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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

山梔子

作者: 清見こうじ

   一.




 蒸し暑い夜。


 まだ7月に入ったばかりだというのに、寝苦しい夜だった。

 うとうとしていたけれど、不意に眼が醒める。

 部屋に充満する、甘い匂いで、頭がクラクラする。


(ジャスミン……?)


 あまり詳しくないので、少ない知識を総動員して、たどり着いた答え。



(でも、こんなに甘い匂いだったかな……?)

 

 多分、右隣の部屋のベランダからだと思う。

 夕方帰ってきたらクーラーが動かなくなってしまい、今夜は仕方なしに窓を開けて寝てるのだ。

 両隣から聞こえる室外機の音だけでイラつくというのに。

 ジャングルみたいに植木鉢が密集している、右隣のベランダを思い出して、余計イラつく。

 手入れはキチンとしているらしく、異臭や虫などの被害はあまりないけれど。

 花粉症持ちの私は、季節によってはベランダに出るだけで、ひどいクシャミや目のかゆみに悩まされる。


 ここ数年、その時期が激増した。


 全部が隣の花のせいではないだろうけど。

 明らかにアレルギーがあるユリだけは、申し訳ないけれど理由を話して、花の時期はベランダに出さないようにお願いした。

 切り花のユリは、たいてい花粉を取り除いてあるから割合平気なのだけど。


 でも、そんなこともあって、あまり好きな花ではない。


 基本的に、匂いの強い花が苦手なのだ。

 バラも、蘭も。


 なのに。


 右隣の住人は、香りの強い花や木を好むらしく、ベランダは年がら年中、むせかえるような匂いで溢れていた。

 だからとにかく、必要最低限しか、ベランダには出ない。


 自分の部屋のベランダが使えないのは不便なようだけど、一人暮らしだから、物干し竿にハンガーを引っかければすむ程度の洗濯物しか出ないし。

 大物もハンガーで干す方法を見つけて、とにかくベランダに出ないで済むようにした。


(あーっ! 頭痛い!)


 クラクラする頭を両手で揉んだり、ゴロゴロ体の向きを変えたりしながら。


(朝になったら、嫌みの1つも言ってやらなくちゃ)


 何て言おうか、セリフを考えているうちに。

 いつの間にか、意識は、眠りの海の底に、沈んでいった。





   ニ.


「人の迷惑ってもんを考えたらどうなの!」


 

 朝の出勤時間。慌てて部屋を飛び出した途端、耳に入った声。

 

「洗濯物に匂いが付いちゃって、洗い直しよ! どう責任とるつもり!?」


 その朝は、重い頭を何とか起こし、目覚まし時計代わりのスマホを見て一気に目が覚めた。起床予定時刻をとっくに過ぎていて、大慌てて身支度を整えて。

 ……あの花の匂いのせいだ。

 恨めしく思いながら部屋を出たら、まるで心の代弁をしてくれたかのような声に思わずうなづきそうになった。


「でも……花の香りですし……」

 ブツブツ言い返しているのは、例の右隣の……多分、OL。


 怒鳴り付けてるのは、右隣の、そのまた隣の部屋の、お姉さん。

 多分、お水系かなあ、という感じの、美人だけど派手なお姉さんは、何かあるとすぐに怒鳴り込んでくる、このアパートでも煙たがられてる存在だった。

 その癖本人は、女性専用アパートだっていうのに、夜遅くに男の人を泊めたり、お酒を飲んで騒いだりしている。


 まあ、絶対ダメ、っていう決まりはないんだけど、ヤクザっぽい人がいたりして(つまり、コロコロ変わる)何だか怖い。


 一方の彼女は、……一応お勤めはしているみたいなんだけど……男性どころか同性の人が訪ねてきたこともない様子。

 とにかく地味というか、ダサい。

 会社の制服なのかもしれないけど、白のブラウスに紺のベストとスカート、寒い時期はその上にコートやカーディガンを羽織って。

 長い髪の毛をひっつめて、黒いゴムで縛って、ヘアピンで留めて。

 化粧は一応してるけど、薄化粧かというと、そうでもなくて。

 ファンデーションの厚塗りに、ルージュだけだから、何だかのっぺりしてしまって。


 これが、なんというか……ホントに顔立ちが……だったら仕方ないのかな、って思うんだけど。

(って人のこと言える容姿じゃないんだけど)


 美人、とは言わないけど、そんなに悪い顔立ちじゃないんだ。

 だから、余計手抜きというか、人生投げてる感じが、嫌だ。

 神経質な感じがするし、着ている物も清潔でピシッと糊が効いてる。

 第一、花の手入れだってキチンとしてるのに、どうして自分の手入れはしないんだろう。


 そんなわけで、なるべく関わりたくない私は、足早に軽く挨拶だけして、通り過ぎようとした。


「ちょっと、待ってよ。アンタだって迷惑シテルでしょ!」


 お水の方に声をかけられ、私は仕方なく足を止めた。


「ベランダ中トイレの芳香剤撒いたみたいに、スゴいんだよ! ジャスミン、っていうの? おかげで洗濯物にまで染みちゃって」

山梔子(くちなし)、です」


「クチナシだろうとカオナシだろうと何でもいいから、どっかに捨てろって言ってんの!」


 ……昨日の匂いは、山梔子だったんだ。


 ぼんやりそんなことを考えていると、お水が「アンタだってそう思うでしょ」と畳み掛けてきた。


「あ、私は……あの……」


 正直、昨日は頭に来たけど、処分して欲しいまでは、言えないし……。


「迷惑ですか?」


 無表情でお隣さんに聞かれ、私は答えに窮した。


「……迷惑、までは、思わないけど……匂いの強い時期は、部屋に入れておいた方が……その……好きじゃない人もいるかも知れないから」

 そこまで言って、遅刻しちゃうから、と足早に立ち去る。

 鼻白んだのか、お水も「とにかく外には出さないでよ」と声のトーンを下げた声が後ろから聞こえた。






   三.


「あの、よかったらお茶でも……」


 その日帰宅すると、丁度お隣さんも帰ってきたところらしく、ドアの前で会ってしまった。

 何となく気まずくて、小さく「こんばんは」と口にして、急いで部屋に入ろうとした時、背後から声を掛けられた。


「貰い物のケーキがあって……一緒にいかがですか?」


 朝のこともあって、断りづらかったのと、彼女が手にしていた超有名ケーキ店の箱に誘惑されて。

 5分後、お隣さんの部屋のインターホンを押していた。


 ベランダと同じく、ジャングルのような部屋、を想像してしたのだけど。

 いくつかの観葉植物の他は、最低限の家具や生活必需品が置かれただけの、シンプルな、部屋。


 テレビすらない。

 質素と言ってもいい部屋なのに、何故か最新式の空気清浄器が置いてあるのが、妙にアンバランスだった。


「……今朝は、かばってくれて、ありがとう」


 促されるまま、行列ができる店の看板メニューであるフルーツロールケーキをいただきながら、何か話さなくちゃ、と考えていると、彼女の方から話始めた。

「あの人、いつもあんな風に、嫌がらせばかりするの……」

「……」


 嫌がらせ、って言うほどではないと思うけど。

 捨てろ、は言いすぎだと思ったけど、確かに匂いの強い花ばかり育てているんだし。


 ……そんな風に思っていても、中々口に出来ない、気弱な自分が、恨めしい。

「だから、あなたが『捨てる必要はない』って庇ってくれて、本当に嬉しかったの」

「そんな……」


 庇ったつもりはないんだけど……ホントは迷惑って言いたいのが、言えなかっただけなのに。

「あ……そう言えば、山梔子の香り、しないですね。部屋に入れたんでしょ?」

「……」

 途端、黙り込むお隣さん。


「……せっかく、あなたがああ言って庇ってくれたんだけど、実は私の山梔子、とても大きく育っていて、自分一人では運べないのよ」


 はあ?


「ほら、山梔子って寒さ暑さに強いから、他の鉢のように室内に入れる必要があまりなくて」


 そんなこと知りません!


「で、つい大きくしてしまって」


 突然立ち上がって、窓のカーテンを開けた。


 窓越しに、白く浮かび上がる、清楚な花。


「一昨日から咲き始めたの」

 恍惚とした表情で、自慢げに話す。

「ね、綺麗でしょう?」



 「……ごちそうさまでした。私、仕事持ち帰っているから」

 適当な言い訳を口にして、私は慌てて部屋を出た。

 食器もそのままにして、そもそもロールケーキも半分しか食べてこなかった。


 でもそんなことより、あの部屋の空気が、怖かった。

 

 息苦しさに窓を開けようとして、さっきの白い花を思い出す。昨晩のあの花の匂いも。

 

 昼間問い合わせたら、明日にならないとエアコンの修理はできないと言われて、明日は立ち会うために有休を取ってある。業者が来るのは、昼過ぎ。朝は忙しくない。

 カバンを掴むと、私は近所のネットカフェに向かった。

 

 今夜は、この部屋にいるのが耐えられない。

 ………あの部屋の隣に、いたくなかった。

 





   四.


 結局、山梔子の処遇はうやむやになったまま、花の季節が過ぎてしまった。


エアコンも修理してもらい、快適な部屋を取り戻し、山梔子の件などすっかり忘れていた。


 忘れたかった。


「もう今年の花はみんな散ってしまったから」

 8月に入ろうと言う頃、隣人がそう話し掛けてきて思い出したが、もうどうでも良くなっていた。


 それどころではない精神状態に、その日の私はあった。


 憧れていた会社の上司が結婚することになった。

 

 正直、かなり本気で好きだったし、気に入られたくて人の分まで残業を引き受けたこともある。

 相手は重役のお嬢様……とかだったら諦めもつくけど。

 同じ部署の、仕事しているよりメイク直したり爪磨きしている時間の方が長いんじゃなかろうか、というような、女。


 美人なだけが取り柄で、そして最大の武器。

 仕事のミスを何度尻拭いさせられたことか!


 なのに。


「海外勤務決まったから、慌てて、とりあえず見映えがいい相手を選んだって話だよ」

「酔った勢いで彼女の方から押し倒したって聞いたけど」

「社長の愛人だったらしいよー? お下がり押し付けられたんですって」


 興味本位と悪意と羨望の混じりあった噂のどれが本当かは分からない。

どれも単なる噂なのかもしれない。


 ただ、間違いないのは、彼は彼女と結婚するのだということ。

 だから、もう山梔子なんて、どうなろうと知ったことか! という気分だった。


 だけど。


「……あれ? 何だか……」

 綺麗になった?

「あ、今日、美容院に行ったんで……」

 はにかむように笑う隣人の顔が。

 メイクが、違う。

 髪型は、いつものように後ろに一つに結んでいるけど、前髪をゆったり分けて、小さな花の付いたヘアピンで留めてる。

 眉は綺麗に整えてあるし、アイメイクも控えめだけどしてある。

 何よりのっぺりだったファンデーションが、しっかり、でもナチュラルに見えるように施されている。

 元々の造りは悪くないんだから、綺麗になるのは当たり前……なんだろうけど。


「彼氏でも出来たの?」

 せいぜい好きな人が出来たくらいだろう、と思いながらも、鎌をかけてみると。

「……分かります?」


 頬を染めて、嬉しそうに微笑むその顔を、私は内心苦々しい思いで見ていた。


 よりによって、こんな日に……。


 悔しい、というより、もう少し明確な悪感情が、胸の中に渦巻いた。

「彼ね、君は磨けば光る人だから、って、色々アドバイスしてくれて……」

 嬉々として話始めるのを、疲れてるから、と遮って私は早々に自室に避難した。

 愛想よく話を聞いてあげる義理はない。


 まして、自分が失恋した日に。






   五.


 見たくない、という光景は、大体一番いやな時に見てしまうものだ。


 故意も悪意もなく、単なる偶然として。

 この場合は、隣人とその恋人らしき男性の会瀬。


 気分転換に、同僚と出掛けた、カフェ。

 目的はショッピングで、単なる待ち合わせに使っただけの、ありふれたお店。


 先に来ていた同僚が座っているテーブルに向かう途中で、向かい合って座る男女が目に留まる。

 まだ手慣れてないけど、以前より格段に上手くなった化粧を施した隣人。

 相方は濃いグレーのスーツで黒縁メガネの、地味な感じのサラリーマン風。


「あ……」


 一瞬目があったけど、シカトした。


 知らんぷりして、同僚に向かって合図して席につく。

 後で聞かれたら、邪魔しちゃ悪いからとか何とか言い訳すればいい。


 そう思っていたのに。


「こんにちは! 偶然ですね。あ、お友達ですか?」


 わざわざ席を離れて、声をかけてこなくてもいいのに!


 内心イラつきながら、私は「ええ」とだけ返す。

「あ、初めまして! 同じアパートの隣に住んでて、仲良くしてもらっているんです!」

 勝手にベラベラ喋って言うだけ言うと「彼が待ってるんで」と席に戻っていった。


「仲良しのお隣さん?」

「なわけないでしょ……単なるお隣さん。変になつかれちゃって、困ってんの」

「っぽいね。あんたずっとムッとしてたし」

「え? 顔に出てた?」

「反対。ずっと笑ってた。ちょい微笑みモードで。あー、感情目一杯殺して耐えてるなあ、って」

「分かる?」

「何年机並べて一緒に仕事してると思ってんの」


 他愛ないお喋りで気分も盛り上がって。


 何気なくレジに向かう、隣人と恋人(らしき男性)の後ろ姿が目に入った。


 あれ……?

 どこかで、見た?


 何となく既視感を覚え。


 それが何なのか思い当たらないまま、いつの間にか忘れていた。

 家に帰るまで。


「あ……」

 ショッピングして、夕食も済ませてアパートに帰ってくると、例のお水風のお姉さんが部屋から出てきた所だった。

「あら買い物? いいわね」

 私の持っていたデパートの手提げ袋に目をやり、挨拶がわりに口にする。

 彼女がとっかえひっかえ持って歩くバッグ類のブランドに比べたら、足元にも及ばない庶民デパートだもの。

 ……私は何となく引け目を感じて、紙袋を気持ち斜めに持ち替える。


「お出かけ?」

「まあね。ちょっとね」

 ふふ、と嬉しそうにクルリとその場でモデルみたいにターンする。

「どう? おとっときのコーデなんだ」

「……素敵ですよ」

 シンプルなワンピースにシースルーのボレロ。

 セクシー系が多い彼女にしては大人しめの可愛いコーディネートだ。


「ふふ、ありがと」


 浮かれ気味の彼女の様子は、普段戯れている男性達といる時とは明らかに違っていた。

「デートですか?」

「ん、まあね。◯◯ホテルの展望レストランでディナーよ」

 バッチリフルメイクの下でも、頬に朱に染まるのが分かった。

「彼ね、一緒に暮らさないか、って。まあ、私もそろそろ落ち着かないとなあ、って思ったから……シンクロ?」

 

 結婚、の文字をちらつかせて、ウキウキした様子の彼女は、輝いていた……正直ウザイ程。


「早く行った方がいいんじゃ?」

「ヤダ! そうだった! じゃまたね!」

 イソイソと小走りに駆けていく後ろ姿を見送って。


 突然、甦るビジョン。


 私は階段の踊り場に向かい身を乗り出すようにして、階下を見下ろす。

 丁度彼女はタクシーを捕まえて乗り込むところだった。


「あの、おかえりなさい」

背後から声をかけられ、私は一瞬びくっとした。


 例の隣人だった。


「あ、ただいま……」


 反射的に答えて、普段着の隣人をまじまじ見る。

「早かったのね。デートじゃなかったの?」

「彼が取引先と約束があるからって……夕方には別れたの。そのまままっすぐ帰ってきて」

「ふーん。街まで出たなら夕飯くらい食べてくればよかったのに」

「……私、あんまりああいう所で一人で食事するのは……それに彼も心配するし」


 まあ、私だって一人だったらせいぜいお弁当かお惣菜買ってきて、食事は家で済ませるだろうけど。


「別に真夜中でもないのに家にまっすぐ帰れなんて、ずいぶん束縛するのね」

「そういう訳じゃないのよ……でも連絡つかないと心配なんですって。私、携帯電話って持ってないから。でも、彼が心配するから、今度買おうかなって」

 

 心配されるのが嬉しくてしょうがない、というように頬を染めて。

 意地悪な私の口調には気付きもしないようだった。


「……ねえ、あの人と、どうやって知り合ったの?」

 ドアの内側に招き入れて、直球で質問をぶつけてみる。

「え、あ……会社の近くの公園でお弁当食べていたら、道を、聞かれたの」

 鼻白みながら、それでも訥々と話始める。

「近くだけど、分かりづらかったし、案内してあげたの。次の日、また公園で会って」


 近くに取引先があって、初めて来たので道が不案内だったが、親切に教えてもらって嬉しかった、と。


「それで、また会えないかな、って……言われて」


 地味で見映えがしない自分をどうして、と気乗りがしないのを、君は磨けば光る人だから、僕が証明してあげるから、一日だけ付き合ってくれないか、と。

そして美容院に連れていかれ、ブティックに行き。


「自分がこんな風に変われるとは思ってなかったの」


 今までおどおどしてるだけだった彼女の瞳が輝く……小さな自信を宿らせて。

 キラキラしている彼女は眩しかった……嫉妬を、感じるほど。


「それってつい最近の話よね……まだ知り合って日が浅いんでしょ? 彼って身元確かなの?」

「……なんでそんなこと聞くんですか?」

 眉をひそめて、不機嫌に問い返す彼女。


「彼、結構地味な感じだったけど、そのわりにずいぶん口が上手いと思って」

「それって酷くないですか!? 彼は大人しそうに見えるけど、営業の仕事してるから話上手なんです」

「へえ?」

「今日だってセールスの合間にわざわざ時間つくってくれたんです」

「仕事中に? それって良くないんじゃないの」

「そこは、営業していたことにすればいいから……高価なものを扱っているから、実際に売れるより、説明だけの人の方が多いから……って」

「へえ。宝石とか布団とか?」

「ええ。あと和服も扱うみたいです」


 ……ビンゴじゃない。思いっきりデート商法の手口でしょ?


「悪いこと言わないから、もうちょっと冷静に、彼を見た方がいいわよ」


 もし、彼女が私の言葉を聞き入れたなら、助けてあげられた。

 でも。


「あなたに何の権利があって、そんなこと言うんですか!」

「少なくとも、あなたよりは世間を知ってるつもり。あの人は、信用できない」


 多分、私は無意識に、彼女の神経を逆撫でする言葉を選んでいた。


「ほっといて下さい! あなたにそんなこと言われる筋合いはありません」

「あなたの為を思って言ってるのよ」

「大きなお世話です!」


 怒りのこもった眼差しを私に向けてくる彼女。


「じゃあ、最後の親切で教えてあげる」

「?」

「彼、今頃、他の女と食事してるわよ。私見たもの」

「……何を……?」


「今日行ったカフェのそばの、○○ホテル。展望レストランでディナーって言ってたから、まだゆっくりしてるかもね」

「嘘……」

「自分で確かめたら? 私にはどうでもいいことだし」


 無言で俯く彼女をドアの外に追いやって、私も無言でドアを閉めた。


 後は、何がどうなろうと、私は、知らない。

 知らない……。








   六.


   *


 まさか、あの人がそんなことするなんて思いもしませんでした。


 いえ、会えば挨拶するくらいで……お隣なんだから、何かのついでに立ち話をしたりとかは……まあ、ありますけど。


 だけど、そんなにお互いのことを知ってるわけじゃないし……あえて話すわけでもないですし。


……はい、たまたま行ったお店で、偶然会って……目が合っちゃったら、知らんぷりも何だし、一応挨拶はしましたけど。


 だって、ジッと見られてたら、無視できないじゃないですか。

 だから、とりあえず、挨拶しとけ、みたいな。


 いえ、そのあとは何も。


 こっちは一人じゃないし。アパートで会うまでは、何してたかなんて知りませんよ。


 花?


 ああ、山梔子のことですか?


 ええ、確かに香りが強いんで、好みはあるかもしれませんね。

 それでちょっとしたトラブルにもなったし。


 ええ、外で言い争いしたりして。


 あ、でも、その時だけで、それからは特にトラブルとかなかったですけど。


 そういえば、その日の夕方、ちょっとだけお茶したんですよね。

 いえ、別に、当たり障りないことだけで……恋人なんて!

 付き合っている人がいる様子はなかったし。


 そういう色っぽい話題は出なかったですね。


 ……親しい友達なんて、いたのかしら?


 少なくとも、アパートに訪ねてくる人はいなかったみたいですね。





   *


 だから、知らないって言ってるでしょ?


 そりゃ話くらいするわよ。一応ご近所だし?

 

 見せつけてた気なんてありませんよ!


 ほら、私こういう性格だから、気分次第で誰にでもペチャクチャ話しちゃうし。

 はあ?

 知るわけないでしょ? 恋人がいたかなんて、そんなの。


 興味ないもの、あの人のことなんて。


 ……苦手というか、そりゃ正直に言えば、嫌いよ。あ、別に憎んでたとかじゃないからね。

 人間的に、好きじゃないって言うか、ムカつくって言うか……。


 何か言いたそうに見てるくせに、言わないし。


 花?

 ああ、そんなことあった、あった。

 クチナシ、だっけか。

 うん、結構騒いじゃって……その時は、凄く頭に来てたから。

 

 だから、何もないって!

 すこぶる友好的ですよ!

 

 あれがきっかけで、色々が上手く回り始めたって言うか……。


 え、別にこっちの話……だから、そのクチナシの花の匂いのついた服を着ていったことで、恋人ができたっていうか……ただの知り合いから進展できたのよ。


 知ってる? クチナシの花言葉……『幸福』なんだって。





    *


 はあ、何が何だか。


 突然『あなたは騙されている』って言い出して。

 そう、あの日。


 彼と待ち合わせしたお店で偶然会った、あの日です。

 彼の仕事の都合で、夕方には帰っていたんですけど、何だかドアの外で話し声が聞こえて。

 隣の……そう、ネイリストやってる彼女ね、彼女と話をしてたらしくて。

 夜は彼とデートだって言ってたから、丁度出かける時に、あの人が帰ってきてみたいで。


 彼女、珍しくご機嫌で話していたみたいで。


 気合い入れてコーディネートするって言ってたし、私も見たいな、と思って、外に出たんですよね……彼女、美人だし、派手だけどセンスあるし。でも。


 出かけていった彼女を見る、あの人の目が怖くて。


 よっぽど声をかけるのは止めようかと思ったんですけどね。

 あんまりに踊り場から身を乗り出しているから、思わず声をかけて。


 そうしたら、嫌みの連発で。


 デートの割には帰りが早いとか、付き合って日が浅いくせに馴れ馴れしいとか。


 おまけに、彼が信用できない人物だ、みたいに言い出して。


 ……はい、確かにまだ付き合い始めたばかりだし……いえ、とにかく、決して信用の置けない人なんかじゃありません。

 彼の勤めている会社、うちの社とも取引がある所で、お互いに知り合いもいますから。


 ええ、詐欺紛いの悪質な訪問販売するような会社じゃないですよ。

 そうそう、あの会社ですよ。


 大体、彼の営業相手は個人じゃなくて法人ですから。

 

 なのに、あの人、彼を二股かける詐欺師呼ばわりして!





   *


 テンション上がってたしね、つい見せびらかしちゃったのよ……。

 だけど、長続きすればいいけどね? みたいに言われて、カチンときて。


 プロポーズされるかも、って言っちゃったのよ、勢いで。


 まあ、されたらいいなあって願望というか、妄想もあったから、ちょっと気まずくて、とっとと外に出ちゃったンだけど

 でも、ずっと視線を感じていたのよねえ。

 

 だから、あの時、あの人があそこにいたのも、不思議には思わなかったわ、実は。

 そう、常夜灯があるから、案外外から丸見えなのよね、アパートの通路って。


 ただ、ずっとそこで見張っていたのかと思ったら、さすがにぞっとしたわ。


 そりゃお泊まりはしなかったけど、それでも夜中の1時すぎよ?


 ありえなくない?




   *


 たぶん、夜中の1時は過ぎていました。


 喉が渇いて、起きて台所に行ったんです。

 そうしたら外で気配がするから、ドアの外覗いたら、あの人がいるじゃないですか!


 後ろ姿だったけど、分かりますよ。


 手すりにしがみつくように身を乗り出して。


 あっ、と思ったら……!?





   *


 あっ、と思ったら、フワッて体が浮いて。


 ……気付いたら、目の前に横たわって、いて……。


 あたり一面……血の海……真っ黒に光って見えて…………ダメ……ちょっともう、ムリ…………。





   *


 ドサッて音がして、下から悲鳴が聞こえて。


 慌てて外に出て下を覗いたら、隣の彼女が座り込んでいて……あの人が……ごめんなさい、ちょっと、これ以上は……スミマセン。




   七.


「……彼女らの証言に、特に不審な点はないんだよなあ。被害者が被害妄想ぎみで、友人が少なかった、っと言う点では、他の人間からも証言取れているし」


「天涯孤独で、最近失恋したらしいって会社の同僚も言ってるし……こりゃ自殺に断定でよさそうだ。あわよくば妬んでいた同じアパートの住人を巻き添えにしようとしたんだろうな。階下の目撃者の二人も、たまたまデートと仕事帰りで一緒になっただけで。夜勤明けの看護師の方は、越してきたばかりでほとんど面識がないし」


「でも酷い話ですね。さも身勝手な隣人に迷惑をかけられている風を装うなんて」


「ブログに公開するとかじゃなくて、メモリーに書き込んでポケットに入れておく辺りは、どういう心理なのかな」


「個人を特定されたくなかった、とか? 遺書代わりだったんじゃないですか?   あわよくば殺人を疑ってもらおうとか」


「そういう巧妙な所がありそうだな。粘着質な性格だったみたいだし。まあ、結局は穴だらけだった、ってとこだが」


「じゃ、自殺、ということで報告上げます」








「とりあえず乾杯!」

「声大きいってば」

「大丈夫よ。家の中だし」

「……でも、こんなに上手く行くとは思わなかった」

「ま、あの人のUSBメモリー拾ったのが幸いよね。名前も入っていたし」

「大体ああいうものに妄想書きこんで持ち歩くのが変なんだって!」

「あ、あれ多分小説にでもするつもりだったんじゃない? 字数が20×40だったし」

「妄想小説!? 笑えるー!」

「だから不自然じゃないように字数設定変えておいたわよ。だけどホント笑っちゃうよね。私が水商売してる淫売で、アンタが花を愛でるだけのヒッキーだもん」

「あなたはまだいいわよ。化粧は派手だけど美人ってなってたし。私なんか化粧も出来ないのっぺり厚化粧だよ? ヒドイし」

「まあ、アンタは一見清楚な美人で、あの人が理想としてたらしいし。自分と入れ換えてたんでしょ……もっとも、出会った頃のアンタはあんな感じだったよね」

「もう3年も前じゃない! ……あの後で、あの人引っ越してきたのよね? 偶然とはいえ、恐ろしいわね」

「ね、あのまま、あの人の妄想進んでいたら、あの事も書いたのかな?」

「まさか! せいぜい痴情の縺れで、あなたと私が刺し違えて、仲良くあの世に、って程度でしょ?」

「そんなもんよね。実際にはそんなもんじゃ済まないのにね」

「事実は小説よりも奇なり、ってことね」

「まあ、仮にあの人が何かを知っていたとしても、死人に口なし、ってこと」

「あは! 山梔子(くちなし)がきっかけなだけに、おあとがよろしいようで……」



 事実は小説よりも奇なり。


 確かに、きっかけは山梔子。


 山梔子の匂いに頭がクラクラして。


 前からこころよく思っていなかったあの二人がトラブって。


 そのあげくに刺し違えるようなことにでもなったら、きっと胸がすくように、気分がいいに違いない。


 そう思って、パソコンで文章を打ち始めて。


 書いているうちに、どんどん筆が乗って、会社でも仕事の合間に入力して。

 会社のパソコンに記録が残ると不味いので、わざわざメモリーに保存して持ち歩いた。

 刺し違える寸前まで書いて、ちょっと筆が止まってしまい、しばらく筆を休めている間に、メモリーをなくしたことに気付かず。

 

 そうしたら、まるで私の文章をなぞるかのように、二人に新しい恋人ができて、カフェで見せつけられ、アパートで自慢され。


 メモリーをなくしたことに気付き、見られたのかもと思ってお隣の彼女に探りを入れると。


「ピンクの猫の付いたメモリー? 知らないなあ……あ、そういえばお隣がそんなの持ってたの、見たかも。夕方、帰ってきた時だったかなあ」


 誰かに見られたら困るという思いの一心でいると、お隣の彼女がメールで帰宅時間を聞いてくれた。


 深夜1時すぎくらいだというので、1時少し前からドアの外で、手すりにもたれて帰りを待っていた。


 車の停まる音がして、階下を見下ろすと、夜目にも鮮やかな派手な服が目に入った。

 

 思わず身を乗り出した、その時。




 山梔子の、匂い……!?








   八.


 気がつけば、私はさまよっていた。


 光とも闇とも分からない、ぼんやりとした空間で。



 右も左も、上も下も分からず、漂うように。


 ……私には体が無かった、すでに。





 不意に、覚えのある感覚が、私を刺激した。

 導かれるように「それ」に向かっていくと、突然世界が開けた。


 ……眼下に広がる、陰惨な光景。


 夜の闇の中、街灯に照らされて光る、真っ赤な血の海。

 その上に横たわる「もの」が、さっきまで「私」だったと理解するのに、さほど時間はかからなかった。


 信じられないとか、認めたくないとか、そういう感情は、全く湧いてこなかった。


 ……そっか、死んだんだ、私。


 そんなことよりも、気になるのは、私を導いた、あの「匂い」。


 山梔子の、花の、匂い。


 花の時期は、とうに過ぎたというのに、むせ変えるほどの、匂い。

 フラフラと、その匂いのする方に、漂っていく。


 隣の部屋の、ベランダ。


 眼に映るのは、盛りは過ぎたものの、まだ艶やかに咲き誇る、大きな百合の花。


 夜目にも鮮やかな白い花、アレルギーのある私は忌避してきた花だった。

 

 けれど、辺りに漂うのは、山梔子の花の匂い。

 既に花を落とし、葉ばかりの、山梔子の鉢植えから。


 そして、全てを、思い出す。





「でも、あの人が突然、ケーキ持って押し掛けて来た時はびっくりしたけどね」

「ああ、アンタが招き入れたことになってる場面ね。空気清浄器のこととか、しっかりチェックしてたしね」

「生活感ないとか、ちょっとドキッとしたわよ」

「実際、あの部屋で生活してないもんね」

「いくらなんでも、嫌だわよ。かと行って、出ていくわけにもいかないし」

「あと、山梔子の分だけでしょ? 落ち着いたら、また処分しよ?」

「うーん、あれけっこう丈夫でね、なかなか細かくならないのよ」

「あ、やっぱり硬いんだ。そりゃそうよね」

「考えたら、あの時も落としちゃえば楽だったのよね。今回みたいに」

「でもねー、昼間だったし、ちょっと無理だったかもね。あの人みたいに、自分で身を乗り出してくれればいいけど」

「そっか、運ぶのは難しいかもね」

「第一、あの時は突然だったし」


 フフフ……。


 トーンは潜めて、でも楽しそうな笑い声。


 女同士の他愛もないお喋り……のように聞こえるけれど。


 私は、そっと隣のベランダに眼をやる。


 隣の、ところ狭しと鉢植えが並べられた、ベランダ。

 その中で、ひときわ大きな、山梔子の鉢植え。

 

 鉢の横にうずくまる『彼』は、隣の部屋の様子など、全く興味がないらしい。

 もっとも、話を聞こうにも、様子を見ようにも、肝心の、耳も目も、ないのだから。

 それどころか、首から上が、全く存在していなかった。


 別に、怖いとも何とも、感じてはいなかった。『彼』が、私と同じ『幽霊』だから、というわけじゃない。


 それよりも、もっと怖いものを、知ってしまったから。


 幽霊なんかより怖い……生きてる人間の、心。


 狂っているわけじゃない……ううん、狂っているかもしれないけど、そんな風には見えないで、普通に生活している、あの女達。


 私を殺して、平然と、笑いさざめく、あの女達。


『彼』もまた、彼女らに殺された。

『彼』の場合は、全くの不可抗力のようだけど。


 よりによって、隣人同士を二股にかけて、修羅場の挙句、突き飛ばされた拍子に、死んでしまった『彼』。

『彼』に全くの非がないわけじゃない。


 というか、一番悪いのは、やっぱり『彼』だろう。


 元はと言えば、本命の彼女に振られた逆恨みで、もう一方の彼女の部屋に忍びこんで、金目の物を物色していた所を見つかったのだ。


 だから、別に、同情もしない。ただ。


 その後、切り刻まれて、鉢に埋められたのは……やっぱり憐れだと思う。

 エグいとか、気持ち悪いとかいうより、幽霊になってもバラバラのままなのが。

 首がないのは、他の部分が山の土なり川なりに戻されて、一応は自然に帰ったから。

 例えその経路が下水道や不法投棄であっても、関係ないらしい。

 ただ、頭部だけは、なかなか粉々に出来ず、いまだに鉢に眠っているのだ。


『彼』が死んでしまった時、慌てて二人で対応を考え、怪しいサイトで死体の処理方法を探して。


 殺害現場の部屋や死体を切り刻んだ浴室を、使う気になれない程度の理性はあるらしく、実際彼女らはルームシェアしていた。

 ただ、花の世話だけに使っていたのだ……死体を埋めた、薔薇や百合や山梔子の鉢植えを。

 匂いの強い花ばかり増やしていき、たまに隣人の苦情を受けて処分し。

 生活してない部屋に、最新式の空気清浄器を置き。

 そこまでは、分かる……共感はできないけど。


 必死で、隠そうとしてたんだろう……でも。


 私が、現れて。

 知らないはずの過去を、私がなぞっていったことを知り。


 私の存在を消そうとした時……そこにあったのは、全てが明かされたらどうする、という焦燥感より、どうやって殺そうか、という愉悦の方が勝っていたはず。


 そう。



 彼女らは、私を楽しんで殺したのだ。





   九.


「でもあんなに上手くいくとは思わなかった」

「私も。外から見たら、ホントに自分から落ちたように見えたもの」

「タイミングが難しかったのよね。丁度タクシーから降りるところで、上手く身を乗り出してくれたから、思いきり両足持ち上げて。よくポケットにメモリ放り込むまでできたって、自分で感心しちゃうわ」

「あの夜しか都合のいい日なかったしね。夜勤だとか帰省だとか、コッソリ探って、あの時間、誰もいないの、狙って」

「際どかったよね。看護師の彼女、まさかあの時間に夜勤から帰ってくるなんて」

「まあ、おかげで目撃者増えたからよかったじゃない」

「上手くいったね」

「うふふ……」







   ***



 頭が痛い。


 あの日、あの夜以来。


 目の前で、飛び降り自殺が、あった夜。

 体調が悪くて、夜勤なのに早めに帰らせてもらえて、いつもとは違う時間の帰宅だった。

 アパートの前のロータリーで、顔を覚えたばかりのアパートの住人と一緒になり、挨拶を交わした直後に、目の前に落ちてきた。


 仕事がら、幾らかは、死や血に慣れているとはいえ、やっぱりショックだった。

 まだ引っ越したばかりで、顔も覚えてない人だったけど。


 あの夜から、体に染み付いた、匂い。


 三軒隣のベランダにある、百合の花の匂いかと思ったけど、違う。


 ジャスミンみたいな、でももう少し甘ったるい匂い。


 決して嫌な匂いじゃないのに、何だかクラクラする。


 仕事場では気にならないから、この部屋に問題があるんだろうか。

 時々、夢にも現れる。

 花のことで、言い争っている人達。

 

 その夢の中で、一際強く匂う、花の香り。


 何の花?






 ……チ……シ……。




 誰かの、声がする。

 スマホを手にして、画面を開ける。

 周囲には内緒で、たまに小説を書いて投稿してる。

 思い付くまま、タイトルを入れる。


 ……チ……シ。


 く・ち・な・し。




『<山梔子>


 一



 蒸し暑い夜。


 まだ7月に入ったばかりだというのに、寝苦しい夜だった。

 うとうとしていたけれど、不意に眼が醒める。

 部屋に充満する、甘い匂いで、頭がクラクラする………………』








 山梔子;くちなし




 天国に咲く花とされる。





 ……もはや、言葉を紡げない者が、その甘い香りに、思いを込める……のかもしれない。





 そして。







 物語は、繰り返される…………。











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― 新着の感想 ―
[良い点]  花粉症に苦しんでいるため、隣人のベランダにある大量の花に苛立つ主人公の心情が独白から存分に伝わってきました。  隣人ともう一人のアパートの住人である『お水』の騒動に巻き込まれる場面の、主…
[良い点] 言葉たちのチョイスに彩りと妖艶さを感じたのが一番大きな印象です。夢野久作みたいというか、美しさとミステリアスな雰囲気と恐ろしさが素敵です。しかも女性の醜さがまた一層綺麗に見えます。何度も考…
2022/09/20 01:05 退会済み
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