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第18話 空青

「空青殿、よくぞ参られた。お疲れであろう。」

「土門さん、堅苦しいのはやめようよ。旅よりも堅苦しい方が疲れるよ。」

「ははは、そうだな。空青らしい。」

「うん。」


 土門から見た空青は。


(霊数は5,800というところか…。鍛錬を怠っていないのであろう。以前にも増して所作に隙がない。)


「ちょっと、土門さん。私の事を測るのをやめてよ。」


 土門の仕草で自分の力量を測られている事に気が付いた空青が抗議の声を上げた。


「私は"精霊の王"になるつもりはないんだから。」


 この空青の思いは多くの精霊使いに広く知られていた。もちろん、土門も。


「ああ、空青なら良い王になれると思うがな。残念だ。」


 空青は多くの精霊使いから『空青が精霊の王になる』ことを望まれている事を知っていたが。


「私は【空】をまとめるだけで精一杯だよ。」


 土門は空青の力量を高く評価していた。この快活な撰霊を好ましく思っていたのだ。それだけに空青が精霊の王を望まない事が残念だった。


「まあ、仕方ないのか…。」

「そうそう、仕方ないのだよ。ところで…。」


 土門は空青から聞かれる事はわかっていた。


「【闇】の撰霊の事だな?」

「うん、風牙が接触した。霊数は大した事はない。全ての属性を支配下に置いているようだが。これも問題では無い。精霊の力が干渉を起こし、うまく扱いきれないだろう。」


 土門も始めはそう思っていた。例えば【水】と【火】は相性が悪い。その力を半減させてしまうだろうと。しかし、あの時。耶咫が10,000もの精霊を支配下へと置いた時。


(精霊は相乗的に力を増して行ったように思えた。空青の言う"ことわり"を外れていた。)


「しかし、あの【闇】の撰霊は風牙と風香を圧倒したらしい。どういう事なの?」


 土門は耶咫が10,000の精霊を支配した事を空青に伝えた。耶咫は10,000の精霊を従える器である事を。


「そうか…。正直驚いた。10,000の精霊か…。私には想像もつかない。だが、今はたかだか50くらいの霊数だ。何とも測り難いやつだな。」


 最後の言葉は空青の一人言のように聞こえた。


「空青…、お前。まさか不穏な事を考えていないだろうな。」

「ふふふ、土門さんには迷惑はかけないよ。」


 空青はそう言うと撰霊の武器たる『槍』をグッと握りしめた。



 

 

 耶咫達は【土】の里まであと15kmというところまでたどり着いていた。


「ねえ、翡翠。気付いている?」

「うん、15人くらいかな…。敵意は無いようだけど…。」


 砂寿の言葉に翡翠は頷いた。耶咫は気付いているのか、相変わらずの眠そうな目をして歩いていた。


(何もなければよいけど…。)


 しかし、こういう思いは得てして裏切られるものだ。


「空青様!」


【空】の臣、15名と一緒に姿を現した空青へと一早く気付いたのは砂寿だった。


「砂寿さん!お会いしたかった!」


 嬉しそうに返答した空青に砂寿は少し安堵した。戦闘になるような事は無いだろうと。しかし、こういう楽観的な予想も裏切られるものなのだ。


「空青様。私どもに御用がお有りですか?」


 ちょっと固い翡翠の問いかけに空青は元気良く答えた。


「うん、そこの撰霊と手合わせをお願いしたい!」


 これには砂寿が慌てた。


「空青様、始まりの時の前に何があったら困ります。その申し出は…。」


 武天村で耶咫に手合わせを挑んだ砂寿が何言ってんだろうと翡翠は密かに思ったが、撰霊と撰霊の戦闘が無事で済むわけがない。


「耶咫…君。あなたは10,000の精霊を支配下に置くと聞いている。私など足元にも及ばない。しかも私は精霊の王になる意思はない。なので私が怪我する分には何も困らない。」


 空青は10,000の精霊を従えた耶咫の方が強いんだから、精霊の王を目指さない空青など相手にならないだろうが、その力量は示せと言っているのだ。


 翡翠は耶咫の前に出た。


「お待ちください、空青様。耶咫様は撰霊の武器を持っていません。公正に力量を測る事は難しいでしょう。できればまたの機会をいただきたく。」


 翡翠の言葉に空青は頷いた。


「それもそうだな。」


 空青はそう言うと手に握っていた槍を青玉へと放った。


「青玉、ちょっと持ってて。」

「空ちゃん、どうするのよ?」


 心配気な翡翠と砂寿の視線を避けるように小さくなっていた青玉が小声で空青へ問うた。


「耶咫君は武器を持っていない様だし…。こうするのよ!」


 空青は全身に精霊の力を宿らせると宙へと舞い上がり、耶咫へと殴りかかった。

 耶咫はこうなる事はわかっていた。精霊達が空青と戦えと囁いていたから。空青に認められよ!と。

 空青の攻撃は速かった。


(風を操っているのか!)


 耶咫は空青の動きの理由はわかっていたが。


「速すぎるだろ!」


 耶咫に精霊が囁く。右へ右へ逃げろ逃げろと。耶咫は精霊の言葉に従う。空青の左へと回り込んで空青の攻撃をかわす。


(こいつ!私の動きが予想できるのか?)


 空青の左へ回り込んだ耶咫は重心を落とすと低い蹴りを空青の左太腿を狙って放った。


「ちっ!」


 空青はこの攻撃を防御する事ができなかった。空青は精霊の力を使い、宙へ浮かび攻撃をかわした。しかし、空青は宙へ浮かんだために逃げる事ができなくなった。


「そこ!」


 自由に動けない空青へ耶咫が突きを放つ。その重たい一撃は空青の腹を捉えていた。


「ふふふ、その霊数でやるね!」


 空青は言葉とは裏腹に耶咫の霊数を注視していた。


(霊数が段々と増えている。始めは50ほどだったのに今は300くらいか!)


 しかも腹に受けたダメージが思いのほかに大きい。


(こいつ、強いのか…?)


 だが空青をして耶咫の実力を測ることは難しかった。


(ならば、全力で試す!)


お読みいただきありがとうございます!これからもよろしくお願いします。

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