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第7話 祖国の蛮行

 そんな彼の変化にレイシアは口をつぐむと、自分自身を罰するかのように自分の片腕を強く握り締めていた。それと同時に、レオハルトと同じく『王都防衛軍』出身だったケニカも国王の変化に気付き、その声を落とし気遣いながら声を掛けてきた。


「陛下……お気持ちはお察しします。私もまた、あなたと同じようにあの軍に居た身……あの時の陛下のお気持ちは何物にも代えがたいほどにつらいものだったでしょう」


「いや……あなたが庇ってくれなければ、より私は孤独を感じていただろう。改めて、こんな私に同行してこの『ケルム王国』へと来てくれたこと……そして、当時の仲間であるにも関わらず、私の下に付いてくれたこと……深く感謝している」


「いえ、これは私が自ら選んだ道。……陛下がお気になさる程のことではありません」


 そうして紳士的に頭を下げるケニカの姿に、レオハルトは幾分か冷静になることができた。気分を落ち着けて国王としての表情を作ると、目の前に立つ家臣の一人を労うように声を掛けた。


「ケニカ殿……本当に、すまない……」


「いえいえ、もったいないお言葉です。……しかし、『王都防衛軍』がイルをここまで早く掌握しかけるとは……にわかには信じられませんな」


「そうだな……レイシア、君の情報ではイルに攻め入った軍は二、三百の兵ということだったな?」


「はい、私は遣いの者からそう聞いておりましたが……」


 不安そうな表情でレオハルトへと視線を返すレイシアの言葉に、ケニカも同意するように言葉を続けた。


「同じく私もそう聞き及んでおりました。それ故、ここまで簡単に攻め落とされそうになっているというのは、いささか疑問を感じるのです」


「なるほど……そうなると、やはり罠の可能性が捨てきれんか……」


「そうですな……確かにその可能性は十分にあるかと。……しかし、どちらにせよ、イルが危険な状況にあるいうことには変わりはないでしょう」


「ああ……そうだな」


 これまで『神聖アルト国』は『魔術師』との共謀を疑って各国への弾圧を強めていたが、現在レオハルトが治めている『ケルム王国』の『王都アゼス』に直接侵攻してきたことは一度もない。


 また、『イル』についてもそれは同じであり、『ケルム王国』に近い位置に存在するからこそ、『神聖アルト国』は手出しが出来ないとも考えられていた。


 中立国だった『イル』には『王都アゼス』ほどの規模ではないものの『マーグタック』という都が存在しており、そこには王族が住んでいる。


 かつての『ケルム王国』と同様に、『イル』は征錬術や魔術を使用すること無く、都の裏手にある『ヴェステディ山脈』から木材や鋼材の資源を手に入れて生活している国だ。


 首都『マーグタッグ』は約千人の軍隊を所有しているものの、そのほとんどはあくまで自衛としての役割しか持っておらず、『神聖アルト国』にとっては全くと言っていいほどに脅威になり得ない平和な国のはずだった。


 しかし、そんな『イル』が『神聖アルト国』の―『王都シュヴァイツァー』の『王都防衛軍』に侵攻されている。


 レオハルト達は数年続いたこの『第二次国家戦争』に、いよいよ劇的な変化が訪れ始めていることを肌で感じざるを得なかった。

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