Information gathering device
―チチチチ…。チチチチ…。システムの破損を確認。自己修復を開始します。
(…え、なに?)
―衛星との接続失敗。破損したデータの修復とアップデートが開始できません。ベボン。
(もぉ…うるさいな、テレビの音?きのう寝落ちでもしたっけボク…)
―チチチ…。システム復旧へのデータとエネルギーが大幅に不足しています。対象の生体組織を代替としてシステムの修復を開始します。
「ぅ…う…!うがああああ~!」
―データ領域が不足しています。代替として生体組織内にデータ領域を確保します。
「あ…?あばばばばばば!!!」
―処理速度が不足しています。代替として生体組織内に演算処理装置の構築を開始します。
「いぎぎぎぎぎぎぎ……!!」
―チチチ…ベボン。この生体組織では有効な処理速度に達する演算処理装置の構築ができませんでした。セーフモードでの再起動を開始します。チチチチ…、チチチチチ…。
「ぜぇぜぇ…、ヒュ~、ヒュ~…」
…。
「う、うわぁあ!宇宙人がぁ!え…?あ、あれ!?」
恐怖に怯え戦慄き、起き上がる。
「え、え?なんで…?宇宙人!それにあの男は…!?」
しかし辺りを見回しても何もなく、ただただ草ボーボー。どうやらボクは眠っていて、ひどくおかしな夢を視ていたようだ。
「…って夢じゃないよ!ホラ、血ぃ出てるし、手だってこんなにボロボロじゃないか!」
顔に触れると何かが刺さっているのかチクチクと痛むし、ぜんぶの爪の間からも出血している。
「なにがどうなってるんだ?えと…、ボクは天波翔。中学2年生で、自分でカラダを傷つけて喜ぶ趣味なんて持ってない…」
カラダは痛いし気分は悪いしで、いろいろショックなことが多過ぎて頭が思うように回ってくれない。
「ああ、痛ぁ…。それにココ、どこなんだ…?」
―衛星との接続が切断されている為、現在座標の確認ができません。
「え…?」
―衛星との接続が切断されている為、現在座標の確認ができません。
(え、だいじなことだから2回言ったの…?じゃなくて!なんで頭の中にわけのわからない声が聞こえるんだ!?)
なぜか、なぜか不気味な存在に脳内で話されている。
「…あ、あの、キミは誰?どこにいるの?」
―該当する情報がありません。衛星との接続が切断されている為、現在座標の確認ができません。
うぅ、やっぱり頭のなかで声がしてる…。
「ハッ…!ってアタマのなか!?もしかして宇宙人に鼻から入れられた、あの金属ドングリかッ!?」
―金属ドングリという単語に、該当する情報はありません。
うう、大きな声を出したら頭に響く。それに、やけにクラクラする…。でもこの話し方って、まるで昨今話題のAIみたいじゃないか。
それなら…。
「え~と、アナタは、AIですか?そしてボクのなかにいますか?」
―アナタに対する対義語はワタシ。AIという単語に該当あり。ワタシは…チチチ。ワタシは…チチチ。ワタシは、アナタです。
「ハァ!?」
ドングリAIじゃないの?ワタシはアナタって、どういうこと?なに急に哲学的なこと言い出してんの。
「あ、そうだ!…じゃあ、アナタと衛星の関係をおしえてください」
―衛星はエネルギーの供給とデータの送受信を行います。ワタシは…チチチ。ワタシは…チチチ。ワタシは、収集したデータを衛星に送る役目を担ったデバイス…、チチチ…でした。
そうソレ!それが聞きたかったの!そっか…、じゃあやっぱりコレは、ボクの脳のなかに宇宙人が埋め込んだ情報収集装置だったんだ。