第一話 魔界
私の名前は東城 躑躅。日本に生まれて普通に育っていき幼稚園、小学校、中学校、高校、そして今では、社会人として普通に社会というよりはじぶんの生活費を稼ぐために頑張って働いていました。
それがある日突然さて、今日も頑張ろうと思って起きたら、自分の体が小さく縮んでいることに気づき、そして周りを見渡すと、そこには今まで暮らしていた見知った自分の持ち物や、愛用していた家具も一切なくなっていた。
代わりにあったのが、無駄にでかいキングサイズのお姫様ベッドとやっぱり無駄にでかい、テーブルや椅子が置いてあった。無駄にでかい家具が置いてあっても、半分も埋まっていない広い部屋。
そしてこの部屋のど真ん中にある、無駄に怪しい雰囲気の椅子。なぜ自分は、こんなところにいるのだろうか、と考えていたら、コンコンと、この部屋のドアから、ノックの響く音を聞いた。
私は突然の訪問者に恐怖を感じた。私は今、どういう状況なのだろうか、誘拐?それとも監禁?どちらにしても、嫌なイメージしか想像することができない。私は一体どうなるのだろうか?
「魔王様、入ってもよろしいでしょうか?」
聞こえてきた女性的特有の、高いソプラノの声に、私はさらに戸惑う。魔王、誰が?この部屋には、今自分しかいない、でも自分は魔王ではないはず、色々考えているうちに、そのドアから一人の女性が入ってきた。
部屋に入ってきた女性を見て、私はその容姿の美しさに、思わず息を止めた。
女の人はとても綺麗な人で雪のような白い肌、髪も綺麗な銀色で、瞳の色はまるで血のような紅い色。
そして私が一番気になったのは、私を見て、にっこりと微笑んだ時に、僅かに見えた尖った牙のようなもの、八重歯にしては、鋭すぎる。
「初めまして、魔王様。私は吸血鬼のトルテと申します。今日から魔王様のメイドに任命されましたので、身の回りの世話や、困ったことやわからないことがあったら何でも聞いてください。」
私は自分に向かって魔王と言われたことや、吸血鬼やメイドとか普段は聞くことのないであろう、単語を聞いて思わず吃驚して叫んでしまったのは、仕方のないことでしょう。と思った。
メイドさんには申し訳ないと思った。
「とりあえず、この世界についてご説明させていただきますね。ここは天界、地界、そして魔界の三つに分かれています。天界には、主に天使などが住んでいて、地界には人間やエルフやピクシー、そのほか色々な種族が住んでいます。此処、魔界では私のような吸血鬼やサキュバスなどといった悪魔のようなのが暮らしています。私たちのいるここは、魔界になります。ほかに知りたいことや、質問などはございますか。」
今現在私のいる場所がが日本でないことは、なんとなくはわかったけど、なんで私が魔王と言われているのかが、全く説明されていなかった。
「あのー、いくつか質問してもいいですか?」
「はい、どうぞ。」
とりあえず聞きたかったことを聞いてみる。
「なんで私に向かって魔王様って言ったんですか?」
その質問をしたらメイドさんは、怪しい笑を浮かべながら答えた。
「それは、貴方が私たち悪魔系種族の頂点に君臨する魔王様だから。」
いや、それは答えになっていないのでは?
「私が聞きたいのはそういうのじゃなくて、どうして私が魔王としてここに居るんですか?って意味で魔王という種族の説明が、聞きたかったわけじゃないです。」
私にとっては一番重ようなことで、そこだけは詳しく聞いてないとまずいんです。
「魔王様の条件は容姿が可愛い、次に魔力の大きさ、そして最後に黒い髪と黒い眼、という条件の元召喚された元人間の事です。此方に召喚されたので種族は、人間から魔王に変化しています。」
な、なんですとーーーー!てことは、あれですか!?私はもう人間ではないどころか魔王になっちゃったという事なんですか!?というかそんな条件で私、召喚されちゃったんですか!?
「そうなります。」
私、声に出してましたっけ?
「私が心を読めるだけで魔王様は声に出していません。」
随分と高度なスキルをお持ちのようで……。
「恐悦至極に存じます。」
ツッコミを入れるのは疲れました。
「ところで基本的に私は如何すればいいんですか?」
当然の事ながら、今まで普通に生活してきた私に戦闘能力なんてものは備わっているわけもなく、力ずくで人間界を滅ぼせ、なんて言われても無理です。としか言いようがない。
「その心配はありません。魔王様は、ただその場にいてくださるだけでよろしいのですから。」
「私に何かしてもらいこととか、何か理由があって召喚されたのではないのですか?」
よくゲームとかだと人間を滅ぼしてくれ。とか他の魔族を統一してほしいとか、何処かの種族を倒してほしいとかありますけど、そんな事もしなくていいのでしょうか?
「一言申し上げるとすれば、魔王様はただ我々が愛でるためだけに召喚された存在ですので、心配は無用です。」
ただ愛でるだけなら普通に子供を召喚すればよかったのでは?
「条件は三つまで、と既に決まっていることなので、重要な部分を指定した結果、魔王様が召喚されたというわけです。それに普通の子供では意味がないのです。」
「意味がない?」
「はい、魔族は成長がとても速い生物なのです。」
「早いってどのくらい?」
子供の成長が早いから私が召喚されました。と言われても、いまいち状況が把握できない。
「人間が一才年を取るのに、一年必要とされるのに対して。魔族は一日もあれば体だけ成人を迎えるくらいには早いです。」
ちょ、それは早すぎる。
「それに加え、卵から孵れば既に大人というケースもあります。」
子供という存在意義が無に等しいと……。
「そんなわけで、永遠の子供という不老不死の特性を持つ、魔王様が召喚されたというわけです。」
「となると私の存在意義は……。」
「我らが魔族の子として愛でられることです。」
何ですとーーー!?。