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魔女には記憶がない  作者:
第4章
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竜の籠と氷花の調べ 07

 


 テクラードの籠から少し歩くと、遠方に大きい風車がそびえ立つ小さな町がみえた。風車は羽根の部分が赤く塗られており遠くからでもよくわかる。町へ寄るのも考えたが少しルートから外れるためそのまま目的地を目指すことにした。町外れにも並んでいる風車の下を歩きながら雪道を進む。


「そう言えばルアーナへの手紙の内容はちゃんと書けたの?」


 ブレンダは魔導書に目を通しながら、何気なくディエゴに聞く。


「ラスに手伝って貰って書いたよ。僕用の契約書も同封したし、両親のところに着いたらまた改めて手紙を出すつもり」

「おい、もっとこまめに出せ。お前成人してないんだぞ。いいな」


 ラスが厳しく言うと、ディエゴは少し口を尖らせながらわかったと返事をする。相変わらず面倒見がいいなと思いながらラスの姿を見た。ラスは訝しげにディエゴを見ていたが、不意にブレンダの方へ目を向けてきた。ブレンダはさりげなく魔導書へ視線を落とし、熱心に本を読んでいるふりをする。様子を見ると言ってもやはり気になるものは気になるのだ。彼に聞きたいことがたくさんあるのに、他人のふりをしている理由がわからない上、聞くタイミングもしっかり逃していたブレンダはモヤモヤしていた。またラスの方へ目を向けて見ればラスはいつも通り少し前を黙々と歩いている。


「その魔導書、何か使えそうなことは書かれてる?」

「え?あぁ、そうね。魔術師入門編って感じだから私生活に役立つ魔法が書かれているって感じかしら」

「ふーん」


 ディエゴの質問に意識がラスの方へ向かっていたブレンダは慌てたように本をパラパラとめくる。本には簡単な保護魔法や治癒魔法、軽い攻撃魔法や浮遊魔法などが書かれている。読み込んで見たもののやはり魔法はイメージの世界なのか具体的な正解は書かれておらず、ブレンダは本を読みながらも論理的ではない説明文に頭を悩ませていた。


「読んでわかったのは魔術師って想像力が豊かな人向きってことかな。1つずつ試してみようと思ってるけど」

「僕からしたら保護魔法ができている時点ですごいよ」

「ミアが実践で教えてくれたからね。次は軽い浮遊魔法とか?」

「うーん、じゃあまずこれを浮かせてみるとか」


 ディエゴが屈んで地面にある雪をかき集めギュッと固めると、雪玉を目の前に差し出してきた。ジッと雪玉を見つめ、それから少しワクワクした顔をしたディエゴを見る。ブレンダは魔導書を閉じると雪玉を受け取り手に乗せた。魔法はイメージの世界と自分に言い聞かせ目を閉じ集中する。ぐっと魔力を使うと、ふっと手から雪の重さが消えた感覚がした。


「わ、浮いてる!」

「う、んぅ……集中力が必要、かも」

「そうなの?綺麗に手の上に浮いてるけど」


 うっすら目を開けて雪玉を見る。自分の手のひらの少し上をふわふわと浮く雪玉を見て上手くできていることにほっとした。魔力を使うとピアスがほんのりと光っているのがわかる。歩きながら行っているため余計に神経を使った。自分の魔力が手のひらから溢れているのを見ながら、雪玉をくるくると回してみると、思ったより思い通りに扱えるみたいだった。静かに浮遊魔法を解くとふぅと息を吐く。


「できたとはいえまだまだ練習が必要かも」

「できることがあれば僕も手伝うよ」


 ディエゴは興味津々で言うと、ブレンダの手の掌から雪玉を回収して雪をくっつけて少し大きくしている。少しずつ大きくしてまた練習をしてみようとのことらしい。ディエゴの楽しそうな雰囲気にブレンダは少し気が楽になった。ラスとの関係のことを考えても仕方がない。今は魔法の練習をしようと、彼が大きくしてくれた雪玉を受け取った。


 その後も魔力の扱いになれるため浮遊魔法の練習をしてみたり形を作ってみたりと、雪道をを歩きながらいろんなことを試してみた。とはいえ、雪が強くなったり急な坂道や足場の悪い道を黙々と進んでいるため、余裕がある時に練習する程度だ。ディエゴは魔法が珍しいのか積極的に練習に付き合ってくれていた。ラスも休憩中はブレンダの練習をぼんやりとみていることが多い。練習のおかげで本に書かれている簡単な魔法はある程度使えるようになっているようにブレンダは感じた。



 ミュラッカの花がある場所までの道のりはどんどん険しくなり、それに合わせて雪も強くなってくる。吹雪く時は洞窟で休憩を挟み、雪が弱まるとラスを先頭に黙々と山を上り続けていた。そんなことを繰り返していれば3日目には目的地まで近づくことができた。


 4日目の朝。ブレンダは寝起きの眠い目を擦り寝袋に包まりながら、香り葉で包み焼きにしてくれたお肉をもそもそと食べていた。お塩が効いており、少し燻製の香りもしていてして美味い。こんなに雪深い山なのに獣はたくさん生息していてご飯は尽きない。寝起きのブレンダとは違い、狩り後のディエゴは早急に朝食を食べ終わると、ラスに長弓の使い方についてしつこく質問していた。

 一緒に生活して分かったことだが、ラスはずば抜けて弓の使い方が上手いようだ。最初は警戒してあまり話していなかったディエゴも、この3日間で彼への眼差しが尊敬へとがらりと変わっていた。ラスもディエゴを邪険にすることなく、聞かれたことは丁寧に教えているため、2人の関係は以前と比べて良好そうだ。


 弓の構え方について話し込んでいる2人を横目に洞窟の外を見てみれば、連日吹雪いていたのが嘘のように雪が止んでいた。ここ3日間吹雪が多かったが、今日は微かに粉雪が降っている程度で太陽も薄い雲の隙間からのぞいている。


「今日は天気がいい方だ。目的地まで進む」

「そうね。吹雪が収まって良かった」


 ラスはさっき聞いたことをメモ帳に書き始めているディエゴの頭を乱雑に撫でると、ブレンダに暖かい飲み物を渡す。どうやらようやく目的地に到着できそうらしい。ラスは懐から厚手の紙を取り出し、ブレンダとディエゴにも見える様に地面に広げた。その紙には大きな雪山がいくつも書かれている地図で、真ん中に大きな街が描かれていた。


「これティバルトと一緒に見てた地図よね。真ん中は首都?」

「あぁ、真ん中にある街が首都オルネラだ。今俺らはこの東の山にいる。連日吹雪いて目的地に近づけなかったが今日は行けそうだ。ミュラッカの採取はかなり危険だからちゃんと計画を立てて採取に挑むぞ」


 ブレンダは小さく頷くとラスを見た。ラスは難しい表情でブレンダとディエゴを見る。


「今日採取に行くところは氷竜の住処だ」

「氷竜?」

「ミュラッカの花は氷竜の寝床の周りに咲く年中凍った花だ。氷竜がいない時を狙うしかない。餌を狩に行っている時に巣を空けるからその時に採取する。一番の問題は巣穴は縦長で氷の洞窟のようになっているってところだ」


 ラスの言葉にブレンダとディエゴは目を丸くした。氷竜とは初耳だ。いよいよラスが言っていた通り危険な採取になる段階に来たのかと緊張感が増す。




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