表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界退職代行』〜魔王軍から勇者パーティまで、不当な契約をアンバインド(解放)します〜  作者: 街角のコータロー
魔王軍組織風土改善編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/15

第14話:魔王軍、再就職先(セカンドライフ)になります

魔王城・大広間。

 クーデターを鎮圧し、旧体制の膿をすべて出し切った魔王軍の将兵たちが、そこに集結していた。

 かつての殺伐とした空気はない。

 そこにあるのは、自分たちの手で組織を立て直したという、誇りと自信に満ちた顔つきだ。

 魔王ゼクスは、隣に立つゼノンと視線を交わし、全軍に向けて深く、力強い声を発した。

 「――同志諸君。我々は変わった。

 

 

 恐怖と搾取を捨て、敬意と合理性を手に入れた。

 

 

 だが、我々の改革はここで終わりではない。本日、私は新たな『軍の指針』を宣言する」

 ざわめく広場に、ゼクスの宣言が雷鳴のように響く。

 「魔王軍は今後、人間界との不毛な略奪戦を停止する。

 

 

 我々の新たな目的は――『共存』だ」

 全軍に衝撃が走る。だが、反対の怒号は上がらない。

 

 

 今の彼らには、陛下と、そしてこの改革を導いたゼノンへの絶大な信頼があるからだ。

 「我々は、人間側のブラックな組織……。

 

 

 無能な王や、腐敗した教会に絶望し、居場所を失った者たちの『受け皿』となる!

 

 

 ゼノンがアンバインド(解放)した迷える魂たちが、

 

 

 安心して第二の人生を歩める場所。それが、我ら新生魔王軍の新たな姿だッ!!」

 その言葉と共に、ゼノンが一歩前へ出た。

 「――補足させていただきます。

 

 

 退職代行エージェントとして、私の元には日々、人間側からも多くの悲鳴が届いています。

 

 

 使い潰された聖女、給料を中抜きされた魔術師、老害騎士に手柄を奪われた若き戦士……。

 

 

 彼らには今、再就職先リバインドが必要です」

 ゼノンは手元のバインダーを閉じ、静かに眼鏡を直した。

 「本日より、魔王領の一部を『多種族共存特区』として開放します。

 

 

 そこでは、魔族も人間も関係ありません。

 

 

 『正当な労働』と『正当な対価』。

 

 

 それだけがルールとなる、世界で最もホワイトな共同体を作ります」

 一瞬の静寂の後。

 地鳴りのような歓声が、魔王城を揺らした。

 「……いいじゃねえか! 俺たちの食堂のメシ、人間にも食わせてやろうぜ!」

 「俺も、あっちの農業マニュアルには興味があったんだ。一緒に耕そう!」

 兵士たちの間に、新しい希望の火が灯る。

 それは「壊すための力」ではなく、「創るための力」への転換だった。

 魔王城・執務室。

 数日後、窓の外には、人間界からゼノンを頼ってやってきた「元・ブラック騎士団員」や「元・薄給司書」たちが、魔族たちと協力して街を整備する姿があった。

 「……見ろ、ゼノン。あそこのカフェでは、サキュバスと人間の娘が一緒に茶を飲んでいる。

 

 

 かつての私が見たら、腰を抜かしていた光景だよ」

 ゼクスは、窓辺で深く、満足そうに息を吐いた。

 「陛下。……平和とは、条約の紙の上にあるのではなく、

 

 

 『明日もここで働きたい』という共通の願いの上に成り立つものです」

 「ははは。君の言葉は、いつも事務的だが……誰よりも温かいな」

 ゼクスは、机の上に置かれた『契約満了報告書』を見つめた。

 「……さて、ゼノン。これで君との仕事は、本当の本当におしまい、か」

 「ええ。魔王軍の組織改善、および共存インフラの構築。

 

 

 すべての項目を完遂しました。……報酬は、予定通り頂いていますよ」

 ゼノンはコートを羽織り、帰る支度を整える。

 「……感謝しても、しきれんよ。

 

 

 ゼノン。君は私から、王としての孤独すらアンバインド(解放)してくれた」

 魔王は立ち上がり、右手を差し出した。

 

 

 そこには、一国の主としての威厳と、一人の友人としての情愛が籠もっていた。

 「……友人と思っていいのかな? 以前、聞いたことの答えを、もう一度聞かせてくれ」

 ゼノンは、差し出されたその手を、力強く握り返した。

 「……今は、あくまでもエージェントとクライアントの関係ですが。

 

 

 プライベートでは、以前申し上げた通りですよ」

 ゼノンは、不敵に、しかしどこか優しく微笑んだ。

 「――また会いましょう。ゼクス」

 魔王の瞳が、一瞬、驚きに、そして最高の喜びに見開かれた。

 「ああ……! ああ、これからもよろしく頼む。ゼノンよ!」

 夕日に染まる魔王城の門を、一人の男が歩いていく。

 その背中には、誰にも縛られない自由と、次なる「悲鳴」を救いに行く決意が宿っていた。

 『ゼノンさん、次の依頼が届いていますよ。――次は帝国軍の「ブラック強化兵士」たちです。

 

 

 彼ら、魔王軍の噂を聞いて「俺たちもあそこに転職したい」って泣いてますよ』

 ルナの明るい声が通信機から響く。

 「……ふ。いいでしょう。

 

 

 彼らの不当な運命、アンバインド(解放)して差し上げます」

 退職代行アンバインド。

 

 

 彼らの仕事に、終わりはない。


--魔王軍組織風土改善編 完結



もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想などをいただけると執筆の励みになります! よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ