第七十一話 生活
「ちょ、おい待てよ!魔王ってどういうことだよ!?」
少女は驚いて私の肩を掴み振りまくっていた。
「そんなこと言われても、本当に突然でしたからね。」
「そう言えば俺が躑躅と初めて会ったときは、魔界に来てから何日くらいたった後だったんだ?」
「アクアさんと会った日が、私がこの世界に来た日だったんですよ。」
「嘘!?」
私の問いにアクアさんが驚きの声を上げた。
「ズルい!魔王なんてすごい称号、私もほしい!」
うーん、少女の年を考えると、確かにそう言うのに憧れるんでしょうけど、これでも最初は大変だったんですよ?主に、トルテさんに愛され過ぎて、殺されないかと言うことで。
初っ端から死亡フラグが立って、一回殺されてもう一度リセット、乙女ゲームの方がまだ増しだと思いますよ。少女のうらやましがる声に私とアクアさんはそろって微妙な表情をした。
「まあ、そこは置いといて、私たちとしてはお勧めはギルドで冒険者として働く、と言う提案ですね。」
まあぶっちゃけた話、この世界、実はどこに居ても死亡フラグがビンビンに降り注いでくるものだと、私は思っている。この間のイフリートと戦った時だってトルテさんは結構な実力者だと思っていたのに、あれだけの傷を負ったのだから。油断するとすぐに死にかねない。
「あたしもそう言うのは考えてるけど、ギルドってどこにあんの?」
「それは明日辺り、俺たちが連れていくよ。」
「本当?」
アクアさんの言葉に少女は嬉しそうな顔をした。何だか初めて自分がギルドに行った時を思い出した。まあ、自分は少女と違って、戦うのが怖くて料理人と言う手段を選んでたのに、いつの間にかドップリと戦う運命に身を投じているけど。
何だか料理したくなってきた。
楽しそうに会話を弾ませている二人を見て私は料理でも造りに行こうと、部屋から出ていった。廊下を出るとドアには耳を澄ませていた、ルイさんとロランさんとノエルさんの姿があった。
「…何をしてるんですか?」
自分が思っていたよりも低い声が出て少しびっくりした。私の声を聴いた他の三人はもっと吃驚していたけど、私としては如何してここに三人がいるのか理由を聞きたかった。
「えーと、ほら人間の女の子をアクアとツツジで連れてきてたじゃない?ちょっと気になって、そのね?」
若干怯え交じりに、ルイさんが慌てながら言い訳のようなものを始めた。別に怒ってるわけでは無いのに、確かに前世がどうのこうのとか人によっては、気になりもするし、話したくないと思う人もいるだろう。ハアと私はため息をついた後、三人を連れてキッチンに向かった。
「ねえ?魔王様怒ってる?」
ロランさんが珍しく怯えながら聞いてきた。
「怒ってませんよ。でも、人によっては効かれたくない話もあります。どうしても聞きたいのなら本人に直接聞いてくださいね。」
私がそう言うと三人ともホッとしていた。
キッチンに着くなり、私は久しぶりの調理を始めた。
「ロランさんは、小麦粉に卵を混ぜといてくださいね。」
「ノエルさんは、計量カップに牛乳を入れて測っといてください。」
「ルイさんは、バターを電子レンジに入れて常温に溶かしておいてください。」
そう言うと三人は不慣れながらも、その通りに実行したのだった。今回はクレープをつくろうと思う。中に入れる材料を変えれば、甘い物もしょっぱい物も作れる。
美味しいって、言ってくれるといいな。そんなことを考えながら、私はルイさんとノエルさんとロランさんと一緒にクレープを作りました。
「ツツジ!生地が焦げた!?」
「ノエルさんはいったんルイさんと交代しましょう。」
ちょっと失敗したものは、皆で仲良くお腹の中に消しました。次からは初心者にはあまり焼かせない様にと思いながら。




