宇宙人に攫われた
天国のお母さん。お元気ですか?ボクは今、宇宙人にさらわれています。
それは学校帰りの夕暮れ時。なかなか進路を決められないボクに、担任の先生が2時間にもわたってありがたくも面倒なお説教をしてくれた帰り道の事でした。
突然夕陽とは違うオレンジ色の光が降り注ぐと、周囲の音がまったく聞こえなくなったのです。それに驚いて空を見上げると、銀色の円盤が頭上に浮いていてそれは激しい閃光を放ちました。
そして…、気付いた時には硬くて冷たい金属の板の上に寝かされていたのです。
目…、は開いていて、周りのモノが視えます。でもカラダは首を回すことも、指一本動かすこともできません。
視界に見えるのは全てが鈍い銀色で、ひどく無機質な部屋。でも普通の部屋のように正方形や長方形ではなく、台形のカタチをしている様子。部屋の四隅には透明なアクリルパイプのようなモノが床から天井に繋がっており、そのなかを黄色い液体が泡を巻いて発光しながら流れているようです。
でも、この部屋には寝かされているボクだけではなく、小柄な宇宙人が3人もいました…。
血の気をまったく感じさせない灰色の顔に、アーモンドみたいに吊り上った黒い眼。白い部分がなくて、昆虫のようにどこを視ているのか解らない不気味な眼をしています。頭はつるりとしていて、鼻は削がれたように低くちいさな穴がふたつあるだけ。口も小さく、まるでモノを食べたことがないように感じました。
テレビのUFO特番で、たしかグレイと呼ばれていた宇宙人にそっくりです。でもそんな宇宙人が、なぜかピチピチで超極薄の銀色レオタードっぽい服を身に着けています。
…意味がわかりません。寒くはないのでしょうか?
それとも「もしかしたらあの上に宇宙服を着るために、ああいった恰好なのかも」などと考えていると、3人の宇宙人が手に手におかしな金属製器具を持ってボクに近づいてきました。
そして、そして…、ボクの身体を灰色の細い手が這いまわり、冷たい器具でいじくりまわしはじめたのです。
ボクはあまりの恐怖と意外な気持ち良さで、わけが解らなくなりました。
…。
ですがそれをよそにグレイたちは淡々と作業をすすめ、検査が終わったのか手にしていた器具をようやく片付けはじめたようです。
(ああ…、やっと解放される…)
そんな安堵の気持ちと、でももうちょっとハードでも良かったかなという少々の物足りなさを感じていると、器具を載せている台へと向いていたグレイのひとりがこちらを振り返りました。
その手には、指示棒のようなモノを持っています。でも普通の指示棒と違うところは、その先端が銀色の金属でできていてドングリ程に大きい点でした。
不意に左右にわかれた2名のグレイに、ガッと頭を押さえつけられます。
(え…!?)
するとその棒を持ったグレイが先端の金属製ドングリをボクの鼻の穴に押しつけ、無理やりねじ込んできたのです。
(ちょ、痛ッ!痛い!やっ!アダタダダダ…!!!!)
想像もしなかった激痛に身が反り上がり、頭のなかにフラッシュが焚かれたような感じがして何度も意識が飛びかけます。なのに棒を持った宇宙人は一向にその手をゆるめることなく、グリグリと金属でできたドングリを奥へ奥へと。
そしてソレを、ボクの脳の奥へとねじこんだのでした。。。
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