第十四話 家出
「トルテさん、私出かけてくるね。」
「誰と、お出かけですか?」
「秘密。」
そう言い残し、私は、早歩きで移動した。リュックに荷物を詰め込んで、準備をする。家出をするために。色々と考えた末に、やっぱり気になるのなら、自分自身の手で見たほうが早いと思ったからだ。
他の人にも見つかるだろう。でも今回は協力者がいる。
「では、行ってくるので、お願いします。」
「おう、でもいいのか?」
「はい、決めましたから。」
そう、アクアさんです。前世が人間だったという事もあって、私の考えに共感してくれて、こうやって家出の手助けをしてくれた。
「マスター宛の手紙だ。料理が得意って書いてあるし、住み込みで働けるように頼んであるから。」
心配そうに言っているから、私も家出しにくいけど、もう決めたので行ってきます。
「ありがとうございます。では、行ってきます!」
そう言うと私は、町まで歩き出した。
「良いのか、連れ戻さなくて?」
アクアが振り返った先には、嫉妬に塗れた視線をアクアに向ける、ノエルの姿があった。
「魔王様が決めたことだからね。でも、それを手助けしたのが、君だという事が、気に入らないだけだよ。」
「魔界は、いったいいつから魔王信者の集団になったんだろうな。」
アクアは顔を歪めて吐き捨てるように言う。
「そりゃあ、初代の魔王様が誕生してからでしょう。」
何処か狂気のこもった表情で、ノエルは言った。
「でも、精々トルテに気付かれないようにしないとね。お互いに、ばれたら大変なことになるだろうからね。」
ノエルは、怪しく笑うと城の中に入っていく。
「言われなくても、分かってるぜ。だからこそ、あの子には、こんな場所に居てほしくなかったんだからな。」
アクアは遠くに見える躑躅を、悲しそうに見つめた。