ある雨の日の少女
雨が降っている。
まあ、梅雨だから仕方がない、紫陽花でも眺めながら帰ろう。
そう前向きに考えたいけど、あたしは傘を持っていない。
ケータイに届いた天気予報では、昼前から雨が降るでしょう。お出かけには傘を忘れずに!
じゃあ、忘れたあたしはどうすればいいのさ?
こうゆうとき、一番ベタなのは好きな男子が傘を貸してくれる、もしくは相合傘で帰るパターン。少女漫画のお約束な展開。日本中の恋する乙女の憧れだろう。
正直に言うと、あたしだって憧れるし少し期待してみたりする。
『あれ?お前どうしたの?』
そうあたしに話しかけてくれる、あの人の声が聞こえるのを期待している。
無理なのは分かっている。あの人はあたしのことなんか見ていない。分かっているけど、心の底で期待してしまうあたしがいる。
「バカみたい・・・」
ホントバカだよね、あたしって。辛くなるのは自分なのに。
ため息をつきながら空を見上げると、暗い雲が空を覆っている。
もう、濡れて帰ろう。そう思って、学校の昇降口から外に出た。
紫陽花の花言葉、辛抱強い愛情。
今のあたしには、ちょっと無理そう。