞き出せるかどうか不安になった。なぜならこの植木辰雄という人は、視力を失っていたからだ。

 それでも新人は、塩野谷姉妹の事を説明した。植木は耳も悪いらしく、何度か聞き直してきたが、亡くなったのが姉妹のどちらか分からないので、二人を見分ける方法を探していると、大きい声でゆっくりと言った。

 植木はそれを聞くと驚き、視力を失った目から涙を流した。そして少し落ち着いたのか、思い出したかのように語りだした。

「わたしは戦前、浅草に店を構えていた時から、あの姉妹のことは知っていました。東京大空襲で店を焼かれて、親戚を頼りにこの松戸に着て、ここで店を再開したんです。彼女らもやはり空襲で家と家族を失い、赤ん坊を連れて鎌ヶ谷に戻ってきました。元々鎌ヶ谷の出身だったそうですからね。こっちに来て何年かした頃、彼女らが有志たちで太陽の会と言う会を立ち上げたと耳にしました。懐かしくなって連絡をすると、すぐに店に来てくれたんですよ。それから月に一度くらいの頻度で通っていただきました」

「戦前からの常連さんだったのですね」

「ええ、今でも彼女らが最初に店に来たときのことを覚えていますよ。本当にそっくりな子達が店に来て、子供たちの教育や未来について熱く語っておりました。そのうち見ず知らずのお客さんも交えて、討論会になってしまったのです。後で聞いたら、彼女らは東京女子高等師範学校の学生さんだと言っておりました。今のお茶の水大学ですよ」

「喫茶店で討論会ですか?」

 植木は、うんと頷いてから続けた。

「あの時代にその手の討論は、それほど珍しくなかったですよ。しかし、若い女性があそこまではっきりと意見を主張するものだから、しかもそれが双子の姉妹達ともなれば、それは珍しかったです」

「なるほど」

「なにせ女性が、今で言うところの大学に行くこと自体が珍しかった時代です。そんな彼女らが学友さんと四人でよく来てくれました。塩野谷姉妹は華のある二人でしょ? だからそれ目当ての客も結構いたのですよ。多少は店の売り上げにもなりました」

「そうなんですか」

 当時の姉妹を知らない新人は、華のある姉妹だと言われてもピンとこなかった。塩野谷家で会った、あの大婆ちゃんしか想像できないからだ。

「だけど空襲で、二人は子供以外の家族や親戚を亡くしてしまった。それでも生き残っただけ有難く思わんといけません。わしの目と耳も空襲の時にやれれてから、徐々に利かなくなりまして、今では耳はかろうじて聞こえるけれど、目は何も見えなくなりました。それでも生きてることに感謝しています。お迎えが来たら堂々と胸を張って迎えられてやりますよ」

「ところで植木さん。何か塩野谷姉妹を見分ける方法とかはご存知でしょうか?」

「え? 二人の違い? そりゃあ本人に聞けばいいでしょ?」

「それが……」

 さっき新人は話さなかったが、残った方も自分が誰なのか分からなくなっているということを付け加えた。

「え? 自分がわからないって? そうかい……そうか。わしらも年じゃからな。そうか……」

 新人は、植木の話に出てきた学友のことが気になっていた。

「すみません、先ほどの話に出てきた、塩野谷姉妹と一緒に来てた学友さん達って、お名前とか分かりますか?」

 植木は新人の質問に、やや時間を費やしたが首を振った。

「ええと名前は……すみません。忘れてしまいました。ただ塩野谷姉妹と比べたら、地味で大人しい感じの子達だったよ。とっくに亡くなっていますがね」

「え?」

「空襲の時に焼夷弾でね。塩野谷姉妹が最期を看取ったらしいです。まだ若いのに、かわいそうだったな。あの時は十万人以上がそうやって命を絶たれたんだ」

「……そうですか」

 結局ここでも塩野谷姉妹を見分けるヒントは得られなかった。新人にとっては、ただ時間の壁が立ちはだかっているだけではなかった。戦争というもう一つの壁が立ちはだかっているのを、否応なく感じた。

 植木は煙草をふかしながら遠い昔を思い出すような顔をした。そして視力を失った瞳に涙を浮かべ、それっきり黙ってしまった。


 新人は他にも、塩野谷姉妹の知り合いを探したが、全て空振りに終わった。

「ふうーっ」職場に戻ると溜息をついた。

 ここ最近になって二人と知り合った人達ならともかく、古くから付き合いのある人達でさえも『二人の違い』はわからない、というのが結論だったからだ。そもそも本人がいたのだから、その都度聞けばいいという事だったのだ。

「どうかしたの?」

 いちるには正直に現状を説明した。

「――という訳なんですよ」

「ふーん、だったら卒業アルバムとかあれば良いのにね」

「え?」

 新人は昨日、朱里に頼まれた時にも、卒業アルバムがあればヒントが得られるかも、と言われていた。しかし、よく考えるとそれも期待できない。直に姉妹を見ても区別がつかないのだ。写真なら尚更無理だろう。

「でも、アルバムを見たって、同じ顔が並んで写っているだけですよ」

「そりゃそうでしょ? アルバムなんだから。私が言いたいのは写真じゃなくて、一緒に載っているかもしれない文集の方よ」

「文集?」

「そう。もしかしたら何か書いてあるかもしれないじゃない? 私たち実はここに違いがあります、みたいな」

「あっ、そうか。双子に関する事が何か書いてあれば、それがヒントになるかもしれない。それで朱里さんは、卒業アルバムからヒントが得られるかもって言ってたんだ」

「朱里さん?」

「あっ、す、すみません。実はこれ、塩野谷朱里さんからの依頼なんですよ」

「塩野谷朱里さん……。ふーん、あの女の人から」

「も、もちろん仕事に支障の無いようにしますので」

「当たり前よ、そんな事」

 いちるは急に不機嫌になり、机に向かって自分の仕事を始めた。


      二十四


 鎌ヶ谷市内。人通りの少ない路地裏を塩野谷啓一は、辺りを気にする小動物のような足取りで急いでいた。

 やがてあるビルの裏手の通りに出た。そこから建物を回り込み、正面玄関前まで来ると足を止めた。建物の看板には『童話出版社・太陽の会』と書かれてあった。

 啓一は少し躊躇った様子だったが、辺りを警戒すると意を決したように二階へ上がり、事務局のドアを開けた。しかし、建物の中に片足を入れた途端、動きが止まった。嫌と言う程聞き飽きたダミ声、幸一の声が聞こえてきたからだ。

「――という事だから、そのう、なんだ。ここにも二人を見分けられる人がいないならしょうがない。その件はいいとしてだ。と、とにかくお袋が亡くなったんだ。空いた役職を誰かがやらんといかんのだろ? そこにわしを入れてくれと言ってるんだよ」

 入り口すぐの左手にあるラウンジコーナーで、幸一は背を向けて座っていた。太陽の会の関係者と思われる男女が応対しているようだが、その表情は困惑していた。

 啓一はゆっくりと歩み寄り、幸一の背後に立った。幸一と話していた二人のネームプレートから、田所という中年男性と久留米という若い女性だとわかった。

 二人が啓一に視線を向けたので、二人には一礼をしてから幸一に声をかけた。

「何の話だ?」

「あぁ?」

 振り向いた幸一は、驚きの表情を見せ狼狽した。

「な、なんや、お前こんな所で何しとる?」

「それはこっちの台詞だ。何だよ、お袋の役職に自分を入れろって」

「な、何の事だ? それよりお前は何しに……まさか、お袋の代わりに名誉会長の席に就こうだなんて、姑息な事を企んで来たのか?」

「そ、それはそっちだろ。たった今言ってただろ?」

「ぐっ……」


 昨夜。鈴子は啓一に、ある話を持ちかけてきた。

 もし亡くなった方の名を言い当てられなかった場合、三億円相当の遺産のうち半分は、太陽の会に寄付する事になる。そんな場合に備えて、今からでも啓一自身が太陽の会へ入れないだろうか? というのだ。

「確かにそうだな。亡くなったのは俺のお袋なんだから、息子の俺が母親の跡を引き継ぐのは当然だ。よし、さっそく明日、みんなに言ってみよう」

「だめよ、そんな事」

「どうして?」

「だって息子という点では立場は同じなのよ。いえ、きっと自分が家長だとか言って、名誉会長の座も横取りするに決まっているわ」

「もっともだな……。よし、じゃあ明日こっそりと行って、それとなく話をしてこよう」

「しっかりね。もし役員になれれば、何かと口実を作って回収出来るはずだし」


 そんな事を言われてやって来た啓一だったので、あまり強く幸一を非難することが出来なかった。

「じゃあ、そう言うお前は、一体何しに来たんだ?」

 啓一はとっさに思い付いた嘘でごまかした。

「お、俺はただお袋達を見分けるヒントが無いかと……。それにお袋達がどんな風に仕事をしていたのか、そ、そんな話が聞きたかっただけだ。そしたら〝空いた役職に俺を入れろ〟って、俺はちゃんと聞いてたからな」

「うっ、うるさい。俺はただ、お袋がやろうとしていた意思を受け継ごうとしただけだ」

 幸一もあきらかな嘘を口にした。しかしその動揺ぶりを見た啓一は、敢えて冷やかな目で訊いた。

「ほう、何だよその意思って?」

「そ、それは、だから、ここで毎日〝俳句〟を作って、日本一の俳句の会社にすることだ。そうだろ? なぁ?」

 突然話を振られた田所と久留米は、俳句という言葉に唖然とした。

「ええと……申し訳ございませんが、私ども〝俳句〟は作っていないのですが……」

 久留米の返事に、幸一は目を見開いて驚いた。

「えっ? そうなのか?」

「はい」

 狼狽え目を泳がす幸一に、啓一が優勢に出た。

「何、適当なこと言ってんだ。しかも瞬時でばれるような嘘つきやがって」

「う、うるさい。あっ、そうだ、思い出した。この件は、お袋から直接聞いたんだ。太陽の会を日本一の俳句の会にするのが夢だとな。お、お袋が俺だけに打ち明けた話だったんだ。俺は家長だから特別だって。だから誰も聞いてなくて当然だ。はっはっは……」

「また見え透いた嘘を言って」

「何だと。てめえ、俺の言う事が信じられねえってのか?」

「ああ、信じられねえな。そんなに特別だったら、亡くなったのがどっちかわかるだろ? 言ってみろよ、特別なんだろ?」

「わかってはいるが、今は言えねえ。物事には順序ってもんがあるんだ」

「はあ? 何だよそれ」

 気まずい空気に、田所と久留米も困り果てていた。さすがの幸一も場の空気を察し、怒ったまま立ち上がると、そのまま出て行ってしまった。

 そんな様子を見届けた啓一も、後に続くように太陽の会を後にした。

 嵐が過ぎ去ったオフィスは静まり返り、田代と久留米がポツンと取り残されていた。


      二十五


 その日の昼過ぎ。源次郎と新人は、塩野谷龍一に呼び出された。至急会って相談したいことがあると言うのだ。

 塩野谷家の誰かと話をする場合は、直接塩野谷家に赴くように決めていたので、源次郎と新人は塩野谷家を訪れた。

「どうしたんだろう? 急に相談があるって」

「さあ分からん。ところでお前、仕事は大丈夫なのか?」

「ちょうど一区切りついたところだったから、先輩に事情を話して出てこれた」

「そうか」

 実際のところ、いちるの理解と協力がなかったら無理だった。そして新人は、いちるの存在が今まで以上に気になり始めていた。

 塩野谷家に到着すると、朱里が出迎えてくれた。朱里と目があった新人は、二人きりで会っていたことが、急に後ろめたく感じた。朱里も、そんな新人の態度を察したようだ。

「そう言えば、昨日は偶然お会いしましたね」

 どうやら昨日の件は、偶然会ったという設定にしましょうねと、言いたいらしい。

 源次郎が訝しがって新人を見た。新人も朱里の話に合わせて簡単な経緯を話した。

「何じゃ? お前ら会ってたのか?」

「そうなんですよ。偶然にも千葉駅でばったりと。そうですわよね?」

「そ、そうだった。いやあ驚きました。あんなところで偶然に会うなんて……」

 朱里の機転の利いたアドリブを新人は壊しそうになったが、取りあえず何とかごまかせたようだ。

 リビングに通されしばらくすると、龍一が姿を見せた。彼は、場所を変えましょう、と言って二人を離れに案内した。

 二人は姉妹が作業部屋として使っていた部屋に通された。北側の壁一面が本棚になっていて、書籍がぎっしりと収まっている。そのほとんどが童話物かと思われたが、実に様々なジャンルの小説や雑誌も見受けられた。

 そして新人は、見覚えのある小説の背表紙が目に留まった。高村和人著作の『追憶シリーズ』が一巻から九巻まで揃っていたのだ。

 ミステリー大賞を取るだけあって、老若男女を問わず幅広い層に受け入れられている。

しかし、あの大婆ちゃんと翼が同じ小説を読んでいるのかと思うと、何だか不思議な気がした。

「まだ以前と殆ど変わりませんが、昨日少し片付けをしました。大婆ちゃんも時々荷物を取りに入りますが、基本的には母屋で暮らすようになりました」

「遺言のおかげで、残されたお婆ちゃんに対する待遇が良くなった、と言う訳ですか?」

「いや、お恥ずかしいですが……」

 図星だったのだろう。まあ普通に考えれば新人でも想像がつく。

「で、ここへわしらを通したのは、皆には知られたくない話でもあるのですか?」

「それもあります。そもそも今回のような訳のわからない相続はどうかと思いますから。でも今日来て頂いたのは全く別の話しです。それは結愛の事なんです」

 そう言って龍一は、A4サイズの封筒を源次郎に手渡した。

「この件について、先生に調査をお願いしたいのです」

 失礼、と言って源次郎は、封筒の中にあったファイルを取り出した。

 そのファイルには『DNA鑑定の結果通知書』と書かれていた。

「これは?」

 源次郎が龍一に聞くと、龍一は下を向いて数秒間沈黙した後、顔をあげて言った。

「実は、私と結愛のDNAを調べてもらったのです」

「え? なんですって?」

 源次郎はファイルを開いて、中の報告書を読んだ。そして驚きの表情で問い返した。

「こ、これはどういう事ですか?」

 龍一は狼狽し、苦悩に満ちた表情になった。が、それでも静かに、しかしハッキリと二人に向かって言った。

「私にもさっぱり分かりません。だから調査をお願いします。何かの間違いだと信じています。でももし事実だとしたら、結愛の本当の父親が誰なのかを、私は知りたい」

 そう言って、龍一はメモ用紙と二つの小さいジッパー付ビニール袋を源次郎に手渡した。

「これは?」

「私と結愛の毛髪です。メモに書いてあるのは、私がDNA鑑定を行った機関です。今度は違う所で検査をしてもらいたくて……」

 受け取った源次郎は龍一を見据えて訊いた。

「よろしければお聞かせ下さい。なにか心当たりでもあったのですかな?」

 龍一は俯き考えた後、ゆっくりと力なく話した。

「これと言った根拠があった訳ではありません。ただなんと言うか……結愛は僕に似ていないのです。それと洋子には、僕と結婚する直前まで付き合っていた男性がいたらしくて……。だからなんとなく軽い気持ちで検査をしてみました」

「なるほど。で、私に再度DNA鑑定を?」

「はい。弁護士先生なら、私の依頼した機関とは別の、きちんとした医療機関で検査してもらえると思ったものですから」

 おそらく龍一が検査をした機関も、医療機関かどうかはともかく、きちんとした検査機関であったろうと新人は思った。しかしそれを口にすることはしなかった。それだけ龍一の必死な様子が伝わってきたからだ。

「わかりました。では、お引き受けいたします」

 源次郎が龍一から二人の毛髪を受け取ると同時に、部屋の引き戸が開いた。大婆ちゃんが部屋に入って来たのだ。源次郎は慌てることなく自然な動作で、受け取った毛髪入りビニール袋とメモをファイルと共に封筒に入れた。

「大婆ちゃん?」

「おや? お客様かい」

「こんにちは」

 一昨日会ったことも覚えていないのか、大婆ちゃんは初対面のような挨拶をしてきた。

 結愛ちゃんの件を聞かれてたのかと心配したが、聞かれていなかったようだ。新人は、当たり障りのない話題を持ち出した。

「それにしても随分と色々な本をお持ちですね。全部お婆ちゃん達のですか?」

「そうですよ。本当はもっとあったのですけれどね。東京に住んでいたときに、空襲で全部焼かれてしまいました。ここにあるのは全部、こっちに来てから二人で集めた本です」

「空襲ですか……大変でしたね」

「いっぱい人が死にました。大勢の人の運命が、ねじ曲げられました。もうあんな思いは懲り懲りです」

「全くですね」

「それにしてもお婆ちゃん、いろんな種類の本を読むんですね?」

「そうですよ。なるべく色々な種類の本を読むことで、頭を刺激し柔軟にしておかないと、新しい作品が生まれませんから」

「なるほど」

 ここでお婆ちゃんの名前は何ですか? と訊いたら自分の名前を言うのではないか。そんな考えが浮かんだが、思い止めた。他に聞いてみたい事を思い出したからだ。

「そう言えば一昨日、こちらにお邪魔させていただいたときに、結愛ちゃんが手まり唄を歌っていたのですが、この辺に昔から伝わる手まり唄でしょうか? 歌い始めが〝ウサギの角は……〟で始まるのですが」

「ああ、それはわたしらが作った手まり唄ですよ」

 にっこりした大婆ちゃんは、三人の前で唄い出した。


『うさぎの角は、すいとうと。こちらにこんこん、この子にと。赤い子鬼の子、文交わし。ようよう考え、話を聞くよに、したとさ』


「五、六年前に二人で作った手まり唄です。それ以来は全く作っていません。だからこれがわたしら双子の遺作となります」

「それで、この手まり唄ですが、一体どういう意味が?」

「意味ですか? えーと……どうだったかしら? もう忘れてしまいました」

「そ、そうですか。では、三番はあるんですか?」

「いえ、ありません。二人で作ったから二番までです。いつ頃だったかしら……。もう忘れましたけれど、もしかしたら、龍一が洋子さんと結婚した少し後の頃だと思います」

 一瞬だが、どこか後悔が混ざったような目になったのを、新人は見逃さなかった。

「結愛が幼稚園に行ってからその手まり唄を歌っていたから、てっきり幼稚園で習ったのかと思ってたよ。大婆ちゃん達の作品だったのか」

「そうですよ。でもまあ、この年になると色々と物忘れが酷くてね……。あらやだ、靴下から芽が出ちゃって。朱里さんにまた縫ってもらわないと」

 見ると、大婆ちゃんの右靴下の人差し指の所から指が顔を出していた。大婆ちゃんは恥ずかしそうに一礼をすると、ゆっくりとした足取りで母屋へと帰っていった。

「新しい靴下を買えばいいのにって、いつも言っているのですが、勿体ないからって。だからいつも朱里が縫う羽目に。恥ずかしい話ですが」

 大婆ちゃんの後姿を見送りながら龍一が言った。

「ほう、朱里さんが。大婆ちゃんとの仲はよろしいようですな」

「ええ。今は」

「今は?」

「ええ」

 龍一は少し悩むような表情をした。

「ご存知と思いますが、朱里は後妻です。前妻の洋子、つまり結愛の本当の母親は三年前に病で亡くなっています。その後朱里と再婚しようとしたら、二人には強く反対されました。理由は朱里がその当時、銀座でホステスをしていたからです」

「二人に歓迎される職業ではなかったのですね」

「はい。大婆ちゃん達は、今でも質素倹約を常に心掛けています。私が言うのもなんですが、正直言って父や叔父夫婦も、見習って欲しいと思う程です」

「なるほど」

「洋子は、大婆ちゃんの目にかなうだけの質素倹約ぶりでした。まあ、生まれ育った環境が恵まれていなかったこともあるのでしょう。だから、大婆ちゃん達には非常に気に入られました。そして強引に私との結婚話を進めたのです。ああ、別に私は後悔しているとか、そういうつもりで話しているのではありません」

「わかります」

「洋子が亡くなってから、すぐに朱里と知り合いました。洋子の願いで、結愛のためにもすぐに再婚してほしいと言われていましたし、私も朱里とは何か運命みたいなものを感じました。洋子が引き合わせたような、そんな感じがしたのです」

「それで結婚を決めたが、反対されたと?」

「そうです」

「それでも今は仲がよろしいのですよね?」

「朱里はホステスをやっていましたけれど、朱里には朱里の事情がありました。彼女もかなりの苦労人だったのです。だからきちんと話し合って、それでようやく納得してもらいました」

「そうですか。それは何よりです。戦後の混乱期を生き抜いた人達が、物を大切にするのは当然のことです。それに苦労人の気持ちもよくわかるのでしょう。調査の件はお任せ下さい。それではこれで」

 新人も源次郎と共に軽く会釈をして後に続いた。


      二十六


「あと二日しかないわよ。いい加減にどっちが死んだのかをハッキリさせないと」

「ああ、わかってる。確率は二分の一だけど、外れたら痛いからな」

 塩野谷家の母屋で、啓一と鈴子が声を潜めながら話をしていた。

「それにしても、油断も隙もありゃしないわね」

「ああ、危うく先を越される所だった」

 太陽の会で幸一と会ったことは、当然鈴子にも伝えられた。

「まったく。こっちの計画もパアね。次はどんな手を使うか分からないわ。抜け駆けなんて許したらダメよ」

「ああ、そんな事はさせねえ。でも、今のうちに何とかして釘を刺しておかないと」

「どんな方法で?」

「何か弱味でも握れれば、形勢逆転なんだが……」

「弱味になるかどうか分からないけれど、私に一つ思い当たる事があるの」

「何だ? 言ってみろ」

「結愛よ。あの子って婆さん達に随分と懐いているでしょ? もしかしたらあの子、どっちが死んだのか分かってて黙っているんじゃないかしら?」

「本当か? でも、それじゃあ弱味にはならないだろ。むしろ幸一達が有利だ」

「結愛が分っていたとしても、話すとは限らないわ。黙っているのかも」

「……という事は、結愛は本当に知らないのか、それとも分っていて黙っているのか?」

「そこなのよ。それで昨日私ね、離れの前で結愛と婆さんが手まりで遊んでるのを見たのよ。だから婆さんが去った後に、問い詰めたの。本当はどっちが亡くなったのか分かっているんじゃないのかって」

「おお、そ、それでどうした?」

「泣き出しちゃって駄目だったわ。でもね、何か知っているのは間違いないと思うわ」

「多少強引にでも、問い詰めなかったのか?」

「しようとしたわよ。でも、朱里が来ちゃって」

「朱里か……」

「あの女も何を考えているのか分からないから気を付けないと。なにせ東大卒なのに銀座でホステスをしていたって話でしょ?」

「ああ、それに両親に捨てられ施設で育ったという話じゃないか。まさか朱里のやつ、財産を独り占めしようと考えているんじゃないだろうな」

「あり得るわ、きっとそうよ。後妻のくせして図々しい。それに知ってた? 朱里って未だに結愛から〝お母さん〟って呼ばれていないのよ。それで母親面しているんだから、性質が悪いわよ」

「なるほど。真相を知るかもしれない結愛を、まだ手懐けていないということか」

「そうよ。だから鍵を握っているのは、結愛よ」

「他には死んだ洋子とも仲が良かったな……そう言えば洋子って、龍一と結婚する直前まで、別の男と付き合っていたらしいじゃねえか」

「そうなのよ。あなた、相手が誰か知ってる?」

「それは知らん。ただ遠藤会長が随分と熱を上げていた、という噂は聞いたことがある」

「まあ、それじゃあ遠藤会長と? 亡くなった人を悪く言いたくはないけれど、大人しい顔してやることはしっかりやってたのね」

「案外、結愛は龍一の子じゃないかも知れんな」

「あら、やっぱりあなたもそう思うでしょ?」

「え? 何が?」

「だから、結愛の父親の話よ。龍一さんの子じゃないって、今自分で言ったじゃない」

「いや、冗談で言ったつもりだが、まさか?」

「よく考えてみて。結愛って母親には似ているけれど、龍一さんには似ていないでしょ」

「……確かにそうだな」

「だから私、ちょっと調べてみようかと思ったの」

「何を?」

「DNAよ。髪の毛があればDNA鑑定が出来るのよ」

「DNA鑑定か。でも、それって時間と金がかかるだろ?」

「それが案外そうでもないのよ。私が通っているお琴の教室に、ご主人が大学教授で遺伝子の研究をしている人がいるのよ。それでこの前ね、習い事が終わってから皆で雑談していたとき、前の晩のテレビドラマでやっていたDNA鑑定の話題になったのね。別の奥さんが、浮気調査に使えるわね、とか言い出したから。そしたらその教授の奥さんが言ったのよ。簡易な鑑定なら1日~2日程度で出来るって。しかも値段もそれほど高額ではないから、最近は多いらしいのよ。そういう依頼が」

「そ、そうなのか」

「それでね、ちょっとどなたか試しにやってみませんか? なんて話になっちゃって」

「ほう、それで」

「だからさっきから言ってるでしょう? 龍一さんと結愛って本当の親子かって」

「まさか?」

「そう、そのまさかよ。ふたりの毛髪を、サンプルとして提供しちゃったの」

「いつの間にそんなこと。本人は承知したのか?」

「承知するはずないでしょ。と言うか、何も話していないわよ。龍一さんの髪の毛はいつも使っているブラシから取ったの。結愛の髪は、離れの前で問い詰めたときに、髪を引っ張ったら取れたわ」

「……それはまずくないか?」

「まあね。でも、結果によってはそのまま黙って焼却処分するわよ」

「結果によって?」

「そうよ。もし、二人に親子関係があれば、意味ないから黙って捨てるわ。でももし二人に親子関係がなかったら?」

「それは……」

「まあ、どう使うかはこっち次第よ」

「で、その結果はいつ分る?」

「喜んでちょうだい。明日の夕方には結果が届くから」

「結果次第では、幸一の孫から突き崩せる訳か」

「ふふふ、そうよ。主導権は私たちにあるのよ。あら? あなた、なんか顔付きが変ったわよ。野心家の顔になったわ」

「人聞きの悪いことを言うなよ。俺はただ真実を追い求めたいだけさ」



   続く

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