analysis
悲報、宇宙人に攫われたのは夢じゃありませんでした。
「えぇ~。もぅ、ウソでしょ~…」
肉体的ダメージ大なうえに、精神的にもゲンナリきちゃうよ。ああ、でもそうか…。宇宙船のなかにいたあの男から受けた攻撃。手から煙が出るくらい痛くて酷い電撃だった。きっとアレを受けたからボクのなかに埋め込まれた情報収集装置が、故障かなにかを起こしたんだな。でなきゃ宇宙人に埋め込まれたようなモノが、ボクの言うことになんかに反応するはずもないし…。
「ハァ…、こういうのってなんて言うんだっけ。キャトルミューティレーション?ああいや違うな、エイリアンアブダクションか。しかもどこだかもわからない場所に捨てられてるし…」
「きゅしし!」
「え!?」
なんだ?今、子供の笑い声みたいなのが聞こえたぞ…。
「だ、だれかいるのか!?」
すると周囲に生えている草がガサガサと揺れる。あ、やっぱり誰かいるんだ!
「だ、誰なんだ!」
「きゅしし!」
すると10メートル以上離れた場所に、原始人みたいな革の服を着た髪の毛ぼさぼさの子が姿をみせた。そして、なぜか手にはワイシャツを持っている。
それを目にして慌てて確認してみると、たしかに着ていたはずのワイシャツがいつのまにか脱がされていた。
「あ、それってボクのワイシャツじゃないか!」
「きゅしし!」
と、そう大きな声をだすと、その子はまたおかしな笑い声をあげ草のなかに隠れてしまう。
「こいつ!ウゥッ…」
追いかけようと腰をあげたが立ち上がりきる前に眩暈に襲われてしまい、それはかなわなかった。
「くそう…、なんだったんだあの子は?」
―種族人間。推定年齢は8歳。
ああうん…、そういうことは教えてくれるんだねドングリ。
そこで原始人みたいな恰好の子を追いかけるのはあきらめて乾いた土の地面に座り直すと、埋め込まれた情報収集装置とのさらなる対話を試してみることにした。
「ねぇドングリ。…あれ、おかしいな。プローブドングリさん?」
―ドングリは樹木の実。プローブドングリという単語に該当する情報はありません。
「いや、アナタのことだって」
―ワタシは…チチチ、アナタです。
「うん、そのやり取りはもういいからさ。名前くらいあった方が会話しやすいでしょ?」
―ワタシは、ドングリではありません。
「うん、それも解ってるから。ああもう!なんでこんな風に人の脳みそ改造しちゃうかなぁ!」
―ワタシは…チチチ、脳改造です。
「え、ドングリは嫌でも脳改造ならいいの?え~まぁいいけど…、じゃあホントに脳改造って呼ぶよ?」
―ワタシは…チチチ、脳改造です。
「うん、わかった。じゃあよろしくね脳改造さん。一蓮托生、もう同じカラダに納まってるんだから力貸してよね。それで、さっきから眩暈がひどいんだけど…、脳改造さんはなにか解りますか?」
―身体データを取得しています。…チチチ、取得しました。解析値を表示します。
レベル:1
種族:人間
職業:無職
状態:低血糖・血液量微減・負傷箇所多数
能力値
筋力:4
体力:2
知力:5
精力:7
器用:3
敏捷:1
技能:
【脳記憶領域拡張】1:記憶力が上昇します。
【脳演算処理装置】1:処理能力が上昇します。
【ナノマシン】1:ナノマシンによる生体組織への修復または攻撃が行えます。
【サイキック】1:精神エネルギーを用い、様々な事象に干渉することが可能となります。
サブシステム:
脳改造
「え…なに?、これが今のボクってことなの?」