第三十七話 大物
「と言うわけで大型モンスターの討伐に行きたいんです。」
「いいんじゃねえか。」
「え!?大型行くの!?」
アクアさんが笑顔で了解の返事をして、ノエルさんが驚いた表情で私を見ていました。チラリと横を見ると、
「zzz。」
すやすやと気持ちよさそうに眠っているロランさんがいました。何だか久しぶりな気がします。ウォルフの件でずっと起きていたので、幾らか、起きているときの姿が定着しちゃってましたしね。
「でも、昨日はあんなに嫌そうにしてたのに、どういう風の吹き回しだ?」
アクアさんが意地悪そうな笑みを浮かべて、私のホッペを突っついた。絶対に、理由を分かってやってる。私はイライラしてアクアさんの手を払い退けた。
「取り敢えず、今日は大型モンスターを討伐しに行きます!」
私が張り上げるように大声を出すと、隣で眠っていたロランさんがドスンと大きな音を立てて椅子から落ちた。
今更だけど、椅子の上で体育座りをして眠るなんて器用なこと、よく出来ますよね。床に落ちても、変わることなく眠っているロランさんを見てため息をついた。
「じゃあ、デッドケンタウロスの討伐に行かない?丁度いるみたいだから。」
ノエルさんがモンスターの名前を言うと、アクアさんがゲッと嫌そうな顔をした。そんなに強いモンスターなのでしょうか?
「そんなに強いモンスターなんですか?」
そう聞くと、アクアさんはばつが悪そうに呻き声をあげている。
「強いっていうか、厄介っていうか、色々面倒なモンスターなんだよ。」
「面倒?」
何時もは強気でたくましいイメージしか無いせいか、こんな露骨に嫌がっている表情を見るのは初めてだった。
「まず、強いってのは分かるだろう。」
そう嫌そうな表情のまま問いかけられて、私は頷いた。
「次に、物理攻撃が一切効かない。」
「……。」
「そして最後に!」
アクアさんはダンっ!と身を乗り出しテーブルの上に足を置いた。
「アクア!テメエテーブルに足をのせてんじゃねえ!」
珍しくマスターが声を張り上げると、アクアさんの頭には木の板が直撃していた。
「いってええ!」
ゴロゴロと転げまわり、最終的に動きが止まった。それを眺めて、ああ、すごく痛そう。と思った。
「さ、最後は、どんなに攻撃しても、急所に攻撃を当てないと、ダメージにならない。」
それだけ言い残してアクアさんは喋るのをやめた。頭を押さえて蹲り、目からは涙が零れそうになっていた。こういう時に自分は治癒魔法が使えたら、直してあげられるのにと思う。
「アクアさん大丈夫ですか?」
あまりにも痛がる様子を見せるので、少し心配になった。
「大丈夫だけど、大丈夫じゃない。」
泣きながらそう言われても、結局どっちなんですか?とは言にくかった。




