クレイドルの事情 (Re)
……ハァハァハァ。
……ここまでくれば……。
セシルは目に着いた大樹の根本にそっと腰を下ろす。
何でこんな事に………。
セシルは、息を整えながらこのような状況になった原因を思い返してみる………。
◇
クレイドルは、大陸の南西に点在する小国が、寄り添い助け合いながら興したクァール連邦に属するエリカ共和国の地方都市だ。
大陸の辺境と呼ばれている南西部にある、クァール連邦。その中でも更に辺境に位置するエリカ共和国。大きな都市は、首都であるエルカードの他にはクレイドルしかないという本当に小さな国だけど、領地の広さだけで言えば近隣諸国を上回っている。
………もっとも3/4が未開地なのではあるが。
そんな辺境の中の辺境に位置する、小さな国の小さな街のクレイドルではあったが、意外にも発展度は大きく栄えていた。
元々クレイドルは、西方にあるビザン連峰のむこうに住むという、魔族の侵攻に備えて作られた街だった。
当然、魔族に対抗するために軍備を増強する必要があったが、近隣諸国が応援という名目でそれぞれに協力を申し出ていた。それは直接的な兵士の数であったり、開発した武器の数々だったり、物資の支援だったりと様々ではあった。
これは、各国が魔族への対処をエリカ共和国へ丸投げしているという負い目があるのと、それを理由にエリカ共和国の発言権を必要以上に大きくさせないための牽制という思惑があったのだが、エリカ共和国にしてみれば、他国の支援で一番予算がかかる軍備費を賄うことが出来、結果として浮いた予算を内政に回し、経済活動が活発になっていったのだ。
そして、隣接する未開地の存在。
本来であれば未開地の開拓というのは、大きな予算と人員が必要になるものだ。しかしながら、その未開の樹海に群生している果実や薬草などの素材、そこに生息する魔物からとれる素材や魔石などは、大変希少で質の良いものが多く、それに目を付けた冒険者ギルドが、大きめの支部をクレイドルに設立し、冒険者たちが多く訪れるようになった。
結果として、未開地の調査は、放っておいても冒険者たちの手によって行われ、行政としては、必要に応じて金と口を出すだけでよく、ギルドにしてみても、余計な横やりが入らない程度には国に協力する姿勢を見せ、互いに良好な関係を築き上げていた。
人が集まれば、モノが集まり、金が動く……自明の理である。
人が人を呼び、消費が大きくなれば物が集まり、利益を見込んだ商人たちが、さらなる利益を求めれば大きな金が動く。
そう言う商人達やギルドからの上納金だけでも、国家予算を軽く超えるだけの収益があった。
これで街が発展しない方がおかしい。かくして、クレイドルは、辺境随一の大都市としてその名を馳せていたのだった。
しかし、その繁栄も、最近は影を差し始めていた。
きっかけが何なのかは分からないが、はっきりと影響が目に見えだしたのは、ある噂が流れてからだった……。
「魔族が攻めてくる」……そんな噂が街中に流れ出したのは、約半年ほど前の事だった。
その噂に呼応するように、樹海の中の魔物の生息域に変化が起きた。
街に近い浅瀬辺りで、普段は奥地にいて目にすることのない、凶暴な魔物の目撃情報が増えた。
その魔物から逃げるように。浅瀬にいた魔物たちは次第に姿を消していき、樹海は、低ランク冒険者が手を出せないような凶悪な魔物だらけになった。
結果として、街から冒険者も姿を消し始めるのだが、ここにきて、近隣諸国が騒ぎ出したのだ。
エリカ共和国としては、魔族の侵攻に備えようとしただけなのに、近隣諸国から、「魔族が攻めてくるというデマを流して、軍備増強している、それは周りに戦争を仕掛けるためだ」などと言う根も葉もない噂が流れ、それを真に受けた近隣諸国が突き上げを始めたのだ。
いや、実は近隣諸国は噂を信じていなかった……と言うより噂などどうでもよかった。ただ単に、クレイドルを叩く、あわよくばその利益を取り上げることが出来る口実があれば、それでよかったのだ。
繁栄に陰りが見えれば、人が去っていくのは自明の理であり、人がいなくなれば、当然物流も滞り物が不足し始める。
しかし、諸国から軍事支援を断られただけでなく、一触即発の緊張状態で取り囲まれることになったエリカ共和国としては自衛のためにも、軍備に予算を注がなければならず、この十数年で蓄えた富など、あっという間に軍という無駄飯ぐらいが食いつぶすことになる。
収入以上の、軍による消費という支出。エリカ共和国に待つのは、インフレという名の経済破綻の未来しか見えなかった。
その様な状況下において、いまだクレイドルの街が秩序を保っていられたのは、すべてセリスの人徳と手腕によるものだった。
民衆に対しては、税率を考慮することで、一時的に不満を逸らし、先んじて市場に手を回して、暴利を得ようとする商人を牽制し、無駄飯ぐらいの軍に対して、訓練という名目で兵士を狩りだして、未開地の安全確保や、近隣の治水工事、開墾などに従事させた。
その努力が実を結び、この一ヶ月で、経済破綻まで一直線に進んでいたことにストップをかけ、救済の聖女とまで呼ばれるようになった。
しかし、つい先日、首都から王子がやってきて、セシルの運命を奈落の底まで突き落とすことになった
「此度の国の窮状はすべて悪女セシルの画策によるものである。彼女は、自分の名声を高めるために策を弄し国を窮状に陥れ、あたかも自分が救ったかのような振る舞いで人心を惑わした。よって,極悪大罪人セシルは、拷問の上公開処刑に処すことになった。彼女を庇うものも同罪に処す。これは王命であるっ!」
王子のその布告により、街からセシルを庇うものは消え、セシルはその瞬間より、街を追われる国家反逆者となったのだ。
共和国という性質上、普段であればこのような一方的な宣言がまかり通るわけがないのだが、そこは曲がりなりにも立憲君主制の国であり、緊急時に対応するために備えられた「王権」もあって、王家の持つ権限はそれなりに強い。
そして余程の事が無い限り、使われることのない王権……王命と共に布告されたものは、それが緊急かつ重要な案件だという事は物心がついた国民ならだれでも知っていることから、今回の事は、それほどのことなどだと、国民全員が納得してしまった。
かくして、セシルの居場所はエリカ共和国には無くなり、こうして逃げ続けているのだった。
◇
「……囲まれちゃった。」
一息つくだけのつもりだったのだが、その時間が敵を集めるための時間となってしまったらしい。
気づけばセシルの周りを5人の男が取り囲んでいる。
……ここまでね。でもそれでもいいかも。
逃げるのにも疲れたセシルの中に諦念の心が芽生える。
……ここで殺されれば楽になるのかな?
すっかりあきらめ顔になったセシルを見て、男たちはニヤリと笑う。
「おい、殺す前に楽しまないか?」
「あぁ、俺もそう言おうかと思っていた所だ。」
グヘヘヘっっと、笑いながら近寄ってくる男たち。
……冗談じゃないっ!ただ殺されるだけならまだしも、辱められるなんてこと許容できるわけがない。
セシルは残った力を振り絞って逃げ出そうとするが、時すでに遅く、セシルの腕と足は、男たちによって抑え込まれていた。
「あっ、いやっ……! やめっ、……やめてっ、んっ、……んんっ!」
剥ぎ取られた衣類の一部を口に突っ込まれ塞がれる。
「ふむぐっ!?んぶっ!むー、むー……。」
藻掻き、身を捩るが、男たちの拘束から逃れることが出来ない。
「へへっ、いい身体してるぜ。」
男の一人が、セシルの胸を乱暴につかみ、揉みしだく。
「むーっ、んぐぅ……。んっ!? んっ……んむぅっ!!」
気持ち悪い。嫌だ、触らないで……。
そう叫びたいのに叫べないもどかしさ、そして自由にならない身体、この先に待ち受ける自分の惨めな未来を思うと、、いつしかセシルの瞳から涙が溢れだす。
「えへへっ、泣くほど気持ちいのかい?じゃぁ、もっと気持ちよくしてやろうか。」
男はズボンを脱ぐと、自分のそそり立つモノをセシルに見せつけるようにして擦り付ける。
そして、セシルの股間にそれをあてがい……。
「んっんっんんんっ!っう~~~~~~~~~~~~~~!」
セシルは必死になって身を捩り暴れる。
……いやだ。あんなの受け入れたくない、壊れちゃう……。
「くそっ、暴れるなよっ!」
男はセシルの頬を叩き大人しくさせようとする。
そして、セシルに自分のものを突き刺そうとして……。
セシルはもうダメだと諦め、目をきつく瞑る。これから起きる衝撃に少しでも耐えられるように……、と。
しかし、いつまでたっても、自分を貫く痛みはやってこない。
それどころか、さっき迄聞こえていた、男たちの下卑た笑い声も聞こえなくなっている。
……何が起きているのだろう?
セシルは恐る恐る目を開けると、自分を襲っていた男たちの姿は視界になく、代わりに一人の男の姿が目に飛び込んできた。
……助かった……のかな?
そう思った瞬間、セシルは気が抜けてしまい、そのまま意識を失うのだった。
◇
……ん?
身体に感じる風を感じ、セシルはゆっくりと目を開ける。
「お、起きたか?」
「あ。はい、あの……、えぇと……。」
なにがなんだか分からない。
「混乱してるか?お前さんはあの男たちに襲われかけていたんだよ、それは覚えているか?」
男が指さす方に顔を向けると、先程自分を襲おうとしていた男たちが縛られて転がっているのが見える。
それを見て、意識が覚醒し、すべてを思い出す。
「はっ!、わ、私はっ……。」
慌てて跳び起きようとして、その身が自由にならないことに初めて気づく。
そもそも、私は寝転がっていなかった。両腕を上にあげた状態で拘束され、木から吊るされているため、気を失っていてもそのまま立っていられたらしい。
さらに、私は衣類を一切身に着けていないことに気付き、かぁっと顔が赤くなる。
目の前の男にずっと裸体を見られていたのだと思うと、恥ずかしさで目を向けられない。
「あなたが、助けてくれたのですか?」
それでも状況を把握しなければ、と思い、勇気を出して口を開く。
「あぁ、こんな森の中で人の気配がしたからな。おかしいと思って様子を見に来たら、アンタが襲われる寸前だったってわけだ。」
「あ、その……ありがとうございます。」
やはり目の前の彼が自分を助けてくれたのは間違いないらしいので、お礼を言っておく。
しかし、それならばなぜ私はこんな目に遭っているのだろうか?
新たな疑問が芽生えた瞬間だった。
「あの……、私は何でこんなことになってるのでしょうか?」
彼がいきなり私の胸を触ってくる。先程の男と違い、優しくなぞるように刺激を与えてくるため、思わず声が漏れてしまう。
「まぁまぁ、いいじゃないか。……わかっているんだろ?」
胸をいじられながら、耳元で囁かれる。その瞬間、ゾクッと、身体中に何かが流れる気がした。
……助かったと思ったのは早計だったようだ。
相手が代わっただけで、自分の未来は変わらないようだ。
その考えに至ると、セシルは、ガクッと体の力を抜く。
……もういい。疲れた。好きにしてよ。
男に身体中を嬲られながら、セシルは全てを諦め、自然に委ねる事にした。
……少なくとも、さっきの男達よりはマシよね?
間近に迫ってくる男の顔を見つめ、その唇を受け入れながらセシルは思う。
身体がびくびくと震える。頭が真っ白になり何も考えられなくなる。
「俺のモノにしてやるよ。」
彼の言葉に能が蕩けていく。
……どうなってもいい……好きにして……。
彼の言葉に何と答えたか、よく覚えていない。ただ、身体の奥底から何かが駆けあがってくるような気がして、そのまま身を委ねたら何処かに跳んで行ってしまうような気がする……なのに……。
「あぁ~。こんな所にいたですぅっ!」
突然見知らぬ少女の声が聞こえて来たかと思うと、私へ与えられていた刺激はピタッと止まる。
と同時に、私を包んでいたぬくもりが離れていってしまう。
「アリスか、早かったな。」
「レオンさんっ、また女の子イジメてるですっ、メッですよ、メッ!」
シスター服を着た少女が彼に文句を言っているけど……。
「酷い……。」
思わず呟きが漏れる。
「ほらぁ、また女の子泣かせてっ!今度こそ懺悔室ですよっ!」
私の呟きを勘違いした少女が、さらにお説教を始めてしまう。
……酷いって言ったのは、私の身体をこんなにしたまま放置している事なのにぃ……。
私は恨みがましく彼を睨みつける。
それに気づいた彼は、アリスという少女から離れて、私の側へやってくる。
「あぁ、レオンさんっ!まだ話は終わってないですよっ!」
慌てて追いかけてくるアリスという少女。
……彼と彼女のやり取りを見ているうちに、緊張で強張っていた身体から力が抜ける。
と同時に、意識を繋ぎ止めていた意志の力も抜け、セシルはそのまま気を失うのだった。
◇
「……えっと、状況がわかりませんの。」
ようやく目覚めたセシルが、キョロキョロと辺りを見回している。
それも無理はないだろう。
男達に襲われかけていたところを助けられたと思ったら、助けてもらったはずの男に拘束され、弄ばれ、気がついたら、廃屋のような教会で、複数の女の子たちに取り囲まれているのだから。
「……って聞いてるです?」
「いや、あの娘が目を覚ましたみたいで……。」
「そんな事はどうでもいいです。それよりレオンさんは……。」
目の前のアリスが目を吊り上げて怒り、くどくどとお説教を繰り広げている。
まぁ、俺が女の子を襲っている現場を押さえたと思ったら、ティーナに引き離されたのだからな。
そのティーナも、何故か俺の横で同じように正座をさせられている。
俺をチラッと見る目つきはかなり恨みがこもっている。
何でも、アリスの抵抗が激しく、すぐにでも俺のところに戻りそうだったのを身体を張って止めていたとか……それは俺のせいじゃないだろ?いや、俺のせいなのか。
「聞いてるですっ!?」
「あ、はい、キイテマス。」
俺はアリスのお説教を聞くふりをしながら、セシルたちの様子を窺う。
メルナやセレスがついているから、大丈夫だとは思うが……。
・
・
・
「あの、これは一体……。」
「あ、アレは気にしなくていいわ。今お説教受けてるだけだから。」
俺の方を見るセシルに対してミアがそう答える。
「お仕置き……ですか?」
「えぇ、あなたも……その……酷い目にあわされたんでしょ?アイツに。」
ミアが、少し言葉を選んで喋っているようだが、俺に対する反感はありありと見える。
まぁ、この旅の間中、かなりぞんざいに扱ったからなぁ。最近ではほんの少しあった俺への感謝やら敬愛やらの気持ちが全くなくなっている……えっ、最初からそんなものはないって?……まぁそういう事にしておこう。
ミアの言葉を聞いて、気を失う前の痴態を思い出したのか、セシルの顔が一気に赤く染まる。
「え、あの、私……、ごめんなさいっ!」
セシルは走り出して逃げ出そうとする……が……。
「えっ……。」
突然その身体から力が抜けた様に、へなへなと崩れ落ちる。
「大丈夫ですか?」
近くにいたセレスがその身体を支える。
「え、なんか急に変な感じが……力が抜けて……。」
セシルは何が起きたか分からないと、首を傾げる。
「フッ、俺様から逃げ出そうとはいい度胸だな。」
アリスのお説教から何とか抜け出した俺は、セシルの前に立ち塞がり、セシルに何が起きたのかを説明してやる。
「お前に着けたそのチョーカーはなぁ、ある仕掛けが施されていて、俺が魔力を放つと、催淫効果のあるエネルギーを体内に流し込む仕様になっているんだよ。今はお試しで、ほんの少ししか流れてないが、本気で流せば、止まらないぐらいに淫乱な気分になるぞ?なんならここで試してみるか?」
「そ、そんな……。」
セシルがガックリと項垂れる。
「お前が俺のモノになるって言っただろ?」
「そ、それは、……言った気もする……でも……。」
……あの時は、どうでもいいって気分だったし……。
セシルは、あの時その場の雰囲気に流されてしまったことを少しだけ後悔する。
「どうせレオン君が辱めながら無理やり言わせたんでしょ。外してあげなさいよ。」
メルナがそう言ってセシルのチョーカーに手をかける。が……
「……レオン君、なんなのこれっ!」
メルナが、少し怒った口調で問い詰めてくる。
流石はメルナだ。少し触っただけでチョーカーに掛かっている効能を理解したらしい。
「何って、専用装備?」
「じゃないでしょっ!二度と外せないって、呪われた装備と同じじゃないっ!」
俺が作った渾身の作品を呪われた装備と同じに扱われたので、俺は目一杯反論する。
「それは違うぞ。呪われた装備は、設備が整った教会や、高位の司祭なら、誰でも解除できる。アリスだって大抵の呪い装備は解除できるぞ。」
「そうなの?」
メルナがアリスに視線を向けるが、アリスはぼーッと虚空を見上げていて反応しない。
先程説教から逃れるために行った、「甘い囁き攻撃」がまだ効いているらしい。
だから、アリスは放っておいて俺は話を続ける。
「だけどなぁ、俺様が作ったその装備は、俺様でもしかる儀式を経て、しかるべき手順で操作しないと外せないんだよっ!勿論俺様の魔力が必要だから他の誰も外すことは出来ないんだっ!」
「余計たちが悪いわっ!」
メルナさんが拳骨を俺の頭に落とす。
魔術師だから身体能力は低めとはいっても、それなりにレベルが高い彼女なので、痛かったりする。
「……まさかと思うけど……。」
メルナさんは自分の指輪を見て蒼褪める。
「フッフッフ……よく気付いたな。勿論お前たちに送ったアクセサリーにも同じ仕掛けが施してある。」
「「「「「なんですってっ!」」」」」
彼女たちは、慌てて俺が送ったアクセサリーを外そうと試みて、外せないことがわかりガックリと項垂れる。
「すごくいい効果が付いてたし、ゲスも心を入れ替えたのだと信じていたのに……。」
キャシーがガックリと項垂れる。
彼女に送ったのは防護強化の腕輪。
装備するだけで、身体強化の魔法が掛かっているのと同じ効果があり、しかも、身体強化の魔法を重複して掛けることも可能という優れもの。
更には装着者の任意で魔力障壁を張ることも出来るという、護衛任務に就いている彼女にとってぴったりな一品だった。
これを最初渡した時には半信半疑の彼女だったが、その後、その腕輪の効果を実感するにつれ、俺への態度が柔らかくなったのだが……。
因みに、メルナとアリスには魔力蓄積型の指輪を渡してある。
魔法使いである彼女たちには、使用魔力軽減及び、魔力増幅、そして普段使わない魔力を指輪に蓄積していくことで、いざと言う時に魔力タンクになるというものだ。
指輪にしたのは、魔法使いなら魔力の指輪をしていても不自然じゃない事と、こっちにそういう風習があるかどうかは分からないが、この二人は俺のモノだと誇示するためだ。勿論左手の薬指に装着してある。
この二人の能力は、他に代えがたい有益なものなのだから、今後何があっても手放す気はないからな。
尚、セレスには癒し効果のあるネックレス、ティーナには隠形を強化するブレスレットを渡してある。
それぞれの適性に応じ、必要な能力を強化する機能が付いているので、みんな渡した当初は怪訝そうな顔をしていたけど、その効果を知って、すごく喜んでいたのだ。
しかし、その本当の効果を知った今、彼女たちが俺に向ける視線は冷たい。
ウンウン、これで今夜からのエッチで少しステータスが上がるだろう。最近、彼女たちも慣れて来たみたいで、ティーナとキャシー以外は、現状を受け入れつつあるからなぁ。
「ちょっと!」
そんな中、ミアが声をかけてくる。
「どうした?文句言われても困るぞ。お前たちに受け入れないという選択肢はないんだからな。」
俺の言葉に他の女の子たちが俯く。
「そうじゃなくてっ!アンタいつの間にみんなにあんな装備渡したのよっ!」
「いつって……旅の途中だけど?」
旅の間は暇なので、余っていたスキルポイントを使って魔道具作成とエンチャントのスキルを習得し、暇つぶしに色々作ってみたのだ。
その途中で、彼女たちを縛るアイテムを思いついて、ついでに色々機能を付けてみたのだ。
「まぁ、試作品だから性能は今一つだろうけど、そのうち腕が上がったらもっといいものを送るよ。」
俺の言葉に女の子たちは複雑そうな表情になる。
外せなくてエロい気分にさせられる効果はともかくとして、それ以外の効果は確かに素晴らしいものだという事は、みんなこの旅の間に実感しているから、今更外すのに抵抗もあるだろうし、例えエロ効果があるとしても、今以上の強力な効果が得られるとなれば思う所があるのだろう。
「そうじゃなくてっ!私のは?何で私にはくれないのっ!」
「あっ……。」
「今、あっ、ていった、あっ、て……。忘れられてたっ!」
「いやいや、ワスレテナイヨ……。」
「ウソだぁっ、私だけ仲間外れだ~イジメだよ、イジメっ!」
ジタバタと駄々をこねるミア。……クヴァールの民よ、こんな公女でいいのか?
「レオンさん、イジメダメ、絶対!」
アリスが人差し指を立てて、メッと言ってくる。
「えっと、……欲しいの?」
俺はうずくまるミアの前に向かい聞いてみる。
「……欲しい。」
「……つまり、俺にエロエロな気分にしてもらいたいと。」
「ちょ、まっ、ち、違くてっ……。わたしはただ、仲間外れはイヤだと……。」
「ハイハイ、いいからいいから。」
俺はミアの首にネックレスを付けてやる。
常時、簡易障壁が展開されていて、各種異常に強い耐性があり、任意でヒールが使える効果がある。セレスとお揃いのネックレスだ……と言うか、ぶっちゃけ、セレスの予備なのだが、言わなければ分からないだろう。
そして、他の娘たちのアクセサリーについている強制効果は、ミアの分にはついていない。
メルナさんとの交換条件で「ミアには手を出さない」事になっているからな。
まぁ、本人からの望みであれば問題ないらしいけど、強要することは出来ない。
ネックレスをつけたミアは嬉しそうに眺めているが、俺の視線に気づくと、逃げるようにして奥の部屋へと走っていった。
素直に喜ぶ姿を見せたくなかったらしい。
それより……と。
そんな俺たちの様子を呆然と眺めているセシルから話を聞くため、俺は改めてみんなに声をかけ、席に着かせるのだった。
ご意見、ご感想等お待ちしております。
良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。




