キミに決めた!……後ボッチじゃないよ?(Re)
………なんか長い夢を見てたようだ。
そんな事を思いながら目を覚ますと、飛び込んできたのは見慣れない天井だった。
「マジか。」
俺は今一度目を閉じて、夢の中の出来事を思い出してみて、ここが憧れの異世界だと理解する。
「まずは現状把握だよな。俺の名前は田中一人………っと、それは前世の名前だろ?ちなみに一人だからな、一人じゃないからな。ボッチなんて呼ぶんじゃねぇぞ。」
セルフツッコミをしながら、記憶の奥底から自分の名前を引っ張り出す。
「俺の名前はレオナルド……レオンって呼ばれている。」
口に出してそう言ってみると、先程までの地に足がつかない様なフワフワ感が消えて、一本芯が通ったように感じられる。
「さて、夢の中のどこまでが本当なのか……。」
俺は何から検証するか考えてみる。
………そう言えば、ゲームみたいに数値化してメニューでわかるようにするって言ってたっけ?
俺は頭の中でメニューを思い浮かべてみる。
すると目の前に透明なスクリーンができて、そこに色々表示されているのが見える。
『アインの村』
メニューにはそう表示され、その下に、お金や収穫物の種類と量、特産物以外にも、人口や人物相関図などが浮かび上がる。
しかし、表示されるだけで、その数値を変更したりはできないようだった。
「コレは、俺がこの村を支配してないから、運営する権利はないってことか?」
口に出してそう言ってみるが、答えるものは誰もいない……当たり前だ。
「ん?」
メニューを表示したまま視線を動かすと、偶然テーブルの上のナイフが視界に入る。
『青銅のナイフ 状態:劣化 攻撃力:3 売却値10Gold』
ありゃ、これって鑑定にも使えるってやつ?
ってことは………。
俺はメニューを漁ると、自分のステータスを表示させることに成功する。
『レオナルド 人族 Lv1 Job 無職』
そう表示されたあとに、各ステータスの数値が表示されて行く。
HP 30 MP 20
STR 6 INT 4 VIT 4
SPD 5 DEX 6 LUK 55
スキル:ナイトメアモードハーレムパック、物体引き寄せ
称号 :ロマンの求道者 女神に嫌われし者
「はぁ、見事なまでに低いよなぁ。」
STRだのINTだのと言った、見覚えのあるアルファベットの横にある数字は、全て一桁。唯一二桁だったのがLukの項目。
他の数値に比べれば異常に高く見えるが、果たして55というのは高いのか低いのか……。比較対象がないので何ともわかりにくいのが難点だな。
ただ、この世界の標準的な強さというのが分からなくても、一桁の数値というのは明らかに弱いだろうということぐらいはわかるつもりだ。
となると……。
『エッチすれば強くなる。逆に言えばエッチ出来なければ強くなれない。』
これを早く検証してみたいところなんだが……。
……確か、負かした相手は逆らうことが出来なくなる、だっけ。
要は勝負で勝てばいいってことだよな?襲って押し倒せばいいのか?……いや、勝負ならなんでもいいのだろうか?
と、そこまで考えたところで、ガチャリとドアが開いて、女の子が入ってくる。
「あ、やっぱりまだ寝てた。いい加減、起きなさいよ!」
そう言って、布団を引き剥がそうとする女の子。
誰だ?
俺は彼女を見つめると、まだ解除していなかったメニューに、彼女のステータスが表示される。
『マーニャ 人族 Lv3 Job 宿屋の娘』
HP 50 MP 30
STR 12 INT 16 VIT 13
SPD 10 DEX 18 LUK 11
スキル:料理Lv3 家事Lv1 生活魔法
………俺より強いんじゃね?
ってことは、この娘とエッチすれば、ステータスが上がるかどうか確認できるって事だよな?
「ほらぁ、早く起きないとお布団干せないでしょ!………ったく、こんな事するの今日だけなんだからね。」
マーニャがプンプンと頬を膨らませながら言う。
これが照れ隠しならまだ可愛いのだが、その口調も行動も、彼女自身が発するオーラも、全てにおいて本気で嫌がっているのがわかる。嫌がって入るが、自分が何とかしないと……という義務感や責任感の方が強いらしい。心のはすごく優しくていい子なのだと、レオン本来の記憶が言う。
クリっとしたヘイゼルの瞳に、今はむうっと結んでいる小さな口。肩口で切りそろえたアッシュブロンドの髪は緩いウェーブがかかっていて、彼女の印象が優しく見えるのに一役かっている。
ウン、結構可愛いじゃないか。
よし、初めての相手はキミに決めた!
「なぁ、勝負しようぜ?」
「はぁ?あんたバカ!?バカでしょ?」
この忙しいのにふざけたこと言ってんじゃないわよ!と布団から叩き出される。
しかしこれくらいでメゲてはいられない。
「なぁ、いいだろ?勝負しようぜ。俺が負けたら、今日1日、奴隷のようにお前の手伝いしてやるからさぁ。」
「あのねぇ、私は遊んでいる暇はないの。アンタみたいなプーと違って忙しいのよ。」
記憶の深くを探ってみると、どうやら俺は定職につかず、昼間からゴロゴロしている無駄飯喰らいだったらしい。
そんな俺をギリギリ見捨てずに世話を焼いてくれるのが幼なじみのマーニャ。
と言っても99パーセント義務感だけで、俺に淡い恋心を抱いているとか、そういうのはまったくない。
単に面倒見の良い性格をしている、ただそれだけのことだ。
それでも、と付きまとう俺に根負けしたのか、とうとうマーニャが折れる。
「もぅ、しつこいっ!勝負って何するのよっ!」
………しまった、そこまで考えてなかった。
「えっと、じゃんけん……とか?」
……っていうか、この世界にじゃんけんあるのかよ。
思わず口走ってしまい後悔の念に駆られるが、マーニャが「わかったわ」と答えてくれたので助かった。
……この世界にもあるんだ、じゃんけん。
「い〜い?一回限りの勝負だからね。あとから3回勝負だ、とかいうのは無しだからね。」
「いーぜ。その代わり、俺が勝ったら、素直に負けを認めろよ?私の負けですっていうんだぞ。」
何をもって「負ける」のか、定義がわからなかったので、確実に自分が負けた、と認めさせる為に口に出させることにしてみた。
「ハイハイ、私に勝てたらね。」
「その言葉、忘れんなよ!」
「「じゃんけん……………ポン!」」
俺とマーニャは掛け声とともに、手を前に出す。
……………。
…………………………ハイ、負けましたよ。
見事なまでに負けました。
3回勝負だ!と言っても聞き入れてもらえず、その日はマーニャに扱き使われて1日を終えたよ、チクショウ!
◇
「じゃんけん……ポン!………ハイ、また私の勝ち。今日は何してもらおうかな?」
あれから3日経った。
俺は、毎日のようにマーニャに挑み、敗北を喫している。
おかしい、何でこうなった?
・
・
・
更に1週間が過ぎた。
俺は逢日のようにマーニャに負け続け、マーニャの実家の宿屋の手伝いをする毎日が続いている。
村の中では、「あのごく潰しがやっと働くようになった」と噂されているとか……。
俺の中では、あのことがただの夢の様に感じられ、そんな都合のいい話があるわけがない、と諦めかけていた。
「じゃぁ、今日も勝負ね。じゃーんけーん………。」
どうでもいい、と思いながらも、半ば日課となりつつあるじゃんけん勝負。
半分は惰性で、もう半分は「ひょっとしたらワンチャンあるかも?」という儚い期待だ。
「「ポン!」」
どうせ、今日も負けだろ、と適当に出す。
「あちゃぁ、今日は負けちゃったね。」
マーニャが自分の握った拳を見てため息をつく。
「私の負け……これでいい?」
「あ、あぁ。お前の負けだ。」
俺は開いた手を呆然と見ながらそう呟く。あまりにも突然のことで動揺が隠せないでいる。
どうせ今日も負けると思っていたので心の準備ができていないのだ。
「負けちゃったから、今日はお手伝いなしかぁ。仕方がないよね。じゃぁね。」
そう言って立ち去ろうとするマーニャを慌てて呼び止める。
「待て!」
「えっ?……何これ、動かない?」
突然身体の自由を失いパニックを起こしかけるマーニャ。
マジか?マジに俺の言うことに逆らえないのか?
俺は高鳴る鼓動を押さえながら、家に入れ、と命令する。
「ちょ、ちょっと、何なのよこれッ!」
自分の意志に逆らって動く体……正確には嫌だと思ってもその通りに行動してしまうことに、混乱するマーニャ。
そのマーニャを部屋に招き入れ、ベッドに座らせると、自分も目の前に座り、まじまじと見つめる。
その顔には、言いようのない恐怖の色が浮かんでいる。
「何、何なのよこれっ!あんたがなんかしてるんでしょ?魔法なの?今なら許してあげるからさっさと解きなさいよっ!」
マーニャは俺がなにかしたと確信しているようだ……当たり前か。
……しかし、ドキドキして興奮が抑えられない。
落ち着くためにも、俺は会話を続けることにした。
「魔法?それは嫌味か?俺が魔法使えないこと知ってるんだろ?」
「それは………。」
マーニャはぐっと押し黙り俯く。
この世界の住人であれば、誰もが魔力を持ち、魔法の素養を持っている。
一般に『属性魔法』と呼ばれる大きな魔法は、それなりの資質がなければ使えないが、着火や水生成といった『生活魔法』と呼ばれるものは、魔法使いの資質がなくても、大抵誰もが使用できる。
ただ、俺みたいに、生活魔法ですら使えない、というものも稀に存在し、そういう者たちは大抵、役立たずと罵られ迫害を受けていたりする。
俺はそこまで酷い扱いを受けていないが、それは眼の前にいる女の子のお陰だったりする。
彼女が何かと気にかけ、世話を焼いてくれてるお陰で、俺は周りから「ごく潰し」と白い目で見られる程度で済んでいる。
そんな恩人とも呼べる彼女に、今からひどいことをするのだから、レオナルドと言うやつは全くもって救い難い悪党だな。
「脱げよ。」
ドキドキしながら決定的な一言を口にする。
「えっ?」
「服を脱いで裸になれって言ってるんだよ。」
ここまで言ってしまえば、もう後戻りはできない。
俺は跳ね上がる鼓動を抑えながら彼女の動きを見守る。
「イヤよっ!何バカなこと言ってるのっ!……って何で?何で私脱いでるの?」
俺は、曝け出されたマーニャの胸を見て、ゴクリとつばを呑み込む。
大きい……。そんな言葉しか出てこない。
気づけば、ふらふら〜と手が伸びかけている。
まだだ、まだ焦ったらダメだ。
俺は必死に抑える。
っていうか、いいのか?この先、行っちゃっていいのか?
「ちゃんと記録してやるからな。」
俺は記録用の魔水晶を、マーニャに向かって見せつける。
「イヤッ、こんな所撮らないでっ!」
マーニャは必死で抵抗し身体を隠そうとするが、俺の命令には逆らえず、裸体を曝け出している。
「いや、嫌なの、来ないで……嫌ァッ…………。」
近づく俺の姿を見て怯えるマーニャ。
俺は、そんな彼女の様子を見て興奮が抑えられなくなる。
「い、いやぁ、触らないでぇ。」
胸に手を伸ばす俺に、泣きながら懇願するマーニャ。
こんなの見せられたら、我慢ができる訳無いじゃないか。
俺はそのまま彼女をおしたおし、覆い被さる。
「いやぁ。ヤメテェ、お願いよぉ。」
泣きじゃくり、必死で懇願するマーニャ。
「い、いやぁぁぁぁ。グレッグの為にぃ大事にしてたのぉ。初めてはグレッグがいいのぉ!」
グレッグと言うのは俺たちより3つ年上で村長の息子だ。もう一つ付け加えるなら、イケメンである。
マーニャと付き合っているという噂は耳にしていたが、まさか本当だったとは……。
「残念だったな。お前の初めての相手は俺様だよ。」
グレッグの名前をマーニャの口から聞いたことで、俺の中にあった何かがキレた。
優しくしてやろうとかそんな気持ちはどこかに飛んでいってしまい、力づくもマーニャを犯す………はずだったのだが……。
「あっ!」
「えっ?」
お互いに気の抜けた声が漏れる。
興奮のあまり、マーニャを頂く前に果ててしまった俺。
何事か分からず呆然としていたマーニャも、次第にことを理解し、「ぷっ、クックック……」と笑いを抑えるのに必死になる。
「ち、違うんだぁぁぁぁぁ……!」
部屋の中に、俺の悲痛な叫び声が響き渡るのだった。
◇
「ふぅ、酷い目に合った。」
俺は眼の前に広がる自分のステータスを見ながら呟く。
『レオナルド 人族 Lv1 Job 無職』
HP 40 MP 20
STR 7 INT 7 VIT 5
SPD 6 DEX 9 LUK 60
BP:10 SP:10
スキル:ナイトメアモードハーレムパック、物体引き寄せ、家事手伝いLv1
称号 :ロマンの求道者 女神に嫌われし者 スピードスター
最期まで出来なかったけれど、わずかとはいえ上がっているし、スキルも増えた……必要ないけど。
………ついでに不名誉な称号も増えた。
BPとSPというのはよくわからないけど、これからじっくりと調べればいいか。
マーニャとは、アレから何度も挑戦したが、結局入り口付近までが限界だった。……クッ、彼女の身体がエッチすぎるのがいけないんだよっ!
あの身体を見て、あの表情を見てると興奮がマックスになって我慢できないんだよぉぉぉ……。
彼女が今日の事を他に漏らす事はないし、これからは好きなときに呼びつけて、あの身体を好きにできるかと思うと、あれだけ出したにも関わらず、また滾ってくる。
……まぁ、これから毎日できるのだから、その内に何とか……。
俺は少し頭を冷やすべく、思考を切り替える。
これで確信ができた。
あの夢は本当のことで、俺は力を手に入れた。
この世界は、争いの絶えない世界であり、自分の身は自分で、護らなけれならない。
最低限自衛できるだけの力がないと、生きる資格さえ貰えない厳しい世界なのだ。
そして、俺は女の子達とエッチをしなければ強くなれない。
俺が強くなれば女の子の達を守ることも出来るようになる。
つまり俺が女の子達を犯すのは彼女達のためでもあるということだ。
うん、決して欲望のためじゃないんだよ。……っていうか、その前にもっと我慢できるようにならないとなぁ……。
俺はそう考えながら、この先の事を見据えて村の散策を始めるのだった。
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