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天命の巫女  作者: 詩星銀河
序章「脅威の魔術師」
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第二話「消えた親友の行方」

 気になる第二話がついに解禁! 第一話で強敵と交戦した珠美は前回の経験で生じた後悔が成長を促す。そこで強くなった珠美だが、親友の末路が原因で悲しい決断が下される。珠美の身に起きた出来事を第二話を読んで現状の真相を掴め!

 私は一ヵ月間の入院を強いられた。病院で行ったリハビリは普段から励んで来たトレーニングのお陰で大して苦痛を味わうこともなかった。実際に回避されて受けた一撃が深刻で、いつも面会に来てくれる神主さんが霊力を活性化させる特薬を飲ませてくれたことが一番の早期回復に繋がった。


「マジで心配だったぜ。まさか大量の血痕が残った場所で倒れていたなんて」

「凄かったわね~。今回は乗り込んだ先で待ち受けた相手は正体不明の魔術師なんだからさ」

「まさか首を落とされたにも関わらず、二人目の同一人物がいたなんて事実も凄く気になる話だよね? 一体どんな魔術を扱えれば二人に増やせるんだろう」

「いわゆる【分身】が近い答えなんじゃないの? それ以外に可能性はある訳がないでしょ!」

「その線は非常に確率が高い」


 そうやって私の席を囲って同級生たちが以前の話で盛り上がっている。しかし、私はそれよりも行方不明になった美佐と三澤紫衣ちゃんの居場所が知りたかった。二人は私が守り抜かないといけなかった人たちなんだ。今頃は例の魔術師にどんな被害を受けているのか分からない。だから、最近は放課後を使って組まなく都内を巡って捜索を進めていた。しかし、二人が見付かることはなかった。


「ねぇ、珠美? 今日の捜索は休んで喫茶店に行こうよ? そこで一息は吐かないと身体が保てないでしょ?」

「パス。もしかしたら二人は助けを求めているに違いない。だから、私が助け出すんだ……」

「はぁ~。責任感が強すぎるんだよ。そこは今日だけでも休めて置かない?」

「嫌だ。私は探す」

「珠美は親友想いだね?」

「……」


 そんな風に優しく声を掛けてくれているのは古式結花と言う小学三年生の頃に母が受けた依頼を解決した時に感謝を伝える目的で神社に来たことが理由で仲良くなった。実際に美佐も加えて私たち三人は非常に仲良しだった。それは誰が見ても明白だと言える。


「こんなところにいた! ずっと探したよ? 捜索時間は三時間が厳守だって言われたでしょ?」

「何で時間なんて守らないといえないのよ。美佐が苦しんでいるかも知れない時に探してあげられない親友なんていらないじゃない!」

「気持ちは分かるけど、修行の時間までに帰る約束で短縮してあげていることだって考慮しろよ! それにもっと強くならないとあいつと再戦の時に今度は殺される可能性が高い。しかも、二人の傍に奴がいた場合は見付かっても助られない。だから、取り敢えず時間は守って修行に努めよう?」

「わ、分かった……」


 そんな風に手間を掛けて帰るように指摘したのは私の弟である。名は私が自分で付けてあげた清原彩斗だった。彼の【彩】を彩っているような純心に育って欲しいと願いが込められていた。本人はとても気に入っている様子を窺わせる時が毎度のようにあった。


「ただいまー!」

「遅いぞ。今は何時だと思っている? 時間が守れないなら捜索はさせないと言ったはずだ」

「すいません」

「はぁ~。珠美は立派な巫女になりたいっていつも凄く張り切っていたはずじゃないか? やっぱあの一件が辛くて集中できないかな?」

「そんなことはない」

「もっと元気を出してくれないか? どれだけ時間を掛けても良い。だから、いつもの元気で懸命に頑張る珠美に戻ってくれよ」

「そのうちね」


 そうやって神主を務める父の清原智成が温かい一言を送ってくれた。そんな一言は素直に嬉しかった。でも、私は美佐の行方が分かない状態で嬉しい気持ちを吐き出すなんて出来ない。だから、美佐が見付かった時に本音を伝えたと思う。

 取り敢えず彩斗が言っていた通りのことが起きる前提でお父さんからも話は進められた。お父さんの説得で捜索を警察に任せて修行時間を大切にすることで交戦に備える策の優先を取る方針が提案される。それに対して私の気落ちも変化が見られる。それは見付けれても助けられなかった時のことを踏まえて修行は優先する必要があると悩んだ末に決定した。ここで強くなって次は奴を倒してやるんだと言う気持ちが修行に身を尽くす理由になった。


 そして今日は残った時間で修行が行われた。実際にトレーニングと剣術を多く取り入れて実践で不備のない態勢を整える方針を掲げる意思を貫いた。それが普段よりも短かったとしても少しだけ強くなれたように思えて仕方がなかった。


「へぇ? 捜索よりも修行を優先することにしたんだ? 理由は私も分かる気がするよ。再戦でまた負けても美佐は守れないもんね!」

「うん。だから、私はもっと頑張る。それで強くなって見せるんだ。きっと美佐も事情を話せば分かってくれるよね?」

「もちろんだよ! 親友に通じない話がある訳ないもん!」

「そうだよね。美佐なら分かってくれるはず!」

「うん!」


 そんな感じで美佐と同じぐらいの親友だった都鳥未知の一言で少し気持ちが楽になった気がする。未知は人を安心させるのが上手でいつも凹んだ時は彼女と話すことが多い。私が笑顔を見せた時に未知も同じような表情を浮かべた。


 そして美佐と紫衣ちゃんが行方不明で捜索が続けられて来た中で未だに二人は見付からない。それでも強くなる意思を捨てないで修行を続けて懸命に頑張った。そのお陰で私の剣術は一段と磨かれた。実際に埼玉県まで剣術が中心の合宿に行って非常に強くなった実感が少し湧いた。

 けど、本来なら美佐がいないだけで私は毎日を寂しく思えてしまう日々を送っている。以前まで一緒にいた美佐の行方は噂にもならなかったが、美佐が無事であることを優先したい気持ちを抑えて訓練に励んで行く。しかし、それは今後の日常に大きく影響して来ることが起きる。


「え? 美佐ちゃんと似た人を街中で見掛けたの? そこはどこ?」

「見たのは私じゃないけど、他の人たちが言っていたね? 今では廃墟された商店街と言う名目で来年に取り壊す予定だったはず」

「分かった! ありがとう!」


 そこで私は急いで職員室に来ると体調不良を訴えて早退を試みる。それは日頃の行いが信頼された上で成立する話だった。実際に美佐がどこかで怖い想いをしているかも知れないと考えて早く向かった方が良いと判断したのである。


「ここが美佐を目撃した場所? 大丈夫だよ? 今から助けて見せる!」


 覚悟は出来ていた。何故なら以前よりも強くなった事実が真っ先に美佐の救出に乗り出した理由だった。美佐がどんな仕打ちを受けているのか分からなくて不安が募る毎日もこれで終わりにしたい。早く美佐を助けて一緒に帰りたいんだ。


「美佐!」


 商店街の奥まで入って行くと、その先は妖力が漂う異様な空気が蔓延していた。この状態だといち早く美佐の安全を国保しないとまずいと思って迷わないで進んで行った。

 奥はすでに商店街とは思えない光景が見られる。そしてぽつんと一人で立ち尽くす後ろ姿を見た時に見慣れていた感覚が美佐であることに確信を抱かせた。


「美佐ぁ!」


 そうやって美佐の下まで駆けつけようとした瞬間に彼女に届く手前で地中から何かが飛び出して来ることが分かって反射運動が即座に後退させた。


 ドカーン!


「ちっ! もう目の前に美佐がいるのにふざけんなよ!」


 すると、背後から感じ取れた魔力が瞬時に来る攻撃を避けて手元に持った護霊刀を振り払った。それが攻撃して来た敵が斬れて存在を維持できなくなった消えた。それはいわゆる死霊に近いが、分散したのが魔力だったことが理由で例の魔術師が仕掛けた攻撃である捉えた。


「どうやら再び会えたわね! いるんでしょ? 隠れてないで出て来なさいよ!」


 そんな風に以前の交戦で負かして来た魔術師を誘い出す。この時点でも魔力を感知できないことから魔術は使用されていないと判断した。

 そしてどこからか拍手の音が響き渡る中で魔術師は姿を現す。そいつは以前と変わらに服装と容姿を目前に晒させる。拍手が止んで魔術師が登場して私と対峙した時の警戒は解かない状態で向かい合う。これで顔を合わせた回数は二回目だ。


(ここでこいつを倒して美佐と一緒に帰るんだ! 紫衣ちゃんの姿はないけど、取り敢えず美佐だけでも取り返す!)


 私が抱いた意思は非常に固くて美佐が届きそうなところにいる。だから、これまで積んで来た修行の成果を出して倒したいと内心で思っていた。


「まさか僕がいると分かった上で来たのかい? それって以前よりも強くなったからリベンジ戦を挑みたいってことかな?」

「もちろん前回の勝敗を塗り替えることも踏まえていることは確かよ。けど、本当の目的は美佐を取り戻すことだ!」

「ほう? そこまでして親友が大事か? その意思はとても関心するけど、僕はそれに対して非常に申し訳ないことをした。残念だなぁ。せっかく助けるために駆け付けたはずが、すでに彼女は生物として機能できる状態にない。何故なら僕が殺して魔術に活用できる方向性を通させてもらったからね? もう彼女の遺体すらなくて魂だけが僕に活用される形で取り入れたんだ。生物はとても助かるよ。だって殺せば活用の道を辿れる便利な道具として役立てることが出来る。だから、お礼を言わせてくれ。ありがとう」

「——は?」


 そうやって平然とした笑顔で告げた話は美佐の死を表していた。けど、確かに美佐はそこにいたはずだと思って再び目を向けた先に映ったのは徐々に崩れて形を成さない親友の姿だった。


「そこにいるのは殺した後の彼女だよ。僕の魔術で見た目は生前の状態に見えるけど、実際は効果を失えば中身のない亡骸に過ぎないんだ。しかし、僕が手を加えれば亡骸でも利用する方法はあるんだよね?」

「ふざけんなぁぁぁあああ!?」


 手に持っていた護霊刀を構えて鍛え上げた【天牙一閃】を放つ。以前の倍は速度が上がっていることを踏まえると避けられるはずがないと自信を持って繰り出す。しかし、男はまたしても簡単に避けて横から嘲笑を浮かべながら今度は攻撃に転じる動作は見せる様子を窺わせなかった。それはすでに私だと相手にならなくてどんなタイミングでも殺せるから敢えて即座に行動しなかったのかも知れない。それが分かった時から私は自然と涙が溢れて自分は無力なんだと自覚した。もう美佐と帰れないなら生きる意味なんてどこにもないと内心で思った。その瞬間から戦意喪失して再戦で勝利したいと願ったことが一気に失われて行く感じが抱かれる。


「何でぇ……お前は何もしていない美佐を殺す理由がどこにあるって言うのよ! 美佐は優しくて恨まれることなんかひとつもしてなかった。それが助けてあげたい気持ちを通して付き添いで来てくれた優しい美佐がぁ……可哀そうだよぉ……」

「それは確かに疑問を抱くところとしては申し分はないね? けど、それって君の思考でしょ? 人が死んで行くことに理由なんているのかな?」

「うるさい! 無差別に理由もない善良な人間を簡単に殺せるお前に何が分かるんだよ!」

「そう怒ることないじゃん。少なからず君は生きている訳だし」

「だから、大事な人を失った私の気持ちが分からないお前が平然とひけらかしてんじゃねぇよぉ! あぁ……」


 ただ怒りと言う感情だけが溢れ出して目前の男に恨みをぶつけた。けど、そんなことだけで収まるなら私はまだ戦えていたはずだ。それが出来ない時点で私の悲しみは収まらない。


 右手に握った護霊刀に入れる力が強くなる。しかし、幾ら殺意を込めて振るってもこいつは平然を保った状態で軽く避けて仰いで来る。この差は歴然としている。それなのに潔く死ねない現状が私の地獄だった。すでに敗北を確信した状態は交戦を仕掛ける意思すら消失させて死んでも良いとばかり思えてしまう。

 すると、男が護霊刀を振るう意思を見せない私に興味を失くしたように思える一言を吐きながら本望を叶える余地を与えてくれる行為に出た。


「もう生きる意思がないなら用はない。死にたいと懇願するなら殺してあげることも善意に変わりのない行為だ。ま、別に本心が進んでやりたいと思って行っている訳じゃないけどね?」

「良いよぉ……。殺せば良いじゃん」

「分かった。殺してストックしてあげる」


 その一言が最後かもしれないと思えた瞬間だった。それも殺し方は単純に魔術を駆使するのだと魔力が感じられたことで分かっていた。けど、本当は怖かったんだ。死んだ先に待ち受けているのは天国であると発想を述べた人間もいる。それが本当に叶うのなら早く美佐のところまで行きたいと心から願った。


「それじゃあ来世に期待すると良いよ」


 そんな風に男は急に魔力の感じられる黒い気を収束させて一本の剣を生成する。そこで剣が生成できる理屈が私に理解することは出来なかった。しかし、もう生命が絶たれる寸前に直面している現状では大して理解を成す意味がない。だから、恐怖を押し殺すために目を閉じて近いうちに訪れる死が実行される時を待った。


「みんなぁ……バイバイ」


 そうやって私が見えない状態を敢えて作った中で覚悟を決める。そこから迎える運命が途絶える瞬間と言う一生に一度の経験は少なくとも終えた後のことは大して考える必要もないのだろう。少し置かれた間が過ぎて行く時の中で私はまだ生きる余地に救われる。

 第二話を読破して頂いてありがとうございます! 前書きで記した悲しい決断は第三話で珠美の結末を知って第四話も楽しみしてね!

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