第十三話 危険な世界
ルイさんが放ったであろう、雷魔法のバリバリッ!という音を聞きながら、べッドに潜っていた。音が止んでからしばらくするとコンコン、というノックの音と
「魔王様、失礼します。」
というトルテさんの声が聞こえた。トルテさんはドアから入り、私を見つけると近づいてきた。取り敢えず、少しでもアクアさんと、ノエルさんの状況が悪くならない様に、私は、必死に弁解した。
「トルテさん、アクアさんとノエルさんは悪くないんです。私が美味しい物を食べたいって言ったから……。」
子供の体になったせいなのか、涙がポロポロと溢れて来た。
「それは分かっています。だからそんなに怒ってません。」
トルテさんは、優しく微笑みながらそう言った。私はその言葉を聞いてホッと息をついた。
「どうして外に出ていけないと、私たちが怒ったか分かりますか?」
トルテさんは何時もの優しい笑みではなく、どこか冷たい雰囲気を纏っていた。戸惑いながらも、私は分からないと、首を横に振った。
「外の世界でも、特に地界が一番危険だからなんです。」
トルテさんの言葉に体が固まる。
嘘、だって町の人だって皆笑ってた。美味しい物だって、いっぱいあって治安だって全然悪そうじゃなかった。今、私のいるこの魔界だって、危険だなんて、とても信じられなかった。なら、私が知らないだけで、本当はもっと、危険な場所なの?
私が考えていた平和な世界とは、全然違うのかもしれない。思わず不安になった。私は、どうすればいいのだろう。この世界が危険だと聞いても、実際に目にしたわけでは無いから、安全だ、と心の内で思ってしまう自分がいる。
トンッという音と共に急に眠くなった。そして、
「また明日にお話ししましょう。」
というトルテさんの楽しそうな声が聞こえた。
その日、私は夢を見た。
私が幸せな思いをするたびに、誰かが不幸になる。という夢だった。
思わず飛び起きたけど、どんな夢を見ていたのか思い出せなかった。
「おはようございます。魔王様。」
トルテさんがいつもの様に、私に服を着せてくれた。無駄のない、洗練された動きで仕事をこなしている。
「どうかしましたか?」
じっとトルテさんを見つめていると、視線が気になったのか、私に問いかけてきた。
「いいえ、何でもないです。」
私は軽く、交わす。
「そうですか。」
トルテさんはそう言い残し、足早に去って行った。
そんな感じで、その日は色々と悩んでいた。