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第三十二話 敵?それとも仲間?

嬉しそうに私を殺そうとしたトルテさんの腕を横からルイさんが掴んでいた。トルテさんはルイさんを見ると顔を不機嫌そうに歪めた。


「皆で仲良く出ていくから、何かと思えば、私に黙ってわけのわからない展開に持ち込んでどうするのよ。」


トルテさんを睨んだ後、アクアさんとルイさんを睨み、私には何故か笑顔を向けていた。


「魔王様は後でお仕置きよ。」


嬉しそうなルイさんの声が凄く怖かった。


「でも、なんでルイがここに?」


不思議そうににロランさんが訊ねた。


「情報源はノエルよ。」


「ノエルさん?」


 時の魔法を使った後だから、特に接点なんてないはずなのに、如何して?私の予想もしていなかった展開に驚きと戸惑いで混乱してきた。


「そう。ノエルは自力で、盗聴してたみたいよ。ネックレスで。」


「ネックレス?」


 私はアクアさんに視線を向けた。あれはアクアさんに貰った物だったはずだけど、結局自分で盗聴することなんてなかったんだよね。


「あれはノエルに貰ったやつなんだ。」


 テヘペロッと可愛らしく誤魔化しているけど、トルテさんに日常生活がノエルさんには全部知られてしまったという事なんでしょうか。とんでもないプライベート情報の流出に私は自分の顔を覆った。本当にごめんなさい。


「貴方達については、後で処分します。」


 無表情で拳や足でルイさんに攻撃している。対してルイさんは攻撃をすべて交わして、魔法で反撃に出ていた。


「トルテ、あんたの事、昔から気に食わなかったのよね。」


ルイさんは歪んだ笑みを浮かべると、トルテさんに向けて、強力な電撃を放った。


 強力な電気の塊がバリバリと私たちの方にも飛んできた。私には当たることは無かったけど、アクアさんが一番ダメージを受けていた。


「いてててっ!」


「ルイ!飛ばし過ぎ!」


「五月蠅いわね!ちょっと当たっただけで文句言わないでちょうだい。それとロラン、パパって呼びなさいって言ってるでしょう!」


何故にパパ呼びにそこまで拘るんだろうと私は疑問を抱いた。この状況では流石に聞けないけど。


「痛かった。」


そう言ってウォルフは元気そうな姿で起き上がっていた。


「死ななかったんですね。」


私は復活の儀式が成功したんだ。と嬉しそうに言った。


「痛かった。」


余程痛かったのか、悲しそうな表情でその一言しか言わなかった。


「確かに心臓を貫いたのに、どうして?」


 ルイさんの魔法が直撃したトルテさんは、至る所に無数の傷を負いながらも、ウォルフさんを見つめて茫然と呟いた。


「あんたの願いが叶うことが無くなったってことでしょ。」


何故かルイさんが嬉しそうに語っている。


「認めない!絶対に認めるものか!お兄様も魔王様も私の物だ!誰にも殺させない、私だけが殺せるんだ!」


 ルイさんの言葉を聞いて、トルテさんは取り乱したように叫び続けた。普段の態度からは想像もつかない行動に、私たちは目を見開いて驚きの表情を現した。


「トルテ。」


 そんな中ウォルフがトルテさんに向けて優しい表情で名前を呼んだ。ウォルフが声をかけても未だに取り乱しているトルテさんを優しく抱きしめた。


「トルテ、お前は俺にとって大切な家族だ。だがトルテは俺を殺したいと思うほど嫌いだったのか?」


ウォルフは悲しそうにトルテさんを見つめながら呟くように言った。


「違う!お兄様を嫌いになるなんてこと絶対に有りません!寧ろ……」


 途中で口ごもってしまったトルテさんだったけど、そこまで聞くとウォルフは嬉しそうな顔でトルテさんをキュッと抱きしめた。


「これで一件落着ですね。」


ホッとしたように私は呟いた。


「まあ、ある意味ハッピーエンドだね。」


 複雑そうに、ぼやいているロランさんの言葉が私は気になった。不思議そうな顔をしていたのか、アクアさんがそっと私に耳打ちをしてきた。


「彼奴らの異常なところは、家族愛だな。」


 それだけを聞いただけでは、特に可笑しな部分は無いと思った。トルテさんに関しては色々と心配な面もありました。でも、今は正常になっているみたいですし。問題ないですよ。


「中でも俺が一番以上だと思ってるのは、ウォルフはトルテに殺されてるにも拘らず、自分の肉体を復活させてまで、トルテに会おうとしたことだな。そりゃトルテに殺されそうになったときには怯えていたけど、あれはトルテに殺されるのが怖いんじゃなくて、トルテに会えなくなるのが怖かったんだろ。」


 続けていった言葉に、嬉しそうに抱きしめあっている二人を眺めて、私はこう思った。


 ヤンデレ怖い。

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