お姉ちゃん登場(Re)
最近マーニャちゃんの様子がおかしい。
どこが、と言われると困るのだが、姉としての勘が、告げるのだ。マーニャちゃんが困っていると。
「ねぇ、マーニャちゃん。顔色が悪いけど大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫。昨日ちょっと夜更かししちゃったから、少し寝不足かも。」
マーニャはそう言って力なく笑う。
その痛々しい笑顔が、何かあったという事を告げているのだが、気がついていないのだろうか?
サーラは、妹の事が心配で、独自に調べることを心に決めた。
◇
「マーニャの事?あぁ、最近ちょっとよそよそしくなった気がするなぁ。以前はべったりしてきたのに。」
そう言うのはグレッグ。村長の息子だ。
マーニャと付き合っているという噂があるが、まだそこまで行っていないのは、姉である自分がよく知っている。ただ、マーニャがお熱を上げていたこともまた事実で、彼女がおかしい原因は、グレッグが無理やり何かをしようとしたのではないか?と思った空だったりする。
村長の息子でありイケメンであるグレッグは、容姿、将来の甲斐性共に優れた優良物件で、狙っている村の女の子は多い。
また村長ともなれば、正妻以外に何人かの側室を囲っていても、表立っては文句を言われることはない。
現に今の村長も5人の側室を囲っており、この村ではグレンの腹違いの弟妹達が7人ほど一緒に暮らしている。
そんな自分の価値をわかっているグレッグは、表向きは爽やかなイケメンを気取って入るが、裏では結構際どい事をやらかしたりしている。
言いよってくる女は、もれなく頂いているし、逆に自分に興味を示さない女に対しては、脅迫まがいの手を使って追い込んで身体を要求することもある。
サーラも、その被害にあいかけた一人だ。
その時は、幾重にも重なった偶然により、純潔を奪われることはなかったものの、思い出すだけで身震いしてしまう。
そんなサーラが、自分の心を押し殺してまでもグレッグに会いに来たのは、ひとえにマーニャの為だったのだが、グレッグの様子を見ている限り、グレッグが何かをしたというわけではないらしい。
「そう、ならいいの。」
サーラが踵を返して立ち去ろうとするのを、グレッグが腕を掴み呼び止める。
「おいおい、折角久しぶりに会ったんだ。もう少し話をしようぜ。」
「離してっ!」
サーラはグレッグの腕を振りほどきながら言う。
「いーい、契約があること忘れないでよ?私やマーニャちゃんに手を出したら……わかってるんでしょうね? 」
「おー、おっかねぇなぁ。ちゃんとわかってるよ。だから何もしてねぇだろ?」
「わかってるならいいのよ。じゃぁね。」
サーラは足早にグレッグの元から立ち去る。
その後姿を少し悲しそうな目で見つめるグレッグ。
『血の贖いの契約』
破れば心臓が破裂して死に至るという、禁呪に近い契約の魔法。
これがグレッグにかけられている限り、どれだけ恋焦がれても手を出すことは敵わない。
サーラは気づいていないが、グレッグが唯一本気で恋に落ちた相手はサーラだけであった。
当時はグレッグも子ども過ぎて、どうすればその想いを伝えることが出来るかわからず、結果として安易な方法に走り、サーラを傷つけることになった。
結局、その事件が元で色々と隠していたことが明るみに出て、グレッグどころか村長の立場まで危うくなり、オトナの事情が複雑に絡み合いながら事件はなかったことにされたが、サーラ達に二度と被害が及ばないよう、グレッグには契約魔術を掛けられることになった。
下手を撃てば、親子ともども命を失いかねないギリギリの状況だったため、村長もこれを受諾し、グレッグは契約に縛られることになった。
グレッグにしてみれば「若さゆえの過ち」の結果なので、甘んじて受け入れるしかなかったが、契約の印を見るたび、サーラの姿を見かけるたび、どうしてもっとうまくやれなかったのか?と後悔に苛まされるのだった。
◇
「グレッグが違うとなると……他には思いつかないわねぇ。」
はぁ、と公園のベンチに腰を下ろし溜息をついていると、不意に声が掛けられる。
「サーラさん、どうしたんですか?ため息なんかついて。」
「あ、レオンちゃん。何でもないのよ。」
レオンちゃんは、マーニャちゃんと同い年の幼馴染。
小さい頃は、マーニャちゃんと三人でよく遊んだものだった。
「やだなぁ。もう「レオンちゃん」って年じゃないですよ。」
「あ、ごめんね。でもレオンちゃんはレオンちゃんだもの。」
「もう、サーラさん迄子ども扱いして。俺はもう立派な大人ですよ。……まぁ、「無駄飯喰らい」ですけどね。」
自嘲するレオンちゃん顔を見ていると、何故か胸が苦しくなってくる。
笑っているけど、その事で一番苦しんでいるのはレオンちゃんだってことはよくわかっている。
気づけば、レオンちゃんの頭を掻き抱き、自分の胸へと埋め、ギュッと抱きしめる。
「大丈夫。レオンちゃんはまだ自分のやるべきことが見つかってないだけ。お姉ちゃんはレオンちゃんが一生懸命頑張ってること知ってるから。焦っちゃダメ。」
最初抵抗を試みていたレオンちゃんが大人しくなる。
そのレオンちゃんの頭を優しく撫でて、大丈夫だから、焦らないで、と何度も何度も繰り返し囁く。
やがてレオンちゃんが顔を上げると、そっと離れる。
「参ったなぁ。お姉ちゃんを元気つけたかったのに、逆になっちゃうんだもんなぁ。」
「クスッ、お姉ちゃん、だからね。」
レオンとサーラは暫くの間、笑いあい、他愛の無い話をしてから応援を後にした。
何も解決していないが、サーラの心は、レオンと会ったことで少しだけ軽くなった気がした。
◇ ◇ ◇
「お姉ちゃん、ねぇ。……よし決めた。」
俺は、サーラを見送った後も、暫くこの場に留まっている。
先程確認したサーラのステータスを忘れないうちにチェックしたかったからだ。
『サーラ 人族 Lv9 Job 精霊巫女』
HP 92 MP 198
STR 38 INT 128 VIT 27
SPD 42 DEX 60 LUK 99
スキル:精霊魔法Lv5 風魔法Lv4 水魔法Lv4 契約魔法Lv5 料理Lv3 家事Lv3 魔力強化 Lv2 魔法増幅 Lv2 生活魔法
称号 :精霊に愛されし娘
ハッキリ言って凄い数値だ。
ここ数日、村の中を散策しながら、目に付いた奴らのステータスを片っ端から確認してきた。
それで分かったのは、村人達の大人のレベルが平均して5~6。
ステータスの数値も、得意不得意があるが、平均で大体20~30といったところだった。
スキルだって、生活魔法を除けば二つも持っていればいい方で、3つ持っているものは稀だった。
しかも、大半はLv1か2であり、Lv3ともなればかなりの熟練者といえるのに、サーラの場合は、魔法のLVが異様に高い。
ステータスだって、魔法系特化ではあるがレベルの割に高いのだと思う。
つまり、サーラは魔法使いとして実践に耐えられる強さを持っているという事であり、戦いの場においては、これ以上の強さの敵がゴロゴロしているという事でもある。
このステータスを見た時点で、俺は次のターゲットをサーラに決めた。
……あの大きな最終兵器に包まれたからではない、無いといったらないのだ。
確かに、あの大きさと柔らかさは、最終兵器にふさわしかった。ずっと包まれていたいと思わされる……。しかし、サーラをターゲットにするのはステータスが原因なんだからなっ!
俺は誰にともなしにそう言い訳をする。
幸いにも、マーニャがこちらの手中にある限り、いくらサーラが強敵だとしても、後れを取ることは無い。
「ふっふっふっ、うわっはっはっはっ!」
俺は誰も居ない公園で高笑いをする。
勝利を確信した高笑いだ……だってしょうがないじゃないか、漏れ出てしまったんだから。
・
・
・
後れを取ることは無い?
誰が言ったんだそんな事?
今の俺は十分に後れを取っていた。
ベッドの上には全裸で喘いでいたマーニャがいる。その脚の付け根辺りに染みが出来ている。
俺はベッドの下で蹲っている。
俺とマーニャの間に立ち、涙を流している女性……サーラがいる。
「なんで?何でこんなことになってるの?お姉ちゃん信じてたのにっ!」
……いや、何でこんなことになっているか、俺が知りたい。
俺はほとんど動かない身体に鞭打って、マーニャを見る。
マーニャの、混乱して怯えている顔を見ながら、少し前の事を思い出す……。
◇
「……ぁンッ……、もう、イヤぁぁぁ。」
拒絶の声をあげるマーニャ。
マーニャに負けを認めさせ、毎晩のようにチャレンジした結果……うん、女の子を悦ばせるのに細々した理由なんかいらないよね?
そう結論を出し、俺はマーニャと玩具で遊んでいる。周りには暴発した息子の粗相の後もあるが……気にしないでおこう。
俺は回復を待つ間マーニャに話しかける。
「今日、サーラさんにあったぜ。」
しかし、玩具で遊び過ぎたせいで、息も絶え絶えになっているマーニャは応えない。
「せっかくだから、次はお姉ちゃんにしようか?」
俺がそう言った途端、マーニャの瞳に意思が宿り、強い口調で答えてくる。
「止めてっ!お姉ちゃんには手を出さないでっ!私は……ぁんッ、いやっ!」
マーニャが喋っている途中で刺激を与え、その言葉を途切れさせる。
「なに、もう手は考えてあるんだ。まず、お前を使って呼び出して……ぐがっ!」
「マーニャちゃんからはなれなさいっ!」
突然の侵入者の奇襲を受けて、俺は床に転がる。
マズい、パラライズの魔法だ。
パラライズは使い勝手がいい初級魔法だ。初級なだけに、扱いやすく、魔力の消費も少ない。それでいて、殺傷目的でなく相手を無力化するのに、抜群の効果を表す。
首をなんとか動かして、侵入者の顔を見る。サーラだ。
きっとマーニャの後をつけてきたのだろう。
突入に時間がかかったのは、状況把握に為に様子を見てたのだと思う。パッと見じゃ、恋人同士の逢引きに見えるしな。
「何で、何でレオンちゃんがこんなことしてるの?お姉ちゃん、信じてたのに……。」
「俺をどうする気?」
「たとえレオンちゃんでも、こんな犯罪行為は許せない……。レオンちゃんじゃ、私に敵わないわ。怪我させたくないから、大人しくしててくれると嬉しいな。」
「敵うかどうか、やってみなきゃ分からないよ。」
「むりよ?大体、レオンちゃん動けないでしょ?」
俺が不敵に笑うと、サーラは少し寂しそうに言う。
「そうだな、今の俺は動けないけど……マーニャ、サーラの動きを封じろ!」
「えっ、何言ってるのっ!」
「……お姉ちゃん、ゴメンナサイ。」
俺の言葉の意味が分からず、一瞬混乱するサーラ。
その隙をついて、サーラの唇を自らの唇で塞ぎ、口の中に含んだ錠剤をのみ込ませるマーニャ。
口を塞がれ、舌を使って、喉の奥に誘導された錠剤をのみ込むと、次第に意識が薄れていくサーラ。
「マー……ニャ……ちゃ……な……で……。」
即効性の薬は、すぐに効果を表し、サーラの意識を刈り取る。
「マ―ニャ、サーラの衣類をすべて剥ぎ取って、縛り上げてベットの上に寝かせろ。」
「いやよっ!何で、そんなことしなきゃいけないのっ!」
盛大に文句を言いながらも、俺に逆らえずに言う通りにサーラを縛り上げるマーニャ。
「ゴメンナサイ、お姉ちゃんごめんなさい。」
マーニャは、サーラを縛りながら涙を流すのだった。
ご意見、ご感想等お待ちしております。
良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。