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魔女には記憶がない  作者:
第4章
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竜の籠と氷花の調べ 06

 


 ミアはブレンダより頭一つほど小柄で、向かい合って立つと余計に体格の差が目立つ。細く背が高いブレンダとは違い、体型も少しふくよかで可愛らしい。


「私は魔術師みたいな魔法は使え無いのだけど、簡単なおまじないなら使えるの。魔法はおまじないの応用みたいらしいんだけど、私はよくわからなくて」

「そうなんですね」


 ミアは照れたように笑うと、目を閉じ何かお祈りをし始めた。すると、暖色系のエネルギーの様なものが自分の手のあたりから溢れているのが見える。ブレンダは目を見張るが、驚いているのはブレンダだけらしく、この淡い光は周りの人は見えていないような反応だった。


「こ、この光って……」

「え、光?」


 ミアはお祈りを一瞬とめて不思議そうな顔をするが、ブレンダが慌てて首を降ると、小さく笑い気にせずお祈りを続けてくれた。また彼女の手から淡い光がキラキラと溢れ出し、広がり、暖かいそれはブレンダの身体を包みこむ。春の日差しのような暖かい光に包まれ、その内、静かに光が身体に馴染むのがわかった。


「どうかな。おまじないしてみたけど、わかった?」

「……はい。わかります」

「ほんと?すごい!じゃあ今度はあなたがやってみて。ブレンダの魔法石の力は身体全体に馴染んでるはずだら、力を私に渡すような感じで」


 ブレンダは少し不安になりながらも頷くと、自分の魔法石の力を感じるように集中した。すると魔法石と同じ淡い光がブレンダの周りに静かに溢れ出し、爽やかな水に浸っているような感覚になる。


(ミアに、祈りながら力を渡すイメージ……)


 ブレンダは自分の力を彼女にゆっくりと流し込むようなイメージをする。スルスルと光が彼女へ流れていくのが見え、不思議とこの感覚を覚えてる気がした。ゆっくりと時間をかけてミアに力が受け渡ったのを感じ、ブレンダは顔を上げる。


「ブレンダ、凄いわ」


 ミアと目が合いにっこりと微笑まれる。彼女の周りに優しい風が舞い上がっており、2人を包むようにふわふわと洋服を揺らしていた。彼女たちの周りに漂っている淡い光はどうやら彼女らには見えないようだったが、ブレンダのピアスがほのかに発光しており、魔法石を使っているのがミアにはわかったようだ。


「凄く上手よ!この応用で、物や物体に力を与える事ができるらしいの。あなたならすぐできそう!」

「ありがとう。何となくわかった気がするわ」


 ニコニコと笑うミアに、ブレンダは微笑み返す。ディエゴはポカンとした顔でブレンダを見つめており、ラスは安心しているように見えた。旅の間に使えそうな能力があることに嬉しくなり、ブレンダは花が咲くように笑うと、ラスは少しだけ口角を上げ、そのまま静かに地図へと視線を移した。



 ***



 ブレンダは雪道を歩きながら、魔道書を開いて難しい顔をする。ミアから「私にはよくわからないから」という理由で"魔術師見習いのための魔導書"という本をもらった。中を見ると簡単な魔法に関する記述が書かれていたが、実際に試してみるしかないような事ばかりが書かれていた。


「おい、雪道なんだから。転ぶなよ」

「うん……」


 ラスが振り向きながら怪訝そうに声をかけてきたが、ブレンダは心ここに在らずな返事をする。ディエゴはブレンダが道から逸れないように腕を掴んでくれていたが、気になるのか同じように魔導書をチラチラみている。ラスは呆れたようにため息をつくと、こちらのペースに合わせて歩いてくれた。


「道が険しくなったら読むのやめろよ」

「うん、分かってる。昨日あまりちゃんと読めなかったから」


 本から視線を逸らさず答えるブレンダにラスはまた怪訝な顔をすると、ディエゴにブレンダを任せて少し前を歩き出した。

 次の素材はミュラッカの花という氷花の植物らしく、今回の採取の旅の中では上位で大変らしい。今日を含めて3日ほど雪山を進み、ある特定の場所で取得する流れだ。ティバルト夫妻には色々と良くしてもらったので体調は万全。なるべく安全なルートで進むため朝早くから砦を出発していた。

 ブレンダは出発前に、ディエゴとラスのそれぞれの手を取り、魔導書の通りに保護魔法をかけていた。ディエゴの後にラスの手をとり同じ様に祈る。ラスの手は豆がいくつかあり、ゴツゴツしていて狩人らしい手だった。初めてちゃんと手を握るのに、何だが不思議と初めてではない気がする。

 閉じていた目を開いてラスを見た。綺麗なアッシュグレーの瞳は長いまつ毛に縁取られ、静かに伏せられていた。ふと、視線を感じたのかラスが目を開く。ブレンダのエメラルドの瞳と目が合って、お互い静かに見つめ合った。ブレンダの魔法石の力が違和感なく彼と馴染んでいるのが分かると彼女はそっと手を離した。

 今朝の出来事を思い出し、ブレンダは先頭を歩いているラスをチラリと盗み見る。今日は雪が降ってないため、いつもの深いフードは脱いでいた。晴天のため黒に見える彼の髪が太陽の光にあたり、本来の髪色であるナイトブルーの色かよくわかる。


(……ラスと私は知り合いだと思う。)


 彼の後ろ姿を見ながら何となくブレンダはそう感じていた。彼の香水の香りが何故か懐かしく感じたり、彼の手を握った時に初めてではない感じがしたのも理由の一つだが、1番は保護魔法をかけた時だった。

 ディエゴには馴染ませるのに少し時間がかかったのだが、ラスには驚くほどすぐ効いた。魔力を使うと少し怠惰感があったのだが、疲れもない。ちゃんと保護の力がかかっているのも、ブレンダの目から見て一目瞭然だった。

 ただ、確固たる証拠もない。ラスも知り合いのような素振りを見せてこないため、下手に「私達、知り合いだった?」とは言いずらく、保護魔法をかけている時も、お礼をいうとラスは旅の支度に戻っていた。彼が何も言わないのでブレンダも確信を持てない。

 とりあえず、解毒剤完成までの道のりはまだまだあるため、ブレンダはしばらく様子を見ようと魔導書に視線を戻し、魔術の習得に力を入れることにした。



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