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第8話(別れと再会)

第一章8話更新完了!


7話で龍太が「正義の名の下に暴走を始めた」覚悟を決めた直後、

くそ魔王軍の報復を恐れて街に居たら巻き添えが出る……という理由で、

龍太は一人で放浪の旅に出ます。


そこで、300年ぶりの「同じ匂い」を持つニヒルと再会!

焚き火を囲んだ静かな会話から、二人の絆が始まる……第一章の締め括りです。


今まで読んでくれた方、本当にありがとうございます!

第一章(1〜8話)の見直し・修正予定ですが、再開まで少しお待ちください^ ^

第二章では龍太とニヒルの「世直し」旅が本格化します。お楽しみに!

ー龍太ー

(街の門をくぐり抜け、夕暮れの街道を少し歩く)

「ふう……ここでじっとしてたら、確実に魔王軍が総動員で来るな。

武鬼神なら軍団引き連れて包囲、知鬼神なら街ごと罠に変えるだろうし。

巻き添え出すのも嫌だ。まずは人目のない場所へ」


森の奥、谷底を流れる川のほとり。

薄暗い夕暮れの中、焚き火の赤い光が揺れている。

魚の脂がジュッと落ちて煙が立ち上り、焼ける匂いが冷たい川風に混じって漂う。

黒髪の長身の男が、串に刺した川魚を無造作に焼いていた。

無精髭の顎、目の下に薄い隈、肩にかかる乱れた黒髪。

黒いコートは鱗模様が浮かび、首元に古びた銀の留め具が鈍く光っている。


人間の姿のニヒルだ。

龍太は木陰からじっと見つめていた。

(……龍形態じゃなくて、人間の姿か。

 しかも、普通に飯食ってる……?)


ニヒル(魚をひっくり返しながら、突然低い声で)

「……匂うな」

(ゆっくり顔を上げ、金の瞳が龍太を捉える。

一瞬、瞳が大きく見開く)

ニヒル(魚を串ごと地面に刺し、立ち上がる)

「エロスの……加護の匂い」


龍太(警戒しつつも、堂々と歩み寄る)

「よお。魚、うまそうだな」


ニヒル(鼻先を近づけるように、深く息を吸う)

「……同じだ。

あのヨレヨレ神の、甘ったるくて鬱陶しい加護の残り香。

 300年ぶりに嗅いだ」


龍太(焚き火の反対側に腰を下ろし、ニヤリ)

「俺も最近つけられたばっかだ。

 正義のつもりで死んだら、自殺扱いで地獄スキル+この加護を押し付けられた。

 お前は?」


ニヒル(静かに座り直し、魚をもう一本串に刺す)

「魔王に挑んだ。

 引き分けたまではよかったが、エロスが慌てて俺に枷をはめた。

 『世界のバランスを乱す異端』だと」


龍太(焚き火を見つめながら、笑う)

「似てるじゃん。

 俺も『正義のつもりで暴れた』ら、神に止められた」


ニヒル(魚を龍太に放り投げる)

「……食え。

 300年越しに、同じ枷を背負った馬鹿と飯を食うのも悪くない」


龍太(受け取って、熱々の魚にかぶりつく)

「うめえ!

 お前、意外と家庭的だな」


ニヒル(皮肉っぽく笑う)

「魚を焼くくらいなら、誰でもできる。

 だが、この匂いを嗅ぐのは……お前が初めてだ」

(少し間を置いて、ニヒルが静かに続ける)

焚き火のパチパチという音と川のせせらぎだけが響く中、ニヒルは薪をくべる手を止めた。

長い沈黙の後、声を低く絞り出すように

ニヒル「……試したかった。

 この加護の匂いが、本当に俺と同じ『異端』のものか」


龍太「結果は?」


ニヒル(口角がわずかに上がり、初めて見せる、ほんの少しの安堵)

その表情は、300年の孤独が一瞬だけ溶けたような——

「的中だ。

 ……面倒な再会だな、龍太」


挿絵(By みてみん)


龍太(魚を頬張りながら、ニヤッと)

「再会って言うなら、俺はお前と初対面だけどな。(ライルの記憶には有るが…)

 でも、まあ……加護の匂いが同じなら、仲間ってことでいいだろ?」


龍太は腰の日本刀に何気なく手をやり、刀身を軽く撫でた。

その瞬間、ニヒルが鋭く声を上げる。


ニヒル「その刀に、触れるな」


龍太「……?」


ニヒルは立ち上がり、鬼丸国綱をじっと見つめる。

その瞳に、300年の記憶がよぎるような影が差す。

ニヒル「この刀には、かつて無数の『願い』が込められていた……そして、無数の『血』が吸い込まれてきた。

 お前では、まだその『重み』に耐えられまい」


龍太は少し驚いて刀から手を離した。

すると、刀身が微かに震え、龍太の身体に宿るエロスの加護が、まるで共鳴するように淡く光った。


ニヒル「……やはり…あの呪縛は、この刀にも深々と刻まれている、というわけか」


龍太「……何の話だ?」


ニヒル(焚き火に戻りながら、低く)

「いつか、お前自身が知る日が来るさ。

 ……今は、まだ早い」


龍太は少し間を置いて、焚き火に目を戻した。

現在の世界の『ピラミッド構造』について語り始める。


龍太「……この世界も、俺のいた世界も、結局同じなんだな。

 上はほんのひと握り。下は大勢が搾取されて、必死に這いずり回ってる。

 税金だの上納金だって名目で吸い上げられて、『これが秩序だ』『バランスだ』って言われてるだけ。

 小学生を助けて死んだ俺が自殺扱いされたみたいに、

 正しいことした奴が罰せられて、悪い奴がのうのうと生きてる。

 ……歪んでるよな、どっちの世界も」


ニヒル(薪をくべながら、軽く眉を上げる)

「ほう?」

ニヒルは静かに頷き、300年の重みを帯びた声で

ニヒル「……ああ。

 俺が魔王に挑んだ時も、同じだった。

 竜種の民を食い物にする貴族どもを潰したら、『バランスを乱す異端』だとエロスに封じられた。

 300年、見てきた。ピラミッドは形を変えても、頂点の連中はいつも同じ言い訳を繰り返す。

 ……かつて、ある一人の男が、この『歪み』を力ずくで打ち破ろうとしたことがあった。

 だが、その男もまた、自らが作り出した新しい秩序と観測側の檻の中で、息を潜めることになった」


龍太(少し間を置いて、ニヤリ)

「……お前も、俺と同じ匂いがすると思った理由がわかったよ。

 神の押し付けた枷を、逆手に取ってぶっ壊す……似てるじゃん。

 俺がいた世界の『意識の枷』……

 シンギュラリティみたいなものにも、なんだか似てるな……その男って?」


ニヒル(焚き火の炎をじっと見つめながら)

「……今は、まだ話す時ではない。

 お前が、この刀の『重み』を理解した時が来るさ」


龍太(魚を食べ終わり、焚き火に手を翳しながら)

「だったら、壊すしかないよな。

 頂点まで、全部」


ニヒル(わずかに口角を上げ)

「……悪くない」


──こうして、

川辺の焚き火を囲みながら、

エロスの加護という「同じ枷」を背負った二人の旅が、静かに始まった。

復讐の炎が、正義の炎に変わった瞬間。

 頂点を壊すための、長い放浪の第一歩が、今ここで踏み出された。

8話更新完了!


7話で神に中指立てて「10倍返しで壊してやんよ」……

8話で龍太の覚悟が固まった瞬間でしたね。


第一章(1〜8話)がここで一区切りついたので、

少し時間を取って1〜8話全体を見直し・修正を入れる予定です。

初期の描写や伏線、テンポをより丁寧に磨いて、皆さんが「最初から面白い!」と思ってくれるようにしたいと思っています。


再開はもう少し先になりますが、第二章では龍太とニヒルの「世直し」旅が本格化します。

現代の歪みと異世界の歪みが交錯する……そんな展開を、じっくり描いていきます。


今まで読んでくれた方、本当にありがとうございます!

修正版も楽しみにしててください^ ^

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