帰宅途中とかそういうの
家来る?
と軽いノリで吸血鬼の家に誘われました。
普通ならいきませんけど、
暗いし、目的地不明だし。
しょうがないよね。
そんなに悪い人には見えないし。
「行きます」
「あ、ホント?よし、じゃあ行こう!君は命の恩人だからね!」
「あ、でも一晩だけで、」
「まあ、嫌っていっても連れていくんだけどね!同意を得られてよかったよ!」
拒否権無しでしたか。
そういうと、吸血鬼様は僕を抱えて飛び立った。
背中には羽が映えているので背負えないそうで、はじめは首に手を回していた。
しかし、だんだんずり落ちてくる。
どうしたものかと聞いてみた。
「あーそうだね。よし、これでどうだろう」
すると、成る程。
お姫様だっこね。
なかなか定番どころを押さえてくる。
僕は楽でいいですけど。
「すいませんね。抱えてもらって」
「何!美人を抱えることを許していただき恐縮だよ!」
紳士ぶっちゃってまぁ。
ところで、あなたのお名前は。
「私かい?私は…まぁ、ヴラド伯爵と呼ばれているよ」
…?なんだか言いづらそう。
人には色々あるよね。
「僕は…なんでしょ?村人Aって感じですね」
なんとなく、本名は言えなかった。
「ハハハ!なんだそれは!まるでジェーンドゥではないか!」
この世界では間違いではなさそう。
年齢不詳、住所不定、無職だし。
「なんとも難儀なことだな」
あれ?口に出てましたかね?
心を読めますとか言われたらどうしよう。
一応聞いておこう。
「何がです?」
「親御さんに結婚のお許しを得ることができないではないか…ッ!」
「何言ってんです」
ビックリした。
目が点になったのは生まれてはじめてだ。
「私は本気だぞ!」
正気かよ!
いやいや、待ってください。
信じないでしょうけど、
こんななりですけど、
「僕は元々男ですよ!」
「知ってるさ!吸ったときから!」
「へ」
吸ったときからといったか伯爵。
え?なに?ドユコト?
「ちょちょ、どういうことですか」
「私は吸った相手の血から記憶が読み取れるのだ。一種の隷属?みたいな?」
うわぁ、そんなことされてたのアレ。
「え、じゃあ、吸った相手をいいなりにとか…」
出来るんですか?
「そんなことはしない。本当だ」
ああ、よかった。
「でもあなたと結婚なんて嫌です」
ここははっきりさせとこう。
すると伯爵はこういった。
「私とじゃないよ?してほしいのは息子だ」
ややこしいです。
伯爵。
「いやでもね、色々問題が」
あるでしょう。
有りますとも僕には。
心の壁が。
「なに、こういうのはね。慣れだと思うよ、ゥン」
なんかテキトーだな。
適当に話し合わせて、逃げればいいか。
「ま、結婚しなくても、君みたいな旨い血をみすみす逃がしたりしなけどね!」
オーノー。
もとから選択の余地ないじゃないですか。
なんてことだ。
流される生き方が嫌になる。
昔からそうだったよな僕は…。
落ち込んでいると、吸血鬼が声をかけてきた。
「さあ、ついたよ!ここが僕の家だ!」
家って言うかこれ、
「城じゃないですか!」
薄々感づいてはいたけれど。
「ハハハ!君の予想通りって感じかな!」
伯爵は満足げだ。
ただ、予想と違っていたのは。
この城が、街道沿いにあることだった。
ごり押し。
勢いで何とかします。