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第三十一話 あ~ん。

「トルテさん。アイスクリームを作ったんです。一緒に食べませんか?」


 心読みの能力無効化と言う特典を付けてもらった私は、トルテさんを食事に誘った。


「宜しいのですか?」


「はい。トルテさんが良いんです。」


わざとらしいセリフではあるけど、私の精いっぱいのデレ方だった。


「では、いただきます。」


 そう言って、私が差し出したアイスクリームを一口、ぱくりとトルテさんはあっさりと口に入れた。思わずこっちが不思議に思うほど。


「私には、勿体ないほど美味しいです。」


 そう、嬉しそうに私に感謝の気持ちを述べるトルテさんを見ながら、心の中でごめんなさい。と謝らずにはいられなかった。


 でも、これで全部の準備が整った。


 嬉しそうにアイスクリームを咀嚼する、トルテさんを眺めて、食べ終わるのを待った。トルテさんがアイスクリームを食べ終えるのを見届けた。


 そして、後片付けをすると、私は急いでアクアさんの部屋に向かった。


「アクアさん!作戦成功です!」


部屋で待機していた、アクアさんとロランさんにそう報告した。


「成功したのか!」


二人とも嬉しそうな顔をしていた。


「なら、ウォルフのところに行こう。」


 ロランさんにそう言われて、私とアクアさんは頷いた。急いで移動する私たちを、窓から真っ黒で無機質なめで眺めているトルテさんに気付かずに……。


ウォルフのところに到着すると早速復活の儀式にしようと提案が出た。


「それでは行くぞ。」


そう言って、ウォルフは何やら小声で詠唱に入った。


 時間がたつと、私の体の周りに細かい光の粒子が集まってきた。その光景に驚いたけど、私の魔力をウォルフの体の再生のために使うと聞いていたので、特に大きく驚くことは無かった。


私の周りの光の粒子が消えると、ロランさんが問いかけた。


「どう?」


ロランさんの問いかけに答える様に、ウォルフは自分の体を確かめる様に触っている。


「うむ。実体がある。どうやら成功したようだ。」


「私に内緒で何をしているのかと思えば、まさか、お兄様にお会いできるなんて、思ってもみませんでした。」


 私たちの後ろから、無表情で声だけは嬉しそうに話すトルテさんが現れた。


「トルテ……。」

 

 怯える様に、ウォルフは後退りした。その気持ち分かります。私も逃げ出したい気分です。トルテさんは軽く腕を上げてウォルフの心臓に指を刺した。


「ゲホッ」


「ウォルフ!」


ロランさんが倒れかけたウォルフの体を支えた。


「でも酷いです。今の魔王様にあんな可愛らしいことされたら、罠だと分かっていても、嵌まってしまいたくなるじゃないですか。」


 トルテさんは、自分の手に着いたウォルフの血を恍惚の表情で舐めながら、嬉しそうに話した。そして、ウォルフさんを眺めた後、トルテさんの視線が私に向いた。


思わずビクリと肩が跳ねた。 


「躑躅!逃げろ!」


 アクアさんの必死に叫ぶ声が聞こえたけど、私が逃げるよりも早くトルテさんの指が私の目の前にまで迫ってきていた。


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