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天命の巫女  作者: 詩星銀河
序章「脅威の魔術師」
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第三話「救われた命」

 第三話の投稿が完了しました。珠美の前に同じ敵が再び現れて交戦を試みる中で絶望が待ち受ける。しかし、そこで登場する謎の男が珠美に向けて決意を変える出来事が起きる。

 ここで大きく珠美は決意を改める理由をもらって第四話に続きます。

(遅い……。もしかして私はもう死んでいたりするのか?)


 そう思った時に目を開けてみると、そこで捉えた光景は誰の手で起こされたことなのか分からない状態に直面する。


「——え? 嘘っ!? この結界は何!?」

「見てらんねぇな」


 男が剣を振るわないで立ち尽くす姿が見られる。それは根本的に結界が張られて攻撃が通らないことを分かった上で無駄を省いているんだろう。そこで私の目前に現れた男は自分と同じぐらいの年齢で、それなりに腕の立つ術師であることが窺える。しかし、私を救った理由が見当たらない状況で撤退を簡潔に指示して来た。


「引き返すぞ! 付いて来い!」

「え……ええっ⁉」


 そうやって強引に腕を掴まれて彼の走る方向に連れて行かれた。何で私は救われてしまったのか謎に思った瞬間だったが、後で彼から聞かされた話は唐突に説教で始まった。


「バカ野郎! 敵わないなら逃げることぐらいしろよ! 危うく殺されるところだったんだぞ!」

「はぁ? 別に助け欲しいなんて言ってない! 余計なところで乱入して来ないでよ!」

「ふざけんな! 目の前で人が殺される光景を黙って見ていられる訳ねぇだろ! 人の気持ちを考えて行動しろ!」

「な、何よぉ……」


 そこで私を救った男は黒雲寺電斗と名乗った。彼はさっきの魔術師を追っている最中で殺される寸前の私と出会った。電斗の場合は美佐を殺した奴と同じ魔術師で、そいつの正体と多少の情報は掴めているらしい。けど、真っ向から交戦を挑んで勝利することは電斗でも難しいと明言する。しかし、そこで電斗がこれまで集めた情報を少しだけ明かしてくれた。


「あの男は自らを【義廻】と名乗って取り引きする現場を見たことがある。それに加えて現場で接触した人間は全て殺されている。つまり、義廻からして他者に大した意味はないと考えられる。今まで安全地帯から順調に情報が収集できていたが、今回の件で俺の手のうちすら知られてしまった。今後の調査も困難を極めるだろう。どうすれば良いんだ……」

「ご、ごめん……。私のせいで電斗の妨げになっちゃった。でも、私は良かったんだ。あそこで死んだとしても、後悔なんて微塵もなかったはずなんだから! 美佐がいない世界で生きて行くなんて出来ないのよ!」

「もしかして大事な人を義廻に殺されたのか? それで逃げなかったんだな。さっきは怒鳴ったりして悪かったよ。けど、どんなに悲しい理由があっても死んでも良いなんて思うんじゃねぇ! 人はどんなタイミングで死を迎えるかなんて分からないんだ。命がある限りは死に直面する時はいずれ来る。でも、それに抗わないで死んでしまう決意は間違いだ! 強く生きろ! 必ずいつか俺が仇を取ってやる!」

「電斗ぉ……?」


 電斗の気持ちが強く伝わって来た。それが私に微かな希望をもたらした。それに私の役割を自ら進んで実行する勇姿が見られたのと義務だから遂げたいのだと責任を背負うような人間でもない電斗が代わりに果たさせる理由が分からなかった。私は生きているうちは困った人々を救う巫女であることを思い出して以前までの意思がすっかりなくなった気がする。つまり、この先も私が生きる意味は電斗の説得で蘇ったのである。


「とにかく今はなるべく遠くまで逃げるぞ。じゃないと追って来る可能性があるかも知れないだろ?」

「分かった。あそこで戻って挑戦するなんて無謀よね?」


 そうやって私は電斗の登場で窮地を達した。死を覚悟して殺されるまで待っていた自分が非常に恥ずかしく思った。けど、これは今後に活かすための教訓となる。それなら過去の失敗を成果に繋げる工夫を凝らして次回に備えたいと考えた。


 そして私は商店街から十分に離れた場所まで来ると、電斗が走る足を止めて息を整えた。止まらないで走って来た距離は通常の人間だと無理かも知れないと思えるほどに遠い道のりを辿った。


「ここまで走った時に気付いたんだけど、お前って凄い鍛えているだろ? 普通なら疲れて休憩を求めても良いはずが、少しだけ息が荒くなる以上の乱れは見られない。何か理由でもあるのか?」

「私はこう見えても見習いの巫女なんだ。あそこにいた理由は巫女として親友を助けたい一心で目撃情報が商店街であったから本来は交戦になることは分かって訪れたんだよね?」

「はぁっ!? 巫女だったのか? それは好都合だ。俺をしばらくの間だけ家に泊めてくれないか? 行き場がないんだ。頼む!」

「はいはい。分かりました。それならうちのお父さんに相談してみる。あまり期待しないでね?」


 そんな感じで私は早退したことも話す必要性がある上で今日の出来事をお父さんに聞いてもらった。それを聞いた時のお父さんは美佐の死と命を投げ捨てようとした私の気持ちに少し説教が始まる予感を匂わせた。けど、そこでお父さんの口から聞けた話は説教よりも美佐が亡くなった頃に対する供養の一声と私が絶望を乗り越えられた事実を褒めるぐらいで収まった。そんな甘い話で終わらせて良いのか疑問を抱いた私は泣きながらお父さんを否定した。


「何でよ! 私は立場を放棄して死を決意した。それに対して何の説教もないなんてどうかしてるんしゃないの! 美佐が亡くなって悲しい気持ちで沈んだことが理由で人生を終わらせようと考えた私を叱らないなんて甘すぎるよぉ……」

「珠美? それは分かっているよ。でも、お前は言われなくても戻って来た。結局は自分の失敗が悪いと分かって説教を求めた意思があれば問題ない。きっと一時的に気持ちが沈んでどうしようもない状況下に陥った娘を何で叱る必要があるんだ? 大丈夫。説教がなくてもお前が目前で反省してくれる姿が見られたことが何よりも嬉しくて叱れないよ。思い詰める気持ちは分かるが、ちゃんとけじめを付けて切り替えられるようになりなさい」

「お、お父さん……?」


 そして最後に電斗の話をした。電斗が登場しないで殺される瞬間を止めなかったなら、私は本当に死んでいたかもしれないと真相を語った。すると、すぐにお父さんはお礼がしたいと言って電斗の居場所を聞いて来た。それを私から電斗は庭で待機していると話した時のお父さんが気を引き締めたような表情で連れて来るのを待った。


「どうも。俺は黒雲寺電斗です。目的の男を追って情報収集をしている時に殺される寸前の珠美を救わせてもらいました。けど、救ったことを特別に称賛や恩品を頂きたいなんてことはありません。しかし、俺も行き場がない現状です。許してくださるなら泊めてもらいたい一心を聞いてもらえませんか? お願いします!」

「顔を上げなさい。立場が逆転してしまっているよ。娘を助けてもらった父親としてはうちで泊めてやることぐらいなら構わない。逆に幾らでも泊まって行きなさい」

「ありがとうございます!」


 そんな感じでお父さんから了承を得た電斗はうちの居候になった。電斗に関しては修行を共にすることも出来るが故に私の成長が促せる期待が少し持てた。修行が手伝える点が大きく居候が許せる理由を作っていたと思える。


 そして電斗が今日から隣の部屋で就寝させてもらえるとお父さんが個室を提供してくれた。しかし、実際に隣は珠美が寝ていることを考慮した上で怪しい行動を見せた時は包み隠さないで理由を述べる余地だけは与える約束を交わした。電斗は忠誠を誓うような態度で了承する。

 こうして私の日常に電斗が加わって普段と違った生活が始まる。


(このスタートが私たちにどれだけの影響を与えるのか予測が難しいようにも思えるが、そこまで酷い結果を生み出さない見込みがあるから招いたことは言われなくても分かる。だから、電斗は泊まる上で少なくとも損失を与えない努力を尽くす日々が始まる。そこで私が見習えることが見つかった時は全力で取得したい)


 電斗の存在がもたらした影響は少なからず出会った瞬間から私は受けている。その事実を踏まえて電斗が泊まれるようにお願いしたんだ。つまり、その時点で電斗は信頼を勝ち取ったことになる。しかし、それは生活を送って行く中で少しずつ本性が見えて来る事実はお互いを深く知り始めた時に現れる。電斗が泊めてもらえることの恩義をどうやって返して行ける人間なのかは特に重要性を極めた話だろう。とにかく今後は電斗と仲良く接してお互いに大きく意味が成せる結果に至れることを願った。


「それじゃあ行って来ます!」

「行ってらっしゃい。車に気を付けろよ?」

「もちろん分かっているつもりだよ。電斗もちゃんと送り出せるなんて偉いじゃん! その調子でこれからはお願いね!」

「分かった。その件は感謝する」


 それだけ言葉を酌み交わした後で私は登校する。美佐が殺されたと言う事実は警察にも伝えたけれど、それを確信に繋げるための調査が始められると後に聞かされた。義廻と名前が特定されたことで少しは警戒する余地が出来たかも知れないと警察側が感謝を言い渡して来るぐらいに有益な情報を電斗はもたらしてしまう。これまで義廻が大勢を殺して来た事実が明かされて行方不明となった人たちの消息が次々に判明する。相手は魔術師である上に凄く強いことが考慮されて捜査の際は特に気を付ける必要性が出て来る。交戦になった時を考えて捜査官は有力な魔術師の同行を徹底する方針が決定した。


「美佐と最後に過ごした時間は今でも忘れないよ?」

「そうだね。私たちは美佐から沢山の勇気をもらった。だから、これからは美佐の分まで生きるんだ」

「で、でも! まだ生きている可能性はあるんでしょ! それなら帰って来ることを願って待っていようよ!」

「いや、あの時に見たのが美佐だとすると生存は考えられない。けど、私の中に美佐は生き続けている。そう思いたい」


 美佐と凄く仲の良かった友達が集まって屋上に花束とそれぞれが綴った手紙を添えた。一人だけ生存を信じたいと訴えて止まない声も上がった。けど、手紙はちゃんと書いて添えていた。もはや、まだ生存していると調査で判明した時は手紙の抹消を行なって美佐を迎えたいと一同は誓った。そんな奇跡が起こる瞬間が望ましいが、それを無理に貫いてしまうことは往生際が悪いと言える。ここは潔く美佐の死を受け入れて私たちで意志を繋げる一心を掲げた。


 そして放課後を迎えて寄り道しないで帰宅を目指した。すると、校門の前で電斗が私をずっと待っていた。こんな場所で待機している理由が分からなくて電斗に声を掛けた時に振り向いた。そこで私が来たことが分かった瞬間に短い言葉を発した。


「帰ろう。俺が一緒に行く」

「ふーん? そこまで気を遣ってくれるんだぁ~?」

「お前の親父さんに指示されて来た。理由はそれだけだ」

「それでも嬉しい!」

「行くぞ」


 電斗が先に背を向けて家に帰る道を歩いて行く姿勢が後ろから窺えた。それに置いて行かれないように隣を歩く。これでは出来たばかりのカップルみたいで恥ずかしい。けど、電斗と並んで帰れることは少しだけ安心感を抱けた。今日は無事に自宅に到着してお父さんが玄関で帰りを待ってくれていた。


「たたいま」

「お帰りなさい。どうやらちゃんと電斗と帰って来れたみたいだね? 良かったよ」

「俺は大したことはしてません。しかし、義廻の襲撃は受けなかったようで何よりです」

「実際に電斗は結界術が扱える。それに加えて電撃を操作する魔術を鍛えれば義廻でも倒せるかも知れない」

「なるほど。それなら俺も一緒に修行させてください! これまで多くの人たちが殺されて行く中で俺は逃げ続けた。だから、今度は正面から戦いたいんだ! あの義廻を討ち取りたい!」

「良いだろう! だが、俺の施す修行は厳しいぞ! 覚悟しろ!」

「はい!」


 こうして私の修行に電斗が加わって以前よりも賑やかになる予感がした。電斗の戦力が加わることで義廻に対抗する術師が増える点は有力だと考えられる。


(きっと美佐の仇を取るんだ……!)

 お疲れ様です。第三話はどうでしたか? 珠美は電斗のお陰で難を逃れる結果が生じる。そこで電斗は珠美を圧倒した【義廻】をいずれ倒す意思を見せる。それがさらなる目標の始動だった。

 珠美の意思が固まって第四話に続きます。次で電斗の実力が示される!

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